2005年3月23日
横浜市立大学学長
小川惠一殿
横浜市立大学教員組合
執行委員長 中西新太郎
2月15日当局提示就業規則案及び関連規程類にたいする見解と要求U
すでに提出済みの当組合要求書「2月15日当局提示就業規則案及び関連規程類にたいする見解と要求」(本年3月8日付け)の後続部分をここに提出する。当組合の要求を受け入れ、また、誠実に回答することを求める。
6 勤務時間及び関連規程に関する見解と要求
◎教員の終業時刻を午後6時15分としていること(就業規則案第40条第3項)は、現行勤務時間よりも1時間拘束時間を延長するものであり、不利益変更にあたる。また、このように拘束時間を延長する合理的根拠は認め難い。現行どおりの勤務時間とすることを要求する。
1月14日付要求においてすでに指摘したように、教員の終業時刻を1時間延長することは、たとえ休憩時間を法規どおり与えているとしても、拘束時間の延長を戒めた労基法の趣旨に反するもので認めることはできない。
終業時刻を1時間延長する理由について、当局は、教員組合に対する2月15日付回答において、5限(午後4時10分〜午後5時40分)の授業時間をカバーするためとしているが、この説明には合理的根拠がない。
特定の教員が特定の曜日に行う5限授業の終了時刻を理由として終業時刻を一律に1時間延長する必要はない。教員の勤務様態に応じた時間管理を行うことで5限授業に対応することは十分に可能であり、また、その方が、すべての教員の終業時刻を延長するよりも合理的であるのはあきらかである。
当局は延長保育等に問題について別途対応するとしているが、現行のままで対応できる終業時刻を延長したうえで、その結果生じる問題に別途対応するというのは問題の所在を逆転させる取扱である。
現在行われている6限、7限授業について変形労働時間等の時間管理によって対応できるというのであれば、5限についても同様の扱いが可能であり、終業時刻を延長する特段の必要は存在しない。
○就業規則案第40条第4項において、「任期付教員については、労基法第38条の3に規定する手続を経て専門業務型裁量労働制を適用することができる」としているが、専門業務型裁量労働制を採用するかどうかは教員の勤務態様に応じて決定されるべき問題であり、裁量労働制の適用を任期付教員のみにかぎる規定は不適切であり削除すべきである。
また、この規定を受けた「裁量労働勤務規程(案)」は、任期付教員にのみ適用させる案となっており、受け入れることはできない。
当然ながら、「勤務時間・休日及び休暇に関する規程(案)」4条についてもこの趣旨にそって変更されねばならない。
○教員の勤務時間については、その勤務態様にてらし、6ヶ月、1年単位の変形労働時間制をふくむ変形労働時間制、裁量労働制等を適用できるとする規定が設けられるべきである。
○そもそも大学教員について裁量労働制を適用するか否かは労使協定により決せられ効力をもつのであり、当局が一方的に規程案として提示するものではない。「公立大学法人横浜市立大学職員の裁量労働勤務規程(案)」はしたがって労使協議のための労使協定案として提案されるべきものである。
この点を確認した上で協定の内容を協議する用意はある。
○「裁量労働勤務規程(案)」第1条第2項における但書「職場秩序・勤務管理の基本的事柄についてはこの限りでない」の、職場秩序・勤務管理の基本的事柄とは何を指しているのか? 労基法第38条の3第3号は、裁量労働制をとる場合の労使協定事項として、「対象業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、当該対象業務に従事する労働者に対し使用者が具体的な指示をしないこと。」とある。このことと、前記但書とはどのように整合性があるのか? また、労基法に第38条において裁量労働制は計算上のみなし規定として導入されており、裁量労働時間に関する規定なのであって、但書にあるような勤務の規定にはなじまない。この但書を削除すべきである。
○「裁量労働勤務規程(案)」3条で、「深夜勤務・休日労働を行う場合は理事長の承認を得るものとする」としているが、実験等大学教員の研究活動について理事長承認をその都度得なければならないとするのは非現実的であり、専門業務の遂行を阻害する。これを削除するか、あるいは「使用者は裁量労働制を採る労働者の健康管理に注意する」という文言に変更すべきである。
