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第22号 平成16年5月26日(水曜日)
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平成十六年五月二十六日(水曜日)
午前十時開議
出席委員
委員長 池坊 保子君
理事 青山 丘君 理事 伊藤信太郎君
理事 遠藤 利明君 理事 渡海紀三朗君
理事 川内 博史君 理事 平野 博文君
理事 牧 義夫君 理事 斉藤 鉄夫君
今津 寛君 江崎 鐵磨君
小渕 優子君 奥野 信亮君
加藤 紘一君 上川 陽子君
城内 実君 岸田 文雄君
近藤 基彦君 菅原 一秀君
鈴木 恒夫君 田村 憲久君
平田 耕一君 古川 禎久君
三ッ矢憲生君 山際大志郎君
山下 貴史君 安住 淳君
加藤 尚彦君 城井 崇君
小泉 俊明君 小林千代美君
古賀 一成君 須藤 浩君
高井 美穂君 土肥 隆一君
鳩山由紀夫君 肥田美代子君
牧野 聖修君 松野 頼久君
松本 大輔君 笠 浩史君
富田 茂之君 石井 郁子君
横光 克彦君
…………………………………
文部科学大臣 河村 建夫君
文部科学副大臣 小野 晋也君
文部科学大臣政務官 田村 憲久君
政府参考人
(内閣府政策統括官) 林 幸秀君
政府参考人
(警察庁長官官房審議官) 吉田 英法君
政府参考人
(文部科学省生涯学習政策局長) 銭谷 眞美君
政府参考人
(文部科学省初等中等教育局長) 近藤 信司君
政府参考人
(文部科学省高等教育局長) 遠藤純一郎君
政府参考人
(文部科学省高等教育局私学部長) 加茂川幸夫君
政府参考人
(文部科学省研究振興局長) 石川 明君
政府参考人
(文部科学省研究開発局長) 坂田 東一君
政府参考人
(文部科学省スポーツ・青少年局長) 田中壮一郎君
政府参考人
(文化庁次長) 素川 富司君
政府参考人
(厚生労働省労働基準局安全衛生部長) 恒川 謙司君
政府参考人
(経済産業省大臣官房審議官) 岩田 悟志君
参考人
(東京大学名誉教授) 小柴 昌俊君
参考人
(独立行政法人理化学研究所ゲノム科学総合研究センター特別顧問) 和田 昭允君
参考人
(原子力委員会委員長) 近藤 駿介君
文部科学委員会専門員 崎谷 康文君
―――――――――――――
委員の異動
五月二十六日
辞任 補欠選任
宇野 治君 山下 貴史君
田村 憲久君 平田 耕一君
西村 明宏君 菅原 一秀君
城井 崇君 安住 淳君
鳩山由紀夫君 松野 頼久君
松本 大輔君 小泉 俊明君
同日
辞任 補欠選任
菅原 一秀君 西村 明宏君
平田 耕一君 三ッ矢憲生君
山下 貴史君 宇野 治君
安住 淳君 城井 崇君
小泉 俊明君 松本 大輔君
松野 頼久君 鳩山由紀夫君
同日
辞任 補欠選任
三ッ矢憲生君 田村 憲久君
―――――――――――――
五月二十五日
著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第九一号)(参議院送付)
同月二十六日
教育基本法の改正反対に関する請願(照屋寛徳君紹介)(第二四五三号)
学校事務職員・学校栄養職員の定数改善と給与費等半額国庫負担の拡充に関する請願(永田寿康君紹介)(第二四九七号)
すべての子どもに行き届いた教育、私学助成増額に関する請願(永田寿康君紹介)(第二四九八号)
私立幼稚園教育の充実と発展に関する請願(石井郁子君紹介)(第二四九九号)
同(笠浩史君紹介)(第二五〇〇号)
教育基本法を学校や社会に生かす施策に関する請願(石井郁子君紹介)(第二五九四号)
は本委員会に付託された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
参考人出頭要求に関する件
著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第九一号)(参議院送付)
文部科学行政の基本施策に関する件
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――――◇―――――
○池坊委員長 これより会議を開きます。
文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。
この際、お諮りいたします。
本件調査のため、本日、参考人として東京大学名誉教授小柴昌俊さん、独立行政法人理化学研究所ゲノム科学総合研究センター特別顧問和田昭允さん及び原子力委員会委員長近藤駿介さんの出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣府政策統括官林幸秀君、警察庁長官官房審議官吉田英法君、文部科学省生涯学習政策局長銭谷眞美君、初等中等教育局長近藤信司君、高等教育局長遠藤純一郎君、高等教育局私学部長加茂川幸夫君、研究振興局長石川明君、研究開発局長坂田東一君、スポーツ・青少年局長田中壮一郎君、文化庁次長素川富司君、厚生労働省労働基準局安全衛生部長恒川謙司君及び経済産業省大臣官房審議官岩田悟志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○池坊委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○池坊委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤紘一君。
○加藤(紘)委員 自民党の加藤紘一でございます。
この委員会の我が党の理事は非常に人使い荒い理事でございまして、私は、九年間、こういう国会での質疑というのをやっていないのです。それでもとにかくやれというので、何となく緊張しながら質問させていただきたいと思います。
きょうは、小柴先生と和田先生、それぞれ、日本の量子物理学の最先端の方と、それからバイオテクノロジー、バイオの分野の、もう日本というか世界で最先端のお二人をここにお呼びして質疑をするというのは、極めてぜいたくなことだと思うのです。これは国会議員でなければできないなというふうに、本当に心から感謝申し上げて、質疑を幾つか、日ごろ私が感じている疑問点みたいなこと、胸の中の何というか惑いみたいなものをぶつけて、お二人の先生にいろいろ御指導いただければと思っています。
その前に、ちょっと一つ大臣にも御質問したいのですが、小学校の理科の質問なんですけれども、大臣、光というのは速いものでしょうか、どうでしょうか。
○河村国務大臣 窓をあけたら、ぱっともう明るくなっていますから、光にスピードがあるという感じは、私、余り抱いたことがなかったのですが。
音の速さとかそういうことについては、絶えず音速は何倍であるとかいう意識を持ちましたが、光についての速さという意識を、今先生に言われてみて、持っていなかったなというふうに思いました。
○加藤(紘)委員 なかなか深く考えてお答えになり過ぎているような気がするんですが、私ら、小学校のころ、光というのは地球を一秒間に七回り半する、三十万キロというものであると。音はたしか三百二十メーターぐらいだったような気がするんですが、光というのは世界の中で最も速いものだというふうに教わったんですね。
ところが、約十年前に、ある会社の社長に会いました。その方は、加藤さん、光というものを私は商売にしているけれども、光というのは足が遅いんですよと言うんですね。あれ、三十万キロじゃありませんでしたかと言ったら、いや、それは、あなたの感覚で言えば三十万キロで速いんでしょう、しかし、我々が、光を商売にしていますが、その我々の単位で考えると、光は三十センチしか動かないんですと。何ですかそれはと言ったら、我々は、一秒の十億分の一の単位で光を観測しています、ナノセカンドと言います、その十億分の一秒の単位で見ると三十センチしか動かぬのです、その光というのは微妙な微妙なものですというのを言ったのは、浜松ホトニクスという会社の晝馬輝夫という人なんですが。お昼間に照っているという名字の名前だから、おもしろい社長なんですが、それなりにしっかりとした会社で、東証一部上場企業で、それなりの株価を示している会社なんですね。
それで、はあと言ったら、私は小柴という人とつき合ったのが運の尽きでした、その小柴という人に次から次へと要求されて、とにかく微妙な光を測定できる装置をつくれ、ランプをつくれと言われて、何十年かつき合ったんですと。そして、あの岐阜県の山の中の奥にランプを、何かあのじいさん埋めちゃって、それで何とかはかると言うんですよね、困った大学教授でね、でも、私はその人につき合っていくんですと言っていました。
小柴先生のカミオカンデにおけるニュートリノの発見、それを見た、そして重さがあるということがわかったということのようなんですけれども、私は、多分、浜松ホトニクスという会社が小柴教授のお手伝いをしなかったら、ノーベル賞に行き着かなかったのではないかなぐらいに思っておるんですけれども、その辺について、二、三十年の歴史のようですから、ちょっと一言お話しいただければと思います。
○小柴参考人 失礼して、今の御質問にお答えしたいと思います。
御指摘のとおり、浜松ホトニクスという会社、昔は別の名前だったんですけれども、そこの社長さん、晝馬さんに大学に来ていただきまして、今考えている地下の神岡実験、これとちょうど競合する形のアメリカの実験が数倍の規模でアメリカで進行している、そのライバルと競争して惨めに負けないためには、どこか違ったねらいを出さなければならない。それで、私、考えて考えて考え抜きまして、予算を大幅にふやしてもらうわけにはいかないんだから、球の数をふやすわけにはいかない。残る道はただ一つ、一つ一つの光の検出器、光電子増倍管と呼ばれるその球の感度をけた違いによくして、ずうたいでは劣るけれども精度で勝ってやろうと。そういうふうに決めて、その晝馬社長に大学に来ていただきまして、世界一の球になるけれども、直径五十センチの光電子増倍管をつくりたい。
彼は、渋りました。そんなことは到底できそうもない。それを三時間以上かかって口説きまして、私のところの研究者も開発の共同研究にそちらへ回す、そちらの技術者と一緒になって開発をぜひやってくれと。結局、最後に彼は承諾しまして、共同で開発しましたのがその世界最大の光電子増倍管なんです。これがうまくつくれましたので、精度の面ではけた違いにいい実験になりまして、それが、実は、実際につけてみますと本当によく働いて、エネルギーの小さい電子までちゃんと観測できるということを実際に見ることができました。
そこで、私、すぐ考えましたのは、このカミオカンデという実験は、もともと、水素原子がぱっと光になって消えてしまうという新しい理論が本当かどうかというのを検証しようとして、そのぱっと消える水素原子を探せということで始めた実験でございますけれども、正直なことを言って、これは、もしそれを見つければ、もうその年あるいは翌年にノーベル物理学賞確実というような大発見にはなるんですけれども、これはまさに宝くじと同じでして、獲物は当たれば大きいけれども、当たる確率はほとんどゼロ、こういうようなプロジェクトです。そういうことに私自身、私は昔風の人間のせいなのか、そういうことに国民の税金を何億と使うということに大変重い気持ちを持っていました。
そこで、その新しい大きな球を使えばエネルギーの小さい電子までちゃんと観測できるぞということを見た途端に、私、その当時世界のなぞになっていた、太陽から出てきているニュートリノを、電子をたたかせて、その電子を観測するという方法で、さかのぼって太陽のニュートリノの観測ができるんじゃないかということに気がつきまして、仲間と議論して、反対する人もいましたけれども、結局、足りない予算の面はアメリカからの共同研究者を誘い入れて、検出器自体も改造しまして、一年半かかって太陽からのニュートリノを観測できるようにいたしました。これがカミオカンデという実験の成功した一番の原因でございます。
ですから、加藤議員のおっしゃるとおり、世界最大の光電子増倍管を浜松ホトニクスと共同で開発できたということが、神岡実験の成功の一番の原因でございます。
○加藤(紘)委員 カミオカンデとそれから浜松ホトニクスのその共同の関係というのは、いろいろ今初めてお聞きしたことが多いんですが、小柴先生のノーベル賞受賞についてはいろいろなストーリーが当時書かれていましたけれども、今のお話で、やはり研究者というものと、それから、それを助けて装置をつくる人たちの物すごい取り組みで、こういう日本だけにしかない成果ができるんだと思いますね。
それで、先生、申しわけない、私は小柴先生の高等学校の後輩なんですけれども、物理は余り得意じゃなかった方なものですから、素粒子がどうした、それからニュートリノに電子を当ててと言われると、だんだんもうわからなくなって、もう既にわからなくなっているんですが。
それで、私は、ノーベル賞を授与される前に、いや大変な装置だよというので、岐阜県の神岡に行ってみたんです。そうしたら、直径四、五十メーター、深さ六、七十メーターの水槽ができていまして、そこに水をたっぷり入れて、その周辺に、今小柴先生がおっしゃった、直径五十センチぐらいの巨大な増倍管というランプが一万一千百個ついているんですね。強烈なものでしたね。私が行ったのは、一年に一遍ぐらいですか、水を抜いていくときなものですから、水のない水槽の中に入ってずうっと見ていましたら、ある種の鬼気迫るものがあったと思うんです。
それで、あの研究所の所長さんに、現場の所長さんに、ニュートリノというのは何ですか、それがわかったら一体どうなるんですかと聞きましたら、地球がどうやって生まれたかということがわかるんだ、星がどうやって崩れていったかがわかるんだと。それで、ある全く新しいどこかのすい星が、星が壊れた、その壊れたときに素粒子とかニュートリノとかというものがばんと宇宙に出てくるのである、それをここでぴいっと捕まえて、それをぴたっとカメラで撮って電気信号に変えるんだみたいなことをおっしゃっていたから、それで、我々の生活とどうなるんですかと聞きましたら、それはわかりませんねと。それで、では、なぜ研究なさるんですかと言ったら、宇宙の真理を探るんだと。よくこんな研究にお金をつけたなと思いまして、それで、まあ私もしつこいですから、なぜそれで我々の将来に何か考え方が変わることがあるんですかと言ったら、驚くことを言いまして、これは正確に理解しているかどうか知らないけれども、こういうニュートリノというのに重量があるということがわかると、この地球が三十億年ぐらい後にぼんと破裂してなくなるんだということになりますねというようなことをおっしゃっていまして、ということは暗い話ですねと言ったら、それは、でも真実なんですというようなことを言っていました。その辺はちょっとわかりませんけれども。
それで、浜松ホトニクスの社長に聞くと、だから光は哲学です、時間は哲学ですみたいな、わけのわからないことをおっしゃるんですね。
でも、これによって、私は、バイオテクノロジーの、たんぱく質の解析もやれるような技術に、いろいろなところに展開していくんだろうと思うし、ナノテクノロジーでいわゆる超LSIの線をどんどんどんどん細くしていって、そして携帯電話が多分切手大ぐらいまでになったり、アメリカのコングレス・オブ・ライブラリー、つまり国会図書館の資料が角砂糖一個の中に入りますよみたいなアメリカの話も、多分浜松ホトニクスの光によるいろいろな検査の力がなければできなかったんじゃなかったかなと、そういう世界になっていくだろうし、恐らくこの光電子増倍管の世界では七〇%の世界シェアを持っていて、なぜ一〇〇%にしないんですかと言ったら、一〇〇にできます、できるけれども、一〇〇にすると貿易摩擦が起こるからやらないんですとかと余裕のあることを言っているんですね。
そこで、私がきょう、あと残りの時間、統一してお聞きしたいのは、日本にこうやって小柴さんと浜松ホトニクスなどの関係でうまくいった研究があると同時に、まだまだこれからなんですけれども、和田さんがおいでいただいたDNA分析は、和田さんが世界に先駆けて提案したし、日本にもその技術が十分にあって、もう最先端を行けるはずだったのに、途中でちょっと足踏みしたところがあるんです。本当に惜しいなと思うんだけれども、そこの違いはどこから来たのか。行政が判断を間違えたのかねと、政治家が先見性がなかったのかねと、それとも学界が非協力的であったのかねと。そして、これを検証して、今後我々、二度と同じような間違いをしたくないなというようなつもりなものですから、ちょっとお二人の大学者に一緒に来てもらったなぞという失礼の段になったことをお許しいただきたいんです。
その前に、それでは和田さんの方のDNA分析の話をしますと、人間のDNAというのは、三十億の塩基対が連なっている、記号が殻の中に、細胞の中にあるというのはよく書いてありますけれども、それを日本でやろうじゃないかと言ったのは和田さんで、そして世界の中で一番早かったと僕は思うんですね。
DNAの構造を見つけたのはもちろんアメリカなんですけれども、DNAの解析、シークエンスというのをやってみようというふうに提案されたのは、たしか和田さんが初めておっしゃられたのは二十五年ぐらい前なんじゃないかな。一九八一年ぐらいからおっしゃられて、ここに表があるんですけれども、一九八一年にDNAの抽出・解析・合成プロジェクトというのが和田さんを委員長にして発足するんですね。その後どんどんどんどんといくんですけれども、最後に、二〇〇〇年にアメリカのセレラ・ジェノミクス社という民間の会社がヒューマンゲノム三十億塩基対を読み取ってしまう。そして、その読み取ってしまうのに使われた技術は日立の人がつくった。
私はいろいろなところでこの写真を目にするんです。それはこれの写真で、一九八七年に和田さんが委員長で、DNAの解析をみんなでやりましょうと、世界の最先端の学者が岡山市に集まった。そしてそのときに、いろいろなすぐれた学者がいるんですけれども、ここにいる神原さんという日立のシニアフェローがDNA分析をだだっとやるある技術を、キャピラリー分析機とかというんですけれども、それを考案した。それから、もっと日本には埼玉大学の別の先生もいた。
ところが、結局、我が方国内の事情でそれが特許にならずに、機械にならずに、製品にならずに、そしてそのときに、あんたたちが製品化しないのならば、ではこれいただきと言って持っていかれた人がここにいるアメリカの研究者。カリフォルニア工科大学の研究者で名前がマイケル・ハンカピラーという人なんですが、この人がアプライド・バイオテクノロジー会社、ABIというのをつくって、そしてそれから製品をパーキン・エルマーという装置会社につくらせて、そしてベンターという仲間と一緒にセレラ・ジェノミクス社という会社をつくって、驚くことに当時はアメリカ、イギリス、日本、この三つの地域で、国際共同で政府の金で三十億を一生懸命読んでいこう、といったのを、この一民間会社が御承知のように二年早く読みこなしちゃった、民間ビジネスの会社が。そして翌年には、クリントン大統領とブレア首相とそのセレラ・ジェノミクス社の社長のベンターがホワイトハウスで、我々やったからねとファンファーレ高らかに世界に宣言して、DNAはこっちのものさというふうにやったわけですが、それがやられたというのは、私がいろいろ聞いた中では、日立製作所の神原秀記という研究員の研究成果を全部使ったわけですね、アメリカの解析機械メーカー及びそれを使って実行した分析会社が。
日本がこれだけいいものを持っていて、発想、それから技術を持っていて、どうして花開かなかったのか、そこをきょうお聞きして、そして、まだまだ私は、カミオカンデの実験は続くし、それからバイオの世界の勝負もこれからだと思っているものですから、では我々政治家が今後どこに注意したらいいのか、役所の人にもどこを頑張ってもらわなきゃいけないのか。何せ科学の話というのはわからないものですから、できるだけわかりやすく、この違いみたいなものがどこにあったんだろうというところを和田さんにまずお願いできますか。
○和田参考人 和田でございます。
あらかじめ加藤議員から、小柴プロジェクトと和田プロジェクトの違いはどういう点にあるのか、一方は日本でうまくいき、一方は日本で言い出したにもかかわらずアメリカがやってしまった、そこのポイントは何かという御質問をいただいておりましたので、時間の関係もございますので整理してまいりました。それで、メモに沿ってお答えをしたいと思います。
小柴さんと私は同じ理学部の物理学教室の同僚であり、小柴さんは私の尊敬すべき先輩であります。したがって、いろいろな大きなプロジェクトについて、小柴プロジェクトの基本的な考え方、どういう進め方、これを非常に参考にさせていただきました。もう四十年近いおつき合いでございます。一つは、そういう物理学教室の雰囲気というものが大きなプロジェクトをやるという場合に大きく影響をしていたということは感じます。
以下申し上げますが、全部で六項ございまして、第一項は、小柴プロジェクトと和田プロジェクトの共通点でございます。これは両方とも、我が国のハイテクの優位をフルに使って世界の先頭を切ろう、つまり我が国にあるすぐれたものをどんどん使ってほかの分野においても先頭を切ろう、そういう思想でございます。あとの二番目から六番目までは、小柴プロジェクトと和田プロジェクトが非常に明確に明暗を分けた点を申し上げます。
まず、国家予算の投資メカニズムでございますけれども、小柴プロジェクトは文部科学省予算でございまして、東京大学、浜松ホトニクスそれから文部科学省という三者の中で閉じておりました。したがって、小柴氏の考えのみによって、小柴さんの主導でもってプロジェクトが進んだわけであります。
和田プロジェクトは科学技術庁の振興調整費でございましたので、これは文部省管下の大学にはじかに落とせないということで理化学研究所を受け皿とし、また、科学技術庁の振興調整費で三年やりました後は、予算を出すもととして、がん特別研究というようなそちらの枠をとったということで、同じプロジェクトに対して非常に予算が回り道して出て、かつ、受け皿のところの例えば理化学研究所がプロジェクトに関してかなりの発言権を持つようになった。言いかえますれば、そこで和田の主導から問題が外れたわけであります。
