http://ac-net.org/kd/03/903.html
前号:http://ac-net.org/kd/03/902.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
国立大学関係者各位
Cc:
公立私立大学関係者各位

国立大学法人法について、7月25日に櫻井充参議院議員が提出し
た質問主意書に対する9月2日付の小泉首相の答弁書を転載します。
櫻井議員のご好意に感謝致します。

なお、質問主意書は櫻井議員サイトに記載されており、答弁書も記
載予定とのことです。また、不十分な答弁に対する再質問を含め今
後も国立大学法人法について継続的に質問主意書を提出されるそう
です。

                      編集人 辻下

━[kd 03-09-03
目次]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

[1]
櫻井充議員の質問主意書と小泉純一郎首相の答弁書

 一 今後の国立大学の入学金・授業料について 

 二 国立大学に対する標準運営費交付金について

 三 教育公務員特例法の非適用について

 四 国立大学法人の業務について

 
五 文部科学省による行政指導の強化への歯止めについて

 
六 文部科学省設置法は、国立大学法人法成立前に中期目標の作成
     
を文部科学省が指示することの根拠となり得たのか

 
七 文部科学省令の制御について

 
八 国立大学法人職員の非公務員化について

 
九 国立大学法人化は「効率化・重点化」により、日本の高等教育
 
  の規模を縮小させる意図が明確であるが、小泉総理が主張して
 
  いる、教育なによりも重視する「米百俵の精神」に反しないか。

 
十 法人化後の国立大学における労働安全衛生法適用問題について

 
十一 国立大学での会計システムの準備作業への予算措置について

 
十二 法人化のための費用はどのように手当されるか

 
十三 中期目標を大臣が定めることについて

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

#(縦棒から始まる行が答弁書)

[1]
櫻井充議員質問主意書と小泉純一郎首相答弁書
http://www.uranus.dti.ne.jp/~sakurai/q-03.htm#030725

「本年七月九日、多くの反対の声を押し切って国立大学法人法が国会で成立し
た。国立大学法人法は、国立大学から学問の自由を奪うとともに、人材育成と
いう観点で日本の将来に大きな損失をもたらすことになりかねない内容を持っ
ている。国会での審議は十分尽くされたとは言い難く、政府の答弁もあいまい
なものが多く、改めてここに政府の明白な見解を問うべく、国立大学について
質問を行う。


 | 内閣参質一五六第四八号
 |     平成十五年九月二日
 | 
 |                 内閣総理大臣 純一郎
 | 
 | 参議院議長     寛 之 殿
 | 
 | 参議院議員櫻井充君提出
 |   国立大学法人化に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



一 今後の国立大学の入学金・授業料について 

1 平成十五年六月九日の財務省財政制度等審議会財政制度分科会の歳出合理
化部会及び財政構造改革部会合同部会の議事録を見ると、「平成一六年度予算
編成の基本的考え方」について、田近栄治委員が「(国立大学に)経営責任が
ある以上は、授業料もしっかり取りなさい。ただ、しっかり取ったところが割
を食うようなことはないようにしなさい」と説明している。これは、国立大学
の授業料を上げても運営費交付金は減らさないようにせよ、という趣旨で述べ
たものか。もし、そうであるならば、授業料を上げても学生を確保できる人気
のある国立大学はこぞって授業料を上げることになるのではないか。

 | 参議院議員櫻井充君提出国立大学法人化に関する質問に対する答弁書
 | 
 | 一の1について
 | 
 |  財政制度等審議会財政制度分科会会の歳出合理化部会及び財政構
 | 造改革部会合同部会における田近栄治委員の発言は、国立大学法人
 | 法(平成十五年法律百十二号)第二条第一項に規定する国立大学法
 | 人(以下「国立大学法人」という。)が授業料収入など自己収入の
 | 確保に努力したが故にかえって当該国立大学法人に対する運営費交
 | 付金が減額されるべきでない旨を述べられたものと受け止めている。
 | 
 |  法人化後の国立大学の授業料に関し必要な事項については、同法
 | 第二十二条第四項の規定により、文部科学省令で定めることとされ
 | ており、各国立大学法人は、当該省令の規定に基づき授業料を定め
 | ることとなる。


