特 別 決 議
現在、東京都立4大学および横浜市立大学において、行政当局の不当な介入等によって、大学自治が著しく破壊される事態が生じています。
8月1日、東京都は都立4大学の統廃合のマスタープランとも言うべき「都立の新大学構想」を発表しました。その狙いは、地方独立行政法人法に基づく公立大学法人化を利用して、「設置者権限」の無際限な濫用による行政の大学への介入と支配、教職員の大リストラと経費削減、大企業本位の都心再開発行政への大学キャンパスと知的資源の利用、の三点に整理されます。石原流「新しさ」の衣装をまとってはいても、国立大学法人化の狙いと底流では確実に通じているこれらを、国立大学に対する以上の強引さで進めるために知事と大学管理本部が編み出した手口が、あからさまに管理本部への屈服を要求する「同意書」の提出強要であり、教員管理職を「個人として」「口外禁止規定」で縛った上で管理本部の指示の下でプラン作りに参加させる教学準備委員会です。これらは教員を分断し、評議会、教授会の機能を麻痺させることによって、大学自治の制度と意識を破壊しようとする前代未聞の違法な暴挙でした。
しかしながら都立大学・短期大学教職員組合は、すべての教職員や学生に対して徹底的な情報提供と管理本部の動向や意図を暴露する宣伝を行い、孤立しがちな教員を励まし、四大学間の分断攻撃を防ぎ、「同意書」を実質的に無効化し、情報開示と教授会の機能回復を援護し、また広く社会に呼びかけて「都民の会」等による市民レベルの運動の構築をサポートしてきています。そして闘いは今まさに、文科省への申請書類作成を焦る管理本部と大学自身の手による新大学設計を要求する大学側とのつばぜりあいの局面になっています。
10月22日、横浜市立大学の小川学長は臨時評議会において、市大改革案「横浜市立大学の新たな大学像について」を多くの評議員の反対意見表明と採決すべきとの要求を無視して強行し、29日、これを横浜市長に提出しました。「プラクティカルなリベラルアーツ」などという意味不明な言葉を掲げ、理念もないままに現存の三学部を統合するというこの改革案に対して、学内の多くの教職員、学生は反対の意思を表明し続けてきました。学外においても市民運動が展開されてきました。
しかるに、小川学長は多くの大学関係者、市民の意向には耳を傾けずに極端な秘密主義とトップダウンの極めて非民主的な大学運営を強行してきました。当該改革案は全学の総意を結集したものとは見なしがたいものであり、今後、全学における民主的な手続きのもとでの更なる検討が不可欠なものです。また、当該改革案には、教授会から人事権、カリキュラムの運営権を剥奪し、現職全教員に任期制を導入するなど、大学における学問の自由を根底から脅かす法的にも認めがたい内容を含んでいます。大学が自らの存在を根底から否定するこれらの事項は断じて容認しがたいものです。
東京都立4大学、横浜市立大学において展開している事態は、公立大学の法人化・大学改革の動向のなかでも、突出して異様なものです。7月1日に参議院総務委員会において地方独立行政法人法案が可決されるに際して、附帯決議が採択されましたが、その第6項には「公立大学法人の設立に関しては、地方公共団体による定款の作成、総務大臣及び文部科学大臣等の認可に際し、憲法が保障する学問の自由と大学の自治を侵すことがないよう、大学の自主性、自律性を最大限発揮しうるための必要な措置を講ずること」と規定しています。東京都のように設置者権限を濫用して行政が大学に介入し、支配しようとすること、横浜市立大学長のように市当局に迎合して学内構成員の意思表明に背を向けることは、上記附帯決議をまったく無視し、学問の自由と大学自治を著しく侵害するものです。
私たちは、東京都当局、横浜市当局と横浜市立大学長による学問の自由と大学自治を侵害する行為に厳しく抗議するとともに、東京都立4大学および横浜市立大学の教職員の自主性・自律性を擁護するための取組みを断固支持するものです。また、国立大学、高専等の法人化をひかえて、試練のときにあることを深く認識し、学問の自由を擁護し、新たな大学の自治・自律的機能を構築するために、全国的に連帯して粘り強く奮闘する決意をここに表明するものです。
以上、決議します。
2003年11月3日
全国大学高専教職員組合第31回臨時大会