陳 情 書
平成15年9月16日
横浜市長 中田宏 殿
横浜市立大学 小川惠一殿
横浜市立大学を考える市民の会
〒236-0031
代表 長谷川 洋
Tel 045-786-1020
件名 横浜市大商学部名を存続させ、さらに市民ニーズに合った新学科を増設して市大の収支を改善するよう陳情する件
陳情項目
1 横浜市と横浜市大は、75年の歴史と実績を誇る商学部の名前をそのまま存続させるよう陳情すること
2 同学部は、国際文化学部と研究重複分野について必要な再編等を行い、現存の2学科をベースに、横浜市の経済・産業発展に貢献する、アジアビジネス、国際的な環境経済学、既存中小企業支援、ベンチャー企業支援、上海大学との連携を研究する国際ビジネス学科の設置など、社会と市民のニーズにあった新学科を設置するよう陳情すること
3.既存の商学部大学院の存続・充実と、会計大学院の設置するよう陳情すること
陳情の理由
市大商学部は75年の歴史を持ち、多くの学者、経済人、公務員、社会人等を育ててきました。それらの人々が横浜市内外にて各界で活躍していることは多くの市民が認めるところです。また、最近の予備校の調査によれば、そのセンター試験ベースの入学難易度は80%であり、横浜国大を凌ぐレベルになっています。このように優れた教育成果を上げ、また、受験生・学生に支持されている市大商学部を改廃する大枠案が、8月20日に市立大学から出されました。
このような案が大学側から出された背景が、もともと、「市立大学の今後のあり方懇談会」(以下あり方懇)答申の杜撰な財務分析の結果にあり、また学部部局の閉鎖性などの理由を大学側が挙げているところであります。
まず、財務分析では、商学部には商学部起債の負債はありません。また、収支に関しては、市大商学部教授の試算(注1)によると、授業料と横浜市が各市大生につき受けとっている交付金収入との合計(総収入)から、「あり方懇」で公開された資料による大学経費を差し引いた額は1億5千万円の黒字になると考えられます。商学部のように研究機材購入費や公債返還がない学部の大学経費の大半は人件費ですので、本陳情者が商学部の教員数と給与等から計算した人件費をいれた商学部固有の経費を使用すると、上記の額よりも、さらに大きな黒字額が計算されます。あり方懇で出された資料にある学部ごとの経費を教員数で割ってみて、教員数一人当たりの学部経費で比較すると、高額の研究機材の購入や、公債返還費用のある理学部や医学部に比べて、商学部や国際文化学部のそれの方が大きく、極めて不自然であると言えます。
また、学部部局の閉鎖性の弊害については、市民に対してその具体的な状況説明はなく、もしそのような弊害があることが事実であるとすれば、大枠に提案されている「院」の新組織の導入や、人事・カリキュラムその他の透明性の高い合理的なシステムの導入によって、また、国際文化学部他の学部学科との交流・転科・学際的学習の修学コースの設定等によって解決が図られるべきであり、学生のための所属専門学部名としての伝統あるブランド「商学部」は残すほうが、大学の声価を保ち、大学間競争に生き残るために有利であります。このように伝統ある横浜市大商学部が、不自然な財務分析や、適切な将来の見通しと合理性を欠いた理由によって統合・縮小されるということは、市大商学部の歴史と伝統を無視した暴挙であります。
あり方懇答申の最大の間違いは、少子化社会には大学を縮小して対処するという縮小均衡型の大学像を強制している点であります。少子化社会における大学は、若年受験生獲得での大学間競争に生き残ることと、社会人教育、生涯学習による入学人口の拡大を図る必要があります。まず、受験生獲得での大学間競争に勝つには、専門性の向上が必要であり、その意味で現在の市大は有利な立場にあることを、横浜市や市大は再認識すべきであります。今度の大枠案を実施すれば、市大の商学部で勉強するために受験してきた従来の受験生は、もはや来なくなり、大学間競争での敗退は明らかになるでしょう。それを避けるには、商学部名を残し、専門性を高める以外に市大の生きる道はありません。