それからもう一つ、三番目は、研究者社会の風土がございまして、物理学には大プロジェクトが多うございまして、言ってみれば小柴さんのプロジェクトは中プロジェクトです。ですから、それぐらいのものが出ても、そんなに強い反対はない。それから、物理学者には、大きな課題に正面から挑戦するという、そういう体質があります。
一方、和田プロジェクトは、生物科学社会の中では突出したプロジェクトであったために、強い抵抗がありました。その反面、日本国内で和田の話を聞いてくれたのは、渡辺格さん、それからもう一つ、要するに二つの研究グループだけでありまして、ほかの研究グループは、そんなのはどうせできないだろうと話も聞かない。一方、アメリカは、私はもう何遍も呼ばれて、アメリカのNIH、DOE等々で何遍も講演させられて、彼らはよくそのポイントを酌み取ったわけであります。そういう点で、日本の研究者社会、特に物理研究者社会と生物研究者社会の間に大きな違いがあったというように感じます。
殊に、当時の官が相談をされておりました研究者がこのプロジェクトに反対であって、DNAを機械に読ませるぐらいならおれに予算をよこせというような発言も、私、じかに耳で聞いたことがございます。
それから、日本の生物学者には、大きな課題に正面からチャレンジする習慣というのが、当時は少なくともありませんでした。
それから、協力企業の相違でありますけれども、小柴プロジェクトは、今もお話がありましたように、浜松ホトニクスというワンマン社長の判断で協力した。それから、和田プロジェクトの方は、多くの企業が参加し、若い研究者は意欲に燃えて、本当に協力を惜しまずしてくれたわけでありますが、彼らは会社に帰りますと中間管理職に、おまえ、何でもうからないことをやっているんだということを言われた。それで、私は随分その社長にいろいろ直談判をしまして、これは国家プロジェクトなんだから大事なんだということは随分説得をし、オーナー社長の場合にはそれがかなり功を奏しました。浜松ホトニクスの場合と同じような感じでありました。
それから、純粋科学の産業化への抵抗というのが当時ございました。小柴プロジェクトは、産業化とは全く無関係、物理の大きな課題への挑戦だということで認められましたが、和田プロジェクトの場合には、産業機器として発展する可能性があり、産業への奉仕が歓迎されなかった当時では非常な逆風が吹きました。時間がありませんので詳しいことは省きますけれども、産業に大学の研究者が協力するというのは何かこう魂を売るような、そういうような感じもある部分にはございました。
それからもう一つ、これが一番大きい問題かもしれませんけれども、ゲノム解読というのが生命科学の大きな課題であるという認識が少なくとも我が国には全く欠如しておりまして、これは単に、読んで、ではどうするのという、そういう感じでありました。
それから、最後でありますが、米国への配慮というのがやはり小柴プロジェクトと和田プロジェクトの間の大きな違いだったと思います。小柴プロジェクトの場合には、完全に学術的競争と認識されて、これはフェアに競争しようというわけでありますが、和田プロジェクトの場合は、多くの企業、日立、富士写真フイルム等々有名企業が多く参加しておりましたために、米国の下院議員が生命産業における日本の独走という危機を必要以上に言い立てまして、日本にやられてしまうぞという、そういうことをキャンペーンを広げまして、一方、日本国内の反対研究者はそれをとらえて、アメリカを余り刺激するとろくなことはないぞということで和田プロジェクトを抑えにかかった。
そういう大体六つの要素でもって、小柴プロジェクトと和田プロジェクトの明暗が分かれたというように私は感じております。
以上です。
○加藤(紘)委員 大分考えさせられる点がございまして、その一つの大きなことは、確かに、ヒューマンゲノム、三十億塩基対については負けた、日本の貢献は六%ぐらいだ。といっても、やはりバイオ学界の中では、そんなものいいじゃないのと。あれは要するにジグソーパズルのそれぞれのピースが三十億どこにあるかとわかっただけで、どのピースとどのピースが二千ずつ集まるとそれが有用なたんぱくになるのか何だとかという話はこれからなんだから、ピースがどこにあるかみたいな、そんな機械的な話はほかの国にやらせておいたってよかったんだよと。
悔し紛れなのか、まだまだそうおっしゃっている人がおるし、それから、さらに進んで、いろいろな遺伝子を、SNPSとかという形でいろいろなことを機械的につくれるよといっても、そんなものは学問じゃないという声も聞くし、何といいますか、日本の場合には縦型で、こうやっていったらがんの遺伝子が見つかったみたいなことについては一面トップでいくけれども、検査の機器それから手法、それをずっと横断的に工夫していくというものについては、何となく学界としては、まあだれかやればというような感じがあることも事実だと思うんですね。
でも、私は、振り返れば、やはりDNAの解析は日本でやっておいた方がよかった。幸いなことに、特許庁の幹部の人たちが、三十億の塩基対を読んだからといってこれは国際特許にはならぬよという戦略を立てて、それで、アメリカ、ヨーロッパ、日本の特許庁長官会議か何かで四年前に、それはなしね、それだけでは意味ないんだからねというところをやってくれたからよかったようなものの、もしそのセレラ・ジェノミクス社が解読したデータ本を読む場合には一回幾らお金をよこしなさいみたいな話になっていたら大変だったなというふうに思います。
さあ、そこで、どうしても気になりますのは、今和田さんがおっしゃった中で、当時、政界とか官界には余り、そこまでやるなという雰囲気があったということをおっしゃっていましたが、これは実は一九九五年ぐらいの話じゃないかな、九三年ぐらいの話で、日米貿易摩擦のころと、それから、円がぐんぐん円高になりまして、七十九円七十五銭、要するに八十円を切るまで日本のひとり勝ちの時代だったんですね。それで、飛行機産業ぐらいアメリカに残しておこう、それから、日立さん、いろいろ技術を持っておられるかもしれないけれども、そこまで全部日本が独占しちゃもめるよねという雰囲気があったことは事実です。
当時、私は自社さ三党連立政権の政調会長をしておりまして、その八十円を切ったときに一体どうしたらいいだろうと思ったし、それから、日本がひとり勝ちというのは、これはマージャンも似たようなもので、遊んでくれる人はもういなくなるねというふうに思っていたことも事実なので、やはりその辺はきいたですかね、官界、政界のそういった雰囲気は。ちょっともう一度和田さんに、その辺。
○和田参考人 きいたかきかないかという二分法でお答えするのは非常に難しいと思いますけれども、やはり私は、この日本でこういう研究が進む、進まないという最終責任者は研究者だと思います。
しかし、研究者には、もちろん、今申しましたように、いろいろな意見がございまして、賛成意見、反対意見がございますけれども、やはりそういう外部の雰囲気、研究者外の雰囲気というのは、反対者を元気づかせる、賛成者を元気づかせる、そういう方向に働きますので、お答えとしては、直接に影響があったというよりは、最終責任者である研究者社会に与えた影響は決して少なくはなかったと思います。
○加藤(紘)委員 大臣、こういったときに、我々も政治家として、この国の科学技術基本政策はどうあるべきか日々考えますけれども、小選挙区制度になったものですから、私たち国会議員がやることは、やはり道路のこともありますし、それから年金なんかも一生懸命勉強しなきゃならぬし、それから農業もありますし、いろいろ森羅万象、全部やらなきゃならぬものですから、なかなか難しいんですね。
そういったときに、今、和田さんがおっしゃったように、物理学界というのはかなり古い権威の確立した学界で、特に宇宙物理というんですか、そういう世界は、何か小柴さんがこの辺でやろうと思うんだけれどもどうだねと言うと、小柴さんの神通力みたいなリーダーシップがあって、みんな、いややりなさいよと。それで足りないときには、時々、小柴さんは外国の学者さんに、ノーベル賞受賞クラスの学者さんにちょっと応援してよと言うと、その学者が有馬東大総長に手紙を書くと、それが文部省に伝わっていくという、なかなかの手練手管、手練手管と言うと失礼だけれども、そういう戦略も使いながらこの研究を引っ張っていかれた。
それで、小柴さんはすごいリーダーシップですねと下の学者さんたちに言いますと、いやあ、うちの親分はすごいです、ただ、その下にいる我々も立派ですからねとか言ってげらげら笑うようないい雰囲気がありまして、それで、何か小柴組と言うんだそうで、どこかの建設会社みたいな感じなんですが、そういうことでどんどん進んでいくという。
やはり、古い学界、権威のある学界におられた方と、それから和田さんのように、物理をやりながら生物学の方に進入していかれるわけですね。そして、生物生命の真理というものを幾つかの暗号の積み重ねとして解析していこうというのは、そうなるとやはり、生物学者としては冒涜されたような気分に当然なったりするんじゃないか、それは今でも続いているのではないかという感じが私はしますけれども、まず、両方のプロジェクトのそんな関係について、小柴さんからちょっと御感想と、その後、大臣からも御感想をいただきたいと思います。
○小柴参考人 今お話しのように、私どもの方は、自分でも思わないくらい、いろいろな方々の応援を得てうまく進んだんですけれども、和田さんの場合は、今、加藤さんが指摘されましたように、物理ということをやっていた教室の人が生き物関係の方に手を出して、それで大きなプロジェクトというのを、これをやるべきだというようなことを言ったということで、恐らく、ずっと生物学あるいは遺伝子をやっていた先生方から見ると、何生意気なことを言うんだというような雰囲気があったんだろうと私は想像いたします。
それで、あと何か私、申し上げることがあるのかどうか。
○河村国務大臣 我々政治家のことについても、小選挙区になっていろいろな意味で大変だというお話。確かに、中選挙区時代には、同じ選挙区で同じ党にいても、それぞれ分野を持ってやっていれば、あっちがあっちの専門ならおれはこっちへ行くわという感じだったんですが、そういう意味では、我々もあらゆる面について目を配っていかなきゃいけない、知識を持っていかなきゃいかぬ。
しかし、やはりその中でも、これが自分のライフワークだというものを持っていくべきだろう、私どもはそう思っておりまして、小選挙区制のあり方についていろいろありますけれども、やはり国会議員は森羅万象を知った上で、さらにこの部門が自分のライフワークだという形で進むべきであろうと、私はそう思って文教関係を中心にやっていきましたら、文部科学省が一緒になったものでありますから、私の非常に弱い部分も一緒に持っていかなきゃなりません。
それは政治力でカバーをしなきゃいかぬこともありますし、皆さんのお力をかりてやっていかなきゃいけないことがありますが、私は、それ以上に学者の世界というのは非常にそういう面では大変だろうなという思いがございます。
SPring8の話を聞いていても、今のSPring8のあり方、これも世界の最先端を行っているのでありますが、これで十分なのかと言われる学者もいらっしゃる。それから、研究者の中にも、このままではSPring8は死んでしまうとおっしゃる方もいらっしゃる。
しかし、その使い方は、そういう考え方は、私も具体的なことをここで詳しく言う時間もありません、頭が整理されておりませんが、SPring8の使い道はもっと広くあるんだと言われる方と、そういう使い方はまた別のところでやれという意見、今そういう話を聞いております。
だから、やはり科学者の皆さんの間にも、特に和田先生が苦労されたようなケースというのはいろいろなところであるんだろうなと思いまして、我々政治家がそういうことにどこまでタッチできるのかということになると、難しい課題だと思いますが、これから日本が科学技術を生かして世界のフロントランナーになっていこうというならば、これはやはり政治もその役割をどういうふうに果たしていくかということになっていく。
そういう意味で、今、きょうは各党おられるわけでありますが、自民党の中にも、それぞれの分野についてもっと深く知ろうというので議連や何かをつくって、そこで勉強会も始まっております。そういう意味で、まさに最先端の部分についても、それを専門にやる人たちがどんどん生まれてきて、そして、科学者の皆さん方と連携をとり合っていけるような、そういうものもやはり政治には求められておるんだろうな、こう思います。
文部省が科学技術庁と一緒になって、科学技術を一体となって進めていかなきゃならぬということでありますから、これは非常に責任が重いことでありますが、やはり我々政治家の役割分担というものはそこでとどまらないで、そして、やはり世界の動向というのをよく見きわめていかなきゃならぬ、こう思っております。
そういう意味で、加藤先生、そういうことに非常に造詣が深いわけでありますが、後輩の皆さんをそういうふうに御指導いただければありがたい、こう思うわけであります。
○加藤(紘)委員 どんなことでも、世の中のことは政治家が最終的には責任をとらなきゃならぬのだと思います。ただ、なかなか我々にも、目ききとしての能力は欠けているものですし、基礎学力もない。そうなると、じゃ、実質的に日本の科学技術研究の最後の責任者はだれなのだと。
それで、アメリカだと、NIHのトップが、学者であり、同時に行政マンとしてアメリカのバイオテクノロジーの研究のすべてを仕切っている。それから、アメリカのナノの研究はミスター・コロとかという人、ドクター・コロという人がいて、その人が指導力を持っている。風の便りに海を渡って、センター、ヘッドクオーターというのは彼だなというのが聞こえてくるんですね。
そうすると、日本では総合科学技術会議ということになるんです。今、実際は、会議の座長は総理大臣ですから、一カ月に一遍かそこいら会議が開かれて小泉さんが全部見ているわけにはいかない。そうすると、その中の四人の常任の委員さんがおられる、その人たちなのかなと。
僕は、形として言えば、それぞれの四人の方が学長をされた方とか、全部専門家ですから、その方が最終的には我々にかわって物を考えて提案していただいて、そして最後に我々がそれでいいですねと、総理も我々政治の人間も言うという形にはなっているんだけれども、それが機能しているかねというテーマもあるんだと思います。どうぞ。
○小柴参考人 今加藤議員の言われたことは、私もふだんから感じております。非常に大事な問題だと思うんです。
それは、今加藤さんが言われた、四人の専門委員がおられて、その方が判断を下すということになっているわけですけれども、実は私、昨年そのことにちょっと関係したことがございまして、痛切に感じましたことは、私、きょうぜひ議員の皆さんに申し上げて、考えていただきたいんです。
これは、私が生涯にわたって長という名前のつく職について管理職手当をもらったことがないから言っているんじゃありません。それとは別に、学長とかなんとかの長になって管理職として立派な業績を上げた先生方が、例えば医学部の先生だった、あるいは何学部の先生だったからといって、その分野の学問でちゃんとした判断ができるという保証は何もないんです。しかし、今までの歴史を見ますと、各省のお役人がそういう大事な委員として推薦する場合に、結局は、学長職をどれだけやったかとか、そういうことが判断の基準になって推薦されているわけです。
私が申し上げたいのは、その専門委員というのは、例えば四人いて、四つの分野において本当にその分野の研究を評価し判断のできる、そのことで一番日本の中で信頼できる人になっていただきたい、こういうふうに思うんです。ですから、それは必ずしも学長さんの中にいるとは限りません。
申し上げたいことは、科学技術総合会議という名前で呼ばれている会ですけれども、二、三年前の尾身大臣のころに策定された、科学技術のこれからの基本的に重要なことというので選ばれたのは、例えばナノテクノロジーとかバイオテクノロジーとか、全部が技術に直結して利益を生み出しそうな科学、そういうのだけ選ばれたんですね。私、ある折があって尾身さんにそのことをポイントアウトしたんですけれども。実は、そういう技術に直結した科学の研究ということは、その分野にちょっと足を置いた人間ならば、この研究は、やれば、二、三年後にこのくらいの成果が得られて、このくらいの利益になるということは判断できるんです。
問題はどこにあるかというと、五十年、百年たってもどういう結果になるかだれも予測は絶対にできない、そういう基礎科学をだれが判断して、どういうふうにプロジェクトを選んでいくか、これは本当に難しいんです。だからこそ、だれがやっても一〇〇%正確な答えが出ないんだったらば、一番当たりのいい人に勘を働かせてもらう、これ以外にないんですよ。
では、一番勘の働きが当たるような人というのはどういう人かといえば、その分野でちゃんとした実績を上げて国際的にも評価された、その人に、本気でこの問題を考えてくださいよ、本気で考えて考えて考え抜いたあげくのヤマカンというのは当たりがよくなるんです。それは、申し上げられると思います。
○加藤(紘)委員 そういう方を総合科学技術会議に選んで、そして判断してもらえと。重要なことです。
そこで、どういう方がそういう方に当たるかということをだれが判断するかという大テーマがありまして、それは役所が判断していると思いますね。それで、それは文部科学省なのか、内閣府なのか、どちらですか。時間がないのでちょっと手短に。
○河村国務大臣 それは内閣府の方からメンバーは選んできていると思います。
○加藤(紘)委員 総合科学技術会議事務局を担当しているのが、内閣府に政策統括官というのがいて、林さんですね。だから、私、きょう来てもらったんですけれども。
この論議を進めていくと、日本の経済の将来は科学技術立国、そうすると、科学技術の研究をコントロールするのは科学技術会議、その委員を選ぶのは、あなた、この人なんですね、林政策統括官。あなたがその四人の判断を間違えたらめちゃくちゃになるわけですよ、勘の悪い人を四人集めちゃったら。そういう気持ち、自分がこの国を全部背負っているんだ、そういうポジションだという気持ちで毎日仕事をされておられるでしょうか。手短に一言。
○林政府参考人 お答えいたします。
総合科学技術会議の議員の人事につきましては、これはもちろん総理大臣の諮問機関になるわけでございますので、総理大臣が基本的に考え方を決めまして、その上で国会で承認をするという格好になっております。したがいまして、私が決めるなんて、そんな恐れ多いこと、それはとんでもないことでございますけれども。
基本的に、総合科学技術会議につきましては、省庁再編のときにできまして、これは総理の直接イニシアチブで各省の縦割りを廃止するという格好で総合的な科学技術の推進をやっていくという格好になっております。
そういうことでございまして、加藤先生のお話、私にとっては大変光栄でございますけれども、私は、事務局を補佐するという立場でございまして、今後、先生のお言葉を非常に温かい励ましと考えまして、引き続き政務に精励したいと思います。
○加藤(紘)委員 非常に謙虚なんですけれども、その謙虚な言葉じゃだめだと思いますよ。やはりいろいろ詰めていくと、省庁縦割り、いろいろあるんだけれども、ここになっちゃうんですね。ですから、自分の判断が誤ったらこの国は判断を誤ることになるというぐらいの気持ちでやっていただきたいと思います。
最後に、三分ほど残りましたので、非常に重要なテーマでウィニー問題というのがあるんですね。それで、コンピューターの中でファイル交換ソフトというのがあって、これをダウンロードすると、全世界のどこの人のパソコンの中でも、オンになっていればそこに入っていって希望のファイルをとってくる。例えば、アメリカの歌手の歌を聞きたいなと思ってその名前を打ち込むと、全世界のパソコンの中に入っていって、たまたま自由に出入りできるような状態のファイルになっていれば、それが来ちゃって、それをCDに落とせばレコードを買わなくていい。最近、電子本というのがありますから、もしそれをだれかがダウンロードして外に出ていけるようにしてあったら、それで本も全部入ると。
そんなソフトをつくったやつはけしからぬといって、この間、京都府警が、ソフトを作成した東京大学の助手を逮捕しましたね。この人は、日本では知っている人はほとんどの人が知っている、ソフトの設計者としては抜群の腕なんだそうです。彼いわく、もう著作権をレコードや本の売り上げで守る時代は終わりました、自分としては問題提起するつもりですといって出して、そして逮捕されて、今大問題になっています。
しかし、アメリカでも同じことが二年半前にあって、それで逮捕されて、その後別の裁判所は、逮捕したってしようがないじゃないか、音楽をレコードできるテープレコーダーをつくったら、それが犯人で逮捕されるのか、切れ味のいいナイフをつくって、これで人を殺せるんだよねと、ナイフをつくった人間と、それを使って人を殺した人、あるんだけれども、人を殺した人は捕まえられるべきだろうけれども、見事なナイフをつくった人間が逮捕されていいのかね、もともと本とかというもので著作権を守ろうとしている、アーティストの権利を守ろうとしていること自体に無理があるんじゃないかというすごい提案をしているわけです。
私らの世代にしてみれば、本屋さんがあった方が楽しい、CD屋さん、レコード屋さんをぐるぐる回って見たい。しかし、そういう感慨というものを超えるぐらいに技術が発達し、日本でそういう人を捕まえたところで、スペインでそういうソフト設計者がいて同じものをつくったら、インターネットに国境はないわけですから。
ですから、今度の事件が提案した問題点を、文化庁が、著作権をいかにして守るか、全く別の概念でやらなきゃならぬときが来たんじゃないかという意識があるかどうか、文化庁に一言だけお聞きしたい。それで終わりたいと思います。
○素川政府参考人 お答え申し上げます。
著作物の流通形態、今御指摘になりましたように、パッケージ化された商品によるもの、それから音楽の配信サービスやインターネットなどのネットワークを利用したものと分かれるわけでございます。
