新・横浜総合大学構想

 

l              20世紀までの大学は、学問の方法(discipline)ごとに編成された「学部」を基礎にして発展してきた。

l              21世紀に必要な大学とは、既成の学部に加えて、学際的方法(inter-disciplinary)を合わせてもつ総合大学でなければならない。

l              学部の基礎(disciplineに基づく基礎教育)なくして、総合(inter-disciplinary)はない。

 

 

いまこそ横浜に真の総合大学を創造しよう。

国大及び県立大との連繋・統合によって大きな「新・総合大学」を!!

 

 現在、横浜市・市立大学では、横浜市立大学を「大胆に生まれ変われ」させるとして、大学改革案を策定中です。これは、市長の私的諮問機関「市立大学の在り方懇談会」の答申を「踏まえて」進められています。この答申は財政的に「市大が市民の負担になっている」として「研究より教育に重点を」とか「既存3学部をプラクティカル・リベラルアーツに」とか「市からの大学運営費への繰り入れを極端に減らす」とか「学費を値上げする」ことなどを謳っています。

 在り方懇の答申では、市民の求める大学はどんな大学であるのか、市民の期待はなんであるのかについての十分な検討がなされておらず、「答申を踏まえて」改革案を作るのは、とても危険です。

 大学主催で7月20日に開かれたシンポジウムでは、市長は「改革はお金の問題ではない」と明言し、答申の問題意識を否定しました。同じシンポジウムで学長は「10年は持つ改革案」を作ると言いましたが、10年とはあまりに短かすぎます。

 

 教育は百年の大計といわれます。わが国のノーベル賞学者のほとんどが百年以上の歴史を持つ大学から輩出されたという事実がこれを裏づけています。中国にも「十年樹木、百年樹人」という成句があります。木の育成に十年、人の育成に百年かかるという意味です。 私たちは、市大改革は、100年を見据えたものであるべきであると考えます。また、350万市民の期待に答える大学の姿を明確にし、た上で、改革案を作成する必要があると考えます。

 これからの100年に渡って、市民が必要とするのは「新・横浜総合大学」です。市民の多様な要求や産業界の最新の要求に応えるためには、大学の本質である「研究」の充実、それも各学問分野をそろえた最新の研究をもとに、市民に開かれた大学、「新・総合大学」こそが必要です。最新の学問研究がもとにあってこそ、時代時代に出現する新たな市民のニーズに応えることができるのです。そのよい例が「環境ホルモン」問題でした。基礎的な生物学研究の蓄積があってこそ最新の市民の問題に対応することができたのです。また、各専門分野での研究が充実してこそ、境界領域の研究や産学連繋などが意味を持つことも言うまでもないでしょう。

 

 もちろん、市財政が厳しいこの時期に市立大学を大きな総合大学に拡張することは困難です。市大と国大、そして県立大との緊密な連繋・統合によって「大きな総合大学」としての役割を果たすことができます。将来はこれらをひとつの連合大学とすることも視野にいれて、大学改革案を作成することが必要です。統合することによるスケールメリットや合理化は、今後の厳しい競争に有利な条件ともなります。

 

 市大と国大は重複する分野は少なく、国大に工学部、経済学部、教育人間科学部、市大に医学部、商学部、理学部、国際文化学部、看護短期大学部があり、また、それらに外語短大を加えることによって、大きな総合大学が実現することが一見して分ります。さらに、真に市民の市立大学とするために、「市民科学センター」の新設を提唱します。環境ホルモンのみならず、化学物質や電磁波過敏症などについて、市民の立場から研究したり、啓蒙活動を行ったりする拠点となるものです。

 

 このような「新・横浜総合大学」に向けての改革案をつくることが、350万市民、800万県民の期待に応え、競争力ある大学を作り出すために、もっとも近い道であると考えます。統合しても不足する分野、例えば、法学、薬学などについては、将来、これらに関する学部や学科を設置することが望まれます。また、社会の側から必要とされる情報科学、公共政策や市民文化に関する学科を設置することなども考えられます。もちろん、これらは一例に過ぎません。具体的な充実策については、十分な時間をかけて関係者で検討を行っていくべきものと考えます。

 

 以上のような理由から、私たちは現在進められている大学改革案作りの方向を転換し、「新・横浜総合大学」を目標とする観点から改革案作りをするよう求めるものです。

 

平成15年8月11日

 

「新・横浜総合大学を推進する会」

世話人:横浜市立大学理学部 一楽重雄

連絡先(email):shichiraku@aol.com