各位

2004.3.31 東京都立大学・短期大学教職員組合 中央執行委員会

 

 これまで都立四大学と教職員組合の闘いに共感と支援と送ってくださってきている全国の仲間、諸兄姉にマスコミ報道では伝わらない現状を報告いたします。できればまわりの方々にもお伝え願いたいと思います。

 

 去る3月29日に、「拡大教学準備委員会」および「第2回経営準備室運営委員会」が開かれました。3月23日の管理本部、理事長予定者と四大学学長による話し合いに基づき、「拡大教学準備委員会」に都立大の茂木総長が参加し、これまでに比べて実質的討議が行われた結果、同日付で〔付1〕に示す「総長声明」が発表されました。

この総長の見解に対して、教職員組合は3月31日、別記〔付2〕のような中央執行委員会の声明を出しました。その背景となった、われわれ組合の現時点での事態の評価は以下の通りです。

@「教学準備委員会」の大学側委員が、これまでのような「個人としての」学長、学部長ではなく、現大学の正規の機関を代表する者として位置づけ直すことが確実に実行されるなら、「設置者と現大学との正常な協議体制を」という教職員のみならず学生、院生や「都民の会」など広範な人々の要求に沿ったものであり闘いの重要な成果である。

A喫緊に迫った設置申請のためとはいえ、管理本部がいくつかの重要な点で実質的譲歩(人文系の大学院構成で人文学部の要求を容れている、「単位バンク」による教員組織のカリキュラム編成権や学位認定権の侵害につながる制度の後退、人文や理等の組織的な意思確認書提出保留を事実上不問に付す等)を行ったことは、「四大学教員声明」、2.28日比谷集会等の運動を背景に多くの教員が「意思確認書」の不提出で団結して交渉を継続した成果である。

Bしかし、管理本部が態度を軟化させたのは、是が非でも設置申請を行うための擬態である可能性は高く、いささかでも警戒心を解くべきではない。

C管理本部はいまだに意思確認書の形式にこだわっており、とくに依然として提出していない経済学部近代経済学グループ(COEグループ)の「切り捨て」をちらつかせている。あらためて、この意思確認書による教員の分断攻撃を許してはならない。

Dまた、新大学の学部長予定者として露骨に管理本部に追随してきた教員を指名してきており、「指名制度」そのものへの反対運動ともに批判を強めなければならない。また、この指名された教員だけで4月以降の教学準備委員が構成されることを阻止しなければならない。

Eしたがって、現在の最大の課題は、可能性として出ている、「教学準備委員会」と「経営準備室運営委員会」における「正常な協議」を実体化させることである。そしてそこで、以下のような事項をオープンな協議で審議させることである。

     新大学院設計のWGに人文、経済、理を含む各研究科代表を参加させること

     助手の意思に反する強制配置、移動をさせないこと

     学生組織、院生組織と教学準備委員会との協議を実現すること

     「経営準備室運営委員会」「教学準備委員会」と「四大学教員声明の会」、「開かれた大学改革を求める会」や「都民の会」などとの協議を実現すること

     任期制、年俸制を教育・研究の面から審議すること

 

 一方、おそらく管理本部が意図的に流したものと思われるのですが、一部のマスコミで、教職員の大多数が「意思確認書」を提出し、あたかも知事の強引な手法に大学側が屈服したかのごとく思わせる報道がなされています。管理本部の常套手段ですが、3月9日付けの山口管理本部長、西沢学長予定者連名の「意思確認書未提出の教員を切り捨てる」という恫喝に屈して設置申請準備が進んでいるように見せようというマスコミ操作です。

 確かに、この間の都立大総長や部局長メンバーによる公式、非公式の管理本部との折衝、交渉は切迫した時間との闘いでもあり、実情が分かりにくいきらいもありました。当然、教職員組合は独自の判断で、事態の打開と来るべき法人化への移行に備えた宣伝や集会、団体交渉などを行ってきましたが、敢えて都立大学執行部と管理本部との交渉に介入しない立場を取ってきました。しかしながら、事態が一定の前進を見せ、しかもそれがいまだ不安定な状態にある現在、協議体制の確立への動きを後退させず、すべての教職員と学生院生の学び研究する権利を守るために前述のような当面する課題を掲げて、理事長・学長予定者を含む管理本部ならびに各大学執行部に要請、要求行動をいっそう強めてゆきます。