この流通に関するビジネスモデル、これは社会の状況の変化によって変わるわけでございますが、現在では、パッケージ化された商品によるビジネスモデル、ビジネスというのが主になっておるわけでございますが、デジタル化、ネットワーク化の進展する中で、ネットワークを利用したビジネスの割合というものも徐々に増加しているわけでございます。このようなことに対応して、それぞれの業界において、新しいビジネスモデルの構築に向けての研究開発とか実証実験が進んでおるわけでございます。
幾つかの成功例も少しは出てきているわけでございますけれども、文化庁といたしましても、今後とも、新しい時代に対応した著作権の円滑な流通に向けて、新しいビジネスモデルの構築等々、いろいろな研究開発等を含めまして、積極的に支援、対応してまいりたいと考えております。
○加藤(紘)委員 去年の紅白歌合戦の最後のトリが、「世界に一つだけの花」とかいうSMAPの歌だったんですね。子供たちが聞いているのを見て、うん、歌詞はいいなと思いましたね。
要するに、日本のアーティスト、それから小説家、日本は世界に先駆けてこんな守り方をしますよ、本やCDだけではない、もう聞かなくなったというのをつくり上げる雰囲気を文化庁がぜひつくってくれますことを、日本だけがああいう見事な保護の仕方したね、そして使っている人もちゃんと課金を払っているねという社会づくりを文化庁がプロモートしていただくことをぜひ期待して、質問を終わります。
ありがとうございました。
○池坊委員長 近藤基彦君。
○近藤(基)委員 自由民主党の近藤基彦でございます。文部科学委員会では大変久しぶりの質問ですので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
まず、私の選挙区でありますが、新潟二区であります。柏崎市と佐渡島、佐渡市を含んだ選挙区であります。と言えばおわかりのとおり、蓮池御夫妻と曽我ひとみさんがいらっしゃる選挙区であります。
今回の小泉総理の訪朝で、五人のお子さん方が御帰国をなされたことは一歩前進であり、私自身は高く評価をするものであります。蓮池御夫妻も素直に喜んでおられて、お二人の子供と今お過ごしなわけでありますが、しかし、子供たちの日本での今後の生活には、いささか不安に思っていることも確かなことだと思います。特に、日本語の習得を含む、教育に関することが蓮池さん、地村さんのところも同様だと思いますが、これから大変重要なことになるだろうと思います。一義的には、住んでいらっしゃる地域の行政機関が責任を持つということになるだろうと思いますけれども、しかし、国のサポートも大変重要なことで、大変期待をしているところであります。
文部科学省並びに大臣としては、当然、一年七カ月前に五人の方々が御帰国をなされたときからその子供たちが残されていることは承知の上でありますし、また、その当時、ある大学では、お子さんが帰国したら無償で我が大学で引き受けますよというような大学もいっときあらわれたようなこともあります。当然、お帰りになるだろうということを想定して、文部科学省としても何らかの取り組みをすべく準備をなさってきたことだろうと思いますが、その取り組み方と今後の方針をお教えいただきたいと思います。
○河村国務大臣 今度、先生のお地元の蓮池さんのお子様も無事にお帰りになったわけでありまして、それから地村さんのところもそうでございます。
これは、一義的には、おっしゃるように、内閣官房参与を中心とした関係連絡協議会的なものがありまして、関係省庁、関係機関が連携してやる、こうなっておるわけでございますが、文部科学省もこの問題については非常に注視をしておりまして、これから日本人として過ごしていただくためには、まず教育の機会均等ということをきちっとやっていかなきゃいかぬわけでございます。これを確保しなきゃいかぬということでありますから、まず学校の受け入れということが大事でございます。もちろん日本語を習得してもらわなきゃいけない、こういう課題がございます。
本人の希望をしっかり聞いてということでありまして、早速省内にも、官房長を中心にして、連絡協議会、連絡会議を持っておりまして、この問題は、お帰りになることが確定した日、五月二十二日に帰ってこられたわけでありますが、二十四日に、既に文部省関係課長名で、福井県と新潟県の教育長さんや、それから各大学、公立、私立、国立を含め全大学あるいは専門学校等々に対して、このお子様方の受け入れについて御協力いただきたいということを発信いたしておるところでございます。
そういうことでございますから、これから御家族でいろいろお話しなさるだろうと思います。そして、御本人たちの御意向をしっかり聞き入れて、恐らく地元がまず一義的におやりになると思いますが、その上でまだ文部科学省が出ていかなきゃいけないことがあれば、この問題についてはしっかり前向きに、当然のことでありますけれども、やってまいりたい、こう思っております。
○近藤(基)委員 大変ありがたいお言葉であります。
これから大変細かい配慮が必要になってくるだろうと思いますが、そういった細かい相談事に文部科学省としてもぜひお取り組みをいただきたいと御要望しておきます。
なお、一方で、曽我ひとみさんの御主人と子供たちの帰国が今回かなわなかったわけでありますが、問題は、御主人のジェンキンス氏が逃亡兵と伝えられているということだろうと思います。この問題は、日朝問題というよりも同盟国である米国の問題が重要なかぎになるだろうと思います。大臣も政府の一員として、私ども、お預かりしている身であれば、ぜひ全力を挙げて米国への働きかけをお願いしたいと思いますけれども、ぜひここで決意のほどを一言お示しをいただければと。
○河村国務大臣 この問題は、まさに外交案件になってきたな、こう思っております。
曽我ひとみさんが、いみじくもいろいろなお話の中で、こういうめぐり合わせといいますか、大変な、どうしてこんなことになったんでしょうねというような運命のことをおっしゃっておりましたが、しかし、みんな一日も早く家族がそろわれて、そして日本人としてこれから生活してもらいたい、そう思っておりますから、その方向に向けて日本の政府として何ができるのか。
日米関係、こういう関係でございますから、きちっと話し合いをして、もちろん、アメリカはアメリカの立場というものがありましょうが、それを乗り越えていくことは、これはもう当然日本としてやらなきゃいけないことだろうと思います。
総理が、ギャランティーと、こうおっしゃったということでありますが、そうした超法規的といいますか、我々一般素人考えでは、まず軍法会議にかかるならかかった上で釈放したらいいじゃないかとか、我々国民みんな、いろいろな思いを抱いていろいろなことを言っております。しかし、最終的なことは、私どもまだ確たるものをつかんでおりませんが、おっしゃるとおり内閣におるわけでございますし、閣議席、たまたま隣が外務大臣でございますので、一回、これは本当に外務省はどう考えているのか聞いてみたいなと思っておったことでございますが、これは日本の政府が責任を持ってきちっと対応するということでなければいけない、こういうふうに思います。
○近藤(基)委員 ぜひ力強いお取り組みをお願いしたい。
被害者の方々の記者会見の場においても、曽我ひとみさんは、本当に蓮池さん、地村さんの御家族がお帰りになったことを心から喜んでいただいて、そういう記者会見の御発言。あるいは、私どもの地元でも、私のところは仕方がないけれども、本当に蓮池さん、地村さん、よかったねと周りに言っています。それを見て本当に国民は、八人がお帰りになる期待感を、まあ五人しかお帰りにならなかったわけでありますが、しかし、ある意味、曽我ひとみさんの発言というのは国民をほっとさせるものがあり、本当にしんの強い女性だなという思いでいっぱいであります。
それに報いるためにも、一日も早く残された三人の方にお帰りいただくように、まず、再会のめどが立ったやに聞いておりますけれども、それにしても、その会うまでの期間がまだあるわけですから、ぜひその環境整備を、一日も早く御帰国なされるように努めていただきたいと要望をいたしておきます。
拉致の問題はこの辺で終わらせていただきますけれども、きょうは、若干、教育基本法のことについてお聞きをしたいと思います。
中教審の答申が出てからちょっと時間がたっているなという気もいたしますけれども、日本国憲法が制定されてから六十年近くたつ、今各界各層で憲法改正の議論も起こっているような時代でありますけれども、教育の分野において日本国憲法と大変関連が深いのが教育基本法であります。前文にも「憲法の精神に則り、」というふうな形でうたわれているのが教育基本法であります。我が国の教育の基本理念が定められている法律でありますけれども、憲法と同じく昭和二十二年以来一度も改正されたことがないということであります。
この教育基本法のもとで、戦後教育が行われたわけであります。確かに、今日の日本の発展に大変大きな役割を果たしてきたのがこの教育基本法だろうと思いますが、その一方で、現在、我々は、いじめや不登校あるいは学級崩壊、引きこもりとか、そういったことが極めて深刻な問題となってきております。
戦後教育の中でのひずみの部分が今非常に大きくなってきているのかなと思っておりますが、この辺で、こういった教育上あるいは青少年の課題に関して根本的に考えなければいけない時期に来ている、その一つに教育基本法の抜本的な改革が私自身は必要だと思っておるんですが、教育基本法の改正に向けたこれまでの取り組み状況についてお伺いをいたします。
○銭谷政府参考人 私の方から、取り組み状況につきまして御説明をさせていただきます。
教育基本法の問題につきましては、歴代の内閣が教育の構造改革の一環として熱心にお取り組みをいただいてきたところでございます。
平成十二年二月に小渕総理大臣のもとに教育改革国民会議が設置をされまして、同年十二月、森内閣のもとで最終報告が出され、その中で、新しい時代にふさわしい教育基本法の見直しが必要であるという提言が取りまとめられたところでございます。この報告を踏まえまして文部科学大臣から中央教育審議会に対して諮問が行われ、昨年の三月に中央教育審議会から答申が出されたというところは、ただいま先生の方からもお話があったところでございます。
具体的には、中教審の答申の中では、教育基本法については、教育は人格の完成を目指すという現行法の基本理念を引き続き規定するとともに、あわせて、今日極めて重要と考えられる新たな理念を規定し、加えて教育振興基本計画の策定の根拠を規定すべきだといったような提言がなされているところでございます。
文部科学省といたしましては、この答申を踏まえまして、現在、全国各地で教育改革フォーラムや政府主体のタウンミーティングを開催するなど、さまざまな手段を通じまして、教育基本法改正に関する国民的な理解を深める取り組みを進めているところでございます。
また、与党におきましても、現在、与党教育基本法改正に関する協議会及び検討会を設けまして、教育基本法の改正についての議論が深められているところでございます。
○近藤(基)委員 現代社会は、続発する青少年の凶悪犯罪や子供たちの心の荒廃、家庭の崩壊など、大変な問題を抱えているわけでありますが、これも、子供たちを甘やかしというわけではありませんが、余りに個人を優先させ過ぎた戦後教育のひずみがあらわれているのかな、そういう思いでおります。このままでは、あすの日本を担う若者が、それをはぐくむ教育までもが崩壊してしまうのではないかと危惧されるところであります。
私自身は、国民がみずからの権利だけを追求することではなく、みずからが国や公に対して何をなす必要があるのかという義務を自覚させること、すなわち、教育を通じて公共に対してもっと責任を子供たちにちゃんと自覚させることがこれから重要になってくるのではないかと思いますが、このような観点からも教育基本法を見直す必要があると思いますけれども、いかがお考えでしょうか。
○銭谷政府参考人 ただいまお話がございましたように、自分たちの力でよい国づくり、社会づくりに取り組むということは、民主主義社会における国民の責務として非常に重要なことではないかと思うわけでございます。これまで、今お話がございましたように、ややもすると、国や社会というものはだれかがつくってくれるという意識が日本人の間に強かったという指摘もあるわけでございます。
このため、中教審の答申では、二十一世紀の国家、社会の形成に主体的に参画をする日本人の育成を図るために、まず、政治や社会に関する豊かな知識や判断力、批判的精神を持ってみずから考え、公共に主体的に参画をし、公正なルールを形成して遵守することを尊重する意識や態度を涵養することがこれからの教育において重要であるという指摘をしているところでございます。
教育基本法の改正に当たりましては、このような中教審の答申を踏まえ、広く社会の形成に主体的に参画する公共の精神の涵養という趣旨を新たに規定をするという方向で考える必要があるというふうに思っている次第でございます。
○近藤(基)委員 公共という言葉、大変とらえどころのない言葉ではありますけれども、国家や社会に対して持つ責任という観点から、みずからのよって立つ基盤であるこの現代社会、地域社会や国家などについて、それを今まではぐくんできた先人の偉大さや地域の伝統文化をよく知り、それに誇りを持って、それを通じてみずからのかけがえのない郷土や国を大切に思う心をはぐくみ、育てていくことがこれから大事であると思っております。
そのような郷土や国を愛する心があって初めて、自分みずからが社会に対する奉仕、責任を果たしていこうとする自覚に通じるものだと考えております。このような視点から、私自身は国を愛する心を教育基本法に盛り込むべきだと考えますけれども、いかがお考えでしょうか。
○銭谷政府参考人 まず、中教審の答申における考え方を御説明申し上げますと、答申におきましては、みずからの国や地域の伝統、文化についての理解を深め、尊重する態度を身につけることによって人間としての教養の基盤を培って、日本人であることの自覚や、郷土や国を愛し、誇りに思う心をはぐくむことが重要であるというふうに指摘をしているわけでございます。
そして、このようなみずからの国を愛する心があって初めて、他の国や地域の伝統、文化に接したときに、自国、他国の相違を理解し、多様な諸外国の伝統、文化に敬意を払う態度も身につけることができるものであって、そのことが国際社会の一員としての自覚に通ずるという指摘をしているところでございます。
このような提言は大変重要な事柄であると考えておりまして、今後の教育基本法の改正を進めていく上で十分に検討していかなければならない事柄だと思っております。
○近藤(基)委員 今、教育を行う上で、これまで、ともすれば学校教育ということだけがクローズアップされて、PTA対学校あるいは教育委員会の問題、そういったものだけが何となく話題に上るようでありますけれども、しかし、我々が子供を育てるというのも一つの教育であります。ですから、教育の基盤は、まず親に一義的な問題があるんだろうと思っております。
実は、少子化社会対策基本法を、肥田委員もいらっしゃいますけれども、議員立法で提案者として出させていただいて、成立をさせていただきましたけれども、そこの中にも、少子化に関して、やはり子供の責任は一義的には親であるということをうたっております。
そういった意味では、教育の基盤というのはまず親にある、そしてみずからの権利とともに、親自身も義務を自覚して、我が国社会の一員として恥ずかしくない子供を育てていく上で、学校教育とともに、もしかするとそれ以上に、家庭教育が果たすべき役割は大変大きいと考えております。
教育基本法においても家庭教育についてきちんと位置づけておくべきだろうと思うんですが、いかがお考えでしょうか。
○銭谷政府参考人 今日の教育基本法の改正の議論の出発点となりました教育改革国民会議の提言の中では、教育の原点は家庭であり、親が人生最初の教師であって、教育という川の流れの、最初の水源の清冽な一滴となり得るのは家庭教育であるということで、家庭教育の重要性について指摘をいたしております。
昨年の中教審の答申においても、同様の指摘がなされているところでございます。中教審では、「それぞれの家庭が子どもの教育に対する責任を自覚し、自らの役割について改めて認識を深めることがまず重要である」とした上で、子供に基本的な生活習慣を身につけさせることや、豊かな情操をはぐくむことなど、家庭の果たすべき役割や責任について新たに規定することについて提言をいたしております。
今後、教育基本法の改正に当たりましては、家庭教育についてその役割を明確化するということは極めて重要な課題であるというふうに考えております。
○近藤(基)委員 幸せな家庭で親に愛され、その幸せな家庭の中で育つということは、人を愛する心をはぐくむ、生まれてからそれを育てていくために一番重要な部分だろうと思っております。国を愛することとともに、自分のみ愛するということではなく、人をも愛し、優しくつき合えるという気持ちを育てるということは大変重要なことだろうと思っております。それが道徳心につながるのかなという気はいたします。
昨年でしたか一昨年になりますか、河村大臣と一緒に、当時まだ大臣ではありませんでしたが、園遊会で席を一緒にさせていただいたことがあります。そのときに、大臣は車いすの方と御一緒で、みずから車いすを押されて園遊会に御参加をされておりました。そういう優しいお気持ちを持っている大臣でありますので、教育基本法の改正に取り組んでいただき、そしてなおかつ、よりよい教育基本法ができるだろうと思っておりますけれども、大臣に、最後に御決意をお聞かせいただきたいと思います。
○河村国務大臣 先ほど来から、近藤先生、今の教育基本法の改正に当たるまさに基本的な問題、非常に重要な視点について御指摘をいただきながら、みずからの考え方も御披瀝をいただきながら、私もまさにうなずきながらお聞きをしておったわけでございます。
特に、自と公のバランスをいかにとっていくかということが今の子供たちに問われている課題、これは、これまでの自己中心主義、日本の国そのものも、一国平和主義だという指摘を受けて、今これをどういうふうに払拭するかという努力をしているわけでありますが、そういう視点から子供たちの教育を考えていかなければいけない部分、それから愛国心の養成の問題、さらに家庭教育の重要性という点、まさに、今の教育基本法の視点から落ちている部分であります。
今回、御案内のように、教育基本法は重要な問題でありますから、そしてこれは法律でありますから、最終的に国会の御同意がなければ法律にならないものであります。まず、その責任を担っている与党が、政権を担っている与党がきちっとした意見の一致を見なきゃいかぬということで、自民党、公明党の間で協議会を設けていろいろな議論を進めております。今御指摘の点で、まださらに一致していないといいますか、やはり国を愛する心を規定すべきかどうかという問題が一つございます。それから、宗教教育の規定のあり方もあります。このあたりをどうするかというのが一つの課題になってきておるわけであります。
私も、全国いろいろなところへシンポジウムやタウンミーティング等で伺いまして、いろいろな皆さんの御意見を聞く。また、教育基本法はどこが悪いのかと。教育基本法が悪いということによって今の教育が悪い、どこにそのつながりがあるんですかと言う方がいらっしゃる。それから、そういうことをやるということは、何か昔の日本に返るのではないか、こうおっしゃる。大体、反対される方の意見はそこへ集約されておるように思います。
私は、さっき、特に愛国心の問題について、局長からも御答弁申し上げましたが、中教審でいろいろ議論をされた中で、やはり日本人であるということの意識、これはもう外国へ出てみたらわかることでございます。やはり、自分の国について知識を持ち、日本の伝統、文化を知り、その知識があって初めて世界の国に対する思いというものが生まれてくる。そして、世界の国の皆さんと仲よくしようということは、やはり自分の国のことをまず知らなきゃいけないという、その基本に立たなきゃならぬわけであります。
ただ、公明党との間で、まさに愛国心というのは心だから、この問題を法律で縛る必要があるだろうかという御指摘もあります。私は、そういう方々には、国旗・国歌法のときもそうであったように、やはり大事な基本的なことはきちっと法治国家として書き込む必要がある。特に、国旗・国歌法のときに、自民党の中にも、もうこれは定着していることで、今さら法律にする必要はないという意見もあった。しかし、現実に教育現場で学習指導要領に基づいてやっておられる先生方が、これは法律ではないんだ、そこまで強制する必要があるのかという意見。しかし、これはやはりきちっと日本人として必要なことだからやりましょうと言ったんですけれども、そこがうまくいかなかった。しかし、それはやはり法律として、法治国家として必要なことだということでありましたから、皆さん一緒にあのとき法律にした。その結果、そういうことならということで、現場ではちゃんと行われている。まあ、強制的だとかいろいろ反対の立場の方はおっしゃるけれども、日本人として必要なことはやはりきちっと学んでいかなきゃいかぬ、教育で学んでいかなきゃいけない。
この愛国心も、私は、そういうものだろう。これは決して上から押さえつけて学ぶというものじゃなくて、日本の歴史とか伝統とか文化を学ぶうちに備わっていくものですけれども、やはりこれは大事なことだというコンセンサスが必要だ。そういう意味で法律に規定をしなきゃいかぬ、私はそう思っておるわけでございます。
これからいろいろな御意見は十分お聞きしていかなきゃいけない課題だ、こう思っておりますし、これはまさに、先ほど申し上げましたように、議会の御同意が要ることでありますからさらにやっていかなきゃなりませんが、私は、中教審で答申が出ておりますから、これを法律として国会にお出しをすることによってさらに国民的な議論をしていただく。そして、皆さんが教育をどう考え直すか。今の子供たちを見たときに、このままでいいんだろうかということ、そういうことをしっかり皆さんでお考えをいただきながら、これからの日本人を、どういうふうな日本人をつくっていくのかということを議論いただくことによって、まさに教育基本法のこれからの基本的な考え方が生まれてくる、まさに日本の教育の基本的な考え方が具体的に生まれてくるのではないかということを期待いたしております。
