第一講・2:講義メモ

 

 

学問・科学の研究はいかにあるべきか[1]

最近の論争:マックス・ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(岩波文庫など、何種類かの翻訳あり)を巡って。

折原浩著『ウェーバー学のすすめ』未来社、200311月・・・折原氏自認の「訓古学」

「羽入―折原論争」・・・北海道大学の橋本努氏のHP一つの刺激的論争

 

以下では、この論争の中で出てきた論点:経済史講義に関わる部分で若干コメント。

 

折原博「学者の品位と責任―「歴史における個人の役割」再考」(雑誌『未来』20041月号1-7頁所収)・・・「社会的生産力の不可逆的増大にともなう社会的諸関係の段階的継起」をめぐる議論

 

人類史の20万年、その前段の猿(類人猿→猿人)の何百万年の発達史、その前の生物・生命史といった長期的生物的地球的観点からみると、この地球史(45億年とも46億年とも)には太陽系の生成発展(消滅)[2]に対応しつつ、ある種の必然的発展方向が見て取れるように思われる。諸君はどう考えるか?

人類史も、初期の狩猟・採取段階から遊牧・農耕段階への大局的移行、農耕文明から工業文明への大局的移行、そうした流れを貫く人類の生産力の発達・知的能力の発達・精神諸能力の発達は、まさに「生産諸力の不可逆的増大」という必然的方向性を示してはいないだろうか? 

そして、その人間の労働・生産力の発達は、人間相互の関係、社会関係の変化と発展をもたらしてはいないだろうか? それとも2000年前の人間とその社会、一万年前の人間とその社会が、今日と同じだというのだろうか?

 

     海外旅行の例示

     インターネットでの文献・資料検索の例示

     世界的企業、トランスナショナルなビッグビジネスの例示・・・今や世界のビッグビジネス(世界的な巨大企業)は世界中に生産拠点を持ち、世界中で何十万人もの労働者を雇用して活動している。国連の世界投資報告WORLD INVESTMENT REPORT 2003参照[3]

     世界的生産力・科学技術の飛躍的発達とその不均等的発展

先進国と開発途上国との格差・・・戦争や内乱、民族紛争の危機要因「開発途上国の周縁化の進展」・・・「自分たちに資本の蓄積がないためもっとも緊急焦眉に外部からの直接投資を必要としているアフリカは、世界人口の13%、面積で22%を占めるにもかかわらず、世界の直接投資のわずか1%しか、流れ込んでいない。」・・巨大な直接投資は先進国・先進地域相互間→グローバル化の現実=地域限定・・・開発途上国へ資本を投入する世界銀行の役割・意義の重要性)

 

国連やOECDなど、国際協力の世界的な機関・・・世界的地球的規模での深刻な問題を解決するため[4]・・これまた人類史上、最近のこと・・・20世紀の二度の世界大戦)を経験してのこと。大局を見たうえで、逆流現象や到達点の水準の低さ対立的展開(世界戦争をも含む武力形態も含めて)は、大局的に見れば、人類の能力(知的能力、精神的能力、生産諸力)を発達・膨張させ、今日のグローバル化した世界を作り出してきた。

 



[1] ルターのドイツ語訳聖書について、ウェーバーがその原典に当たって引用しているか、あるいはそうでないか、そうでない場合、ウェーバーの主張は成り立ちうるかどうか、といった問題。

 他人の言説を利用する場合、どこからその文言をとってきたかは、きわめて重要。

 諸君が、今後、レポートや論文(卒論)を書く場合、どうしてもたくさんの先人の研究や調査を利用し、引用する必要がある。過去の人びとの労苦、研究成果を土台にして、自分の新しい見地を気付いていく必要があるからである。

 その場合、他人、先人に頼っている部分、他人や先人から借りている部分は、そのことがはっきりわかるように明示しておかなければならない。自分の文書(レポート、論文、著書など)の中で、他人からの借り物であることがはっきりして、初めて、自分の固有の貢献部分も明確になる。自分の固有の貢献部分は、われわれの場合、先人の研究蓄積があればあるほど、ごくごくわずかでしかあり得ない。しかし、正直で謙虚な天才の場合は、はっきりと、自分の貢献部分を限定していっている。 

[2] 地球上の個々人の生命も、環境(地球)も、生物・動物も、すべて太陽系地球史のなかで生成・発展・進化(消滅)を遂げて今日にいたったということ、そして太陽系自体が、太陽の燃料の枯渇とともに(あと45億年ほどで枯渇とか)、消滅・死滅すること、これは科学的知識として、人類が見出したことである。現代宇宙論では、この宇宙自体が、150億年ほどの時間と150億光年の広がりとを持つものであり、膨張を続けているという。現代科学は、我々の宇宙自身の生成・膨張(成長・変化・進化)・消滅までを射程に入れて、研究を続けている。 

[3] 国連による1995年の世界直接投資統計のトップ100社一覧等は、篠原三郎・中村共一編著『市場社会の未来―可能性としての「経営学」―』ミネルヴァ書房、1999年、1819ページ(資料配布予定)、参照。  

[4] 有斐閣・経済辞典・第4版から、引用しておこう。

OECD Organization for Economic Cooperation and Development

経済協力開発機構。19601月の大西洋経済会議の議決に基づき,619OEECを改組,発足したもの。社会主義圏におけるCOMECONの強化や途上国の開発問題など,世界経済環境の変化に対応するためにつくられた。加盟国はOEEC加盟の18カ国にアメリカ,カナダ,日本,フィンランド,オーストラリア,ニュージーランド,メキシコ,チェコ,ポーランド,ハンガリー,韓国,スロバキアを加えた30カ国2001年末現在)。日本は644月に正式加盟。本部はパリ。最近は,科学技術政策や環境政策を重視する傾向が見られる。

 

OEECOrganization for European Economic Cooperation

ヨーロッパ経済協力機構。アメリカのヨーロッパ復興計画(マーシャル・プラン)のヨーロッパ側の受入れ・調整機構。1948年イギリス,フランスなど西欧被援助国16カ国によって結成。のち西ドイツとスペインが加盟。ヨーロッパ復興計画終了(52年)後は,これら諸国の経済協力機関として通貨の交換性回復や貿易の自由化などに努力した。61年に改組されOECDとなる。