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件名 : 横浜市議会と都議会への要望書への賛同署名のお願い

日時 : 2004年2月19日 1:26

 

都立大に関する文部科学省への要望書に連署された方々へのお願い

 

本日の横浜市議会定例会本会議で、市第111号議案「公立大学法人

横浜市立大学の定款の制定」が提出されたようです(*1)。実質的

な審議を行う大学教育委員会は20日に予定されています。

http://www.city.yokohama.jp/me/sikai/nittei.html

 

定款(*2)には、市長が任命する理事長が強い権限を持つ法人組織が

描かれており、学長と理事長とは別人であることが明記されていま

す。主に教学側が参加する「研究教育審議会」の審議事項に教員人

事が入っていません。市長の意思が理事長を通して大学運営全体に

直接反映される構造となっています。

 

都立大学の場合とは異り、横浜市立大学では学長は市の大学改革案

に積極的ですが、これまでに、すべての教授会が改革案を批判する

声明や決議を出しており(*3)、大学が市に提出した「大学改革案」

を評議会が了承した形跡はありません。学校教育法を逸脱した、学

長の独断による「大学改革案」に基く「定款」を市議会が安易に容

認しないよう求める要望書を昨年11月に市議会議員(と都議会議

員)に送付しましたが、改めて明日、市議会議員に送付する予定で

す。都議会議員にも適切な時期に送付します。都立大学だけでなく

横浜市立大学も同じ問題に直面していることをご理解され、要望書

に賛同された場合には、http://poll.ac-net.org/1a にて、ご署名

頂ければ幸いです。その際、お手数ですが「登録番号」を新たに取

得して署名くださいますようお願いします。

 

辻下 徹

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        東京都議会および横浜市議会への要望書

 

東京都立4大学および横浜市立大学の法人化準備が、各地方政府首

長の強い関与の下で進められている。わたしたち大学教員有志は、

両地域の公立大学における力強い動きを大学の自律の発現として全

面的に支持し、東京都議会および横浜市議会に対し、設置者権限を

濫用する行政行為を看過しないよう要請する。

 

東京都大学管理本部が8月以降進めている新都立大学の開設準備は、

大学の関与を排除して進められていることを東京都立大学総長は1

0月7日の声明で強く批判した。一方、横浜市立大学が10月17

日に明かにした「横浜市立大学の新な大学像について(案)」は横

浜市の主導の下で作成されたもので、全員任期制の導入や基礎研究

費の全廃等、学術研究の自律性を損う内容に対し、商学部教授会、

国際文化学部教授会、総合理学研究科教員有志、理学部教員有志が

強く批判し、10月22日の評議会では多数の反対意見が出されて

いるが、横浜市側には、こういった学内の批判を真剣に検討する姿

勢は今までのところ見られない。

 

こういった大学の自主性を認めない行政行為は、地方独立行政法人

法が7月に成立した際に、大学の自主性・自律性を最大限発揮しう

るために必要な措置を講じなければならないとした付帯決議に反し

国会を軽視するものであるだけでなく、地方行政の首長が個人的信

念に基き、教育・研究の当事者を排して大学を根本から改造するこ

とは、教育基本法第10条にある「不当な支配」そのものであり、

当該地方議会がこの行政行為を了承するならば、明白な教育基本法

違反行為が公然と行なわれることとなる。

 

ところで、国立大学法人法および地方独立行政法人法は7月に与党

のみの賛成で可決されたが、その審議の中で、独立行政法人制度の

構造が、行政による大学支配を可能とすることが問題となった。そ

の弊害の一つである学問の多様性の破壊の様相は、東京都・横浜市

双方の「改革案」に顕著に現れている。

 

わたしたち大学教員一人一人は、短い一生にあって特定の分野にお

いて真理と真実を探究し伝えることしかできず、無際限の真理と真

実は大学界全体として探究し伝えることしかできない。その意味で、

どの専門分野も、わたしたち大学教員一人一人にとって、そして大

学界全体にとって、かけがえのないものである。それだけでなく、

行政の判断で特定の分野を弱体化させることは、大学界の主要機能

を深く傷つけ、真理と真実に対する社会の目を閉ざすものでもある。

 

大学界を弱体化させる動きが強まる中で、東京都立4大学と横浜市

立大学における力強い動きに力付けられている大学教員は少なくな

い。わたしたちは、東京都立4大学と横浜市立大学における教員と

学生の方々の真摯な取りくみを大学界全体の独立性を守る闘いとし

て強く支持する。

 

東京都と横浜市において、教育基本法の禁じる大学支配が実現する

か否かは、日本の大学界全体の行く末を大きく左右することに鑑み、

私たち国公私立大学教員は、東京都議会および横浜市議会に対して、

東京都立4大学および横浜市立大学の法人化が、各大学の自主性を

明確に排除して進められていることを看過せず、教育関連諸法およ

び国会審議に反する行政行為の逸脱をチェックする使命を遂行され

ることを、要請する。

 