2 受益者負担論によって国立大学の学部間の授業料差が設定された場合、日
本育英会も廃止された今となっては、学生の経済状態が志望する学問分野を左
右するおそれがあると考えられる。これは憲法第二十六条及び教育基本法第三
条に反したり、軽視することにならないのか。文部科学省国立大学評価委員会、
総務省政策評価・独立行政法人評価委員会等が監視を行った上で、マイナスの
評価を与えたり勧告を行うことで、そうした運営に歯止めをかけることは可能
か。

 | 一の2について
 | 
 | 法人化後の国立大学の授業料については、現在、国立大学の全学部
 | について同額の授業料としている取扱いをも踏まえ、文部科学省令
 | において、すべての国立大学に共通する標準的な授業料の額(以下
 | 「標準額」という。)を規定するとともに、例外的に標準額を超え
 | て設定することが可能な授業料の額の上限を規定し、各国立大学法
 | 人は当該省令の規定に基づき、その設置する国立大学の具体的な授
 | 業料の額を設定することとする方向で検討している。さらに、平成
 | 十六年四月に創設される独立行政法人日本学生支援機構による日本
 | 育英会から継承される学資の貸与事業等を通じて、教育の機会均等
 | が図られるよう努めてまいりたいと考えている。
 | 
 |  なお、国立大学法人評価委員会は、各国立大学法人の評価を行う
 | に当たり、文部科学省令で定めることとしている標準額を超える授
 | 業料の額が設定されている場合には、その趣旨等も勘案しつつ、授
 | 業料収入の状況も含め、当該国立大学法人の業務の実績について評
 | 価を行うことになるものと考える。また、政策評価・独立行政法人
 | 評価委員会は、国立大学法人法第三十五条において準用する独立行
 | 政法人通則法(平成十一年法律第百三号。以下「通則法」という。)
 | 第三十二条第五項及び第三十四条第三項の規定により、国立大学法
 | 人評価委員会が行った評価の結果について必要があると認めるとき
 | は、国立大学法人評価委員会に対し、意見を述べることができるこ
 | ととされている。ただし、国立大学法人法第三十五条において準用
 | する通則法第三十五条第三項の規定により、政策評価・独立行政法
 | 人評価委員会は、中期目標の期間の終了時において主要な事務及び
 | 事業の改廃に関し主務大臣に勧告できることとされているが、授業
 | 料の額自体の是非について勧告を行うようなことは、基本的には想
 | 定されないものと考えている。


3 同様に、現在学部と同一の授業料である大学院の授業料を、「受益者負担
の徹底」ということで学部以上に引き上げるのであれば、経済的理由により大
学院を退学する学生が増えることが懸念される。政府は大学院の授業料を今後
どのようにするつもりか。

 | 一の3について
 | 
 |   法人化後の国立大学の大学院研究料の授業料についても、一の
 | 2についてで述べた考え方と同様の考え方により、文部科学省令で
 | 定める方向で検討している。ただし、平成十六年四月から開設が予
 | 定されている法科大学院の授業料の取扱いについては、別途検討中
 | である。


二 国立大学に対する標準運営費交付金について

 本年四月十六日及び五月十四日の衆議院文部科学委員会では、「標準運営費
交付金と授業料により、教育の最低限の質を保証し、特定運営費交付金は、付
置研究所のような大学ごとで状況が違うものの運営に充当する」旨の答弁が政
府よりなされた。本年四月十八日に文部科学省から各国立大学事務局長あてに
「平成一六年度概算要求参考資料(基礎額等調)について」を発し、概算要求
のための資料提出を指示しているが、その中の「教職員数試算基準(案)」と
いう積算表では、教員数と学生数の比率について現在の四分の三程度を標準運
営費交付金積算の基準としており、特定運営費交付金なしには現在のレベルを
確保できないようになっている。このやり方では学生に対する教師の比率は大
学によっては現在より相当低くなることが避けられないが、政府は国立大学に
おける教育担当の教員数が減っても構わないと考えているのか。

