朝日新聞社広報部殿

 

貴紙200352日付け記事「市、年度内に市大改革」は「多額の累積負債を抱える横浜市立大学について、市は今年度中に『大学改革中期プラン』をまとめる方針を決めた」と報じております。しかし、このような表現では、横浜市立大学が赤字を抱え込んでいると誤解されてしまいます。その実態は正確には横浜市がおもに大学病院建設や医療関連設備の整備のために市債を発行した残高が1140億円となっていることをさしています。病院や関連諸施設は横浜市民の貴重な資産となっているものです。したがって、この資産の存在を考慮するならば、横浜市立大学が赤字を抱え込んでいるかのような誤解を与える表現は慎重に回避されるべき性格のものです。

  また、記事は「『あり方懇談会』の検討結果」として「一般会計から毎年約240億円を繰り入れている」と報じていますが、教育が営利的な営みではないことにわずかでも想到するならばこのような安易な表現は避けられたものと思います。大学運営における「設置者負担主義」が法律上明記され(学校教育法第5条)、すべての国公立大学で国や地方公共団体の繰入金が計上されていることは言うまでもありません。

去る227日、横浜市長の諮問機関「市大の今後のあり方懇談会」が、市大が1140億円の累積負債を抱えているので、廃校をも選択肢のひとつとして残しつつ、事実上の縮小改編を求める答申を出しております。当事者を排除して学外者のみで構成された「あり方懇」がその見解を大学に強要することは、「教育は不当な支配に服することなく」と定めた、教育基本法第10条に抵触する恐れがあります。しかも、「あり方懇」が市大自体が作り出した高額の赤字という誤った認識を前提として論じていることは極めて操作的であり、重大な疑義を感じます。

横浜市立大学をめぐるこうした状況に鑑み、今回の上記報道は、世論形成において甚大な否定的影響を与えるものです。上記報道は、社会の公器との認識に立って、関係各方面への事前調査が行われれば回避しえた性格のものです。以上の申し入れに関して、横浜市立大学教員組合まで文書でご回答ください。

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                       横浜市立大学教員組合