第2回横浜市大改革推進本部会議
平成15年8月21日午前10時から11時半過ぎまで
市庁舎2階応接室にて
出席者
改革推進本部:前田正子副市長、金田孝之都市経営局長、大谷幸二郎総務局長、深川邦昭財政局長、渡辺興三衛生局長、片岡良二経済局長、橘川和夫金沢区長、伯井美徳教育庁、高井禄郎市大事務局長、アドバイザーとして橋爪大三郎東工大教授。
市大:小川学長、奥田副学長、柴田副学長、高井事務局長、中上総務部長、葛西総務課長、小泉人事係長。
副市長の挨拶
横浜市は、市大の設置者として大学の改革を推進するため、大学改革本部を5月に設置した。市立大学改革策定プランを学長を長としてプロジェクトRが策定された。市大では熱心に改革プランを討議して、議論を重ねてきたと思う。7月には、国立大学法人法と地方独立行政法人法が可決された。国立大学は、平成16年より独立行政法人に移行することとなった。報道によると、東京都においても都立の4つの大学を統合し、新しい大学は、地方独立行政法人となると共に、学部構成などを見直しており、横浜と東京で、良い学生を取り合うこととなるだろう。今日はプロジェクトRの委員に来てもらっている、学内では更に議論を重ね、市大改革案をとりまとめてもらい、10月に市長に報告することになっている。推進本部のアドバイザーとして橋爪氏に出席してもらい専門的見地より意見を頂きたい。横浜市大学改革推進本部では、市大が、意義ある大学となる様支援調整して行きたい。
(学長による「大学改革案の大枠の整理について」の説明)
質疑
金沢区長:盛りだくさんのプランで、意気込みへの敬意を表する。ただ、改革の目玉は何なのか?金沢区では大学の先生とも交流があり地域貢献してもらっているが、横浜の北部、青葉区都筑区の市民の人は、横浜市大って何だろうと言う感じだ。市全体への地域貢献もあっても良いのではないか。その点はどうですか。
学長:改革の目玉は①プラクティカルなリベラルアーツ、実践的な教養大学として教育に重点を置く。②従来の3学部を1学部に統合して、国際総合科学部とする。その中に3つの学府をおく。学府間の壁を低くし、リベラルアーツを具現できる柔軟な体制にしていく。③教育組織と教員の所属組織を分けて、教育組織から、カリキュラムを実行するうえで最も適した人を研究院から派遣してもらうことを要請してカリキュラムを構成する。④教員の人事制度は、公募制を原則とする。任期制や年報制を導入しやすい形で導入する。⑤学長と理事長を分離し、それぞれ専門性を発揮し、より高度な機能をそれぞれが発揮して、両者の連携を密にする。横浜市の北部については、物理的に実行できないのが実態だが、アーバンカレッジで、生涯学習を行い、区と連携して、大学の知的資源を提供し市民に最新の制度を伝えることも行っている。北部の大学と連携していくことも今後の課題だ。健康医療フォーラムは大勢の市民に好評で更に充実させていきたい。
教育長:教育研究組織を分離することのメリットを説明して欲しい。プラクティカルなリベラルアーツという目標はよいが。
学長:研究院と学府に分ける、学府は、主として教育組織、学生を中心にして、大学の機能を集中していく。教員は、研究をすることも重要で、研究の場として、所属の場として結びつけたものを研究院とする。教育の組織を教員に貼り付けてしまうとカリキュラムを組んでも大学の中の知的資源の活用が難しくなる。縦割りではなく分けることでいつもベストの人材を派遣できる。教育のプログラムを組むのに割合自由に組める。カリキュラムの責任者を貼り付けてきちっと、柔軟にやれ、体系化もできる。研究院については、これから議論を詰めていかなければ行けないが、今150人の教員が八景キャンパスにいるが、150人が集まって能率的な議論をすることは難しいので今後検討する。
教育長:教員の評価、自己点検と外部評価も今後検討して欲しい。改革を進めてゆく中で、出来るだけ早めに、受験生、高校の教員、教育関係者、保護者に知らしめていくことも重要。
学長:最後の点については、受験生などに不安感を与えないように充分時間をとるように今後していきたい。はじめの、評価制度はとても重要で、学生の授業評価、年俸制・任期制のための教員の活動についての評価をフェアーにする。フェアーにすることは待遇に結びつくので大変重要なこと。今後検討。評価制度は、やらないよりはやった方がよいと思う。様々な意見を取り入れながら進めていきたい。独立法人化の法律上で、義務付けられている側面もある。認証機関によって教育研究の評価を受けなければならないので、地域貢献、地域計画に基づいて大学の活動を文部科学省の機関で評価の観点からチェックしていく仕組みを組み込みたい。
経済局長:市内産業の9割以上が中小企業であるが、中小企業の点はどう考えているか?。産学連携についてはどんなことを考えているのか?