 併せて、国立大学や国立研究所の運動、闘いに学びながら、非民主的な法人組織構想そのもの変更を要求し、法人移行に伴う勤務・労働条件の劣悪化、とりわけ前代未聞の非常識な任期制、年俸制の押しつけに対しては断固として闘うことを表明致します。

 

 

〔付1〕 3.29都立大総長声明

 

全学の教員のみなさんへ

 

    2004年3月29日拡大教学準備委員会とその評価について

 

標記の件について、その主な内容を報告し、総長としての評価をお伝えします。

 

1.3月23日、総長の呼びかけで、総長・学長、大学管理本部長、理事長予定者の懇談 会が開催された。

(ア)そこでは、2005年(平成17年)4月、新大学を開設すべく、大学の代表たる  総長・学長、大学管理本部長、学長予定者、理事長予定者による十分な協議を行いつつ準備をすすめることが確認された。

(イ)経済学部の経済政策専攻(COEグループ )も新大学に参加する方向をとるよう  働きかけを行うこととなった。

 

2.3月29日、第7回教学準備委員会において、おおむね合意した内容ないし方向性の うち、重要と考えられるのは、以下のとおりである。

(ア)上記1の(ア)をあらためて確認した。

(イ)新大学は教育と研究の一体となった総合大学とする方向で議論が行われた。より具  体的には、大学院部局化の方向をとり、基礎研究も位置づけるなどである。

(ウ)学部等の名称について、これまでの仮称とは別のものを採用する可能性について議  論した。また、単位バンク等については継続して協議することとなった。

 

3.昨年8月1日以降の経過を念頭におき、3月23日の懇談会および3月29日の教学準備委員会の内容を評価すると、総長としては、そこに重要な前進があったと考える。

 

 

 

〔付2〕3.31教職員組合中央執行委員会声明

 

大学全構成員と社会に対して責任をもてる新大学準備の協議体制の早急な確立を求める

──3.29都立大総長声明を受けて──

 

2004.3.31 東京都立大学・短期大学教職員組合中央執行委員会

 

 都立大学総長は3月30日、都立大学全学教員に「2004年3月29日拡大教学準備委員会とその評価について」を公表しました。そこでは3月23日に総長の呼びかけで行われた四大学総長・学長と大学管理本部長・理事長予定者らによる懇談と、それを踏まえた3月29日の第7回教学準備委員会の結果概要が報告されるとともに、総長としてのその評価が述べられました。それによれば、@二つの会合を通して、新大学開設について大学の代表たる総長・学長、大学管理本部長、学長予定者、理事長予定者による十分な協議を行いつつ準備をすすめることが確認された、A新大学は、大学院部局化の方向をとり基礎研究も位置づけるなど、教育と研究の一体となった総合大学とする方向で議論が行われた、B学部名称の変更についての論議が行われ、単位バンク等については継続して協議することとなったとされています。その上で、これらの結果について「総長としては、そこに重要な前進があったと考える」とその評価を述べています。

 

 4大学代表者との協議を行うという今回の確認は、昨年8月1日以降これまで、大学管理本部によって4大学との正式協議を一切行うことなく進められてきたこれまでの新大学設立準備が、これをもって改まるのであれば、きわめて遅まきであるとはいえ、教職員組合として歓迎すべきものといえます。同時に、ここに至るまで、「意思確認書」の提出をめぐる様ざまな恫喝などにもかかわらず、ねばり強く「開かれた協議の実現」のために努力を重ねてきた都立大学総長・評議会、4大学教員声明をはじめとする多くの教職員の奮闘に敬意を表したいと思います。

 また、教育と研究の一体となった総合大学の方向性は、4大学の教育・研究の蓄積の継承という点で重要なものであるといえます。単位バンクなど教育課程上重大な障害となる問題についての修正可能性も歓迎すべきものです。