 | ニについて
 | 
 |  平成十五年四月十八日付けの事務連絡「平成十六年度概算要求参
 | 考資料(基礎額等調)について」に添付されていた「平成十六年度
 | 国立大学法人教職員数試算基準(案)」における標準教員数は、国
 | 公私立大学を通じて適用される大学設置基準(昭和三十一年文部省
 | 令第二十八号)を基礎として設定したものであり、各国立大学法人
 | の教員数を標準教員数にまで削減すべきことを求めるものではない。
 | 
 |  また、国立大学法人に対する財源措置については、「中央省庁等
 | 改革の推進に関する方針」(平成十一年四月二十七日中央省庁等改
 | 革推進本部決定)において示された「独立行政法人に対する移行時
 | の予算措置に当たっては移行前に必要とされた公費投入額を十分に
 | 踏まえ、当該事務及び事業が確実に実施されるように、十分配慮す
 | るものとする」との方針の下に、平成十五年度末における各国立大
 | 学の教員数を踏まえ、標準運営費交付金及び特定運営費交付金によ
 | り必要な人件費は確実に措置していくこととしている。


三 教育公務員特例法の非適用について

1 教育公務員特例法第二十二条が、実質「国立」であるにもかかわらず国立
大学法人の教員に適用されないのはなぜか。教育公務員特例法を適用すること
が大学の自主性を阻害すると考えているのか。そうであれば、どの条項が大学
の自主性を阻害すると考えているのか。

 | 三の1について
 | 
 |   教育公務員特例法(昭和二十四年法律第一号)は、公務員であ
 | る国立又は公立の教員等について、国家公務員法(昭和二十二年法
 | 律第百二十号)の特例を定めたものであり、法人化に伴って公務員
 | ではなくなる国立大学の教員に対しては教育公務員特例法の規定の
 | 適用は無くなるものである。


国立大学法人の教員に教育公務員特例法が適用されないのであれば、労働
基準法や労働組合法が適用されることになる一方、「教育公務員特例法に相当
する内容は大学の規則で担保可能」という趣旨の答弁が国会でなされたが、法
的な整合性はとれるのか。教官任用に関する人事権を教授会が持つとなると、
教授は労働組合法第二条但し書き第一項で定められた役員若しくは管理職とみ
なされ、労働組合の構成員ではなくなり、労働者としての権利が必要以上に制
限されるおそれはないのか。

 | 三の2について                       
 | 
 | 法人化後の国立大学に対しては、労働基準法(昭和二十二年法律第
 | 四十九号)及び労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)が適
 | 用されることとなり、教員の人事に関する手続等については、各国
 | 立大学法人において当然にこれらの法律の規定に適合するように定
 | められるものと考えている。
 | 
 |  国立大学法人の教員に係る任命権については、国立大学法人法第
 | 三十五条において準用する通則法第二十六条の規定により、学長が
 | 有することとされている。また、教員人事に関する事項については、
 | 国立大学法人法第二十一条第三項第四号の規定により教育研究評議
 | 会の審議事項の一つとされている。御指摘の教授会については、学
 | 校教育法(昭和一十二年法律第二十六号)第五十九条第一項におい
 | て重要な事項を審議するとされていることを踏まえ、教授会の具体
 | 的な構成、役割等については各国立大宇法人が定めることとなる。
 | 仮に国立大学法人の判断により、教授会において教員の任用に関す
 | う事項が審議されることとなっても、その一事をもって当該教授会
 | の構成員たる教授が一律に労働組合法第二条ただし書第一号に規定
 | する監督的地位等にある者に該当し、同法上の労働組合の構成員と
 | なることができないということとなるものではなく、個々の具体的
 | な事情に応じて当該教授が同号に規定される監督的地位等にある者
 | に該当するか否かが判断されるべきものであると考えている。


