いま横浜市立大学で何が起っているか…
「教員の欠員補充人事凍結に関する学長見解」の撤回を求める緊急アピール
2002/07/25
横浜市立大学の真の改革を求める教員有志
一楽重雄(理),平 智之(商),永岑三千輝(商)
矢吹 晋(商),吉川智教(商),吉岡直人(理),三谷邦明(国・文),石川幸志(理)
去る7月17日の評議会で提示された「教員の欠員補充人事凍結に関する学長見解」は、大学の自治を守る立場からも,また,本学の教育研究の水準を維持する観点からも受け入れることができないものです.
また,この表題にある「学長見解」の表現は「事務局提案」に対する「学長見解」を意味すると思われ,表題そのものに学長の事務局への追随の姿勢が現れています.
小川恵一新学長のもとで,大学構成員すべてが参加できるような民主的討論のもとに大学改革が進むことを期待して来た私たちとしては,大きな危機感をもたざるを得ません.大学改革は構成員の支持があってこそ,その実効性が保証されます。
ここに,真の大学改革を望む教員有志の意見を表明し,これが全学的議論のきっかけとなることを期待します.
昨年4月以降,大学において多くの制度改訂が行われて来ました.そのどれも教員側との意見交換がなく,決定のプロセスも明らかにせず,事務局の決定を一方的に教員側に押し付けたもので,問題をはらむものばかりです.非常勤講師の謝金の支給方法の変更のように,すでに大きな問題となっているものもあります.まず,この流れを簡単に振り返ろうと思います.
1.出勤簿問題:全国の多くの大学に共通する長年の慣習を無視し,押印を求めた.
2.リカレント講座の教員への講師謝礼の廃止
3.非常勤講師枠の削減:非常勤講師は専任教員が担当しきれない部分をカバーし,本学の教育面で重要な役割を果たしているにもかかわらず,対策を討議する十分な時間的な余裕もないまま,非常勤講師コマ数の一律5%の削減を求めた.
4.研究費の交付金化:個人研究費の全額を市からの交付金とした.これにより研究内容を届け出る必要が生じた.
5.出張の職免化:学会出張や野外調査・文献調査などの研究活動を,教員の自己啓発のための研修なみの扱いである職務専念義務免除の扱いに変更した.
6.非常勤講師給与の支給方法の変更:長年実施されてきた年額の月割り支給から時間給の扱いとなり,また,多くの場合に実質的な減給を伴っている.
そして,今回の「教員の欠員補充人事凍結」です.これらのすべては,なにかしら本質的な問題を解決するというものではなく,大学改革の実質となり得ないものばかりです.
なかでも,非常勤講師の謝金方法の変更は,4月の開講を目前に控えた3月15日になって,非常勤講師に一片の通知で知らされたもので,学生への影響を考えるとすでに実質的に断ることの出来ない時期であり,そのまま実施されたことは契約不履行ともいうべき大問題です.非常勤講師の依頼は,専任教員が責任を持って行っているものであるにもかかわらず,事前の相談がまったくありませんでした.非常勤講師の方々から強い不満の声があがっています.
これに加え,最近,理科系の付属研究所で計画されていた巨額の外部資金導入が,事務局の不当な介入により不調に終ったということも耳にします.これが事実なら,大学の方針として外部資金の導入などを掲げていながら,それを不可能にした事務局の責任は極めて大きいと言わざるを得ません.研究奨励寄付金の許可・不許可には専門的な知識が必要とされる場合もあり,教授会の審議事項とされています.
今回の小川学長による「学長見解」は,事務局の乱暴な提案になんの抵抗も示すことなく,むしろ,それを追認するものであり,我々教員の期待を真っ向から裏切っています.選挙前の持論であった「誠実」,「公正」とは何であるか,「多くの人の意見を聞き,学内の叡知を結集する」とはどういうことだったのか,ぜひとも,原点に戻って考え直して欲しいと思います.
