日韓関係、今後の東アジア関係はどのように発展させるべきか?

現在の問題はどのように解決すべきか?

 一例としての領土問題

 

それを考えるためのひとつの素材:

 

  『Younghee Ahn の韓国レポート』 第152回
   「島の二重国籍」


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 『Younghee Ahn の韓国レポート』                第152回
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「島の二重国籍」

 最近、韓国では日本について、特に「竹島(韓国名:独島)」問題について述べる
ことは憚れる。今年の3月10日、島根県議会が「竹島の日」条例案を可決してから
というもの、韓国のマスコミは「独島・竹島問題」で持ちきりだ。先週、ぺ・ヨン
ジュンが現在撮っている映画の現場公開においても、韓国のマスコミは独島・竹島の
問題を出してきた。もちろん、日本側もそれについては聞きたかったらしいが。

 映画の広報部では、先に質問用紙を配り予め質問を受けていたので、「映画と関係
ない質問は受け付けない」と釘をさしたが、結局最後の自由質問において韓国の公共
放送であるKBS(韓国放送公社)と民間放送の老舗であるMBC(韓国文化放送)
が「最も代表的な韓流スターとして『独島問題』をどう考えているのか」という質問
をした。

 これに対し、ぺヨンジュンは「国民の一人として懸念しているが、ここは映画の話
をする場なので席を改めて話をしたい」と述べた。また、今週は「甘い人生」の舞台
挨拶をしたイ・ビョンホンに対してもマスコミは同じような質問をしている。彼もま
た韓国のマスコミにとっては物足りない答え方だった。

 韓国人は「独島は韓国のもの、間違いない!」と思っている。日本では「竹島は日
本のもの」としている。筆者は、小さい頃からどちらの名称も知っていたが、地理に
弱かったせいか『独島』と『竹島』はそれぞれ別のものだと思っていた。それが同じ
島だと知った時、一体どちらの意見があっているのか、とても不思議な気持ちだった。

 韓国語で「ドット」と言われている島は、漢字は「独島」だが当て字で元々の意味
は「石島」だ。岩礁だらけの島で無人島だったからだという。この無人島が「近くて
遠い国」から「近くて近い国」へと一歩近づいた矢先にまた元通りになろうとしてい
る。

 島根県議会が「竹島(韓国名・独島)の日」条例を制定したことに抗議し、韓国で
は韓流ブームの火付け役となったドラマ「冬のソナタ」の舞台、江原道春川(チュン
チョン)市が18日、岐阜県各務原市、山口県防府市などとの相互交流事業を無期延
期すると発表した。また慶尚南道馬山(マサン)市議会は同日、6月19日を「対馬
の日」とする条例案を可決した。また、これまでは島巡りしかできなかった独島の観
光が、3月24日からは観光客が島へ上がることもできるようになった。24日には
天候悪化で結局実現できなかったが。

 韓国に進出している日本の企業は韓国人の「日本製品不買運動」に敏感になってい
るが、韓国企業もまた日本への輸出に影響が出やしないかと気を揉めている。韓流の
関係者も経済界もこの場合は、慎重にしていようと思うらしい。

 80年代、韓国民が「反日」を超え、「克日」とまで叫んでいた時、ある歌謡曲が
ヒットした。それは「独島はわが領土」という歌である。「ウルルン島東南方面へ船
道で200里(韓国の10里が日本の1里)、独りの島鳥たちの故郷、どいつが何と
言っても独島はわが領土」と歌うもので、爆発的な人気だった。しかし、政府は日本
を刺激しすぎるという理由で、その歌は禁止曲となった。それでも巷では歌われてき
ており、最近また復活した。曲の途中で「対馬は日本のもの、独島はわが領土」とい
う部分があるが、現在は「対馬はさておき」と歌詞が変えられたという。

 国際法上では日本がたくさんのネゴをして日本が有利だと韓国側は考えている。し
かし、実効的に同島は韓国が支配している。日本側はそれは不法占拠だという。これ
はまるで島の二重国籍だ。しかし、二重国籍者は永遠になれるものではない。成人に
なると、どちらかの国籍を取得し、片方は捨てなければならない。独島・竹島は「東
島」と「西島」にわかれている。これって仲良く取り分けるわけにはいかないのか。

 それにしても、筆者の知り合いで日本のマスコミ関係者は「韓流ブームであんなに
盛り上がっていた日韓友好ブームは一体何だったの? 今年は日韓友好の年なんで
しょう?」と嘆く。

 今年は日韓国交正常化になって40年たった年で、「日韓友好の年」、お互い仲良
くやりましょうっていうじゃない? だけど、昨今の雰囲気まったく友好的ではあり
ませんから。残念。

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Younghee Ahn
(アン・ヨンヒ)
韓国生まれの韓国人。小学4年から高校1年まで、大阪在住。韓国外国語大学同時通
訳大学院日本語修士課程卒業。同時通訳からスタートして、放送コーディネーターや
翻訳、トレンドについてのレポートなどを発表。現在、韓国梨花女子大で、日本語の
講師も務める。著書に『シナブロ(知らぬ間に少しずつ)』(小学館)
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