横浜市立大学商学部長 川内克忠殿

横浜市立大学国際文化学部長 黒川修司殿

横浜市立大学理学部長 馬来国弼殿

横浜市立大学医学部長 関原久彦殿

横浜市立大学総合理学研究科長 榊原 徹殿

横浜市立大学看護短期大学部部長 藤尾ミツ子殿

200393

        横浜市立大学教員組合執行委員長 藤山嘉夫

 

 貴職におかれましては、横浜市立大学の存亡をかけたこの時期に、ご献身いただき深く感謝いたしております。

 

818日、第3回大学改革推進・プラン策定委員会が開催され、プラン策定委員会幹事会の案(以下、「幹事会案」)が提示されました。その後、医学部臨時教授会(20日)、商学部臨時教授会(21日)、国際文化学部臨時教授会(25日)、理学部臨時教授会(25日)、総合理学研究科臨時研究科委員会(28日)が開催され、「幹事会案」に対する教員の意見が表明され、それは公表されました。看護短大の臨時教授会は95日に予定されています。

 

それぞれの教授会において、会議の冒頭で、この臨時教授会の基本的な性格はいかなるものであり、教員の意見を集約することにいかなる効果があるのかといった疑問が教員から共通に提起されました。このことの背景には、818日に開催された臨時部局長会において、学長が、「幹事会案」に関しては教員の意見を慎重に収集すべきであるが、しかし、それは「教授会で決議をするような性格のものではない」との見解を表明した事実があります。一般的に言って、教授会が何らかの決議をすべきか否かに関しても、教授会自らが判断すべき事項であることは、自明の理です。学長が、教授会の議事運営の内容に関してこのように外から制約を加えるということは、教授会自治への明らかな越権的な介入といわざるを得ません。教授会を定めた学校教育法第59条に違反する恐れがあります。「学部における重要なこと」を「教授会の審議事項」と定めた学則の精神にも反します。

 

このように極めて異常な制約条件をつけられたうえで開催されたそれぞれの教授会、研究科会で集約された教員の見解においては、「幹事会案」についての賛成意見は皆無といって過言ではありません。また、「幹事会案」の骨格構造を構成している、@3学部を統合し、「プラクティカルなリベラルアーツ」を目指した「実践的な国際教養大学」、A独法化を前提にして、しかも、理事長と学長を分離、B任期制や年俸制の導入、これら3つの骨格に関しては明確な反対ないし疑問が各学部共通に集中しています。無論、その他の重要な事項に関しても反対ないし疑義が提起されています。こうした事柄に鑑みますと「幹事会案」は、大学自治における基礎的組織である教授会においてオーソライズされていないことは明らかです。

 

さらにまた、臨時教授会の席上、その臨時教授会の基本的な性格付けに関して、学部を超えて共通に疑問が呈されたことは、極めて重要な問題です。これは、学部の存立形態と教員の身分上の重大な変更事項を含む改革案策定に対する教授会の「意思」表明を封じられたことへの教授会としての重大な違和感の表明です。それは、この重大問題に対して教授会の自治が外から制約されたことへの教員の素朴な疑問の表出です。  

 

学長は、対外的には、横浜市立大学改革推進本部において「大枠」が確定したかのような報告を行っており、これが一人歩きを始めております。対内的には、「大枠」に過ぎないのであるから教員らから意見を聴取する、しかし、教授会としての意思表明はしないという形で推移しています。当局は、まさに2枚の舌を使い分けつつ、大学自治の基礎的組織としての教授会の意思表明の権限を抑えこもうとしています。このままに推移しますと、教員の意見は聞き置く、しかし、教授会としての明確な意思表示がなかったのだから、「幹事会案」は教員の支持を得ているという形での展開となることは必至です。

 

したがって、現時点で、各教授会が教授会としての「意思」を何らかの形で表明しておくことが極めて重要であると考えます。「意思」の内容は教授会によって様々であろうかと思います。しかし、前回の臨時教授会で忌憚のない意見が教員から表明された事実は重要です。この表明された多くの意見を踏まえて、教授会の何らかの「意思」を示しておくことが可能ですし、現在、そのことが非常に大事になっていると思います。そして、このような形で教授会の明確な「意思」を表示することは、学長の教授会自治に対する侵害行為を認めないという教授会の姿勢を示すことでもあります。もし、今ここで教授会の「意思」を示すことがなければ、教授会が学長発言を事実上容認することになり、横浜市立大学改革にかんして教授会の「意思」表示が今後困難な前提を作ってしまいかねないと危惧いたします。

 

さらに重大なことに、ことは市大改革問題のみにとどまらず、今後、教授会の専権的な事項にかかわる一切の権限さえもが簒奪される可能性をも否定できないということです。このことは、「幹事会案」に教授会の位置づけがまったくないことと無縁ではないと思います。この間の教学権への事務組織の介入の歴史的経緯を踏まえるとすれば、その可能性は決して杞憂としえません。それは、まさに「蟻の一穴」を想起させるものです。

 横浜市立大学の存亡をかけたまさに今この時期に、どうか「蟻の一穴」を認めないという賢明なるご判断を仰ぎたくお願い申し上げます。