2003.8.15
「新総合大学構想によせて」
横浜市民・関東学院大学教授・久保 新一
以下の提案は7月26日(土)に開催された「市民の会」主催の「OB・名誉教授との懇談会」における発言を追加・修正したものです。
I 市大(or独立大学法人化)問題の基礎視角
1.教養教育の転換
@ 近代(工業化)社会の終焉とポスト近代(情報化・R&D化)社会への転換
A 近代的人間類型(ロビンソン・クルーソー型、ウェーバー「プロテスタント」型)
→ ポスト近代的人間類型(ホビイスト型、PC・携帯で個人が直接世界とつながって生きる時代の自立した個)への転換
* 一般教養の体系は、在来の(大学)における@の養成(独立自営農型)を目的としたものから、Aの育成(独立自営ベンチャー型)を目的としたものへの編成替え、を要請されている。
2.専門研究・教育の転換
(1)経済社会基盤の転換
工業化=国民経済編成 → 情報化・R&D化=グローバル経済編成
(古典力学・機械の体系) (20世紀物理科学(量子力学・生命科学)の体系)
@ 環境面・雇用面の制約
A 生命科学の発展(トップダウン技術 → ボトムアップ技術への転換)
ナノテクノロジーへの到達とナノテクノロジーからの出発
(2)経済社会システムの転換
「広域経済圏」(資源・工業製品)
国民経済体系<
地域自立循環型社会(基本的生活手段、衣食住自給・再生)
・ 分散・自給・再生型エネルギー源の確立前提
* 経済社会の基本単位:国民経済 → 地域経済(国民経済、広域経済圏、グローバル経済による補完)へ転換
* 従来の国民経済学体系に代わる地域経済学体系、グローバル経済学体系、広域経済学体系の体系化が要請される。(例、コミュニティ経済学科、コミュニティ経営学科等)
II 新大学構想
経済・社会構造、主体の転換に合わせて新大学を構想する。
1.教養教育
独立自営ベンチャー型(企業、自治体、NGO等を構想立案し、経営する能力を持つ)個の育成
英語の他に、東アジア近隣諸国・地域の言語(ハングル、中国語、ベトナム語等)いずれか1つを身につけさせる(市民であると同時に日本人、アジア人、地球市民でもあることの自覚)
2.専門研究・教育
(1)自然科学・医学・工学
生命科学を中心とする21世紀科学の研究と応用(人間の生活環境を変えた19世紀科学・技術の時代から人間・モノそれ自体を変える科学・技術の時代への移行。高度な倫理と思想の必要)
(2)社会・人文科学
社会編成の転換に伴う、コミュニティ、広域経済圏、グローバル社会の研究と応用(商学部→地域経済、国際文化→広域経済圏・グローバル経済・文化。コミュニティ、自治体、NGOの担い手、東アジア広域経済圏の担い手を育成)
3.大学の形態
(1)地域総合大学
新市大を核に横国大他市内の大学をネットワークで結び、それぞれの大学は自主性を持ちつつそれを構成するカレッジとし、広く門戸をアジアに開く。
(2)学部4年を基本とし、その上に社会人リカレント1年、学部卒専門教育2年の大学院修士課程、3年の博士課程を置く。学部3年からの飛び級も認める。大学院は単位性とし、仕事をしながら履修出来るようにする。
(3)学生には1年又は半年の国内外での実習・体験を義務付ける。教員も10年に1回、関連又は新しい現場を体験し自ら再教育する。
(4)学部・学科の壁、大学間の壁を低くし、移動を自由化する。4−5年間で二つの専門分野を習得できるようにする(主専攻、副専攻制度の導入)。