学長:中小企業が9割で難しい問題を抱えていることを認識している。再活性化していくことも大きな課題だ。医療、バイオ関係は、21世紀大きな産業になることは、周知のとおりだ。大学として知的資源を提供していきたい。プラクティカルリベラルアーツは境界をなくすと言うことで、専門バカをなくすことが大きなポイントとなっている。総合経営学府を中心として、中小企業に対しても何らかのカリキュラムが組めると良いと思っている。今後の検討課題で、中心的なものだと考えている。産学連携については重要さを意識して、少しずつ成果は上がっていると思う。先ず、組織的な取り組みとしては、石川島播磨重工と市内の企業へ大学との共同研究を公募して、産学連携の様々な試みをやっている。大学が働きかけて研究奨励金などを使っている。商工会議所が音頭をとって市内の9大学とネットワークを作って、産学連携インターンシップをすすめようと、主体的に参加したいと思う。
衛生局長:大企業と大学の産学連携はよくあるが、中小企業とはあまりない。具体的にどのように働きかけていくのか。公募についてはペーパーだけではどういう先生と連携すればいいのか分からない。大学のホームページだけでは、どの先生に連絡を取ればいいのか分からない。具体的に企業と先生をつなぐ組織的な役割を考えて欲しい。
学長:現在、研究推進課とも話をして、こちらから中小企業に出向いて、どんな問題があるのか聞いて、リエゾン、コーディネーション、そういう役割をしようとし始めているところだ。大企業と両方大事だと思っている。
総務局長:先回のありかた懇の答申では教員は、継続ではなく、再就職の形となっているが、プロジェクトRではどのように話されているのか。
学長:独法化は有効な手段だが、法人化への取り組み方は具体的なことは、これからの課題だ。公務員という制約もあるがそういう制約から自由になって、どうしたらいいか検討する。独法化と併せて有効な、といっても荒療治をすれば良いというものでもない。教員は、解雇ではなく再就職の形をとる。基本的にはそういう厳しさを持って臨みたい。既に独立法人化している機関を参考にしつつ進めたい。今は事例を研究している。
総務局長:スムーズな移行が大切である。大学としては独法化の目標としていつ頃を目指しているのか。
学長:公立大学は、国立大学の1年あとに構えてきているのが、公立大学の方が早く法案が可決した。しかし16年4月からと言うのは不可能である。国立大学も書類の準備などが出来ていないであたふたしていると聞いている。まして公立大学では国立大学と並行してと言うのは無理で、17年4月に独立法人化する可能性が一番高いと考えている。
財政局長:財政局としては、基準としては、その辺について、どこまで検討されているのか?
学長:検討と言っても、ありかた懇で、3年後には運営交付金を120億からその半分に、5年後には均衡にと、ある種の基準が示されているが、今シミュレーションをしていて、学生数を千人増やさなければならないとか、教員数を何割もカットしなければならないとか,大学の機能が低下してしまう可能性が高く、学府制を導入するとなると、医学部、理工学府はどうしてもお金のいるセクションで、最低限いくらくらい交付金をもらわないと市民の信頼に応えることが出来ないと言う線は出していきたいので協力して欲しい。
都市計画局長:教育改革としては、キャリア開発の他には何か考えているのか。
学長:今回の改革の主要な点はむしろ学生に対する教育改革である。教育を中心とした組織改革として教育と研究を分けたのが大きな特徴だ。
事務局長:横浜市にとって意義のある大学を目指して、大学改革を成功させたいと思っている。具体的に学内で改革のプランを検討していくことになるが、改革をスムーズに進めて行くには関係局との連携が大切で、協力を仰がなければうまく行かないと思う。法人化についてもまだ結論がでたわけではない。仮に法人化した場合、学内だけの議論では進まない。評価委員会の設置なども必要だ。法人化にかかわらず、学部の再編及び新しいシステムの導入などは色々な分野で詳細な準備が必要である。大学でも異論のない様に準備したいので協力して欲しい。
橋爪:一番大事なことを一つ尋ねたい。大枠で必要な改革が提案されていた。研究院の設置、組織と教育の分離、教育に重点を当て学府を作って色々なプログラムを構成していく点は評価する。経営組織でも、学長と理事長を置いて連携していくことも良いと思う。学生や市民の方から見ると、どこが目玉なのかが分かりにくい。説明を聞かずに資料を見ると、学部を学府という看板に掛け替えてだけではないか、どこでリベラルアーツをやっているのか分からない。リベラルアーツを全面に出すような改革案が必要。国際教養学部が、パンキョウといわれた人気のない教養学部に見えてきてしまう。リベラルアーツ化をもっと鮮明に出すような工夫が必要だ。
学長:学生の自覚を促すという点で、工夫について、充分議論が煮詰まっていない。一年次にITや、実践的なコミュニケーションの英語教育、基礎的な教養を身につけさせて、自分のむいている科を選択できるように出来る形をとっているつもりだ。理工から医学部に行けるような自由度を作ることも考えている。今後は橋爪氏の意向に添った形のものを作りたい。
橋爪:1年から4年まで全体がリベラルアーツ化したものを作ってはどうか。学生に一番大切なものは学府と言うよりもコースではないか。将来コアになる専門分野を2つ収得出来るようにし、差異化を図って市大の特徴にしてはどうか。入試はどうなるのか。理工に進む人が数学や物理をやらないで良いのか。理工に進む人には数学や物理を課すのではリベラルアーツではなくなる。
学長:コースについても検討している。学府はみなダブルメジャーがとれるようなコースとして構成されている。3学府それぞれの特徴を壊してしまうと、学問の意味がなくなる。学問の特徴を最大限に発揮しつつリベラルアーツの良いところを取り入れることの出来るシステムとして、考えている。
橋爪:従来の市大に比べて、どこが経費が節減されているか分かりにくい。無駄を削ぎ落としたと市民に説明できるのか?今までよりも経費は節減できるのか。リベラルアーツカレッジというのは、お金のかかるところを削ぎ落としてゆくもの。研究院の予算は精選するのか?
学長:スクラップ、スクラップ、アンド、ビルドといって、2つスクラップしてひとつビルドするつもり。ただ、経費を削減してやせ細っては意味がなく、大学の機能はきちんと果たさなければいけない。機能させつつ削減できるところを探っていく。