さらに、総理からも、この問題に精力的に取り組んで、そして与党の合意を得て国会で法案を出すように、こう言われておりますので、今与党間での議論をいただいておりますが、当然、これは野党側の御意見というものもしっかり聞かなきゃいけない課題だ、こう思っております。立法府の皆さんも、議員同士でもいろいろな協議をいただいておるように伺っておりますが、文部科学省としては、いわゆる閣法としてお出しする立場でございますから、その責任をきちっと果たしていきたい、このように思っておるわけであります。
○近藤(基)委員 大変力強い御決意、心強く思います。
我が国が今後も力強く発展し、国民一人一人が幸せであり続けるためには、やはり根本的には教育が本当に重要な問題であると思っております。教育の基本理念を定める教育基本法の抜本的改正を断行することは不可欠だろうと思っておりますので、ぜひ大臣には、よりよい教育ができるような基本法の制定に今後も取り組んでいただくことを切にお願い申し上げて、質問を終わります。
○池坊委員長 斉藤鉄夫君。
○斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。
先ほど、近藤議員から教育基本法の問題提起をされました。今与党の中で協議が進められているということでございますが、私もそのメンバーとして今鋭意議論させていただいております。我々は、決して邪魔をしているとか阻止をしているとかそういうことでは全くございません。検討会で一回二時間、十一回でしょうか。それから、改正に関する検討会になりまして既に十数回、一回二時間ごとに、本当に重要な問題ですので、一つ一つの議論を積み重ねているということでございまして、その議論も、期限を切らずに永遠にやっているというわけではございません。一定期間の後にはきちっとした結論が出るのではないか、このように思っております。
しっかりと議論をしているということだけ最初にお話をさせていただきたい、このように思います。
次に、私きょうの質問に入らせていただきますが、先ほど加藤先生から科学技術に関して本当に本質的な議論がございました。質疑を聞きながら、国会の議論というのはこうでなくてはいけないなというふうに強く感じた次第でございます。私も、きょうは科学技術について質問をさせていただきたいと思いますが、格調はぐっと落ちまして、個別具体的な話になりますけれども、お許しをいただきたいと思います。
最初に、いわゆる国際熱核融合炉、国際協力で進めております国際熱核融合炉、ITERについてお聞きいたします。
現在、設計が終わりまして、その実験炉をどこにつくるかということで、欧州、フランスのカダラッシュと日本の六ケ所で大変な綱引きが行われております。我が国を支持するアメリカ、韓国と、フランス、欧州を支持する中国、ロシア、もう全く三対三で綱引きが続き、河村大臣も閣僚会議で大変な御努力をされたと聞いております。綱引きが始まってから半年以上たっておりますけれども、現在の状況についてまず最初にお伺いします。
○坂田政府参考人 ITERの国際協議の状況について御説明申し上げます。
先生もよく御案内のとおり、昨年来、次官級の会議、それから一回の閣僚級の会議を含めて議論してまいりました。六ケ所側にするかあるいはフランスのカダラッシュにするかというところでございますけれども、まず結論から申し上げれば、今なお結論を得ておりません。双方まだ拮抗した状況でございます。
それで、二月の次官級の会議のときに、日本と欧州以外の四カ国からの要請もございまして、ぜひこの問題を日欧間で議論してもらえないだろうか、日欧間で何らかの解決の方向性を見出せないだろうかということで、それらの要請を受けまして、三月から四月にかけまして日欧の次官級の会議、これも三回ほどやりました。途中で日欧の科学者による会議もやったわけでございます。
しかしながら、依然として、日欧それぞれやはり自分のところにぜひITERを持ってきたいという強い希望がございます。他方でまた、日欧間では、ITERだけに限らず、もう少し幅広く核融合の研究の協力範囲というものを広げまして、ITERプラスアルファのところで日欧で協力できないだろうかという話し合いも進めてまいったわけでございます。
しかし、一番焦点になっておりますITERをどちらが建設するかというところで意見が異なっておる関係上、冒頭申し上げましたとおり、意見の一致を見ておりません。日欧間では、この三回の協議もしてきたこともございまして、日欧双方がひとつこの日欧協議の結果を踏まえて、次には六カ国で次官級の会議をもう一回やろうじゃないかということになっております。したがいまして、来月にも六カ国で集まりまして、もう一度この問題を議論するという予定になっているところでございます。
○斉藤(鉄)委員 このITER、国際熱核融合炉は、核融合が将来の夢のエネルギーであるということで、その研究のトップを日本が走りたいということもございますし、また、ITERの実験炉ですけれども、この建設そのものがそれぞれ先端技術を結集しての建設となり、建設するということは波及効果も非常に大きい、このように思います。
これまで大きな科学の国際協力といいますと、アメリカ中心の宇宙ステーション、それからヨーロッパ中心のいわゆる高エネルギー加速器、CERN。ですから、アメリカ、ヨーロッパにそれぞれこれまで大きな国際科学共同プロジェクトの中心があったわけで、私はぜひ、百二十度、百二十度、百二十度のこの東アジアに次の大きな国際科学プロジェクトの中心を持ってくることは、世界の平和的な科学技術協力という意味でも非常に重要ではないか、このように思っております。
そういう意味で、先ほどの小柴先生の話ではありませんけれども、物理の世界にはいろいろな意見があるということですけれども、一たん国として誘致するということを決めた以上、それに全力で走らなくてはいけないと思いますけれども、大臣の御見解、御決意をお伺いします。
○河村国務大臣 この問題については斉藤先生も大変お詳しいわけでございまして、今お話を聞きながら、このITERをどういうふうな形で日本に建設するかということ、今まさに胸突き八丁に来ておりますので、何としても日本にという思い、おっしゃるように、これは日本のこれまでのまさに技術の集約といいますか、核融合に対する高度な経験、そういうものがここへ集中されるということだけでなくて、アジア地域にとっても大きな意義がある。このことを今のところフランス、欧州寄りであります中国に対しても絶えず説き続けておるわけでありまして、日中韓の連携のもとにこの大プロジェクトを一緒にやっていこうということを絶えず呼びかけておるわけでございます。そういう観点から意義も大きいし、日本としてはぜひという思いを高めておるわけでございます。
これからさらに具体的な交渉をしなきゃなりませんが、日本の優位性をもっと強調しなきゃいけません。特に輸送の問題等々、明らかに日本が優位である。これはアメリカも高く認めておりまして、カダラッシュの百キロ以上の輸送はとても無理だということがはっきりしているということも言っておるわけでありますが、あとは、これからその問題も含めて、来月に予定されております六カ国の次官級会議が重要になってまいりますので、これに対しても日本も並々ならぬ決意をここで出していかなきゃならぬ。
技術的な問題、それからいわゆる財政的な問題も含めて、日本がこれだけの責任を持つということも含めてこの問題に取り組んでいかなきゃならぬ、こう思っておりまして、これまで積み上げてきたITER誘致に対する日本の決意はいささかも揺るいでおりませんので、受け入れ地域の盛り上がりといいますか、そういうものも非常に高いものもございます。これに取り組んでおられる学者の皆さんあるいは民間の皆さん、政府、これがまさに一体となっておるわけでございますから、それを総合結集して、早い時期に、もう時間的にも余りこれを長くおいておくわけにいきません。予算の問題、アメリカの予算等の問題も出てまいりますので、早期に日本に誘致ができるように引き続き最大の努力をしていきたい、このように思っております。
○斉藤(鉄)委員 我々もしっかり応援をしたいと思います。
きょうは原子力委員会の近藤委員長に来ていただいておりますが、質問通告は原子燃料サイクルのことで質問するということでお呼びしたんですが、ちょっと質問通告外ですけれども、原子力委員会としてこのITERの問題をどのように認識されているか、できればお願いいたします。
○近藤参考人 近藤でございます。発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
ITERにつきましては、原子力委員会としましては、既にさまざまな審議会等を通じて関係各界の御意見を集約して、これを我が国として推進すべき重要な課題という位置づけを報告しているところでございまして、この立場は現在も依然として変わっておりませんで、各般の皆様に御尽力をお願いしているところでございます。
○斉藤(鉄)委員 それでは、頑張っていただきたいと思います。
次に、原子燃料サイクル、または核燃料サイクルについてお伺いいたします。
まず、近藤委員長にお伺いいたしますけれども、最近、新聞報道で、原子力委員会が核燃料サイクルという我が国の基本的な方針を抜本的に見直すとか、高速増殖炉の実用化については断念した、こういう記事がございます。我が国の原子力は原子力委員会の政策を指針として進められるものでございまして、原子力委員会がそのような方針であるということは国の方針の大きな転換になるわけです。余り国会で議論したこともございませんけれども、あの新聞報道はいかがなんでしょうか。抜本的に見直すのでしょうか。
○近藤参考人 お答えいたします。
原子力委員会は、我が国の原子力政策の基本的考え方を長期計画に定めることといたしまして、これを約五年ごとに見直して新たな計画を定めてきているところでございます。ことしに至り、現行の長期計画策定後三年を経過いたしましたので、新たな計画を策定する作業を開始する準備として、一月より長計についてご意見を聴く会を開催する、あるいは国民の皆様に対して意見募集を行うなどいたしまして、改定するべきや否や、改定するとしたらどういうのが重点項目かなということについて、幅広い立場から御意見を伺っているところでございます。
したがって、現在は、こうした新たな計画を策定するための準備を行っている段階でございますので、報道されたような核燃料サイクル政策を変更するということを決めたという事実はございません。
○斉藤(鉄)委員 そういう事実はないということであれば、大いにそれを国民にわかりやすく、また実際に国民の目に触れるようにPRをしていただかないと、否定的な報道だけが国民の目に触れる。いや、そんなことはありませんと記者会見でおっしゃっても、その新聞報道は一切されない、テレビでも全然報道されない、これが現実でございます。
現実にどのようなことになっているかといいますと、現在、六ケ所村で建設をしております再処理工場、これは当然、日本のプルトニウム政策上、これをきちんと品質も十分なものに仕上げて運転するというのが大方針でございますが、この再処理工場さえも、つくったはいいけれども稼働させないというふうな議論が巻き起こっておりまして、その新聞報道がある意味ではそれに油を注いでいるというふうな状況もございます。
いや、記者会見で否定しましたと言うだけではなくて、もっと国民の目に触れるように、記者会見だけで触れなかったら、例えば我々政治家は、新聞に取り上げてもらえなければ街頭に出て街頭演説をやるんですが、まさか近藤委員長に街頭演説をやれとは言いませんけれども、それなりの対策をぜひ考えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○近藤参考人 おっしゃること、非常によくわかります。私どもといたしましては、たまたま今長計についてご意見を聴く会等を催しておりますので、その席でさまざまな御意見をいただくとか、それに対してその真意を伺い、私どもの考えと合わないところについて意見をやりとりしているというところがございまして、これもすべてホームページ等で公開しているところでございます。
さらに、その席でも、原子力委員会の顔が見えないという御忠告なり御批判をいただいているところでありますから、事務局と相談いたしまして、最大限顔が見える原子力委員会になろうと努力したいと考えているところでございまして、今いただきましたことについても引き続き検討させていただきたいと思います。ありがとうございました。
○斉藤(鉄)委員 この核燃料サイクル政策についてですけれども、現在、例の十八・八兆円もしくは十九兆円というその数字だけがひとり歩きをしておりますけれども、これは非常に長期を考えての十九兆円で、例えば、一キロワット時等に直してみれば非常にリーズナブルな値になるんですけれども、そういう十九兆円という数字だけがひとり歩きをしている、こういう気がいたします。こういうことについてもしっかりとわかりやすいPRをお願いしたいと思うわけでございます。
そして、私は、やはりこれから日本の安全保障にとって最も大事なのはエネルギーの安定供給だと思います。
試算によりますと、お隣の中国のエネルギー需要はここ二十年で四倍にふえると言われておりまして、将来、食糧争奪戦ならぬエネルギーの争奪戦の時代が必ず来る。日本の安全保障は、昔のABCD包囲網ではありませんけれども、まさにエネルギーの安定供給が日本の死活を制するという時代が必ず来ると思います。
そういう意味で、核燃料サイクルというのは、一つの純国産エネルギー源として非常に重要なオプションだと私は確信をしておりますけれども、この点について、原子力委員会の認識についてお伺いします。
○近藤参考人 お話のとおり、エネルギー資源に乏しい我が国にとりまして、エネルギーの安定供給の確保は極めて重要な課題であるところ、原子力エネルギーは、エネルギーの安定供給の確保や地球温暖化対策の観点からすぐれた特性を有するものでありますので、原子力委員会としては、これが積極的に利用されるべしということを長期計画等で再三再四主張しているところでございます。
特に、使用済み燃料を再処理して回収されるプルトニウム等を燃料として再び利用する核燃料のリサイクル利用は、原子力エネルギーの持つそうした供給安定性を一層向上するものでありますので、原子力委員会としては、核燃料のリサイクル利用を原子力政策の基本としているところでございます。
このため、原子力委員会といたしましては、事業者及び関係行政機関が安全の確保を大前提にいたしまして、また地域社会の人々を初めとする国民の理解を得つつ、プルサーマルや高速増殖炉の研究開発活動を着実に推進していただくことが極めて重要と考えているところでございます。
○斉藤(鉄)委員 よくわかりました。
そうしますと、その大方針のもとで文部科学省が担うべき役割は、やはり研究開発だと思うわけでございます。
高速増殖炉実験炉「もんじゅ」がいわゆる温度計のふぐあいでとまって以来、八年間、野ざらしになっているわけでございます。五千億円以上血税を使ってつくった実験炉、実験をしてデータをとっていくということがその税金を担当された国民への最低限の義務だ、このように思いますし、先ほど申し上げました将来の日本のエネルギーの安定供給の一つの大きなオプションである高速増殖炉について基礎的な研究を進めていくということは責務だ、このように私は思います。
その「もんじゅ」がいろいろな政争の具にされたり、大変悲しい状況にあるわけでございまして、優秀な研究者がまさに野ざらしになっているという姿も無残で、見るにたえません。この点から、「もんじゅ」を含めて核燃料サイクルの研究開発を着実に推進すべきだと思いますけれども、大臣の御決意をお伺いしたいと思います。
○河村国務大臣 御指摘のとおり、「もんじゅ」を初めとした核燃料サイクル、この研究開発に取り組んでいくということは、これからの日本のエネルギー状況を考えてきたときに極めて重要な問題、課題でありまして、文部科学省もその所管省として最も力を入れなきゃいけない部分の一つだ、こう認識をいたしております。
特に「もんじゅ」の問題でございますが、せっかくの機会でございますので、「もんじゅ」についても現況を御報告申し上げたいと思うのでありますが、福井県の知事のもとでいろいろな要望もいただいておりますし、我々としては、この早期運転再開ということを目指しております。
そこで、きょう実は経済産業大臣とそして福井県知事、私も含めて三者、私が呼びかけをさせていただいて、三者で、まず福井県の要望をお聞きしながら、そしてこの「もんじゅ」の再開についてどう取り組むかということを話し合いました。
私と経済産業大臣から、先ほど来のいわゆる核燃料サイクルの日本の方針は変わっておらないこと、先ほど斉藤委員から御指摘いただいた新聞の問題等々も福井県側としても非常に心配に思っておられる部分もありました。それについて明確に、我々としては方針は変わっていないんだということを申し上げて、そして地元の要請、特に福井県がこれまでエネルギー、原子力を初めとして大変な努力をいただいております。そういう面から、エネルギー研究開発の拠点化計画を持っておられますから、それにも経済産業省と一体となって支援をしていくというお話を申し上げ、福井県側にも、我々の意見を聞いて、責任を持って的確な対応をしていくということが話し合いの中でございました。
そういう意味で、文部科学省といたしましても、この改造工事が遠からず御判断いただけるものだ、こう思っておりまして、まさに「もんじゅ」を初めとする核燃料サイクルをきちっと打ち立てていかなきゃいかぬ、そういう思いで努力をしていこう、こう思っておるところであります。
○斉藤(鉄)委員 私も海外の友人から、日本が優位性を持つ研究分野がこのいわゆる高速増殖炉にかかわる研究分野であるにもかかわらず、また「もんじゅ」というすばらしい実験道具があるにもかかわらず、なぜそれをたなざらしにしておくのか不思議でしようがないという科学者の手紙ももらったことがございます。ぜひ研究開発という面でも断固たる決意で進めていただきたい、このように思います。
それから、最後に、宇宙開発についてお伺いします。
先日、超党派で、各党参加して、日本・宇宙議連という議員連盟が発足をいたしました。日本の宇宙開発に対しての予算、他国と比べて反比例といいましょうか、毎年減少しております。これでは日本の宇宙開発はお先真っ暗ということで、何とか政治の分野でもそれを応援しようということでこの議連を発足したところでございます。
もう時間がありませんのでまとめてお伺いいたしますけれども、H2Aロケット六号機の打ち上げ失敗に関する原因究明はどうなっているのかということと、早期の打ち上げ再開を目指すべきだと思いますけれども、見通しはどうかということについて、まずお伺いします。
○坂田政府参考人 最初に、原因究明それから再発防止対策の問題でございます。
昨年十一月にH2Aロケット六号機の打ち上げの失敗がありました以降、宇宙開発委員会の調査部会というところで技術的な原因究明、それから対策について検討がなされてきております。
今の状況は、原因究明についてとそれから対策についてはおおむね議論が終了して、その結果が整理をされております。例えば、原因究明につきましては、固体ロケットブースターが実は分離できなかったわけでありますが、そのノズル部というところの板厚が予期せざる形で減少したということがございますし、結果として、対策につきましては、ノズル部分を中心に設計の変更をする必要があるということも指摘をされております。
他方で、このような技術的な原因究明の背景要因という、そういう可能性のあるものといたしまして、宇宙航空研究開発機構、いわゆるJAXAとメーカーとの間の設計、そして製造の責任体制の問題が果たして今のままでいいか、それを少し見直す必要があるのではないかということで、同じ宇宙開発委員会の特別会合が開催されて、今議論がなされてございます。
したがいまして、今回の失敗を契機といたしまして、技術、それから体制、その両面につきまして、今後ロケットの信頼性をさらに向上するために、今、鋭意議論が進められているところでございます。そう遠くない時期に議論は終了するものと考えております。
それから、打ち上げの再開の時期でございますけれども、いずれにしましても、技術、体制の両面についてしっかりとした対応、対策をとっていく必要がございますので、その辺の状況を見ながら判断する必要があるのではないか。したがいまして、今の段階では、具体的にいついつ再開できるということが残念ながら言える状況ではございません。ただ、関係者は、一日も早くそういう時期が迎えられるように一丸となって取り組んでいるというところでございますので、御理解を賜りたいと思います。
○斉藤(鉄)委員 最後に大臣にお伺いしたいと思いますけれども、日本の宇宙予算は、アメリカやヨーロッパやロシアや中国に比べて甚だ貧弱なものがございます。やはりその原因は、究極的に言えば、国民の間にそれを支えようという意思がないからだと思います。タックスペイヤーにその意思がないからだと思います。そういう意味で、ある意味で夢のある宇宙開発ビジョンを打ち出すということも必要ではないかな、このように思います。
例えば、帰ってきた宇宙飛行士の方に聞くと、とにかくこの世で一番美しいのは宇宙から見た地球である、宇宙に浮かぶ地球ほど美しいものはないと。であれば、できるだけ多くの人が、二、三時間行けばいいわけですから、それもそんなに遠く、月まで行く必要はなくて千キロも上に行けば、横に千キロ行けば福岡、ですから上に千キロ行けばいいだけであって、それで宇宙に浮かぶ地球全体を見られる、そういうことが生きている間に一遍や二遍、百万とか二百万でできるかもしれないと。例えば、こういう形で宇宙開発しますといえば、みんな、では宇宙開発にもう少し我々の税金を費やしてもいいなという気持ちになっていただくかもしれません。
