-----阿部教授「はしがき」の「追記」-----------
助教授以下に広く任期制を入している韓国では、再任拒否が処分かどうかが争われている。そして、処分性を認めたソウル行政法院の判決に対して、高等裁判所が処分性を否定したことは本文(第3章第2節二9)で紹介していたが、この2004年4月22日、大法院(最高裁判所)は、再任拒否を処分として、原審判決を破棄し、差し戻す画期的な判決を下した。すでに本書は校了直前であるので、これは本文修正ではなく、冒頭に特報として追加する。すでに違憲判決が下されていることは本文(第5章一6(2))で紹介した。処分性も学問の自由侵害をも肝胆に否定した京都地裁判決とは雲泥の差がある。さらに、この違憲判決を受けてソウル大学では再任審査のルールが定められた。このことを「特報」として本文の冒頭に記載することとする。
私は、5月1日から2日にソウルで開かれた東アジア行政法学会に参加のおり、徐元宇先生からこの判決を頂き、また、朴正勲先生から再任審査ルールをお教え頂いた。日本人は一般に欧米の方を向いているが、東アジア諸国は日本をはるかに超えていることが少なくない。それは行政手続法、情報公開法、環境影響評価法などの立法の多くにおいて日本が先進国最後であることからも言えるが、さらに、判例のレベルでも日本は遅れをとっているのである。なんとも情けないことである。(5月5日に記す)
---目次----
韓国からの特報 一 再任拒否の処分性を認めた韓国大法院の判決
二 違憲判決後の再任ルールの設定
第1章 ・・以下略