四 国立大学法人の業務について

国立大学法人法第十一条第二項第四号によれば、学長は、役員会の議を経
て、法人が設置する国立大学の廃止を決定できることになるが、そのとおりか。
また、その決定はどのように扱われるのか。さらに、その決定後、当該国立大
学法人は存続するのか。

 | 四の1について
 | 
 |  国立大学法人法第十一条第二項は、学長は同項第四号に掲げる
 | 「当該国立大学、学部、学科その他の重要な組織の設置又は廃止に
 | 関する事項」について決定をしようとするときは、役員会の議を経
 | なければならないと規定しており、同項の規定に基づき、例えば学
 | 科の設置又は廃止が決定された場合には、基本的に当該決定に基づ
 | いて実際に学科が設置又は廃止されることになる。しかし、各国立
 | 大学そのものの設置根拠については国立大学法人法で定められてい
 | ることから、国立大学の再編・統合等の場合において、同項の規定
 | に基づいて当該国立大学を廃上することが決定されたとしても、当
 | 該決定をもって直ちに当該国立大学が廃止されるということとなる
 | ものではなく、当該決定により表明された大学の意向を十分に踏ま
 | えながら、当該大学の廃止を内容とする国立大学法人法の改正が行
 | われて初めて廃止されることになるものである。


国立大学法人の業務を規定する第二十二条第一項第三号によれば、大学で
はなく国立大学法人自身が外部からの委託を受けて教育研究活動を実施するこ
とが可能である旨規定している。第十一条第二項第四号も勘案すれば、国立大
学法人は国立大学を設置せずに研究教育活動を受託することに特化することも
可能になるのか。

 | 四の2について
 | 
 | 国立大学法人は国立大学法人法第二条第一項に規定されているとお
 | り、国立大学を設置することを目的として設立される法人であるこ
 | とから、同法第二十二条第一項第一号に掲げる「国立大学を設置し、
 | これを運営する」業務は必ず行うことが想定されており、国立大学
 | 法人が国立大学を設置しないということは制度上あり得ないもので
 | ある。


五 文部科学省による行政指導の強化への歯止めについて

文部科学省が国立大学法人制度によって可能となった強力な行政指導を通
し、大学が主体となって作成する中期目標の原案と中期計画に強力な介入をす
ることが予測されるが、それを内閣総理大臣は(内閣の長として)どう考える
か。

行政指導により以前と同様の画一的改革が進まないようにするために、ど
のような具体的な方策を考えているのか。

 | 五について
 | 
 | 国立大学の法人化は、国立大学を国家行政組織から独立した法人に
 | することで、自主性・自律性を一層高めるものであり、法人化後の
 | 国立大学には、自らの経営方針に基づき個性豊かな大学づくりを進
 | めていくことが期持されているものである。他方、我が国の高等教
 | 育及び学術研究の均衡ある発展を図るとともに、財源措置を国が責
 | 任をもって行う必要があることから、国立大学法人の中期目標は文
 | 部科学大臣が定めることとされているが、国立大学法人法第三十条
 | 第三項において、文部科学大臣が中期目標を定めようとするときは、
 | あらかじめ国立大学法人の意見を聴き、当該意見に配慮することが
 | 定められているほか、同法第三条において、同法の運用に当たって
 | は国立大学における教育研究の特性に常に配慮しなければならない
 | ことが規定され、法人化後の国立大学の自主性及び自律性に配慮し
 | た制度が取り入れられている。法人化後の国立大学に対する文部科
 | 学大臣の関与については、このような中期目標の策定や中期計画の
 | 認可等に限定されたものであることから、御指摘のように強力な行
 | 政指導が行われたり、行政指導による画一的改革が進められるなど
 | の事態にはならないものと考えている。