○「裁量労働勤務規程(案)」5条後段の「服務に関する定めを遵守」する旨規定は裁量労働制の規定としては不要である。前段の出退勤管理については、就業規則40条の勤務時間規定に付随させ、「裁量労働制が適用される職員においては厳正に出退勤を自己管理する」旨記しておくべきである。
○年次有給休暇の取得について、「公立大学法人横浜市立大学職員の勤務時間・休日及び休暇等に関する規程(案)」13条5項は、「理事長が特に必要と認める場合」のみ「半日を単位とすることができる」としている。現行の有給休暇取得と同様の扱いとし、「理事長が特に必要と認める場合」という要件によらず半日単位の取得を可能とすべきである。
また、教員の勤務態様の特性から授業コマ単位の取得を可能とするよう要求する。
○「公立大学法人横浜市立大学職員の育児・介護休業等に関する規程」2条は、期間雇用者であって育児休業の対象となる者について、「3歳到達日から1年を経過する日までの間に、労働契約期間が満了し、かつ、更新がないことが明らかである者」を除外している。当局の任期制規程においては助手の再任を1回限りとしているため、上記規定によると、再任後は育児休業の申請ができないこととなる。これは更新回数を限定している任期付教員とりわけ助手に対するきわめて不当な差別であり容認できない。改めるべきである。
○また、この場合、昇任の可能性が存在していることからして、「更新がないことが明らかである」とは言えないとみなしているのかどうか、明確な回答を要求する。
○介護休業についても上記と同様の問題が生じる。
7 兼業規程に関する見解と要求
「公立大学法人横浜市立大学職員兼業規程(案)」は、以下に示すように、およそ教職員が勤務時間外に行う市民活動のすべてにたいし理事長の許可を求めさせようとするものであり、兼業規程の趣旨を逸脱する恐れがある。
○同規程案2条における「職」「業務」の範囲は無限定か、それとも一定の範囲を想定しているのか?
○同規程案4条「職員は、あらかじめ理事長の許可を得て兼業を行うことができる」という規定は、定義における「職」「業務」範囲を無限定とすれば、憲法上認められた市民活動の自由を侵害することとなるが、そうできる根拠は何か?
この点についての回答次第では、あらゆるサークル、市民活動団体・組織への参加が規程上、許可を求められることとなる。
2月28日教員説明会における松浦CEOの説明では、「兼業」に従事する頻度等で差異があるとしたが、規程上ではそのような差異は規定されていない。また、頻度を要件とすれば、たとえば、毎週末少年野球チームの監督ないし審判を務めるような場合には許可できないということになるのか?
○同規程12条1項3号における「法人格を有しない団体」の範囲は何か? 労働組合は「法人格を有しない団体」にふくめているか?
規程案は、同条2項における除外例を除き、ここで規定された団体の役員に就くことを禁じている。これは2項に列挙されている以外の幅広い団体への参加を禁じるものであり、認め難い。
○同条2項における「理事長の許可」要件は、教員組合役員についても及ぶことになるが、これは団結権の不当な侵害にあたる。
また、この規定は、学会役員等について理事長の許可なく就任できないことを明記しており、各種の学術、文化団体に対する不当な干渉を謳っていることになる。
◎営利企業以外の団体における兼業については、公立大学法人職員としての責務に反しないものであることを条件として職員の自由裁量に委ね、必要な場合に届出等の扱いとすべきである。そのさい、とりわけ許可を必要とする兼業、許可しない兼業については、その根拠を明確に説明したうえで、特に規定しておけばよい。
○同6条2項における「理事長が指定する金額を超える報酬等」の「指定する金額」とは具体的にどれだけの金額か?
また、金額を決定する基準は何か?
○同7条における「旅費等実費」とは旅費以外に何を指しているのか?
○同条における「法人の利益に資するもの」とは、12条〜20条における兼業のどの範囲、どの種類を指しているのか?