そういう意味では、国民の皆さんの、タックスペイヤーの夢につながるような宇宙開発ビジョンを出すことが非常に重要だと思いますけれども、宇宙政策についての大臣の御決意を聞いて、質問を終わります。
○河村国務大臣 あれほどうまくいっていたH2Aロケットが残念ながら六回目にして失敗したということが、そういう意味では国民の皆さんに非常に失望感を与えたということを非常に責任も感じますし、早くこの再開をしなきゃならぬ。これにひるまず、というのは、欧米諸国の状況を見ていても、ロシアもそうであります、アメリカもそうでありますけれども、幾多の困難、トラブルを乗り越えて今日の宇宙開発を進めているこの現状、そういうことを考えますと、日本も、日本には日本のできる役割、日本の得意部分というものもございます。それにもっと集中していかなきゃならぬ、こう思っておりますし、確かに、宇宙に対する子供たち、青少年の夢というものは大きいものがあると思います。そういう意味で、夢を与えるプロジェクトということも考えていかなきゃなりませんので、まさに、JAXAにおいてこれからの長期計画を立ててまいりますが、今、斉藤先生御指摘のあったような、国家的プロジェクトとして夢のあるプロジェクトをつくり上げていくということも大事だろうと思います。
そういう意味で、宇宙議連をおつくりいただいたということを心強く思っておる次第でございます。
先ほど、加藤先生からのお話の中にありましたように、いわゆる総合科学技術会議の中でも、ややもすると、大きいプロジェクトでこういうH2Aロケットとかそういうものは高い評価を受けておるのでありますけれども、そういうものはあるんですけれども、全体的に見たときに宇宙開発は重要四分野に比べると削減の方向だ、こういう指摘もいただいておりまして、これはどういう知見から来るのか。やはり国家的なプロジェクト、夢のあるプロジェクトがこれでは、本当にうまくいくんだろうかという一抹の不安も抱いております。
そういう意味で、加藤先生御指摘あったことは、我々にとっても大きな指摘でありまして、やはり今の総合科学技術会議のあり方にも一石を投じていただいた、そう思いながら伺っておったわけでございます。いずれにしても、宇宙開発というものが未来に向かって大きな夢を抱くプロジェクトだということをしっかりわきまえて、宇宙開発の問題について、所管省の責任者として積極的に取り組んでいく姿勢をもっとつくっていなきゃいかぬ、このように思っておるわけであります。
○斉藤(鉄)委員 終わります。
○池坊委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午後零時五分休憩
――――◇―――――
午後一時二分開議
○池坊委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。安住淳君。
○安住委員 三十分の時間をいただきましたので、東北文化学園大学の件についてやります。
最初、新しい話からなんですけれども、実はきょうになりまして、いろいろなことはもう大臣も御存じなわけですけれども、この大学は職員に対する給料の未払いをしているということが明らかになりまして、お金がないということなんでしょうけれども、この事実については把握しておられますか。いかがですか、文部省。
○加茂川政府参考人 お答えをいたします。
昨日、五月二十五日でございますが、東北文化学園大学の教職員給与が遅配となったということにつきまして、法人からも報告を受けておりますし、既に地方紙等にも掲載されておるわけでございます。これに関しましては、現在、法人におきまして、関係金融機関等と債務の償還計画の見直しでありますとか新規の融資などについて鋭意交渉を進めているとの報告を受けておるところでございます。
○安住委員 この大学の佐々木という理事長代理は、きのう、こういうふうに言っているんですね。四月に三十億円ほど授業料等々で入ったけれども、全部借金に回して給与の支払いをできる状態でなくなってしまったと。
それはそれで大学側の責任だと思いますけれども、しかし、私は地元で非常に思うのは、大臣、一般の人からよく話を聞くのは、随分いいかげんなことをやっても大学というのはできるんですねと言われるんですよ。まして、これは給料の未払いということを、何点か今から質問していきますけれども、この先こういう状態を続けていって、果たして学校法人として成り立つのか、つまり、大学として成り立つのかということが私はやはり出てくると思うんですよ。(発言する者あり)だめといったって、生徒はいるんですよ、学生はいるんです。
しかし、皆さん、大学の教授、三百六十人分の給料を払えない法人が大学を名乗っているというのはちょっと異常じゃないですか。大臣、いかがですか。
○河村国務大臣 まさに御指摘、私もそのとおりだと思います。それがゆえに、これまたおしかりを受けることにもなるわけでありますが、大学設立に当たっての認可条件というのは結構厳しいものになっているわけですね。
最近、借金でもいいではないかとか、いろいろな声があるんです、もっと簡単につくらせてくれと。NPOなんかもそうです、大学、学校を簡単につくらせてくれとおっしゃるけれども、こういうことが起きてみると、借金率というのは二五%以下にしなきゃいかぬとか、やはりきちっと自己資金を持ってやってもらわないと、学校というのは、そこに学生がいて、一歩間違うと教育の機会均等を失うことになる、こういう問題になるものでありますから、今回のこの給与が払えなくなっている状況というのは、二千五百人も学生がいて、そして授業料が何十億と入っておる、そういう学校がそういうずさんな経理をやっているということは、これは極めて遺憾なことだと私も思っております。
○安住委員 そこで、ちょっと確認したいんですけれども、これは今、財務内容というのはどうなっているんですか。一説には、ノンバンクからの借り入れも相当なものなんじゃないかと言われているんですよ。言葉は悪いですけれども、サラ金から金を借りながら学校の運営をやって大学と名乗っている、こんなことはありますかね。
いかがですか。これは、事実関係は確認していますか。
○加茂川政府参考人 財務状況、経営状況のお尋ねでございます。
学校法人東北文化学園の経営状況につきましては、これまでも事実関係、調査報告で明らかにしておりますように、私どもに提出されている決算書等についても虚偽の内容を含むものでございました。大変遺憾に思っておりますけれども、こういうことを踏まえまして、同法人に対しまして、五月末まで、今月末までに正確な財務状況の報告をまず求めております。
現時点でどういうところからお金を借りているかといったことについては、詳細な報告は来ておりませんので、ここで申し上げることはできませんけれども、五月末までの正確な財務状況の報告を踏まえまして、私どもは厳正に対応しなければならないと思っております。
○安住委員 私は万一、それは法律的にどうなっているか、ちょっとわからないので、何とも言いがたいんですけれども、例えば、経営が苦しくなった大学が金融機関からの資金調達ができなくなって、いわゆるノンバンクやそういうところからお金を借りて自転車操業的にやっているということであると、これは大臣、補助金を交付している団体というふうに、なかなかこれは国民は納得できないと思うんですよ、たとえそれが大学であっても。
だから、私学の健全な経営というのは非常に重要だし、これからチェックしていかないといけないと思うんですけれども、私が聞いている範囲では、ここの理事長代理は、会見か何かでノンバンクからの資金の借り入れも認めているんじゃないですか。どうですか。根抵当権の設定を、実はことしに入ってから、この事件が出てくる前に、一月から三月で相当設定をされている。これは新聞報道の話なんですが、その抵当権を設定しているのが都市銀行二行とノンバンクであるというふうになっているんですよ。
どうなんですか。これはもう一回確認しますけれども、本当にわからないんですか。
○加茂川政府参考人 この法人の経営状況、どういう先から融資を受けているか、借り入れをしているかという状況につきましては、現在確認中でもございまして、先生御指摘のような新聞報道もございますし、報道によれば、学校関係者、責任者が認めたという部分もございますので、そういう要素があるようなことは否定できないようにも思っております。いずれにしましても、先ほど申し上げましたように、最終的な、または正確な財務状況は、今月末を切って法人に厳しく提出方指導しておりますので、それを待って判断をしたいと思っております。
○安住委員 さて、そこで大臣、私は、いつ告発するのかなと思っているんですよ。なぜかといいますと、こんな事件は、これぐらい話が大きくなりますと、多分、告発をする前に地元の警察は捜査に着手しちゃうんじゃないかという可能性だって高いと思いますよ。どう考えたってこれは補助金適正化法違反だし、それからいろんな詐欺や何かにも当てはまる可能性もある。これはのんびりやる話じゃないと思いますけれどもね、大臣。ここまで調査してここまで事実関係がはっきりして、何で告発しないんですか。告発するとしたら、少し早くした方がいいんじゃないですか。いかがでございますか。
○河村国務大臣 御指摘の点、これは非常に重大な事件といいますか、これまで判明した事実を見てもそう思います。
これは、刑事告発に対しては宮城県警本部とも協議があるわけで、県警からの要請に当方の方も協力をしている。大学は、こういうことが明らかになっていきますから、ある意味では協力をしてもらわなきゃ困るし、協力していると思うわけでございますが。
御案内のように、学生が二千五百人もいるというこの現状でございます。教育が受けられなくなる状況はやはり学生にとって非常に問題でありますから、そこのところも我々は配慮しなきゃなりません。したがって、今この時点でいつということをコメントできないのであります、捜査にかかわっておるだけに。もうちょっとこの状況を見なきゃなりませんが、おっしゃるとおり、ゆっくりやっていればいいというものではない、こういう認識は持っております。
○安住委員 これは早く対応してもらいたいと思います。
それから、きのう、この佐々木理事長代理が会見をして、私はちょっと違和感を持ったんですけれども、経営譲渡や支援を考慮している、考えている、それで特定の法人と交渉して基本協定を結ぶところまで行ったと。つまり、一言で言うと、経営が苦しくなったから大学を売っ払って、だれか買ってくれという話で、どうも水面下で交渉したという話ですね。
文部省、聞いているんですか、この事実関係。これはどういうことですか。こんなこと許されるんですか。いかがですか。
○加茂川政府参考人 お答えをいたします。
先ほど申しましたように、財政状況が苦しい中で学校法人責任者が支援を求めて各方面にいろんな働きかけを現在鋭意行っておると聞いております。具体にどういう働きかけをどういう相手方になさっておられるのかといった詳細については、まだ把握をしておりません。
学校法人としては、学校法人の本来の使命、すなわち、この場合には、大学を設置、運営する、そこに学生がおるわけでございますから、学生の勉学機会を確保するといった根幹をきちんと見据えながら、その再建なり存続についていろんな努力をしておられる中で話が進んでいっておるのだろうと思っておるわけでございます。
○安住委員 河村大臣に伺いますけれども、私はちょっと違和感があると言ったのは、これだけ問題を起こしておきながら、では、譲渡先が仮に暴力団や何かだっていいんですか。これは、そうなっちゃいますよ。つまり、いいかげんなことをやってこんな事実関係が今明らかになりつつある。これは、そういう話をさせないことが大事なんじゃないですか。
これは、文部省ができるかどうかわかりませんよ。だけれども、それは、債権譲渡をして売っ払って大学を存続しようと。大学を経営したい人間というのは結構いますから、それはおいしい話だと思う人もいるかもしれませんよ。だけれども、そんなことで、皆さんが所管をしている、つまり、日本の国の私立大学というのはそれでいいんですかということなんじゃないですか。大臣、いかがですか。
○河村国務大臣 当然、私立大学の経営者、理事にはやはり教育にふさわしい人ということは、これは要件の中に入っておるわけでございまして、およそ、どういう認定をするかということは、それについてはまたいろいろ異論があるところでありましょうが、まさに教育にふさわしくない立場にある人に教育をやってもらうというわけにいかない部分がある。だから、だれがやってもいいとは。やはり公共性の極めて高い、公益性の高い大学であるということ、これは非常に大事な視点だというふうに私は思います。
○安住委員 だからこそ、私は、そういうことを防ぐためにも告発を早くすべきだと。捜査のメスを早く入れて事実関係をはっきりして、負債総額も、そしてノンバンクや何かの借り入れの問題、つまり、建設をしたある建設会社の未払いも発生している、四十億か何かという話まで出ているわけですよ。こういう現状についてはっきりと赤裸々にした上でこの大学をどうするかというのが、やはり筋だと思うんですよ。それから言ったら、ですから、私が先ほどから申し上げているように、早く告発をした方がいいということをまず申し上げておきます。
それから、私がなぜ、このいいかげんな、譲渡かどうかわかりませんけれども、それに対して注意をすべきであると言ったのは、つまり、宮城県においては公立の黒川病院というのがあります。これは赤字の病院で、黒川郡というところが運営している病院なんですが、実は、この事件の発生直前に、この東北文化学園大学と譲渡で契約を結ぶその日だったんですね、私が委員会で質問をしたその次の日がそうで、結局それは見合わせてやめることになりました。これはもう間一髪でしたよ、間一髪。
つまり、皆さんの対応がおくれればおくれるほど大きな波及があって、悪いことが連鎖をしていくということがあるんだと私は思うんです。ですから、そういう点では、ここでこういう問題をやったというのは、決して悪いタイミングではなかったと私は思っております。
しかし、考えようによっては、今まで以上に少子化の時代の中で私立の経営というのは相当無理をしているんでしょうから、もう少し財務内容はしっかりチェックをしないと、この大学一つだけ異常な大学だというふうに思いたいですよ、思いたいですけれども、本当なのかなと。日本にこれだけ私立大学があって、失礼ですけれども聞いたこともないような大学がぼんぼんあるわけですよ。それは、ちゃんともう一回チェックをする仕組みがやはり必要なんじゃないかなと私ちょっと思ったものですから。
これは感想で結構ですから、大臣、いかがでございますか。
○河村国務大臣 教育機関が安定的で継続的で、そしてその使命を果たすということ、まして私学においてそれがきちっと求められておるわけでありますから、今、安住先生御指摘のように、そういう大学がほかにもありとすれば問題であります。
特に私学助成という形で、新設を除く、あるいは特別な私学助成は要らないというところは別でございますが、税金も助成をしている、こういう現況がありますから、それが学生にとっていわゆる修学の機会を逸するようなこと、これをやはり我々は一番考慮しなきゃいけないことでありますから、そういう状況を未然に防いでいかなきゃならぬということだろうと思います。
したがって、そういうふうになったときに早くそれを察知して、もちろん、経営移管を図るとかあるいは健全な力のある大学が経営統合するとか、いろんな動きがこれからも起こってくる可能性もあるわけでございまして、今までどちらかというと、認可はするがそういうところまで想定をしてあったかということについては、我々もこれは反省しなきゃいけない部分もあるのではないか。
やはり、今後のあり方、そういうものも検討しながら、どうあったらいいのかということを考えていく。今回の東北文化学園のことはそのことを強く求められておる、そういうふうに私は感じております。
○安住委員 まさに、認可を出したら後は自由にやってくれというわけには多分いかない話だということはよくわかったと思うんですね。私は、あえて言いますと、私学財団と文部省の間の、失礼な言い方でずぶずぶの関係は、もう少しやはり、逆に言ったら緊張関係を持ってやるべきだと思っているんです。今、一体だと思いますからね。そういう中で、何となく、同じ仲間同士でやっているから、大学、私立大学に対するチェックが甘くなる。そういうことを直していくことがやはり河村大臣の大きな仕事だと私は思っておりますので、今回のことを機会にぜひそこに踏み込んだ対応をお願いしたいと思っております。
そこで、続けますけれども、これからの具体の話をちょっとしますね。
実は、この佐々木という理事長代理がこう言っているんですよ。文部科学省に、五億七千四百万円の補助金返還、返還請求に対して情状酌量をお願いしたいと言っているんですよ。そんなことあるのかなと思うんですけれども、情状酌量をお願いされるんですか、大臣。これはいかがなんですか。
○河村国務大臣 それは私は聞いておりませんが、そういうふうに言っているんですか。
○安住委員 では、私学部長、答弁してください。
○加茂川政府参考人 大臣がお答えをしたとおりでございまして、情状酌量についての具体的な話は一切聞いておりません。
私どもの基本的な考え方は、今回、東北文化学園大学に対するいわゆる経常費補助金の返還についてでございますけれども、今回の事案が大変悪質であった。架空の寄附の計上という悪質な方法によって、いわば私どもを欺いて設置認可の申請が行われたこと、それから、資産面での裏づけという大学設置の根幹部分について重大な欠陥を抱えたまま大学が開設されたこと、さらには、いわゆる二重帳簿という悪質な方法によって、学校法人会計全体が、言葉は言い過ぎかもしれませんが粉飾されていた事実があったこと等々、学校法人の管理運営に著しく適正を欠く面があったと言わざるを得ないという判断をしておりまして、そういったことを踏まえますと、経常費補助金については全額返還に相当する事例だという考え方を持っておりまして、これを変えるつもりはございません。
○安住委員 要するに、これはちょっとはっきり言ってもらいたいですけれども、僕は、この大学の理事長代理とかいう人は、学生二千五百人を人質にとっているので、大学がつぶれたらどうするんだみたいな話で言ったんだと思うんですよ。だって、五月の給料さえ未払いになっちゃったということですから。
ここで五億七千強のお金の返還請求、さらに地元の仙台市の補助金返還請求が実現すれば、計十五億円に上るわけですね。計十五億円のお金を払えと言っても払えない可能性も確かにありますけれども、再度確認します。これを免除してやるとか情状酌量してやるなんということは全くないですよね。これだけ確認させてください。
○河村国務大臣 これは文部科学大臣の職責にかけてもありません。
○安住委員 では、ぜひそうしてもらいたいと思います。
そこで、それではこの大学をどうすべきかということになるわけです。
一つは、自主再建が可能なのか。それからもう一つは、しっかりとしたところが本当に引き受けて、経営を譲渡してもらって、そこでもう一回やり直すのか。それとも、自動的にというか自然に、なすがままで、学生も何も希望しなければ、そのまま終わるのか。私は大きく分けて三つだと思うんですよ。
二千五百人の今いる学生の皆さんやその父兄の皆さんは大変不安に思っているとは思います。しかし、私は、あえて申し上げると、我が国の高等教育のありようを考えたときにはやはり相当厳しい対応をしないと、私が先ほど最初に申し上げたとおり、先生、随分いいかげんなことをやったって大学はできるもんだっちゃねと私は田舎で言われるんですよ。それは我が国の教育にとっては根幹にかかわる話、まして、詐欺師みたいな人間が大学をつくって、学生を集めて、言ってみればお金もうけしていたという話ですから。これは学生には全く罪もないし父兄にもかわいそうなことではあるけれども、しかし、このままというわけにはいかないと思うんですね。
そこで、今後どういう対応をなさっていくおつもりなのか、何か考えがあればお聞かせを願いたいと思うんです。
○加茂川政府参考人 今後の本学園のあり方についてでございますが、繰り返しになって恐縮ですが、何よりも正確な財務状況をまず踏まえることが今後の大学のあり方に大きくかかわってくるんだと思っておるわけであります。そして、これは、学校法人、大学のあり方でございますから、まずは学校法人自身がそのあり方について検討する、自主再建が可能であるのか、有力な支援者を求める、いろいろ選択肢はあろうかと思いますが、法人自身でお考えいただくべきものと考えております。
ただ、私どもとしましては、何よりも、先生御指摘のように、多数の在学生がおるわけでございますから、その在学生の勉学の機会の確保、これを最優先に対応策を検討するよう強く学校法人に申し入れてきておりますし、今後もその観点から必要な指導をしてまいりたいと思っておるところでございます。
○安住委員 加茂川さん、それは言うのは簡単なんですよ。しかし、大変なんですよ。だって、給料未払いなんだから。勉学の機会を担保するといったって、大学の教授や職員は今お給料もらってないの。そういう中でどうやって学生の面倒を見るんですかね。私はなかなか大変だと思う。
これは多分、いろいろな意味で大変だと思いますけれども、実は早急にある程度判断しないと大変なことになるんじゃないかなという気はするんですよ。いかがですか。
○加茂川政府参考人 確かに、委員御指摘のとおり、時間的に見てかなり切迫した、しかも重大な判断をしなければならない状況に置かれておると思いますし、私どもも、法人がそういう立場に置かれていることを前提に必要な指示をし、対応もしてまいりたい、その基本は、現在学んでいる学生の利益を確保することを根幹に据えた対応をしたいということを繰り返し申し上げたいわけでございます。
○安住委員 仮の話ですけれども、例えば文部科学省なりが間に入って仙台市なんかとどこかへの譲渡についての話し合いを持つとか、そういうことは想定しているんですか、していませんか。答えられませんか。