六 文部科学省設置法は、国立大学法人法成立前に中期目標の作成を文部科学
省が指示することの根拠となり得たのか。

 | 六について
 | 
 |  一般に、法律案の担当官庁において、当該法律案が成立し、施行
 | された後のことを想定して、例えば、これを円滑に執行するために
 | 行わなければならない準備作業の量が膨大で、かつ、時間的制約が
 | 巌しいようなときは、当該法律案の成立前であっても、必要な範囲
 | 内で準備作業を行うことは可能と考えられ、文部科学省設置法(平
 | 成十一年法律第九十六号)第四条第十五号において「大学及び高等
 | 専門学校における教育の振興に関する企画及び立案並びに援助及び
 | 助言に関すること」が文部科学省の所掌事務とされていることから、
 | 国立大学の法人化に向けて文部科学省が法施行後に策定すべき中期
 | 目標等に関する準備作業を各国立大学と共同しつつ行うことは問題
 | がないものと考えている。


七 文部科学省令の制御について

 総務省政策評価・独立行政法人評価委員会は、国立大学法人の会計基準・評
価委員会等に関する文部科学省令について検討し、勧告等を行う予定はあるか。

 | 七について
 | 
 |   政策評価・独立行政評価委員会は、国立大学法人法第三十五条
 | において準用する通則法第三十二条第五項、第三十四条第三項及び
 | 第三十五条第三項において、国立大学法人評価委員会の行った評価
 | の結果について、必要があると認められるときに国立大学法人評価
 | 委員会に対して意見を述べること、及び中期目標の期間の終了時に
 | おいて、主要な事務及び事業の改廃に関し、文部科学大臣に勧告す
 | ることができることとされている。              
 |                               
 |  したがって、政策評価・独立行政法人評価委員会が、国立大学法
 | 人の会計基準や評価委員会等に関する文部科学省令について検討し、
 | 勧告等を行うことは想定されていない。


八 国立大学法人職員の非公務員化について

1 現在の国立大学の教職員の意向を確認せずに公務員身分を奪うこととなる
制度変更を行う法的根拠は何か。

 | 八の1について 
 | 
 | 国立大学法人法附則第四条の規定により、国立大学法人の設立の際
 | 現に各国立大学の職員である者は、別に辞令が発せられない限り、
 | 国立大学法人設立の日において、当該国立大学法人の職員になるこ
 | ととされているが、これは、国立大学の設置形態の変更に伴い、個々
 | の職員の意向のいかんにかかわらず、国家公務員である国立大学の
 | 職員が非公務員である国立大学法人の職員に、法律上、身分が移行
 | する旨を定めるものであり、国家公務員法が対象としていない職員
 | の身分に係る変動について、当該規定により特別の定めをしている
 | ものである。これは、通則法第二条第一項に規定する特定独立行政
 | 法人以外の独立行政法人の設立の際に、国家公務員である国の職員
 | が非公務員である独立行政法人の職員になる場合と同様のものであ
 | る。


2 一般職の大学職員は、他の国家公務員職への転勤が可能であることが国会
での答弁で明らかにされたが、これをどのように周知するのか。全員に希望を
取るべきと考えるが、その予定はあるのか。また、配置転換を希望した職員が
不利に扱かわれないことをどのように保証するのか。

 | 八の2について
 | 
 |  国立大学法人法附則第四条に規定する辞令を発するか否かについ
 | ては、適材適所の観点から任命権者の判断によりなされるものであ
 | り、八の1についてで述べた同条の規定の趣旨を含め、法全体の趣
 | 旨について、引き続き国立大学の職員に周知してまいる所存である。
 | 
 |  また、各職員の人事上の希望聴取については例年行っているとこ
 | ろであり、今般、特別に全職員から希望を聴取する考えはない。
 | 
 |  なお、他の官職への配置転換の希望を職員が申し出た場合におい
 | ては、希望を申し出たことの故をもって当該職員が不利に扱われる
 | ことはない。


九 国立大学法人化は「効率化・重点化」により、日本の高等教育の規模を縮
小させる意図が明確であるが、小泉総理が主張している、教育をなによりも重
視する「米百俵の精神」に反しないか。

 | 九について
 | 
 | 国立大学の法人化は、国立大学の自主性・目律性を高めることによ
 | り、各大学が自らの経営方針に基づいて教育研究の活性化を図り、
 | 国立大学が我が国の高等教育及び学術研究の均衡ある発展をより一
 | 層しっかりと担っていくことができるようにするためのものであり、
 | 小泉内閣総理大臣が第百五十一国会における所信表明演説で述べた
 | 「米百俵の精神」に反するものではないと考えている。