「学長見解」批判 (なお,学長見解はこの文書の最後に収録してあります.)
1.「重大な支障」とは何に対する支障なのか.「重大な支障がある」と立証されたと誰が判断するのか.もともと「学部で立証して事務局へ提出する」となっていたのが,17日の評議会の議論で削除されたという.しかし,削除されても意味が変わったわけではなく,設置者権限で事務局が判断するのだという.これは「大学の自治・学問の自由」の放棄以外の何物でもない.どの専門の教員ポストが必要かは,主として全体のカリキュラムによって規定されるもので,教員が判断することであり,それは学問に携わる者の責任でもある.研究教育の専門家でもなく,大学行政の専門家でさえない一介の官僚が,どうしてこのようなことを判断できるのか.設置者としての権限は,大学にどのような学部や研究所を持つか,大学に支出できる予算はどれだけか,というような大枠に関するものであり,ひとつひとつのポストに対しては学問の自由の観点から設置者権限は及ばない.これが教授会自治の内容である.
2.後任補充を認める基準は何か.もともと,各ポストは大学の標榜する学部学科や教養教育に合致するものが用意されている.大学自身の判断によってなされるカリキュラムの変更などがあった場合のみ,ポストの専門分野などが変更可能なのであり,それ以前に凍結するというのは,学生,ひいては市民に対して,これまで標榜していた大学での教育研究を十分に行わないという意味で重大な約束違反である.
3.欠員不補充が,大学改革の決意や努力を外部に知らしめることになるとは考えられない.「その不補充のポストはどのように使う計画ですか?」とひとこと質問されたとき,「それは何も決まっていません.これから議論します.」ということで,大学改革の決意が伝わるであろうか.いま,まず,必要とされるのは,「人事凍結」などではなく,真の大学改革とは何か,その理念・方向性について,全学のコンセンサスをつくることである.
4.「欠員不補充」と「定員削減問題」とは結びつけないと学長が表明しても,それはほとんど意味を持たない.市の財政状況がさらに悪化した場合,不補充だったポストが削減の対象とされるのは必至である.それにより,現状でも不足している教授ポストはさらに不足する.
5.大学改革とは,そもそも何を意味するのか.もしも,それが教員の専門構成の変化を意味するものであるとしたら,それは学部改組,学科改組などである筈であるが,そのような計画は看護短大の4年制化以外全学的に承認されたものはない.
今,求められている大学改革とは何か,学長が言うように,教育を重視しつつ,研究の効率をあげ,成果をあげる体制を造ることではないのか.
以上のような観点から,「教員の欠員補充人事凍結に関する学長見解」のすみやかな撤回を求めます.
なお,この要求に賛同される方は,下記 Email までご連絡をお願い致します.
賛同者名を逐次発表したいと思います.
Email:ichiraku@yokohama-cu.ac.jp(一楽)
教員の欠員補充人事凍結に関する学長見解
1.背景認識
新市長の下で、市立大学のあり方を検討する懇談会が設置され、本年度末には結論が示される過程で、市大の改革の状況について報告が求められ、また、2005年には法人化の段階に入ることも予測される。
このような本学を巡る情勢の変化をふまえて、本学の取り組みとしては、将来構想委員会、大学戦略会議等で大学のビジョン、中期目標・中期計画を策定するだけでなく、各部局において具体的な改革を早急に進める必要がある。
2.人事凍結に対する考え方
(1)大学改革案策定後の教員配置に備えるため、また大学自身の改革の姿勢を外部に示すためにも、教員の欠員補充を1−2年間凍結し、全学的観点から各学部・大学院の具体的な改革の枠組みづくりを行う。
(2)人事凍結と定員削減問題は結びつけない。
(3)重大な支障が生ずると認められる場合には、凍結の対象としない。重大な支障が生ずるか否かは、各学部がこれを立証する。
(4)凍結の対象とされる科目の来年度の授業対応は、内部努力または非常勤講師によって行う。