同17条5項「法令又は条例で、学識経験者からの意見聴取を行うことを義務づけられている場合」、これに応じることすらも理事長の許可事項とするのは、いちじるしく教員の公的活動を阻害することになる。この場合の兼業は、大学の業務に支障がない時間数については、その時間の基準を明示しつつ、許可を不要とすべきである。
○大学の非常勤講師を務める場合従来どおりの扱いとする旨、教員説明会において説明があったが、高等教育機関としての大学が当該大学常勤スタッフの対応できない分野について非常勤職を不可欠とし相互協力を行っている事情から、これは当然のことである。この趣旨から「賃金支給等の例外」として大学等教育研究機関における非常勤職等、教育・研究に関する職・業務について規定しておくべきである。
8 その他の規程類に関する見解と要求
@ 退職規程について
○退職規程における通算手続についてその考え方と原則を示すよう求める。
A 安全衛生管理規程について
○以下のように文言を修正して、正確な表現とせよ。
・第1条「この規程は・・・、職員の健康増進と安全衛生の確保を・・・」を、「職員の健康保持増進と安全衛生の確保を・・・」に。
・第3条「職場における安全と健康の保持増進に…」を、「職場における安全の確保と健康の保持増進に・・・」に。
○各種管理者等の業務内容・権限を明記すべきである。
・第7条の「総括安全衛生管理者」の業務内容を明記すべきである。たとえば、同上第1項の「業務」を「安衛法第10条第1項の定める業務」とするべきである。
・第8条の「衛生管理者」の業務内容を同様に明記すべきである。
・第10条「衛生推進者」の業務内容を同様に明記すべきである。
・第12条「産業医」の業務内容を同様に明記すべきである。
・また、「産業医」の権限を明記すべきである。産業医が理事長または総括安全衛生管理者に対して勧告し、または、安全衛生管理者等に対して指導、もしくは助言することができるとし、理事長または総括安全衛生管理者は、前項の勧告を受けたときは、これを尊重しなければならないとすべきである。
○安全衛生委員会の運営に関する第17条において、労働安全衛生規則第23条第1項により、安全衛生委員会を月に1回以上開催することを明記せよ。
○下記の各種管理者等の選任のしかたについて、どの機関の推薦に基づき、どの機関が任命するのかを明記せよ。
・第8条の「衛生管理者」
・第10条の「衛生推進者」
・第12条の「産業医」
B セクシャル・ハラスメント規程案について
○以下の問題点を解決するために、修正もしくは撤回せよ。
セクシャル・ハラスメント規程案は、全体として不備であり、大学の実態と矛盾するものとなっている。
特に、規程の目的を示す規程案第1条、「この規程は[・・・]セクシュアル・ハラスメントとの防止および排除のための措置並びにセクシュアル・ハラスメントに起因する問題が生じた場合に適切に対応するための措置に関し、教員、職員等関係者[・・・]の利益の保護等を図るため、必要な事項を定めるものとする。」という定めは、大学においては教職員のみならず学生の利益の保護を掲げなければならないという大学の実態を無視しており、到底認められない。
就業規則この条、および同様の問題のある条項を修正するか、もしくは、この規程自体を撤回し、当面のあいだ、就業規則の関連条項では、既存の「横浜市立大学セクシュアル・ハラスメントの防止と対策に関するガイドライン」を職員が遵守すべきことを定めるのみにすべきである。
C 教員評価制度に関する要求と見解
教員評価制度に関して、前回提出した組合の疑問、要求について当局はほとんど回答していない。
○未回答の部分を回答するよう要求する。
○協議、折衝なく教員評価を強行することは許されない。
教員評価制度について、とりわけ教員処遇にかかわる規定、内容をあきらかにし、必要な協議・折衝を行ったうえで、実施手続きについて協議するよう要求する。
「実施するなかで改善していきたい」という回答は、評価制度に不可欠な試行期間をおかず、今年度からいきなり評価を実施するということであり、認められない。
○今年度試行に入るという提案であれば、試行の内容、範囲、全面実施までのプロセスを明確にし、必要な協議を行ったうえですすめるべきである。
9 就業規則(案)にたいする見解と修正要求
@ 全体について
雇用者と被雇用者を拘束する就業規則
就業規則は、労働者の服務のみを定めたものではなく、仕事遂行における雇用者(大学法人)と被雇用者(教員、職員)の守るべき規則を労働現場における両者の対等性保持を考慮して定めるものである。雇用者側がその指示、命令を一方的に正当化するために定めるものではない。就業規則案は労働者が守るべき規則に偏重しており、また雇用者の裁量範囲が非常に広く規定しており、雇用者が守るべき規則とのバランスがとれていない。