なお、国立大学の場合とは異なり、公立大学を独立行政法人化する

か否かは各地方政府の判断に委ねられている。この利点を活かし、

公立大学の独立行政法人化を既定方針とせず、独立行政法人化が国

立大学に与える影響を見定めてから、各地方政府ごとに検討してほ

しい。大学の本性とは調和し得ないことがわかっている設置形態に、

多くの大学が画一化的に移行することが、日本の未来にとって良い

はずはないからである。」

 

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*1)http://www.city.yokohama.jp/me/sikai/gian20.html

(内容)横浜市立大学の設置及び管理を行う「公立大学法人横浜市

立大学」を設立す るため定款を定める(内容)目的、名称、役員、

理事長等の任命、審議機関設置(経営審議会・教育研究審議会)他

(施行日)法人設立の日(平成17年4月予定)

 

(*2) 「公立大学法人横浜市立大学の定款」

http://homepage3.nifty.com/ycukumiai/shiryo/k040218-1.pdf

 

(*3)「あり方懇」最終答申(2003年2月27日)以降の 横浜市立大学の

各教授会における改革案関連の決議・意見・見解など(一覧)

http://homepage3.nifty.com/ycukumiai/shiryo/arikata.html

 

・「あり方懇」答申についての国際文化学部教授会見解(3月20日)

・「あり方懇答申に対する要望」に関する総合理学研究科委員会の学長

   への要望書(5月1日)

・「あり方懇答申に対する要望」に対する商学部教授会決議(5月1日)

・「あり方懇答申に対する要望」に対する国際文化学部教授会決議(5月1日)

・「大枠」についての商学部教授会における意見(8月21日)

・ 「大枠」についての理学部教授会における意見(8月25日)

・ 「大枠」についての国際文化学部教授会における意見(8月25日)

・ 「大枠」についての総合理学研究科八景研究科委員会における意見(8月28日)

・ 「大枠」についての看護短期大学部臨時教授会における意見(9月5日)

・ 「幹事会案」に対する商学部教授会見解(9月11日)

・ 「大枠整理(追加)」についての国際文化学部教授会の意見表明(9月29日)

・ 教員任期制導入に関する商学部教授会意見(10月2日)

・ 人事委員会と教員任期制導入に関する商学部教授会意見(10月20日)

・ 「新たな大学像」についての国際文化学部教授会の決議(10月21日)

・ 臨時評議会の運営と大学改革案策定に関する国際文化学部臨時教授会の遺憾表明(10

    月28日)

・ 大学改革案に関わる商学部教授会の意見(11月6日)

・ 「大学像」に対する木原生物学研究所教授会の意見と要望(11月13日)

・ 「大学像」に関する医学部教授会有志の要望書(11月21日)

・ 改革案に対する国際文化学部臨時教授会決議(11月27日)

・ 大学改革案に対する商学部教授会の要望(11月28日)

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参考:東京新聞 2004年2月16日付

『改革』に揺れる横浜市立大

      学部統合 全教員の任期制 研究費ゼロ

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横浜市の財政難を理由に、来年4月から独立法人化される横浜市立

大学(小川恵一学長)が揺れている。中田宏市長が打ち出した改革

案は、全教員の任期・年俸制、複数学部の1学部統合などで、石原

知事が進める都立大改革とほぼ同じだ。「研究費はゼロ」になり、

教養教育大学に衣替えする方針という。「学問の自由」の危機と、

首都圏の大学教授らが"共闘"で反対する改革案だが・・・。 (藤

原正樹)

 

■13大学の教授結集

 

「中田市長の諮問委員会『横浜市立大学のあり方懇談会』は昨年二

月、『千百四十億円の累積負債を抱えた市大が現状のまま存続する

道は考えられない』との答申を出した。これに対し、『そのほとん

どは病院建設など市民ニーズを満たすための市の投資で、横浜国際

競技場と同じ資産』と反論したところ、市長は負債のことを口に出

さなくなった。最初から『市大改革ありき』で、負債は口実に使わ

れただけだ」

 

「横浜市立大学問題を考える大学人の会」の中心メンバー、関東学

院大学の久保新一教授(国際経済)は憤慨する。

 

同会は、全国で拡大傾向をみせる大学の任期・年俸制などに危機感

を抱いた同志が集まった団体で、十三大学二十六人の教授が集結し

ている。

 

教授らが反対する市大改革案は「各分野の実務の専門家を公募しや

すくし、実績主義を進めて大学教育や研究の質を高める」のが狙い

だ。中田市長は「もっと社会から評価される大学を目指さないと生

き残れない。レベルの高い研究や、市民、産業との連携に期待した

い」と話す。

 

教員の人事制度、経営と教学を分離して理事長の新設など、市大と

都立大学の改革案は酷似しており「改革案を審議する委員会メンバー

に厳しいかん口令が敷かれ、完全な秘密主義な点も同じ」(久保教

授)だ。

 

■3学部を統合し新体制は2学部

 

