「横浜市立大学“部外秘資料”ホームページ掲載問題,全学委員会で検討を学長が指示」

―総合理学研究科長の発言から判明―

 

2003年2月6日

総合理学研究科 佐藤真彦

 

本日(2003年2月6日)開催された総合理学研究科八景専属教員会議および総合理学研究科八景研究科委員会における質疑応答から,下記のことが判明した.

 

なお,この問題は,インターネットを利用した情報発信を制限すべきかどうかというIT社会の重要問題や内部告発の正当性と公務員の守秘義務の関係など,民主主義社会の根幹をなす言論の自由,表現の自由や市民の知る権利に関連した多くの重要問題を含んでいる.新たに発足する全学委員会では,横浜市立大学の学内だけでなく,事態の進展によっては日本や世界が注目するような重要問題になり得ることをよく認識し,委員名の公表や途中経過についての情報公開等も考慮に入れた公正かつ透明な議論を希望する.

 

経過の要約:

(1)ホームページ(http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/)掲載(2003-1-28)の“部外秘資料1,2”を削除するように,総合理学研究科長として要求(2003-1-29)したところ,信念に基づいた言論活動の一環であるとして拒否された(2003-1-29).

(2)総合理学研究科長単独では対処できないので全学的な問題として検討してもらうべく,全学の学部長等で構成される部局長会議で報告した(2003-2-5).

(3)その結果,本問題を含めて,今後このような問題が生じたらどうするか,また,生じないようにするにはどうするかを検討する全学的な委員会を立ち上げることを学長が指示した(2003-2-5).

 

この間,総合理学研究科長(榊原徹氏)はサーバーの管理責任者と接触して掲載時点を調査すると共に,アクセス不能にできるかどうか相談をもちかけたが,技術的には可能であるが,削除する際の手続きが定められていない現状では,各教員の良識に委ねるしかなく,アクセスの制限はできないと拒否された.

 

また,総合理学研究科の主任・副主任や法律の専門家とも相談した結果,道義的には問題だが言論の自由に関連したデリケートな問題であるので,削除させること等については慎重に扱うように言われた.しかし,今後,こういった問題をどのように扱うのか大学全体で議論すべきであると考え,(主任・副主任の同意を得て)部局長会議で報告した.

 

なお,部局長会議では,はじめに,「部外秘資料がホームページに載った“事件”にたいして,(監督不行き届きということで)研究科長としてお詫びします」と謝罪した.

 

また,研究科長は,部外秘と指定された情報を,公共財としての大学サーバーから発信することの問題性を重視し,同様の情報を民間サーバーから発信しても(言論の自由の観点から)問題がないと認識していることを繰り返し強調した.

 

いっぽう,事務局は,地方公務員法の守秘義務というものがあることを指摘した.

 

結局,法律の専門家を含めた全学委員会を新たに立ち上げて検討するように,学長(小川恵一氏)が指示した.

 

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以上が,本日(2003年2月6日)開催された,総合理学研究科八景専属教員会議および総合理学研究科八景研究科委員会での報告とそれに続く質疑応答から判明した研究科長の発言の概要である.

 

なお,教員からは,表現の自由を抑圧することになるので削除するようにとの要求はおかしいという意見,大学においては情報管理を厳しくする方向は好ましくないという意見,部外秘資料の内容自体に問題があるという意見,新聞記者にたいしてオフレコですよと言ったのに公表したのと同じケースであるという意見,したがって(事務局の信頼を失うことにより)今後重要な情報が回ってこなくなることが非常に心配であるという意見,組織としての規範というものがあるはずであるという意見,等が述べられた.

 

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このような事態を,世間では“圧力”と呼ぶはずである.

 

ここでは,次の2点に限ってコメントすることとする.

(1)研究科長の,サーバー管理責任者への接触の仕方にも疑問があるが,このような重要問題にたいして,まず,総合理学研究科における民主的かつ公然たる議論を経ることなく,自らに賛同してくれる少数の教員とのみ相談し,同意を確認した上で直ちに,全学的機関である部局長会議に報告し,学長の支持のもとに全学委員会を立ち上げるというやり方は,民主的な大学改革の方向の対極にあるばかりでなく,教授会(研究科委員会)を基礎とした大学の自治を自ら放棄する行為にほかならないという点で,大いに問題がある.

 

(2)インターネットを利用した情報発信が,マスコミ等の従来のメディアを利用した情報発信に代わって一般市民にとっても利用可能な新しい手段となり得るものであり,今後の民主主義社会の健全な発展に資する可能性を秘めた,したがって,大切に守り育てていくべきものであるとの認識を,横浜市大首脳部が持っていないように見えることにたいして驚きを禁じ得ない.