十 法人化後の国立大学における労働安全衛生法適用問題について

1 国立大学は、法人化に伴い、労働安全衛生法が適用になるが、現状のまま
だと同法違反になるところが出てくる。国会審議ではついに明確な答弁がなさ
れなかったが、政府は、国立大学の正確な現状調査とその結果の公表及び必要
経費の手当の仕方について、どのような方針を立てているのか。

2 1に関連して、文部科学省は、来年四月までに準備が整わない場合は「研
究教育をストップ」してでも違法状態は起こさないようにする方針であると伝
えられているが、これは事実か。事実であるならば、教育研究活動に重大な支
障をもたらすことになるが、この場合、留年を余儀なくされる学生・院生など
の授業料の免除等の措置を講じる予定はあるのか。

 | 十の1及び2について  
 | 
 | 国立大学における安全衛生管理の状況についての調査結果及び改善
 | に必要な経費の措置等については、平成十五年五月二十八日に「国
 | 立大学等における安全衛生管理の改善対策について」として取りま
 | とめ、公表したところである。文部科学省としては、この改善対策
 | に基づき、平成十五年度内に安全衛生管埋の改善を図ることとして
 | いる。

3 本年五月十六日衆議院文部科学委員会において、「今でも人事院規則
(一〇四)に違反している」旨の遠山大臣の発言があったが、これについて
の現状調査を行わないのか。行わないのであればその理由を述べられたい。大
学には人事院規則に反し危険な場所が実際に多数あることは死亡事故の発生か
ら推測されるが、それを改善する資金がないほどの低レベルに大学予算を据え
置いてきた教育行政の責任はないのか。

 | 十の3について
 | 
 |  国立大学における安全衛生管理の状況については、平成十四年十
 | 月及び平成十五年五月に調査を行っており、今後も同年九月及び十
 | 二月並びに平成十六年三月に改善状況調査を行う予定である。
 | 
 |  また、国立大学の施設整備については、平成十三年四月に策定し
 | た「国立大学等施設緊急整備五か年計画」に基づき、着実に実施し
 | てきたところであるが、国立大学の安全衛生管理の取組状況を踏ま
 | え、各国立大学を指導するとともに、必要な支援を行い、平成十五
 | 年度内に各国立大学における安全衛生管理の改善が図られるよう取
 | り組むこととしている。


十一 国立大学での会計システムの準備作業への予算措置について

 国立大学法人法においては、会計システムを企業会計原則で行うことが決め
られているため、法成立前から各大学は企業会計システムの発注をさせられて
いた。国会の委員会の中では、「中期目標や概算要求などの準備作業を法成立
前から行政権限の範囲でできる」旨、遠山大臣・文部科学省が答弁していたが、
企業会計原則を適用する国立大学法人法第三十五条を認めるか否か決まっても
いない段階で企業会計システム構築への予算支出は、明らかに国会審議を軽視
するものであった。もしも、法案審議において「企業会計原則」の採用が不適
とされれば、支出された予算は違法な支出となったのではないか。


 | 十一について
 | 
 |   国立大学法人における企業会計原則を踏まえた新しい会計シス
 | テムの導入の準備のための予算は、平成十五年度予算として計上さ
 | れており、当該予算に係る会計システムの導入に関する契約等の行
 | 為は、あくまでも法律案が成立し施行された場合に、平成十六年度
 | から国立大学法人の業務が円滑に行われるよう、システム関発を遅
 | 滞なく進めるためのものであり、このことをもって違法な支出とな
 | り得たとの御指摘は当たらないものと考えている。