次に、少子化、高齢化、産業構造の変化などの社会変化に対応するには、むしろ市大商学部の機能を拡充する必要があります。具体的には、現在の商学部を存続した上、さらに現在の学科の内容を市民のニーズにあったものにするために、例えば地域ベンチャー企業の育成、横浜市内の99%を占める既存中小企業の事業革新や新規分野の進出応援、環境問題に対応する環境会計を研究する環境経済学、企業のアジア地区、特に中国との交易拡大や、在中日本企業のビジネス援助を教えるコースからなる国際ビジネス学科(募集数学部100名、大学院50名)を増設することであります。また、姉妹都市上海市にある上海大学との連携は、単に商学部だけではなく、国際文化学部とも協力して進めることにより、文化と経済面での両市の交流に大きな成果が生まれるものと考えられます。
なお、この新学科増設による収支計算をすると、この入学数増員によって、現教授数では不足する分野を補うために、10名の教授を増加させる(2億円の経費増)という仮定で計算しても、設置4年後の収支は年間5億3千万円の黒字になり、現行よりも3億8千万円の増収になります。将来の市大を支えるもっとも確実な収益源は、この増設学科を加えた商学部であります。そうした財政改善に寄与する見込みの立つ商学部の名前を消すことは、大学の自立の上からも絶対に避けるべきであると判断されます。
加えて、ロースクールを設置する大学が急増する中、公認会計士を目指す人達から会計大学院のニーズが高まりつつあります。市大商学部の伝統を活かし会計大学院を設置することが、時代の要求に合い、かつ、21enn世紀にオンリーワンの大学を目指すための不可欠な条件となると考えられます。慶応大学の丸の内シティ・キャンパスの成功を見て、早稲田大学は、来年から日本橋ファイナンス研究科を設置することを決めたように、社会人を対象に、その職場の近くに大学を置くというのが、大学間競争に生き残れる最低の条件です。横浜市大も、校舎として桜木町、関内駅近辺の商業ビルを利用することによって、社会人の勉学への便宜を図れば、市民貢献として大いに評価されるでしょう。社会人対象の会計大学院や国際ビジネス学科を持つ、MM21シティ・キャンパスを開校することによって、横浜市大の存在感のアップに役立ち、大学入学人口の拡大に繋がるでありましょう。
一定水準の優秀な入学者が志願してこない大学は、潰れるだけです。横浜市と市大関係者は、大学をつぶすために、大枠案を出したという見方すら出来ます。あり方懇答申をベースにした大学案に対しては、本陳情者らが得た情報では、8月に開催されたある大手大学予備校の高校生への説明会で、「横浜市大は学部を縮小しようとしているから、進学は勧められない。」ということが言われていることが判明しています。このことは、もう既に、あり方懇答申やそれに基づいた大学改革案大枠が、学生の支持は得られないことを示しています。それを避けるには、横浜市と横浜市大は、今すぐにも、商学部名は残すことを決断して、然るべき方法で高校や予備校に発表すべきであります。また、学生の就職活動の際に、出身学部は大きく影響するので、現在学んでいる学生の将来に対しても責任を持った改革を行うことが求められています。
以上述べたように、市大商学部名を存続させ、さらに、社会のニーズに適合した学科や大学院を増設することは、市民に貢献するとともに、大学自体の収益性をあげ、市大全体の存続に不可欠であると考えられます。このような理由をご勘案の上、本陳情を大学改革に取り入れることをお願いする次第であります。
なお、本陳情者らが行った横浜市への陳情の回答のように、数ヶ月も放置するという極めて怠慢な対応を強く非難します。そして、本陳情に対しては、2週間以内に返答されるよう強く要請します。
以上
注1:
http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~kogiseminagamine/20030131Gakububetsushushi.htm