○加茂川政府参考人 いろいろ仮のケースというのはあり得ると思いますけれども、現在は学校法人がまず自身のあり方について検討をしておりますので、それを超えて私どもが選択肢の一つを示して行動を起こすということはいかがかと思っておりますので、御了解いただきたいと思います。
○安住委員 ところで大臣、私ももう時間があと三分ぐらいしかありませんけれども、やはり私学の経営状況、特にこの三十年ぐらいの間に人口動向に比して大学がかなりできてきました。その特徴は、私なりに思うのは、予備校とか専門学校の経営をしていた法人が大学の経営に乗り出した時代ですよ。それで、昔予備校だった名前が大学になっちゃったりしているんですよ。
これは、やはり最初から大学を運営するだけの体力のある法人かどうかというのは非常に疑わしいところがあるところが結構あると思うんですよ。今回の例もそうなんですよ。実は、専門学校を一校ぐらい持っていたようなところが、これが無理に大学まで足を伸ばすというか手を伸ばして経営をした。しかし、大学を実際に運営するだけのお金を集めて、人的資源も集めるというのは、これはスケールの違う話ですからね。
しかし、現に日本の私学で、特にその一族なり家で経営をしているようなところというのは、再調査というより、ちゃんと法律に基づいて、法律がなかったらつくって、しっかり調査しないといけないんじゃないですか、大臣。帝京大学の問題等もありましたけれども。
ちょっと日本の私立、これはいかがわしいところがかなりあるぞと国民の皆さんが思い出したら、高等教育のありようというのは大きく問われてくるような気がしますけれども、大臣、いかがですか。
○河村国務大臣 設置認可のときにそれはやって、書面審査からずっとやってきておりますが、これは審査基準があってやっておりますが、その後の問題で、今、私学に対して文部科学省が、今のような特別な不正があったとか疑義があるとか、こういうことがあれば別でありますが、普通の状態であるものを、これは自主的に報告をいただくということは可能としても、強制的に立入調査をする権限は文部科学省にはないと思うんですね。特別な不正があったとか、今のようなケースが出れば、調査を求める、必要によったら告発するとかいうことはできますが。
こういう点をこれから、私は、先ほど御指摘いただきましたように、今後の問題としてどう対応していくかということ、これはやはり大いに考えていかなきゃいけない点であって、そういう点で、今の私学に対するあり方を根本的に見直すことも必要になってくるんじゃないか、それから私学振興助成法のあり方等々も考えなきゃいけないのではないか、こんなふうに感じております。
○安住委員 余り私の出た学校のことも言いたくないですけれども、早稲田でさえ、三百五十万ぐらい、あれはたしかお金を取っていたんでしょう。ここにも卒業生が随分います、こうやって見ますと。やはり、多分、相当経営の内実というのは、隠れているけれども、あけてみたらびっくりということがかなりあるような気がします。
ですから、今後、認可のところまでのチェック、今大臣が言ったように、そこだけでなくて、やはり第三者的な人がしっかり、今回は監査法人はもう全然役立たず、監査法人がだまされたなんて、僕は本当にそうかなと思いますけれども、東北文化学園大学に関しては、公認会計士はだまされたと言って、私は、その報告書を文部省が簡単に書くというのはどうかなと思うんですよ。公認会計士がそう簡単にこれだけの詐欺にだまされるのかなと思いますけれども。しかし、それはまあいいです、本質的な話でないから。
やはりチェック機関をどうするかというのは、法律改正を含めてやって、緊張感を持たせないとだめだと思います、私立大学の経営に関して。緊張感を持たせるためには、やはりチェック機関をしっかりつくって、内部にわたって調べられるようにすべきだと思います。
○河村国務大臣 今回の私学法の改正がありまして、財政も公開しなきゃいけないというふうな規定もつくってまいりましたので、これは、今までに比べればそういう点は明らかになっていくと思います。その状況も見ながらやっていかなきゃいかぬ課題だ、こういうふうに思います。
○安住委員 では、終わりますけれども、ですから、天下りで引き受けてもらっているからとか、そういういいかげんなずぶずぶの関係はやめてくださいよということです、私は。そうでないと国民は文部科学行政に対して不信感を持つのではないかということだけ申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
○池坊委員長 肥田美代子君。
○肥田委員 民主党の肥田美代子でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
昨年六月に行われました全国学校図書館協議会の読書調査の結果を読みますと、五月一カ月の読書冊数が小学生で八冊、この調査は四十九回行われておりますけれども、最高値を示しております。また、中学生も過去最高でありまして、二・八冊となっております。子供の読書離れ、これに歯どめがかかってきたというふうに、私はうれしく思っております。
「ハリー・ポッター」の人気がございます。それから、最近では、「世界の中心で、愛をさけぶ」、この爆発的な人気がありまして、これは出版社の努力も大いにございますけれども、子供たちが本を読むようになった。「世界の中心で、愛をさけぶ」は、ひょっとしたら大臣、もうお読みになったかもしれませんけれども。――そうですか。全国一万六千校を超えます朝の読書運動、これも相当功を奏しておりまして、小中学生の読書冊数の上昇傾向の大きな支えになっていると私は思っております。
それで、大臣にお尋ねしますが、子供の読書活動の現状についてどのように感じておられますでしょうか。
○河村国務大臣 肥田先生にも大変な御努力をいただいて、子ども読書活動推進法案以降、読み聞かせ運動等々もかなり活発になってまいりまして、御指摘のように、確かに、小学生、中学生の活字離れ、読書離れに歯どめがかかる傾向が出てきたということは、大変うれしいことでございます。
ただ、どうも高校生あたりになると、受験という問題もあるのかもしれませんが、もう一つぱっとしない。ここのところももうちょっと考えなきゃいかぬ、こう思っております。
また、「世界の中心で、愛をさけぶ」という、これも、何か三百万部、今までにないということです。あの小説は非常に、純愛、そういうものにあこがれる。今、子供たちの心の乱れとか、特に性の乱れとか、いろいろなことが言われておりますが、そういう中でああいう本が子供たちに読まれるというのは意味があることではないか、こう思っております。
そういう点で、子供たちの読書活動を大いに進めてまいりたい、こう思っておるわけでございまして、さらにこれから、この法がどのようにこれからさらに生きていくかということ、それで、その条件がきちっと整備されているかどうかということ、こういうこともさらに我々は検証をしながら、子供の読書活動を推進していかなきゃならぬと思っております。
さっき申し上げた、例の読み聞かせ運動、全校一斉に読書活動をやろうという学校が、全国の公立の小学校で八四%、中学校でも七〇%実施された、こういう情報も得ておるわけでございまして、そういう意味で、肥田先生御指摘のように、確かにいい傾向になってきておる。
これを揺るぎないものにする、さらに進める。これは文部科学省も、第一義的に我々もっと力を注がなきゃなりませんし、立法府も、議員立法でこれをおつくりいただいたわけでありますから、これについて目配りいただき、さらに検証をいただいて、さらに充実した読書活動にお力をおかしいただければありがたい、このように思っております。
○肥田委員 大臣も今おっしゃいましたように、子供の読書回帰ということは大変喜ばしいことでございます。しかし、この傾向を継続していくということが大事なんですね。それで、それには、やはり学校図書館を一段と活性化させること、これが相当求められている段階だと思います。
学校図書館に対して小学生の八割が、本を読むところですと答えているんですね。これは当然だといたしましても、わからないところを調べる、それから、自分で勉強するところ、グループで学習するところといった、新しい回答がふえてきております。
調べ学習などが広がって、図書館のイメージがどんどん膨らんできたと思いますけれども、大臣は、この学校図書館の新しい機能についてどうお考えですか。
○河村国務大臣 平成十四年八月二日に、この子ども読書活動の推進法に伴いまして基本的な計画を政府が立てたわけでございます。その中で、学校図書館の機能は、まさに豊かな心をはぐくむ読書センターとしての機能とあわせて、主体的に学ぶ場所としての学習情報センターとしての機能、これを両方果たしながら学校教育の中核的な役割を担う、このことが期待されている、こうあるわけでございまして、そういう意味で、学校図書館の役割というのは、これからの教育、特に子供たちの豊かな感性あるいは情操、思いやりの心とか、そういうものを養う上においても、教育の中核としての学校図書館の役割はますます大きくなってきておる、このように認識をいたしております。
○肥田委員 学校図書館を学校のど真ん中に据えた授業を行っている学校がありまして、そこが学力の向上がはっきりとデータとして出た、そのような報告を受けておりますし、恐らく大臣の方にも行っていると思いますけれども、山形県の鶴岡市朝暘第一小学校、これは加藤紘一さんの地元であろうかと思いますけれども、全校挙げて学びの土台となる力を育てようと、授業の中に読書活動を取り入れております。
その成果、それが学力検査にあらわれているわけですね。すべての学年で、国語、算数の学力が全国平均を十ポイント上回っているんです。それから偏差値平均も一ポイント上回る形で変移しておりますが、これは、学校図書館の活用をして、子供たちの学ぶ意欲を引き出したことの結果だと私は思います。
この検査結果を大臣はどのようにごらんになりますか。
○河村国務大臣 肥田先生御指摘の山形県鶴岡市立の朝暘第一小学校が、子供の学習と生活を豊かにする図書館づくりという表題を掲げて取り組んでおられて、学校経営、学校教育の中核に図書館を据えたということ、その結果、学校全体で、日常的に読書推進活動が進められておる、資料を使ってそれを勉強に生かせる、そういう図書館活用教育が進んでおるという点が、まさに読書が持つ、国語力が構成されて、考える力とか感じる力とか想像する力とか、あるいは表現力、そういうものが生まれておるんではないか。これは国語だけではなくて算数も上がったと聞いておりますから、やはり算数も国語力がまずなければ問題の意図が解けないんだ、こう言われておりますから、そういう意味で、やはり非常に意味がある結果が出ておる、こう思います。
学力検査の結果までよく私は承知はしていないのでありますが、事実、そういう指摘があるわけでございますから、やはり学校図書館を活用した読書活動、これを推進することが、そしてそれを学校全体が取り組むことが、児童の学習活動によい結果が出ている、この証左ではないかと思っておりまして、こういうことが全国的に広まっていくことは非常に望ましいことだ、こういうふうに思っております。
○肥田委員 学力低下を悩んでいる今の状況にありまして、一番早いお薬がこの学校図書館を利用することじゃないかと思うわけでございます。今大臣がそういうふうに評価してくださったんですが、私、お願いしたいのは、こういう教育実践をどんどん文科省の方から学校、教育委員会に広めてほしいと思うんですが、情報公開、情報の伝達について、何かお考えございませんか。
○河村国務大臣 先ほどの鶴岡市の朝暘小学校のケースは、実は平成十二年の子供読書記念事業のときの読書活動優秀実践校にも選ばれておりまして、それは、実践校で文部大臣賞をもらったような学校については紹介の冊子もあったりして、こういう形で全校で展開してやっている、先進的な取り組みだという模範例として全国に配付をいたしておりますし、学校図書館便りとか、いろいろな形で全国に情報公開して、そして研究していただいて、いいところについてはそれを実践していただくこと、これは大いにやっていきたいというふうに思います。
○肥田委員 大いに全国に啓蒙、啓発をしていただきたいと思います。
この小学校の場合、教科授業の中に読書の時間があるわけですね。学習指導要領で示された読書の時間を最大限に生かしている例でございますけれども、この読書の時間をさらに強化するという意味で、学習指導要領の中に、すべての教科に読書活動を導入するというような趣旨を指針として盛り込むことが私は必要でないかと思うんですが、大臣、いかがですか。
○河村国務大臣 御指摘の点、非常に大事なことだと思っておりまして、事実、どうしているのか、こう思って私も調べたのでありますが、平成十四年度から順次、小中高の新学習指導要領が出てまいりました。そこで、教育課程全体の配慮事項の中に、学校図書館の計画的な利用ということに加えて、読書活動を充実することということを、まず最初の第一章の総則の中に織り込んで、各科目ごとじゃなくて、総則にまず言っちゃって、これは全教科の課題ですよというふうにいたしております。例えば小学校でありますと、総則の第一章の五番目のところに、「指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項」ということで、その中に、いろいろあるのでありますが、それ以外に次の事項に配慮するということで、「学校図書館を計画的に利用しその機能の活用を図り、児童の主体的、意欲的な学習活動や読書活動を充実する」ということで、学校図書館をうまく使う、そして学習活動をやりながら、あわせて読書活動を充実するということを総則にうたって、教育の全体に及ぼすようにという配慮を今回させていただいたところでございます。
○肥田委員 指導要領の総則にということで、本当に喜ばしいことだと思います。
それで、先ほど大臣がおっしゃいましたように、読書年を記念していろいろな読書活動の優秀実践校を表彰していらっしゃいます。私はこれは大変いいことだと思っております。各地の学校では、今、朝の読書、読み聞かせ、それから学校図書館の土曜、休日の開放など、本当に創意工夫をもってなされているわけでございますが、この文科省が行っていらっしゃる優秀実践校の表彰をさらに進めまして、学校図書館モデル校を指定して、子供や地域の人々が自慢できるような学校図書館づくりを奨励していきたい、それが今大臣がおっしゃいました指導要領の総則を本当に形として生かしていくことじゃないかと思うんですが、いかがですか、そのモデル校づくりの提案に対して。
○河村国務大臣 御指摘の点、これまで子ども読書の日をつくり、その日に、四月二十三日に、毎年二百校近くの学校を表彰しております。まさにその学校はモデル校なのであります。
普通、文部科学省でモデル校といいますと、そこへ予算を組んで、三カ年計画ぐらいで何か特別なことをやって成果を上げてくださいというような格好をとっておりますが、私は、今読書を全体にやらなければいかぬという評価が高まってきておりますから、そういう優秀校をモデル校として表彰して、モデル校としてきちっと位置づけて、それぞれの地域において、各県を代表して、あれは表彰するときに各県三校ずつぐらいにずっとやっておりますから、そういう地域は毎年ふえていくわけでありますから、そういう学校に見習ってもらいたいということを、もっと趣旨を徹底すればいいんじゃないかと私は思っておりますので、それを表彰された学校はモデル校だという意識を持っていただく、それを受けていない学校はそれを模範にしていただくという形が、やはり教育委員会で意識をしていただくことが効果があるのではないかと思っております。
読書活動推進事業ということで、地域指定的なことはやっておりまして、そこで、学校図書館を含めた学習活動とか、また公共図書館あたりも、やはりこれを活用していただく。これは地域指定でありますから、学校図書館だけじゃなくて、総合的な、学校、家庭、地域社会一体となる方がいいだろうということで、その総合的な取り組みをする地域を、モデル地域を指定しておるようでございますから、それと相まって、学校図書館のモデル校、これは、そうした優秀校を、そこはモデル校であるということで徹底していけばどうであろうか、このように思います。
○肥田委員 ぜひどんどん進めていっていただきたいと思います。
それから、学校図書館といいますと、これまでは、蔵書が少なくて、あっても色あせている本がちょろちょろと並んでいるというイメージでございましたけれども、それを何とか改善しようということで交付税措置がなされたわけでございます。平成五年、一九九三年に義務教育の諸学校を対象とした学校図書館図書標準が制定されました。五年間で総額五百億円、学校図書館の図書整備費として地方交付税措置されたわけでございます。このときの思いは、平成五年時点の蔵書を一・五倍にふやそうという新しい計画であって、本当に私たちにしたら目の覚めるようなうれしい計画だったわけでございます。
ところが、五年たっても一・五倍にならない。その後、もう既に十年以上たちました。しかし、まだ一・五倍にならない。平成十年からは単年度措置で、四年間で毎年百億円、平成十四年から五年間で総額六百五十億円。要するに、この十一年間で一千三百億円という予算措置がなされたはずでございます。ところが、全国学校図書館協議会が百三市区町村教育委員会にアンケートいたしました結果は、予算化した市町村は二五・五%にすぎませんということになっておりますが、文部省の調査ではどうなっておりますか。
○小野副大臣 文部科学省における調査結果のお尋ねでございますけれども、文部科学省で調べましたところ、平成十四年度におきます学校図書館図書整備費による図書購入決算額、これは百三十六億円に達しております。また、平成十五年度におきましては、これは予算措置として今出ている数字でございますが、これは百四十二億円となっておりまして、地方交付税積算額が百三十億円となっております関係上、その交付税積算額を超えた数値が調査結果としてあらわれてきております。
しかしながら、個々の地方公共団体の状況において、その濃淡がかなりあるようでございまして、文部科学省といたしましては、そのそれぞれの教育委員会に対して、地方交付税措置を踏まえた上で、学校図書館の蔵書が充実されるように通知を行ったり、また各種会議の場において周知並びに指導を行っているということでございまして、この交付税措置の趣旨をきちんと踏まえて学校図書館蔵書の充実が図られるように、これからも努力してまいりたいと考えております。
○肥田委員 全国学校図書館協議会の調査が三〇%に満たない、ところが、文科省の調査は一〇〇%を優に超えている。私は、この調査の不思議さがどうしても腑に落ちないのですけれども、大臣、これはどうしてこんなに違いがあるんでしょうね。
○河村国務大臣 これは、私も、その報告を聞くたびに、正直申し上げてちょっと首をかしげております。こんなに差がある調査というのは珍しいわけでありますから、調査の仕方、また回答者のあり方だろうと思っておるのです。
そこで、いろいろ聞いてみると、学校図書館協議会の皆さんの方も、調査が不十分な点もややあるなとは思うのでありますが、これはやはり、まさに一般交付税でありますから色がついておりませんので、そのお金は何に使ってもいいわけですから、その首長さん方、行政の皆さんの姿勢によって、かなり多く、これはやらなきゃいかぬと思って、交付税でおりてくる分よりも数倍使ってやっておられる、学校に対して首長さんがお金を配付されているところと、それを何かほかに回して抑えているところとがあるんじゃないか。トータルで見るとこうだけれども、多いところ、少ないところのばらつきが、もうちょっと調べてみると、そういう点があるのではないかと思います。
しかし、最近、この子ども読書活動推進法ができて、やはり皆さんの目も、かなり協議会の方も全国に展開していただきまして、新聞広告なんかもやっていただいたり、各紙もそういう問題を取り上げていただいたりしておりますから、首長さん方も、これをだんだん無視できなくなって、きちっとしようという姿勢が出てきたのではないか、それが数字にあらわれている部分もある、こう思っております。
ただ、この乖離はもうちょっと詰める必要があると思いますが、今、小野副大臣も答弁いたしましたように、いろいろな機会を使って、学校図書館の整備、これはきちっとやっていただくように周知徹底をさらにしていくことに我々として努力していく必要があろうな、こう思っておるところであります。
○肥田委員 一〇〇%以上と三〇%の不思議さは別といたしまして、学校図書館図書標準の達成率、これが問題なんですね。私、三月十七日の本委員会でも質問いたしましたけれども、図書標準の達成率が、これは文科省の調査ですが、小学校で三四・八%、中学校で二九%です。
これは、平成五年に交付税措置されたときに、五年間で一〇〇%達成しましょうという計画だったんですね。ところが、五年でできない。それからずっと来て、十一年目でもまだできていない。三〇%前後で落ちついているわけですよ。それで、私は、これはやはり国会議員の一人としても恥ずかしいと思うのですね。五年間でやるという約束をしながら、ずるずるずるずるやってきて、まだまだだめだという。
ですから、余りにもこの達成率が低過ぎるのはなぜかと思うのですが、新しい購入図書は確実にふえているのに、廃棄処分される図書もまたふえているということですね。増加冊数が低迷するということが起きるのは、廃棄処分が相当あるということなんです。これも、もちろん、当然必要なことなんですが。
それで、前回の質問のときにお尋ねしたのですが、学校図書館図書整備計画の中に廃棄図書を見込んでいたかどうか、きちんと検討するという御答弁を大臣からいただいておりますが、どのような結果になりましたでしょうか。
○近藤政府参考人 お答えをいたします。
先生御指摘になりましたように、確かに、新規に購入する図書は着実にふえているわけでございますが、一方で、廃棄図書がかなりの数字に上っておる。これは、確かに、幾ら図書を購入いたしましても、あれだけ廃棄図書がございますと、なかなか計画は達成できない。
