教養セミナーF      読書感想文 

『ファストフードが世界を食い尽くす』 エリック・シュローサー著  草思社 

 

 

例えばマクドナルドのレジカウンターでハンバーガー等を注文するときにこれらの食べ物がどこからきているのか、どのように作られているのか考えることはあったでしょうか、おそらく殆どの人々がそういったことなど考えることなどなく食べ物を注文し食べているでしょう、かく言う私もそんなことを疑問に思ったこともありませんでした。しかし一冊の本を読み終えたとき、私はそれらのことを考えられずにはいられなくなってしまいました。本の名前は『ファストフードが世界を食い尽くす』、著者はエリック・シュローサーという麻薬の追跡記事などで数々の受賞経験を持つジャーナリストだ、この本が初めての著作にあたるそうだ。

私がこの本を手に取るきっかけはほんの些細なことで、たまたま教室で前に座っている学生が読んでいて、ただ単にその誇張とも思えるようなタイトルに興味を惹かれた、ただそれだけのことでした。実際手に取った時、日頃、読んだとしてもせいぜい小説の文庫本サイズであるような私にとって、この本はとても分厚く感じられ、また、今まで評論をよむことなど殆どなかったので読みきれるかどうか不安でした。しかし、いざページを開くとどういうわけか1ページ目からペンタゴンの最高機密空軍基地の話から始まっていて、「ファストフードの本のはずなのにどうして」と疑問に思えました、しかしそれも最終的にはファストフードの話へと気づくとつながっていました、それも著者の緻密な取材と筆力の賜物だと素直に感心しました。

この本の内容は背表紙の書評がとてもよく表していると思います、「本書に浮ついた表面だけの批判などない。ファストフードのもたらした産業構造がいかにいびつなものであるかを見事に浮かび上がらせる()食をテーマにするだけの書でなく自由市場主義への過度の信奉を批判するすぐれたノンフィクションである」本を読み終えてこの書評を見たとき全くその通りだと思いました。

 この本は11章からなりたっています、第1章〜第4章まではファストフードの創世記からフランチャイズ方式を採り入れ成長していく様子が描かれていますが、まだタイトルに見られるような危機を示唆するような表現はあまり見受けられず、寧ろケンタッキーのカーネルサンダーやマクドナルドのロナルド・マクドナルドの誕生秘話等、ディズニーとマクドナルドが意外にも多くの共通項を持つこと(例えば社員教育のための独自の大学を持っていること)は初耳なことが多く純粋に驚き楽しむことができました。しかし、第5章から第11章では食肉処理場や学校、牧場、ファストフード店の店舗等の様々な現場殻の実況中継胃なる。そこに描かれていたのはは時には目を背けたくなるような現実でした、

効率の追求と食肉処理場の劣悪な労働環境が原因の負傷や疾病の記録を利益の為に改竄したり、非衛生的な環境がO-157などによる食肉汚染を招いているのに、環境の改善よりも汚染という事実をなんとかしてひた隠しにしようとしたり、賃金などのコストを抑えるため移民や字の読めない人々を採用したり、最低賃金の引き上げを招く労働組合の結成を阻止するためには社員を嘘発見器で調べたりと、一つずつ挙げていったらキリがないほどの悪行が書かれてありました。近年、日本でも狂牛病がクローズアップされ、雪印などによる牛肉に関する不祥事が頻繁にメディアで取り上げられていることが頭をよぎり本の舞台はアメリカだけれども、ここ日本でもファストフード業界にはどんな肉がつかわれているか不安に思っています。また私自身、一番驚いたのはアメリカにおけるファストフード店における強盗などの犯行が過去にその店で働いていたか、現在働いている人によることのが多いということでした。自分の職場や職業にプライドを持つことができないような雇用体制などがまねいた店員の無力さが原因なんだと思い複雑な気分になりました。読み終えたときファストフード業界の裏を見た気がして、今までのようにハンバーガーの値下げに喜べないし、それどころかもうファストフードは口にもしたくないと思ったほどです

しかし、著者はファストフード業界の暗部を暴き出すだけでなく、この絶望的な状況から抜け出すための対策を記していました。消費者である我々の持つ本当の力はまだ発揮されていないと、効果的なボイコット、つまり購買拒否を通してファストフード業界のお偉方に有機牛肉の使用を訴えることを勧めている。購買拒否をすることは簡単だ、しかし買わないことは、容易いが訴えることは一人ではできない。少しでも多くの人がこういった本を読むなり、今のおファストフード業界の現状を知るようになればいいと思いました

 

 

授業の感想

 

今まで本を読む機会がなく、読もうと思っていてもなかなか行動につながらなかった自分にとって、この教養セミナーはとてもよい機会になりました。またディベートを通して人前で意見を述べること人の意見に触れることはとてもいい経験になったと思います。読書の習慣がついたことがなによりの収穫だと思います。これからもいろいろな本読みたいと思っています。