○労働者に義務づける事項をより限定し、雇用者の裁量範囲をより限定すべきである。
大学における就業規則の特性
大学という労働現場に適用される就業規則は、大学としての根本的社会的使命である「知の継承と発展」の主たる担い手である教職員が最大限かつ多様にその能力を発揮できるものでなければならない。この観点からみると、
○就業規則案は、教職員の活動を制約し、萎縮させる項目が多く見られる。そのような項目を修正もしくは削除せよ。
○大学の他の規則(学則や学内規定)との整合性について何も述べていない。明示すべきである。
規則の適用手続の透明性
上記(1)でも述べたように、雇用者の裁量範囲が非常に広い就業規則案は、被雇用者にとって規則の遵守を正当化できるものではない。規則の適用の公平性、客観性、公開性が確保される必要がある。
○そのために、利害関係者すべてがその規則適用の過程を知ることができ、かつ、その事実自体を第三者が知ることができる透明性を確保せよ。
職種別の規定が必要
本就業規則の概要は、教員、看護士、技術吏員、一般職員などの区別をせず、「職員」とひとつにまとめて扱う規定となっている。これら職種の相違はひとつにまとめて扱うには大きすぎる。
○項目によっては、職種別の規定とすべきである。
A 個別条項について
採用(第7条)
第7条で扱われる一般職員の採用と教員の採用は、その選考過程が大きく異なる。研究・教育の専門上の評価は面接、経歴評定、筆記試験ではできない。また、「その他の選考方法」では採用審査の公平性が疑われる。
○教員採用については別の定めを置くべきである。
試用期間(第9条)
第9条の定める6か月の試用期間は法的に許容される(雇用上の不安を労働者に与えない)限度の期間である。なぜ、これほどまで、長い期間を試用期間とする必要があるのか?
○第9条の試用期間は、法的に許されるより短い期間とすべきである。
○第1項但書「ただし、理事長が必要と認めたときは、試用期間を短縮し、又は設けないことができる。」について。試用期間はその趣旨からいえば、職種や職務内容によって客観的に決まってくるものであり、理事長の裁量で左右されてよいものではないので、明確な規定を設けるべきである。
労働契約の締結(第10条)
○ 第10条第2項の「理事長は、前項に定めるほか、任期付教員又は任期付大学専門職が[・・・]再任、[・・・]昇任及び[・・・]降任となった場合は、当該職員との間で労働契約を締結する。」とある部分については、再任・昇任のさいに、新たな労働契約によって雇用条件・労働条件を引き下げることのないよう、また降任のさいには十分に合理的な範囲を越えて引き下げないよう規定を設けるべきである(8日要求書4のBのDを参照せよ)。
○ 同条第3項、「横浜市から法人に引き継がれた教員[・・・]との間で、その同意に基づいて、期間を定めた労働契約を締結する。」を削除せよ。承継の職員について新たな労働契約を結ぶことは必要なく、また、有期雇用契約しか結ばないこととする規定は、本人同意なしに期間の定めのない雇用を有期雇用に切り変えることを予定した文言となっており、違法である。
労働条件の明示(第11条)
○ 第11条第2項の規定において、任期付教員・任期付大学専門職の再任・昇任・降任のさいに労働条件を明示するにあたって、勤務条件・労働条件を引き下げないよう規定を設けるべきである。
評価(第13条)
○第13条「勤務実績等について評価を」の「等」は曖昧であるので、削除すべきである。
昇任(第14条)
○昇任決定が公平性、公開性、客観性、透明性をもつ様にするための手続を規定すべきである。第14条第1項の「職員の昇任は理事長が行う。」では、すべて理事長の恣意にゆだねられることになり、許されない。
○第14条第2項の「勤務実績等の評価に基づいて行う。」の「等」は削除すべきである。
降任(第15条)
第15条の扱う降任のような、職員の雇用労働条件に大きな影響を与える決定については、公平性、公開性、客観性、透明性をもつ手続が必要である。
○第1号については、「勤務成績が良くない場合」の「良くない」ことの客観的基準を示すべきである。
○第2号については、セカンドオピニオンを含む医師の診断書などを要することなど、厳格な手続きを規定すべきである。
○降格についての不服申し立て手続、その審査手続、再決定の手続を明確に規定すべきである。