十二 法人化のための費用はどのように手当されるか

 法人への移行のための費用(労働安全衛生法対応、資産調査・登記、会計シ
ステム構築、監査法人費用等)及び移行後の費用(役員報酬、雇用保険料、損
害保険料、監査法人費用など)は、新たな追加的費用であるが、これらの費用
を運営費交付金で措置する予定はあるのか。仮にそのような手当を行うならば、
法人化によって国の財政支出が増加することにならないか。

 また、運営費交付金が現行水準であれば大学の実質的な教育研究経費は減少
することになるが、それは「大学改革」を困難にするのではないか。


 | 十二について
 | 
 |  国立大学法人への移行に伴って生じる雇用保険料や会計監査に必
 | 要な費用等の義務的な経費については、運営費交付金の算定におい
 | て対応していくこととしているが、国立大学法人の予算全体におい
 | てはこの他にも増減要因があることから、運営費交付金への算定に
 | より直ちに国立大学法人に対する国の財政支出が増加するものとは
 | 考えていない。また、平成十六年度予算の編成に当たっては、国立
 | 大学法人の事務及び事業が確実に実施され、大学改革が着実に推進
 | されるように十分に配慮することとしている。


十三 中期目標を大臣が定めることについて

1 中期目標策定において大臣が最終的に決定することについて、「国庫を投
入するから最低限の関与が必要」という文部科学省側の答弁が繰り返されたが、
国立大学の「業務」が教育研究であることは自明であり、国立大学の教育研究
に予算の適正な支出がなされていることが確かめられる限り、国庫投入の「説
明責任」は果たされるのではないか。


 | 十三の1について  
 | 
 | 国立大学法人は、我が国の高等教育及び学術研究の水準の向上と均
 | 衡ある発展を図るために国立大学を設置して教育研究を行うことを
 | 目的として設置されるものであり、この目的を実現するために、国
 | 立大学法人の中期目標を文部科学大臣が定めるとともに、当該中期
 | 目標を達成するために、必要な財源措置を国が行うこととされてい
 | るものである。したがって、国立大学の教育研究に予算の適正な支
 | 出がなされていることを確認することだけでは、国立大学の法人化
 | の目的を達成することは因難と考えている。


2 憲法第二十三条及び教育基本法第十条によれば、国が大学に対し、財務・
経営事項だけでなく教育研究の具体的な内容や使途を指示することなどあり得
ないはずだが、国立大学法人法においては、中期計画に教育研究の具体的な内
容や使途についての記載がなければ運営費交付金を受けられないようになって
いる。このような憲法・教育基本法と国立大学法人法との非整合性をどのよう
に考えるか。

 右質問する。」

 | 十三の2について     
 | 
 |  国立大学法人法では、中期計画の基礎となる中期目標を策定する
 | 段階で、あらかじめ国立大学法人の意見を聴き、その意見に配慮す
 | べきことが規定されているとともに、中期計画の認可に際しては同
 | 法第三条の規定を踏まえ、教育研究の自主性に十分配慮することと
 | している。
 | 
 |  また、中期計画の記載事項については、教育方法の改善や研究の
 | 高度化に対応する施殻設備の整備等、全学的な視点に立った教育研
 | 究の実施体制等に関する事項を記載するものであり、学部や研究科
 | における個々の具体的な教育研究活動について記載を求めるもので
 | はない。このように、中期計画の記載内容は個々の教員の教育研究
 | の具体的な在り方についての記載を求めるものではなく、憲法第二
 | 十三条及び教育基本法(昭和二十二年法律第二十五号)第十条の規
 | 定との整合性を欠くものではない。
 | 
 |  なお、大学が自ら具体的な教育研究内容を中期計画に記載するこ
 | とを希望する場合にはこれを否定するものではないが、中期計画に
 | おいて個々の教員の教育研究の具体的な在り方の記載がなければ運
 | 営費交付金を受けられない制度とはなっていない。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集発行人:辻下 徹 tjst@ac-net.org
国公立大学通信ログ:http://ac-net.org/kd
転送・転載歓迎
(部分転載時は「全文:http://ac-net.org/kd/03/903.html」を併記下さい。)

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