新都立大学(首都大学東京)では看板学部の人文学部など五学部を

一学部に集約するが、市大改革でも国際文化学部、理学部、商学部

を統合し「国際総合科学部」(仮称)を設置する。そのまま存続す

る医学部と二学部体制になる。大学校費による一律な研究費はゼロ

で、基本的に各教員が外部資金を獲得して研究を行うことを提案し

ている。

 

市大に十一年間在籍した東京大学の柳沢悠教授(南アジア研究)は

「中田市長の狙い通りにいかないどころか、国内トップレベルの市

大の研究を駄目にしてしまう」と憤る。

 

■「トップレベル研究駄目に…」

 

「市大は国内のアジア研究をリードしてきた。日本の地方史や地方

紙のコレクションも国内屈指で『庶民の歴史』という視点で独特の

学風を築いている。理系でも、発生生物学の重鎮、浅島誠教授(現・

東大教授)が実績を残し、地震学の第一人者、故・菊地正幸教授

(元東大地震研教授)は、横浜市の防災システム策定にも尽力した」

 

ある国立大教授は「国公立大の文・外語・教育系学部の入試偏差値

で、市大の国際文化学部は横浜国立大教育人間学部より上だ。投資

価値の高いブランド性があり、変な改革をして駄目にするなら、私

大に売却した方が市大のためになる」と提案する。

 

■資金かかる医学部抱え学部減で経営悪化予想も

 

さらに、二学部体制では経営はより困難になるという。久保教授は

「『資金がかかる医学部は、五学部以上の文系学部収入で支えない

と維持できない』というのは、大学経営上の常識。他の一学部で支

えるのは無理」と指摘する。任期・年俸制についても「その内容は、

為政者の意図が反映される人事委員会で決議される。政治的な意味

で意に沿わない大学人の首を切ることができる制度になる」。

 

柳沢教授も「学問の自由を保証するには、身分の安定が必須で、大

学に任期・年俸制はなじまない。研究が高度になればなるほど、短

期間では成果を出せない。この制度では、早く成果が出る安易な研

究を助長する。また、年俸の評価者にすり寄る傾向が強まり、批判

精神が不可欠な学問が死滅する」と切り捨てる。

 

「成果主義の印象が強い米国の大学でも、優秀な人材を確保する手

段として、教授には『テニュア』(終身在職権)を与えている。任

期・年俸制が全国的に広がると、優秀な学者が国外に逃げ出すだろ

う」

 

新都立大学は九コースで教授らの公募を実施したが、応募倍率は最

高九倍(先月三十一日締め切り分)だった。柳沢教授は「国公立大

教授の公募は百倍程度あっても不思議でない。任期・年俸制がある

大学に、教員を集める魅力がないことを実証する数字」と分析する。

 

市大関係者によると、新大学残留を希望する教員は少なく、新大学

が発足する来年四月までに九人の教員が他大学移籍を決めている。

市大OBで法政大学の宮崎伸光教授(地方行政)は「ほとんどの教

員が、他の大学に移りたくて“隠れFA宣言”している状態」と内

情を語る。

 

 

■密室で決定 いきなり公表 トップダウン

 

公立大学改革の方向性は、設置者の首長の志向が色濃く反映される。

宮崎教授は「市大、都立大の改革内容はほぼ同じで、手法も密室審

議でいきなり公表するトップダウン方式だ。中田市長と石原知事の

類似性を示している」と指摘する。

 

「大衆受けするパフォーマンス的政策を打ち出す点で両者は似てい

る。反権威主義で、エリートや学歴に対して強い反発を持っている。

両者とも自己を礼賛する者しか評価しないポピュリズムの権化で、

不採算部門の学問・芸術の存在が邪魔になる。その延長線上に大学

改革がある」

 

久保教授も「中田市長は市民派を看板に掲げるが、改革案で会見を

申し入れても、会ってくれない。煙たい市民には会わない“えせ市

民派”だ。十人十色の意見があってまとまらず、業界団体のない大

学が一番、経費削減の標的にしやすかっただけだ」と悔しがる。

 

■「現代の新撰組 消えゆく運命」

 

「小泉首相、石原知事、中田市長はともに“ネオコン”で、本流エ

リートになれなかったコンプレックスを政策にぶつける“現代の新

選組”といえる。新選組は新しい時代の先兵にはなれず、消えてい

く運命だ」

 

市大改革案の目標「研究費ゼロで、実践的な教養教育を行う国際教

養大学」の背景について、久保教授は「従来の労働集約型の産業構

造から知識集約型社会へ転換しようとする為政者のシナリオを感じ

る」と危ぐし、こう説明する。

 

「昨年の労働基準法改正で、小泉首相は『解雇ルールを作れ』と厳

命した。一握りの知的エリートが取り換え可能な労働者を使う社会

への転換を目指す意図があるのではないか。エリート育成を担う旧

帝国大学では、研究の質を下げる全教員の任期・年俸制の導入は考

えられない。研究費ゼロで最先端技術にかかわる可能性が低く、教

養だけを身につけさせる市大などの公立大は、中間労働者の供給源

と位置づけられる可能性が高い」

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