○第4号の「組織改廃により職制を廃止する必要がある場合」は整理解雇四要件を満たす場合に限ることを明記するべきである。
職員の配置(第16条)
○第16条に「法人の業務上の必要に基づき本人の適性等を勘案して」とあるが、本人の意思も勘案の対象とし、事前に過半数代表者あるいは過半数労働組合もしくは労働者の過半数代表者との協議する事項とすべきである。
異動(第17条)
○第17条の扱う異動も労働条件の大きな変更となるから、一方的に雇用者側が決定し、労働者側に服従義務を負わすことはできない。異議申し立て、その審査の手続を規定するか、事前に過半数労働組合もしくは労働者の過半数代表者と協議する事項とすべきである。
○第17条第2項の「職員は、正当な理由がないときは、前項に基づく命令を拒否することができない。」は、職員に正当な理由があるときには、同条第1項に基づく命令を拒否することができることを意味するのか? 労使の対等性を保障するために、正当な理由がある場合に、職員に異動を拒否する権利を保障すべきである。
赴任(第18条)
○第18条第2号の定める赴任の命令についても、第17条と同様に、本異議申し立て手続きを規定し、労働組合、労働者過半数代表との協議事項とすべきである。
退職(第23条)
第23条退職となる場合を列挙するなかで、第1号において「退職を申し出て、理事長から承認された場合」を挙げている。しかし、退職を申し出た場合、すなわち辞職の意思表示をした場合、使用者の承諾の有無にかかわらず、民法627条1項の定めにより、一定期間を経て労働契約は終了する。それゆえ、辞職にさいして理事長の「承認」を要するかのごとき表現は、法の趣旨に反する。
○第23条第1項の「理事長から承認された場合」を、「理事長に受理された場合」とせよ。
退職手続(第24条)
第24条第1項は、教員が自己都合により退職するさい、「退職する日の6か月前」に理事長に申し出ることとしている。退職の告知は、期間の定めのない契約の場合、民法627条が適用され、原則2週間の告知期間が必要であり、期間の定めのある場合、民法628条のいう「已むことを得ざる事由」あるときは、直ちに契約解除ができる。また、有期労働契約においては労基法137条により、当該労働契約の初日から1年を経過した日以後においては、使用者に申し出ることにより、いつでも退職が可能である。さらに、この告知期間は就業規則で短縮はできても、延期はできず、無効となる。6か月前の告知義務は違法である。
○退職の告知期間は、民法627条および労基法137条の規定に反しない期間とすべきである。
解雇(第29条)
第29条第2項の解雇要件のうち、
○第1号においては、専門医の診断にはセカンドオピニオンを認める旨明記せよ。
○第2号については、「勤務成績が著しく良くない場合」の客観的基準を示せ。示せなければ削除せよ。
○第3号の「事業の縮小又は組織の改廃、その他やむを得ない業務上の都合により剰員が生じ、かつ他[に]適当な配置職務がない場合」という規定は、解雇権の濫用を招く。整理解雇四要件を満たす場合に限る旨を明記せよ。
職務専念義務(第33条)
○第33条第2項は、「職員は、法人の利益と相反する行為を行ってはならない。」となっており、「法人の利益」というが、大学法人は利益、利潤をあげることを目的としている訳ではない。また、法人格は大学という組織を効率的に運営するための手段であり、「法人」とすべきではない。「大学の理念、目的」とすべきである。
○同条第3項の「法人がなすべき責を有する業務にのみ従事しなければならない。」という規定は、誰にも到底文字通りには実行できない事柄である。はじめから遵守できないことがわかっている規定を定めるのは法的拘束力をもつものとして不適切である。職務専念義務に関しては一般的表現にとどめるべきである。
○同項の「法人」を「大学」とすべきである。
服務心得(第34条)
○第34条第1項に「職員は、この規則、関係規程又は関係法令を遵守し、上司等の指揮命令に従って、その職務を遂行しなければならない。」とある。しかし、教員の活動のほとんどは、上司等の指揮命令に従って行なわれるものではない。教員については少なくとも別規定とし、「上司等の指揮命令に従って」の部分を削除すべき、あるいは他の表現に改めるべきである。
禁止行為(第35条)
○第35条第1号「法人の信用又は職員全体の名誉を傷つけること」は、表現を改め、「法人の信用又は職員全体の名誉を傷つけるような行為」とせよ。誤解を招く表現である。
○同号における「法人」は「大学」あるいは「大学あるいは法人」とすべきである。