それで、私どもも、やはり学校図書館図書の充実を図っていく、こういう観点から、一度、各県の教育委員会を通じまして、具体的に市町村の学校で廃棄を、どういう基準で、どういう考え方で、どういった図書をしているのかとか、少し調査項目等も精査をいたしまして、できるだけ早く調査をしてみたいと考えております。
○肥田委員 ぜひそのことをお願いしたいと思います。
平成五年に学校図書館図書整備五カ年計画が策定された折に、学校図書館図書という名目で交付税措置が行われました。当時の文部省の初等中等教育局の銭谷小学校課長名による、学校図書館の図書の購入に要する経費の地方財政措置についてということで、教育委員会に対して通知が出ております。その内容なんですが、増加冊数分の図書の購入に要する経費として、学校図書館図書費を新たに設けたとしているわけです。ですから、今回設置したのは増加分に対する図書費ですよということをこの場所でおっしゃっているんです。廃棄図書の更新分ではありませんよということもはっきりおっしゃっているわけです。
銭谷さんは、別のところで、更新用の経費は、従来からの教材用図書及び備品という項目の中で積算されているとはっきりおっしゃっているわけです。つまり、五カ年計画の交付税措置は、新しい図書を購入するためのものである、それは学校図書館の図書を一・五倍にまで引き上げるためのものでありますと、教育委員会に通知を出されたんですが、この説明は今日でも変わっておりませんね。
○小野副大臣 肥田委員のおっしゃられるとおりでございまして、平成五年六月十日付の通知は、「公立義務教育諸学校の学校図書館の図書の購入に要する経費の地方財源措置について」ということで、各都道府県教育委員会へあてて通知したものでございますが、その内容は、その増加冊数分の図書の購入に要する経費を、交付税措置を背景にする地方の一般財源によって措置する、こういう趣旨でやられているものでございます。
○肥田委員 趣旨が今も変わっていないということを確認させていただきました。
それで、問題になりますのは、年間八百万冊と言われる廃棄図書の更新に関する経費でございますが、この廃棄図書の更新は現状維持のために行われるものでございます。しかし、現状維持するだけでは学校図書館の図書はふえません。
新しい増加冊数分として、二度にわたる五カ年計画が行われ、おおよそ十一年間、一千億円が措置されたわけでございますが、この平成五年に始まります学校図書館図書整備費とか、子どもの読書活動推進法に基づく学校図書館図書整備費、この予算措置が廃棄図書の更新分に使われると、結局、この文科省が計画された、すばらしい、増加冊数の水準を上げるということに全くつながっていかないわけですね。ですから、結果的には、いつまでたっても学校図書館の図書標準は達成しないわけです。
したがって、廃棄図書の更新経費は従来の図書購入費として交付税措置された予算を充てるよう、私はしっかり奨励していただきたいと思うのですよ。
銭谷さんのときには、今、副大臣が読んでくださったように、この奨励はございました。ところが、最近の通知にはこのことは全く明記されていない。学校図書館図書整備費だけのことしか書いていないものだから、いつまでたっても図書の冊数が目標値に至らないわけでございますけれども、いかがですか。
○近藤政府参考人 お答えいたします。
現在、確かに、教材整備計画、こういった形で、備品購入費・教材費の中からも図書を購入することが可能でございますし、それから、平成五年度から、学校図書館の図書購入という形で新しい整備計画を立てたわけでございます。
私は、そこは、その片っ方がいわゆる廃棄の図書に係る更新と申しましょうか、そういう形で厳密に仕分けるというよりは、教材費等の地方交付税もあるいはこの学校図書館図書の購入のための交付税も、しっかりと予算措置をしていただきまして必要な図書を整備していただく、これがむしろ大事なことではないか、そういうふうに考えております。
○肥田委員 交付税ですから、深入りできないということもありましょうけれども、しかし、学校図書館の現状に関する調査につきまして、集計表の見方の中で、各学校は、学校図書館図書整備費という項目と、それからもう一つが、今おっしゃった、備品購入費・教材費等という、その二つの項目にちゃんと分けられているわけですね。そういうふうに文科省はきちっと分けていらっしゃるわけです。したがって、各学校の廃棄図書を穴埋めする更新分はどの経費から出たかということを、今おっしゃいましたけれども、きっちり調査してもらわないとまずい話になるわけです。調査の段階で協力を依頼したときには、集計表にしっかりとそのことを書き込んでもらう。
しかし、今、この交付税のややこしさ、要するに、学校図書館図書整備費とそれ
から教材費、この二つが交付税で措置されているんですが、これが、片一方は廃棄処分の現状維持のために使い、そして片一方は新規のために使うということが最初には約束されたにもかかわらず、いつの間にやらどっちもうまく稼働しないようになっちゃっているんですね。ですから、いつまでたっても最低の基準冊数にも届かないということになりますので、この二つに分かれている交付税の予算を一本化したらどうですか。大臣、どう思われますか。
○河村国務大臣 この一本化が果たして図書館図書の購入にとってプラスになるかどうか。
今の現状は、この統計の数字を見ても、百三十億は百三十億で図書に使い、それから備品購入費・教材費の中からも図書で二十億ぐらい、二十二億ですか出て、そしてトータルでいくとかなりオーバーした数字になっているんですね、統計上は。これを、備品購入費・教材費の中と図書と一緒にしてしまった場合に、そのとおりに図書館の方へもっと、それでは今の二十二億がもっとふえるかどうか。この辺はやはり首長なりの姿勢によるものでありますから、これをどう考えていったらいいかというのはちょっと検討しなきゃならぬと思います。
いずれにしても、最初に銭谷課長時代に通達したという、新規に買う分と廃棄図書の更新の分との考え方、これはやはり整理をする必要があるのではないかと思いますね。事実、廃棄図書というのが、買うとほとんど同じだけ廃棄をしなきゃならない現状というのを、この辺をどう考えていったらいいのかと思います。
しかし、おっしゃるように、いずれにしても、この図書の目標値にどういうふうにして到達するかということを考えていかなきゃなりませんから、この五カ年計画、次の計画も立ててもらわなきゃならぬ、こういう状況下でありますから、そのときにこの問題も一緒に考えていく必要があるのではないか。今、一本化の方向なのか、あるいは廃棄図書の関係と新規図書を別途買う、このことをきちっと徹底するということ、そのことをもうちょっと徹底する必要があるのではないかな、こう思っております。
いずれにしても、各地方公共団体がこの問題について適切な予算措置をとってもらうことが一番でありますから、そういう方向で、この交付税の精神はこうなっているんだということをもうちょっと我々サイド、政策官庁の我々の方からも周知徹底を図る必要がある、このように思っております。
○肥田委員 ちょっとお配りしたペーパーがお手元にあるかと思いますが、ごらんになっていただきたいんです。平成元年から平成十四年までの「公立小中学校の図書購入費の予算措置状況の推移」というのがございます。
今、先ほどからずっと話題にしております、平成五年度から図書館図書整備費という五カ年計画が始まったわけですね。それでずっといただいているわけです。ところが、五年度の前、平成四年度、このときにもちゃんと百十五億ついているわけですね。ですから、もし平成四年の百十五億がそのまま残って平成五年度の新しい計画と合体したら、この段階でもう二百億を超えるわけなんですね。ところが、平成四年度の百十五億がどこかへ行っちゃって、新しい計画になったからということで百二十億がおさまっているわけですね。これはどうもおかしいんですよ。
それで、平成十四年度からは、今度は百三十億円、五年間で六百五十億円の予算措置がとられておりますから、初年度の平成十四年には、総額百六十億円でございますけれども、これはたった三十億円ふえているだけなんですね。ですから、平成四年度まであった、当然あるべき土台の予算がどこかへ抜けて落ちちゃっているんです。
ですから、五年の計画をしても十年の計画をしても、いつまでたってもふえないというのがここに原因があるんだなと、私も今回このペーパーを見せていただいて初めて気がついたんですが、大臣、このペーパーをごらんになってどのような感想をお持ちですか。
○河村国務大臣 この問題、私も、確かにおっしゃるとおりで、これを五年以降交付税化したということは一般財源化していったわけですね。したがって、それまでは、国の方もこういう形ですよということで補助金的に、補助金ではないんですけれども、図書購入費の形で出ていたものが平成五年度から一般財源化したということは、今度は、地方自治体の方は、何に使ってもいいということに、基本的にそうなったものでありますから、これがその方へ回っていったということが考えられるのではないか、こう思っておりまして、その通達の精神が一般交付税化されることによって薄れてきた、こういう現況であろうな、こういうふうに私は思うんですが。
○近藤政府参考人 やや事務的なこともございますので、補足をさせていただきます。
先生御指摘のように、確かに、平成元年から四年の間、百億円強、これも教材整備計画に基づく交付税の措置でございまして、百億円余りの図書が措置をされておったわけでございます。五年度から、五年計画で五百億円措置をする。したがいまして、単純に足していけば二百億円になって不思議ではないかということでございますが、一つは、地方公共団体におきまして新しい交付税措置を踏まえた予算措置が行われるのに一定の少し時間がかかるということで、若干ではございますけれども、五年度以降ふえてきておる。平成九年度でございますと、百七十億円というのは五十億円ほどふえたという経緯はございます。
それからもう一つ、地方交付税はやはり使途が特定をされていないということから、おっしゃるように、学校図書館図書に必ずしも充当されなかった。こういったようなもろもろの要素がかみ合いましてこういった数字になってきている。
ちょっと数字の説明を補足させていただきました。
○肥田委員 平成四年度までもこれは地方交付税で措置されておりました教材費なんですね。教材費の中から平成四年度までは百十億程度出していたわけです。そして、さあ、平成五年度から五カ年計画が始まるぞということで、一・五倍に本をふやしましょうという話なんです。ところが、結局はそう変わらないで、百二十億、百四十三億といくわけですね。本当に実施されるならば、二百億を超えてもいいわけです。
首長さんの御意思もあるということでございますから、それを大目に見たとしても、この数字を私はあえてまやかしとは申し上げませんけれども、しかし変なんですよ。それまで土台があって、そしてその上に本をふやそうという文科省の大きな期待、希望があったにもかかわらず、結局は前のお金がすとんと落ちちゃって、予算のつけかえに実質的にはなってしまっているんです。だから、そこのところをもう少しきちっと大臣の方からおっしゃっていただかないと、これはいつまでたっても学校図書館の図書はふえません。私はそう思いますが、いかがですか。
○河村国務大臣 私ちょっと補助金なんて間違ったことを申し上げて、これは訂正させていただきますが、おっしゃるように、平成五年までは、交付税でありましたけれども、まさに備品購入、教材、その中に図書も一緒に入っていたんですね。だから、百三億から始まって百二十億までありますが、これが全部図書であったかどうか、数字でこう出れば図書のように見えますが、これは教材費も何も一緒の数字の可能性があるのではないか、私はそう思います。しかし、それでは十分な図書の整備にならないということで、本格的な、図書は図書だということにしていったわけですね。
それで、百億から百三十億とふえていったわけでありますが、確かにおっしゃるように、廃棄図書の更新の問題と、それから図書購入、新しく図書を買う、この交付税のあり方、これはやはりこの使い方をきちっとしませんと、おっしゃるようにいつまでたってもふえない。この現象は私もこれからの図書を整備する上での一つの大きな課題と位置づけて、このことを周知徹底しながら、図書整備の目標に到達するように、これからの予算の使い方等々をさらに各都道府県団体に対して周知徹底を図っていかなきゃいかぬな、改めてそう思っております。
○肥田委員 ありがとうございます。終わります。
○池坊委員長 川内博史君。
○川内委員 民主党の川内博史と申します。
きょうは一般質疑ということで、午前中は加藤紘一先生が、ノーベル賞を受賞された小柴先生やあるいはゲノムで大変御高名な和田先生をお招きになられて、大変勉強になるというか、本当に参考にさせていただきたい質疑を聞かせていただきました。その中で大変印象に残った小柴先生の言葉というのが、その道をきわめ、しっかりと仕事をした、業績を残した人物のヤマカンというのは信頼するに足るものであると。その道をきわめた人のヤマカンというのは当たることが多いんだという言葉に、なるほどな、そうだったのかというふうに私も思いました。
質問はいたしませんが、今週末から著作権法の改正案が本委員会にかかるわけでありますが、食べられなくても音楽で何とか身を立てようと音楽を一生懸命にやっていらっしゃる若い人たち、あるいは、もう若くはないけれどもとにかく音楽に携わって生きていきたいという人たちがたくさんおりますが、今、日本全国どこの町へ行っても、道端でギターを弾いている、そして歌を歌っている若者たちの姿というのがあるわけでございまして、そういう音楽を本当に愛してやまない方たちが、週末から審議をされる著作権法の改正案というものに対して大変に心配をしているということは、本委員会の委員の皆さんも御案内のとおりであろうというふうに思います。
週末からしっかりと質疑をさせていただきたいと思いますが、きょうは、私も、加藤紘一先生が最後の部分でお触れになられたウィニー事件にかかわることを若干質疑させていただきたいというふうに思います。
加藤紘一先生がおっしゃられた言葉の中で同様に非常に印象に残った言葉は、これから新しい著作権法あるいは知的財産法のあり方というものをつくり上げていかなければならないのではないか、古臭いやり方では対応できなくなっていくのではないかということをおっしゃられ、私もそのとおりだなということを感じております。
そこで、文化庁の役割というのは非常に重要な役割があると私も同様に思います。しかし、文化庁はあくまでも行司役であって、相撲をとることは私は許されない。行司はあくまでも行司としてしっかりと、一億二千五百万人が消費者であり、一億二千五百万人がクリエーターになる、そういう時代においての著作権法のあり方を仕切るのが文化庁でありますから、しっかりとその行司役としての役目を果たしていただきたいなということを冒頭お願いを申し上げておきたいというふうに思います。
それでは質疑に入らせていただきますが、若干質疑の順番は違いますが、質問通告どおりに質問させていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。
河村文部科学大臣、「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」という映画をごらんになったことがございますか。
○河村国務大臣 残念ながら、私、映画は見ておりません。内容については、粗筋等々は承知いたしておりますが。
○川内委員 それでは、せっかくきょうは政府参考人の方にも何人か来ていただいておりますので、それぞれの方に、この「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」をごらんになったかということをお尋ねさせていただきたいと思います。
まず、警察庁の吉田審議官はいかがでしょうか。
○吉田政府参考人 残念ながら、拝見しておりません。
○川内委員 では、経済産業省の岩田審議官はごらんになられましたか。
○岩田政府参考人 大変残念でございますけれども、私も拝見したことはございません。
○川内委員 それでは、文化庁の素川次長はいかがでしょうか。
○素川政府参考人 正確な記憶はないわけでございますけれども、粗筋を読みまして、こういうたぐいの映画はかつてどこかで見たような記憶があるというのはありますけれども、しかと覚えてはおりません。
○川内委員 大変残念ながら、つい最近の映画なんですが、恐らくどなたもごらんをいただいていないようであります。「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」というのは、日本語に訳せば、捕まえられるものなら捕まえてみなというような意味なんでしょうけれども、幼いころ、御両親というか、お父さんやお母さんと不幸にしてちょっと離れ離れになった男の子が、小切手の偽造で大変な才能を発揮して、まあ詐欺師ですね、詐欺師として物すごい大がかりな詐欺を働くんですけれども、結局それがトム・ハンクス扮する刑事にどんどん追い詰められていって、私も粗筋は最後まで覚えていない、最後、捕まったのか捕まり切らずに逃げたのか、まあどちらにせよ、私が言いたいことは、この天才詐欺師が、実は、今度はアメリカの国家のために小切手偽造を防止するセキュリティーの大変な大家になって、国家のために最後貢献するという、大変ハッピーエンドの映画でございまして、なるほどという思いをしながら見ておったわけであります。
そこで、では、今回のこのウィニー事件に入っていくわけでございますが、五月十日に、ファイル交換ソフト、ウィニーの開発者である東京大学の大学院助手の金子勇さんという方が、著作権法侵害の幇助容疑ということで逮捕をされた。これは新聞に出ておりました。この事件の概要を、お話しいただける範囲で結構ですから、教えていただきたいと思います。
○吉田政府参考人 お尋ねの事件は、京都府警察において昨年十一月に、ファイル共有ソフト、ウィニーを利用した著作権法第二十三条一項に定める公衆送信権を侵害した事犯で検挙した二人の幇助犯として、本年五月十日、同ソフトの開発者を逮捕した事件と承知しております。
この事件につきましては、現在捜査中であり、具体的な捜査の内容については答弁を差し控えさせていただきますが、捜査に支障ない範囲で申し上げます。
今回の事件においては、開発者が、当該ソフトが明らかに著作権侵害行為に当たる行為に利用されることを認識しながら、同行為を蔓延させる目的でこれを不特定多数の利用者に提供していたところ、昨年検挙した二人への提供により、これらの者の犯行を容易にさせた行為を幇助犯ととらえたものであり、当該ソフトの開発行為それ自体を犯罪としてとらえたものではありません。
今後、京都府警察において、この事件の全容を解明すべく、厳正な捜査が行われていくものと承知しております。
○川内委員 今、吉田審議官の方から教えていただきました、昨年の十一月に起きた著作権侵害の事件、二名のこの事件の幇助犯ということで逮捕に至ったということでございますが、昨年のこの十一月の著作権侵害の事件の概要というものも、もし教えていただける範囲で教えていただければと存じます。特に、この二名の著作権侵害の事件の事例の告訴人、著作権法というのは親告罪だというふうに認識をしておりますが、著作権侵害をされたと申し出る方がいたからこそ事件になったんだというふうに思いますが、この告訴人というのも、もし教えていただけるものであれば教えていただきたいと思います。
○吉田政府参考人 お尋ねの事件は、京都府警察において昨年十一月二十七日、ファイル共有ソフト、ウィニーを利用し、ゲームソフトのデータを自動公衆送信が可能な状態にした当時十九歳の少年と、映画のデータを同様に自動公衆送信が可能な状態にした当時四十一歳の男性の二人を、それぞれ著作権法第二十三条第一項違反で検挙した事件であると承知しております。
著作権法違反は、同法第百二十三条の規定により親告罪とされており、この事件においては著作物の権利者から告訴を受理しておりますが、その者が具体的にだれであるかについては、捜査上の支障等からお答えを差し控えさせていただくことについて御理解いただきたいと存じます。
○川内委員 それでは、続けて、この事件に関する報道の中で、京都府警と北海道警でインターネット上に捜査情報が漏えいしたというふうな報道があったやに記憶をしております。三月三十日の参議院の内閣委員会、あるいは三月三十一日の衆議院法務委員会の質疑でも取り上げられているようでございますが、その後、この二つの漏えい事件に対する調査あるいは捜査がどうなっているのか、そしてまた、この捜査情報の漏えい事件とウィニー事件との関連性というものがあるのかないのかということに関して、差し支えない範囲で教えていただきたいと思います。
○吉田政府参考人 平成十六年三月二十六日に京都府警察、それから同月二十九日に北海道警察に係る警察情報がインターネット上に流れているとの情報を両警察が認知し、調査したところ、捜査関係書類等の情報が、流出元の警察官の意図に反しインターネット上に流出しておりました。流出した経緯の詳細については現在も調査中でありますが、私物パソコンの不適切な取り扱いに加えて、ファイル共有ソフト、ウィニーを使用していたことが情報流出の原因となった可能性が高いと考えられます。
なお、この二つの情報漏えい事案については、今回のウィニー事件と関連していないものと承知しております。
○川内委員 過去に、著作権法違反の幇助罪、著作権侵害の幇助の罪ということで検挙した例というものが事例としてございますか。
○吉田政府参考人 著作権法違反につきましては、平成十三年は五十一事件、平成十四年は五十五事件、平成十五年は七十事件を検挙しているところであります。公衆送信権を侵害する著作権法第二十三条第一項に違反する事犯は、平成十年一月一日の施行以降、平成十五年十二月末までに二十一事件を検挙しているところでありますが、幇助罪の検挙は承知しておりません。
○川内委員 どうもありがとうございました。幇助罪というのは今回のこのウィニーの開発者である金子勇さんという方が初めてだということのようでございます。