 さらに今回の総長談話には触れられていませんが、人文学系国際文化コースで河合塾案を撤回させ、人文科学分野での大学院設計において現研究科の意向をふまえた具体化がこの間になされたことなども重要です。3月8日以降も折衝を重ねながらこうした前進をつくるとともに、4大学との協議の実現に向けて働きかけてきた人文学部教授会の努力にも敬意を表します。

 

 しかしこれらの結果は、今後に可能性を開く前進であるとはいえ、早急に具体的な姿をとらない限り、確実な成果とはいえません。一例を挙げれば、教学準備委員会では異論が続出して座長預かりとなった学部名称等については、議論を一定反映して、保健福祉学部については健康福祉学部に、エクステンションセンターについてはオープンユニバーシティに変更になったものの、総合教養学部への変更を求める意見の強かった都市教養学部については変更しないことになったと伝えられます。誰も説得的な説明ができない学部名称がそのまま残されることは「協議に基づく設計」という当然の手続きが今後堅持されるか不安を抱かせるものです。

 

 第一に、協議体制をどのように具体化するかが問題です。設置本申請まで実質的に残された時間が4週間を切っている現在、これは早急に具体化される必要があります。この点で重要なことは、あくまで協議は正規に教員組織を代表している4大学・学部・研究科の代表者と設置者との間で行われなければならないことです。教学準備委員会の場では、3月末をもって任期の満了する現委員に代わって、新大学学部長予定者等を加えることが示されたと伝えられます。しかしもし教学準備委員会ないしはそれに代わる組織を協議の場にするのであれば、学内委員は「指名」による新学部長予定者ではなく、短大を含め現大学・学部・研究科から選挙によって選ばれたもので構成されなければなりません。

 さらに言えば、教職員組合は、新学部長予定者を学長予定者・管理本部が指名すること自体に反対です。教授会構成員によって直接信任されていない者が教授会運営にあたることは考えられないことであり、当然選挙などの信任手続きがとられるべきです。

  第二に、単位バンクなど「目新しさ」のみを求め、教育上重大な障害となることが懸念され、また教授会等の教学の権限を侵す内容について、協議を通じて早急に修正されるべきです。本申請までの間に、これらの問題については十分な協議と必要な修正が行われるべきです。また、文部科学省や大学設置・法人審議会には、その点で諸法規とその趣旨にしたがった厳正な審査を求めます。

 第三に、大学院部局化にあたっては、現短大教員等を含む全ての教員が大学の意思決定に参加できるように、十分配慮した仕組みとすることを求めます。

  第四に、教員以外の階層、とりわけ学生・院生の声を協議の中に反映できること、さらに都民らの声を可能な限り反映させることを求めます。これは、大学側代表が正規の代表者であれば当然、学生、院生の自治組織との協議等を通して可能となるはずだし、この間、2.28集会等を成功させてきた諸団体と教学準備委員会との協議も行うべきです。

 第五に、「意思確認書」をめぐる問題です。教学準備委員会では人文学部・理学研究科を含めこれまでに提出された総数が報告され、その提出時期による取り扱いの区別等については何も言及されなかったと伝えられます。しかし一部の新聞報道では、未だに提出時期によって何らかの差別的取り扱いをする可能性があるかのごとく伝えられています。大学管理本部は、提出時期や提出の有無によって差別的な取り扱いを行わないことを明確に4大学教員に表明すべきです。また、提出の有無にかかわらず、新大学就任意思をもつ教員を今後とも排除しないことを表明すべきです。

 

 教職員組合は以上を踏まえ、大学管理本部および4大学・学部・研究科執行部に対して、真に大学全構成員に責任をもった協議体制を早急に確立し、就任承諾書の送付以前に、全ての教員が安心して就任の可否についての最終的判断を行える条件を、雇用・勤務条件を含め整えるよう、強く求めます。そのために管理本部・学長予定者らには、4大学との協議を早急に真摯に行うことを求めます。また4大学教授会・評議会は協議体制の構築に早急に対応して、協議に加わる各代表者がその構成員の意思を十分に代表できるものとなることを求めます。