○同条第2号の守秘義務に対し、認められるべき例外として、内部告発制度の規定を設けるべきである。
○
同条第4号「その他法人の秩序及び規律を乱すこと」を削除せよ。職員の権利を不当に侵害するおそれがある。
○同号における「法人」は「大学」あるいは「大学あるいは法人」とすべきである。
文書配付・集会(第37条)
○「職務と関係のない」集会、文書・図画配布を制限する第37条を削除せよ。
大学における自由な言論活動を制限する条文である。大学構成員(教員、職員、学生)すべては、判断力ある大人(市民)として行動している。大学の規則に明らかに反するものでないかぎり、集会、言論は認められるべきであって、使用者側がみだりに規制してはならない。しかも、「職務と関係がない」か否かの判断は悉意的になる。
セクシュアル・ハラスメントの防止(第39条)
○第39条については、本要求第8章Bを見よ。
勤務時間(第40条)
○第40条については、本要求第6章を見よ。
研修(第48条)
○第48条では、教員の長期にわたる海外研修などの機会がどのように保障されるのか不明である。研修規程によって明記すべきである。
懲戒(第9章)
○懲戒に関して、公平性を担保するために、適切な手続きを定め、懲戒審査会を設置するなど、懲戒の手続きを公正に行うための制度的枠組みを作れ。
○懲戒審査会を設置する場合、労働者側の代表として、労働者の過半数代表者もしくは過半数労働組合の代表者を加えること。
懲戒の事由(第50条)
○第50条の懲戒事由の第5号「法人の名誉又は信用を著しく傷つけた場合」において、「法人」を「法人あるいは大学」とし、「法人あるいは大学の名誉又は信用を著しく傷つけるような行為に及んだ場合」とせよ。大学のありかた、方針、制度についての自由な議論を抑圧するおそれがある。
○同条6号「素行不良で法人の秩序又は風紀を乱した場合」を削除せよ。「素行不良」、「法人の秩序」、「風紀」はいずれも曖昧な概念であり、恣意的な解釈によって不当に職員の権利を制限するおそれがある。
○同条8号「私生活上の非違行為や、法人に対する誹謗中傷等によって法人の名誉を傷つけ業務に影響を及ぼすような行為があった場合」を削除せよ。法人に関する自由な言論を圧殺する規定である。
○同条第9号「又は前各号に準ずる違反があった場合」を削除、もしくは限定的な表現に改めよ。このような曖昧な規定があると、恣意的な解釈によっていくらでも職員の権利を制限することができることになる。
不服申し立て(第53条)
○第53条の定める懲戒への不服申し立てにさいしての再審議については、第三者が加わり、客観性、公開性、公平性、透明性が確保された審査委員会の規定が就業規則の一部として定められるべきである。
○
前項の審査委員会においては、公平性を担保するために、労働者の過半数代表者もしくは過半数労働組合の代表者を加えること。
○
不服申し立て期間が7日と異常に短く設定されており、不服申立制度として機能しない。公平性と合理性を確保するために、より長い期間とせよ。
10 就業規則案及び関連規程類についての協議・交渉
○就業規則案及び関連規程類について、今回要求した事項の他に問題点、疑問が生じた場合、組合の要求に応じ協議、交渉を行うこと。
○1年後に規則、規程を見直し、必要な変更、改善を行うこと。見直しにあたっては組合との協議を行うこと。
11 新任人事における任期制誘導の違法性
○「期間の定めのない雇用」教員の転出・退職に当たり、後任人事を労基法14条にもとづく有期雇用契約に切り換えることは、同条改正の趣旨にあきらかに反するものである。(「今回の改正を契機として、企業において、期間の定めのない契約の労働者の退職に伴う採用や新規学卒者の採用について、期間の定めのない契約の労働者を採用することとしていた方針を有期契約労働者のみを採用する方針に変更するなど有期労働契約を期間の定めのない労働契約の代替として利用することは、今回の改正の趣旨に反するものである」労働基準局長通達「労働基準法の一部を改正する法律の施行について」)
当局は労基法14条改正によって有期雇用契約への切り換えが可能となったとしているが、これは上記通達にてらし、労基法14条改正を悪用した典型例とみなされる。
12 学則の整備と検討及び大学自治の原則に立った教員の自律的検討の保障
○教育研究等、大学教員の業務を遂行するに当たっては、大学自治の原則に立ち、学則に則った制度整備が必要とされる。教学組織による適正で民主的手続きにそった学則等の検討・整備ぬきに大学組織及び運営をすすめることは許されない。
以上、要求する。