文化庁にも同じ質問をさせていただきたいと思うんですが、では、過去に著作権法違反の幇助ということで、刑事は今金子さんが初めてだということなんですけれども、民事の裁判の事例がございますか。あるいは、著作権法二十三条の公衆送信権に関しての幇助の民事の事例があるのかというふうに聞いてもいいかもしれないですけれども、ちょっとお答えをいただきたいというふうに思います。
○素川政府参考人 お答え申し上げます。
著作権違反の事例について、民事、刑事すべてを網羅的に把握しているわけではないので、すべて正確にお答えできるかどうかわかりませんけれども、民事につきまして、幇助といいますか間接的といいますか、今回の例に近い事例というのをあえて探してみますと、例えば、音楽の使用料を払わずにカラオケ店を経営していた事例におきまして、そのカラオケ店のみならず、カラオケの機材をリースしていた、そうした事業者に対してもあわせて損害賠償請求というものが請求されたということで、最高裁判所でそれが容認されたという例を承知しているところでございます。
○川内委員 著作権侵害というのはなかなかに難しいものだなと、今の答弁を聞いていて思ったんですが、音楽の使用料を払わずにカラオケ店を経営していた人自身はそれは著作権侵害なんでしょうけれども、機械を貸していた人が幇助になるということなのかと思うと、本当にこれからはいろいろなことに注意をしなきゃいかぬなというふうにも思ったりするんです。
それでは、今回のウィニー事件について、先ほど警察庁の吉田官房審議官も、ファイル交換ソフト自体を開発したことが著作権侵害には当たるとは思っていないというふうに御答弁されたかと思うんですが、文化庁も、ファイル交換ソフトを開発したことそのこと自身では著作権法違反に当たるというふうには考えていないということで、大臣、よろしいでしょうか。
○河村国務大臣 先ほど警察庁の方からも御答弁ありましたとおり、日本の著作権法においては、ウィニーなどのファイル交換ソフトを利用して、他人の著作物である音楽など、相互に無断で入れる、これは著作権等の侵害になる。しかし、無断で送信することが著作権の侵害になるわけで、今回の事件は、先ほど来お話しのように、明らかに著作権侵害行為にこのソフトが利用されることを知っていて、その行為を蔓延させる目的で不特定多数に利用させたということが幇助罪になった、こう言われておりますから、そういう意味からいけば、おっしゃるように、ソフトを作製したことだけが著作権法違反に問われることではないということだと私も理解しております。
午前中の加藤先生もその問題で、立派なナイフ、見事なナイフをつくるまではいいとして、これは問われない、これでもし殺人を犯したりなんかすればそのことは問われる、また、それを勧めてやれば幇助になる、こういうことになるんだろう、こういうふうに理解をしております。
○川内委員 また、ネットというのは世界じゅうに広がるネットワークなわけですけれども、カナダとかオランダとかアメリカなどでもファイル交換ソフトについての裁判事例があると聞いておりますけれども、その概要について、御存じの範囲で教えていただきたいというふうに思います。
○素川政府参考人 お答え申します。
まず、アメリカでございますけれども、有名な事件として、ナップスター事件というものがよく挙げられております。
この事件は、ユーザーがナップスター社の開発したナップスターシステムを用いまして著作物のファイル交換を行うということが著作権侵害に当たるとして、アメリカのレコード業界がこのファイルを提供しているナップスター社を間接侵害として提訴したものでございます。
これにつきましては、連邦控訴裁判所におきまして二〇〇一年に、ナップスターシステムがユーザーのファイルを集中管理しているということ等を理由といたしまして、ナップスター社の著作権の間接侵害を認めたという事案がございます。
また、同じアメリカでございますけれども、グロックスター事件というものもございます。
この事件は、ユーザーがグロックスター社が開発いたしましたグロックスターシステムを用いまして著作物のファイル交換を行うということが著作権侵害に当たるといたしまして、アメリカのこれは映画業界やレコード業界などが、このファイルを提供しておりますグロックスター社をやはり間接侵害ということで訴えたものでございます。
これにつきましては、地方裁判所におきまして二〇〇三年に、グロックスター社が、これはナップスターと少し違うシステムのようでございますけれども、中央管理型でないシステムでございますけれども、そういうシステムを利用しておりまして、直接侵害を管理監督する権能がないということなどから、このグロックスター社の著作権の間接侵害というものを否定したところでございます。
ただ、これにつきましては、現在、控訴裁判所に控訴されているというふうに聞いております。
なお、オランダにおきましては、ファイル交換ソフト、カザーというものの裁判事例が挙げられるかと存じます。
この事件は、ユーザーがカザー社が開発いたしましたカザーシステムを用いて著作物のファイル交換を行うということが著作権侵害に当たるといたしまして、オランダの著作権管理団体がファイルを提供いたしておりますカザー社を間接侵害ということで訴えたものでございまして、これにつきましては、控訴裁判所におきまして二〇〇二年に、ユーザーに対しましては著作権侵害を認めたわけでございますけれども、カザー社に対しては著作権の間接侵害には当たらないというふうにいたしたと聞いております。
最後に、カナダでございますけれども、少し事案が違うと思いますけれども、同じカザーシステムを用いましたインターネット・サービス・プロバイダーに対する裁判事例が挙げられるかと存じます。
この事件は、カナダのレコード業界がインターネット・サービス・プロバイダーに対してファイル交換を行った者の身元の開示を要求したものでございまして、連邦裁判所が二〇〇四年に、そのユーザーのダウンロード行為というものが、これは個人使用のための複製行為でありまして、著作権の侵害に当たらないとしたわけでございます。
ただし、このカナダの著作権法にはいわゆる公衆送信権というものは付与されておりませんので、この場合は複製権の侵害には当たらないというふうにしたもので、ちょっと国内の権利の付与の状況が特殊な状況にあるのかと存じております。
○川内委員 今いろいろと教えていただいたんですけれども、日本という国は、実は著作権の法体系の中では世界でも最も進んだ、いろいろな支分権を設けている国であるというふうに考えますが、そういう意味で、今回、このウィニーの開発者である金子勇さんという方が著作権侵害の幇助という罪で逮捕されたということは、今後の著作権システムのあり方あるいはネットのあり方というものに対して大きな影響を及ぼすのではないかというふうに私は考えるところでございます。
ところで、このウィニー事件で逮捕された金子勇さんという人はどういう人だったのか。経済産業省の未踏ソフトウェア創造事業というものがございますけれども、この未踏ソフトウェア創造事業にかかわっていらっしゃった方だとお聞きをしておりますが、この未踏ソフトウェア創造事業というものについて御説明をいただきたいというふうに思います。
○岩田政府参考人 当省の実施しております未踏ソフトウェア創造事業についてのお尋ねでございますけれども、本事業は、当省所管の情報処理振興事業協会、現在、独立行政法人情報処理推進機構と称しておりますけれども、そこが実施している事業でございまして、ソフトウエア関連分野におきまして独創性を有するすぐれた個人を発掘することを目的とした事業ということで実施しております。
ちなみに、金子勇さんでございますけれども、先生御指摘の未踏ソフトウェア創造事業、平成十二年度、それから平成十三年度、支援対象となったプロジェクトがございまして、例えば平成十二年度でございますと、少し長うございますけれども、双方向型ネットワーク対応仮想空間共同構築システム、こういうプロジェクトがございましたけれども、このプロジェクトのソフトウエア開発チームの一員ということで参加されておられます。
○川内委員 先ほどの加藤紘一先生の質疑の中でも、金子勇さんという人はその世界の方であれば名前を知らぬ人がいないぐらいに大変な才能の持ち主であるというふうにおっしゃられていらっしゃったわけでありますが、経済産業省として、この金子勇さんという方が大変な天才プログラマーだということに関してどのように評価をされていらっしゃったかということをお尋ねしたいというふうに思います。
○岩田政府参考人 金子勇さんが天才プログラマーであるかどうか、なかなか難しい問題でございますけれども、客観的な事実として申し上げますと、先ほど御紹介申し上げました、金子勇さんが参加をされましたプロジェクト、これはコンピューターネットワークの中で三次元のキャラクター、こういうものをつくり出しましてほかのユーザーとのコミュニケーションを、いわゆる仮想空間といっておりますけれども、ここで実現をする。そういう意味では非常に高度な機能を実現したソフトウエアシステムでございまして、そういったシステムとして非常に高い評価を受けておるのは事実でございます。
金子さんはそのプロジェクトの中でチームの一員として、高速の演算技術という分野につきまして、重要な貢献をされた方であるというように私どもは承知をしてございます。
○川内委員 今、金子さんという人が警察に逮捕されてしまったけれども、しかし、大変優秀な高い能力をお持ちの方であるということは皆さんにも御理解いただけたというふうに思うんです。
この金子さんを逮捕した京都府警も実はサイバー犯罪については大変に高い能力を有していらっしゃるとお聞きをしておりますし、そういう意味では、大臣、先ほど私が申し上げた「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」じゃないですけれども、金子さんが挑発的な言動を繰り返して、自分は著作権法の網の目をすり抜けるんだ、その方法を知っていると。警察の方は警察の方で、そうはさせじという、ネット上の、あるいはサイバー上の捕り物劇というのがあったのかなというふうに思うわけでございます。
しかし、先ほど大臣もおっしゃいましたけれども、すぐれた能力というのは、悪用すればそれは犯罪になりましょうし、善用すれば社会にとって非常に有益な貢献となり得るということは自明の理でございます。また、金子さんという人がネット上でおっしゃっていたことは、自分がシステムを開発すれば、いろいろなものの課金のシステム、要するに、それを見た人からしっかりとお金を徴収するシステムを開発することができるんだというようなことをネット上でおっしゃられていらっしゃったそうで、いわばその能力をいい方向に使っていただければ、著作権の権利者、著作権を持っていらっしゃる方々が、いや、金子さんというのはありがたい人だなというような働きももしかしたらできたやに思うわけであります。
また、よく、優秀なコンピューターのプログラマーというか、そういうシステム開発をする人をオーディションというか試験をする場合には、攻撃は最大の防御じゃないですけれども、ハッキングですね、あるシステムにそのシステムを破って入り込むことができる能力の高い人を採用していくというような試験の方法なども、私は、実際にその現場を見たこともないですから、また私自身にそういう才能もないですから、よくわからないところでございますけれども、そういうネットに関する高い能力を持つ人々というのが世の中にはいらっしゃるそうでございます。
そういう人たちの能力、これは金子さんを含めてですけれども、その人たちに、リカバリーというか、もう一度復活のチャンスを与えていただいて、この社会に有効な、あるいは有益な貢献をしていただくようにするというのも一つの知財戦略の重要な柱になるのではないかなと思うんですけれども、河村大臣の見解を問いたいというふうに思います。
○河村国務大臣 いや、川内先生が冒頭に「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」の質問をされた意味がこれで明らかになってきたわけでありますが、まさに金子さんのような方がたくさんいて、そしてまさに知財立国、知財戦略の中の中心的な役割を果たしていただくということは非常に大事なことであります。まさに、ソフトウエアあるいはコンテンツの創造等、これからの大きな課題でございます。
ただ、残念ながら、金子さんのケース、いかに優秀であっても、著作権侵害に当たる、犯罪行為ということになりますと、これはこれで、やはり法治国家としてこの罪は受けていただかなきゃなりません。しかし、これがどのようにこれから解釈されるかという問題はあると思いますね。これだけの能力を惜しいという思いはございます。しかし、一応、それを挑戦されたと。前にもちょっとそういうようなケースがあった。
最近はこういう新しい技術開発の中でそういう問題があるようでございますが、これはこれとして、こうした卓越な人材を有効に使うということと、それから特にこうした情報産業、インターネット、ITの社会には影の部分もある、こうしたものの情報にまつわる倫理の養成ということもあわせて必要でございまして、そういうことをあわせて教育啓発、そういうことも含めて、これからの人材養成というものも必要ではないか、このように今回のこの事件を通して感じた次第でございます。
○川内委員 私の質疑の時間ももうそろそろ終わりでございますけれども、金子さん一人のこの事件に関して申し上げれば、もう起訴されたんですかね、まだこれから起訴ですよね、とにかく裁判にかかって、裁判所がどういう判断をするかというところになっていこうかと思うんです。
京都府警というのはサイバー犯罪に対して専門家をそろえていらっしゃるというふうに聞いておりますから、多分金子さんと恐らく専門家同士で話が物すごく合っていると思うんですね。それはもちろん、捕まえた側と捕まった側の立場は違いますけれども、同好の士というか、同じコンピューターのシステムについて非常に詳しい者同士が、あれはどうするんだとか、いや、それは教えられないとか、それを教えるんだったら著作権料払ってくださいとか、もしかしたら言っているかもしれないぐらいに多分話が合っているんじゃないかなと私は想像するんですね。
しかるに、金子さんがもし有罪になるのであれば、それはそれで、現在の法体系の中ではしっかりと罪を償っていただかなければならないことだというふうに思いますが、これは私の提案なんですけれども、これからの国家のセキュリティー、著作権を守るというセキュリティーもありますけれども、国家としてのネットセキュリティーなどの問題もございますし、警察の皆さんも、金子さんをこのまま埋もれさせることなく、顧問か何かで契約をしていただいて、その才能をぜひ生かしていただくように最後にお願いを申し上げて、私の質疑を終わらせていただきたいというふうに思います。
どうもありがとうございました。
○池坊委員長 小泉俊明君。
○小泉(俊)委員 民主党の小泉俊明でございます。
私は、当選以来四年間、実は、ずっと一貫しまして大蔵委員会と財務委員会に在籍をしてまいりました。しかし、資源も軍事力も乏しいこの日本の国にとりましては、何といいましても人材こそが国力の源泉であります。そういった意味で、やはり教育こそが政治家にとって一番大切なことであり、私も、教育が私のライフワークだと思っております。そういった意味で、きょう、貴重な質問の時間をいただきました同僚議員にまず御礼を申し上げ、質問に移らせていただきたいと思います。
まず、質問通告にありますように、アテネ・オリンピックの代表選考の問題について大臣にお伺いさせていただきたいと思います。
大臣、先日、女子バレーボールの予選がありましたが、ごらんになられましたか。これは日本じゅうの国民がテレビを見て大きな声援をしていたと思うんですね。そして、あの女子バレーボールの全日本チームというのは、本当に私たちにすばらしい感動を与えてくれたわけであります。
大臣、朝のワイドショーとか余りテレビを見る時間はないと思うんですが、実際、しかし、今テレビを見ますと、毎日、殺人事件、強盗事件、あと国会議員の不祥事、官僚の不祥事、暗い事件ばかりなんですよ。そして、今、私たち国民に感動を与えてくれるのは実はスポーツだけなんですね。そういった中で、スポーツというのは、教育的にも大変重要ですし、また国民の健康の増進という観点から見ても極めて重要なものだと私は思っています。そうした中で、何といいましても、最大のイベントがアテネ・オリンピックですね。
そこで、まず冒頭、河村大臣にお尋ねしたいのは、スポーツの持つ意義、そして特にオリンピックの持つ意義について、大臣がどのようにお考えかということをお尋ねいたします。
○河村国務大臣 小泉委員言われるように、スポーツというのが非常に明るくて、そして見ている方にも、またやる自身もそうでありますけれども、非常に明るくて、生き生きとして、夢をはぐくむといいますか、そういう意味を持っておるというふうに思います。
日本におきましても、スポーツ振興については振興基本計画というのがありまして、そこでは、「スポーツは、人生をより豊かにし、充実したものとするとともに、人間の身体的・精神的な欲求にこたえる世界共通の人類の文化の一つである。」こういう書き出しでスポーツの意義を高らかにうたっておるわけでございますが、私も、スポーツが、社会の中で、非常に活力に満ちた社会をつくっていく、あるいは個々人の心身にとっても非常に健全な発達、そういうものをつくり上げていく上で不可欠なものでありますから、今の子供たちを見ておりますと、ややもすると、少子化ということもありましょう、家庭に引きこもることが多い。私は、もっと外に出てうんとスポーツに楽しむ、そういう条件整備、機会をもっと持つべきだ、こう思っております。
一方では、やや心配なことは、子供たちの最近のスポーツ能力というものが、跳んだり投げたりはねたり、そういう能力が年々少しずつ低下しているという問題もございまして、そういう面からも、さらにスポーツ振興にその所管省としても力を入れていかなきゃいかぬ、こういう思いを抱いております。
また、オリンピック競技大会、これも、オリンピックは参加することに意義あり、こう言われております。まさに参加するだけでも大変なことであります、大変意義のあることでありますが、やはり国をかけて結果が出る、金メダルをとったときの感激、これはもう国じゅうが沸き上がる、そういうものはなかなかほかにありません。
もちろん文化でも、最近は、中学生の柳楽優弥君がカンヌの映画祭で男優賞をもらった、これも明るいニュースで、これも非常にいいニュースだ、こう思いますが、スポーツのあの沸き立つ感じというのは、まさにその最頂点がオリンピックにあるということを考えますと、見る人に夢と感動を与えるスポーツ、そしてまた、オリンピック競技を見ていて、自分もああなりたいと思って若い人たちがまたスポーツに励んでいく、こういう意味を持つ非常に大きなイベントでありますから、担当大臣としても、まだ選手最終選考残っておりますけれども、できるだけ多くの選手がオリンピックに参加して大いに活躍してもらいたい、こう思っておるところであります。
○小泉(俊)委員 大臣、全く同じ認識でありまして、私は、特にオリンピック、日本人の誇りとか一体感がこれほどあらわれるものはないんですね。ですから、その基本認識はまず全く一緒ですので、そこを前提に御質問させていただきたいと思います。
ところが、三月十五日に、実は日本ばかりでなく世界じゅうに衝撃が走ったわけですね。何と、アベベ以来、オリンピック、マラソンで二連勝のかかった、日本の英雄とも言っていい高橋尚子選手が落選したんですね。この報道を聞いて、小泉総理大臣も感想を漏らしましたが、大臣、率直な感想、いかがですか、これを聞きまして。
○河村国務大臣 私も、この選考の状況というのは非常に注目をしておりまして、残念だなという思いは正直言ってありました。
しかし、スポーツ団体、陸連の皆さんがいろいろいろいろ悩んで悩んでお決めになったことでございますから、担当大臣がこれをどうこうするという立場にはないなと思いながら、私はそのことについては余り言いませんでしたし、しかし、選考の過程において、非常に頑張って非常に感動を与えた選手もおった、そういう選手が選ばれた。これは人間が選考することでありますから、そのときの印象というのも非常にある。総合的に判断されたというふうに思っておりますが、率直に言って、どういう結果になるかわかりませんが、彼女が出れば二連覇という夢をまた求める、そういうこともできたのではないか、こういう思いは私もございます。
○小泉(俊)委員 実は、この発表がありました後に、報道を見ていますと、日本陸連に一万通以上の抗議のメールが行ったんですよ。また、陸連の電話は、抗議の電話で鳴りやまなかった。
実は、高橋尚子選手というのは、決して中学校、高校、大学と強い選手じゃなかったんですね。彼女は、駅伝に出たときには、成績は四十七都道府県の四十七位です。それが努力に努力を重ねて、そしてまた名伯楽である小出監督に出会って、そしてあれだけ偉大な選手になったんですね。彼女の走りを見て、夢とか希望とか勇気を与えられた、私自身がそうなんですけれども、非常にそういったものを彼女の姿を見て抱いている国民が、物すごいサイレントマジョリティーがいると私は思うんですよ。しかし、その夢が消えたんですね。
女子マラソンの代表選考に関しましては、もめたのは、大臣御案内のように、今回だけではありません。これは、毎回毎回実は同じことをやっているんですよ。九二年のバルセロナ・オリンピックにおきましては、選考会で一番いいタイムを出した、好タイムを出した松野明美選手が落選しました。そしてまた、九六年のアトランタ・オリンピック、これは選考レースで一番成績のよかった鈴木博美選手が落選しました。そして、今回の選考は、私は、これ以上に実は極めて不透明だったと思っています。
そこで、この議論を進める前提として大臣にお尋ねいたしますが、国はオリンピック委員会そして日本陸連に一体幾らの国民の税金を出しているんでしょうか。大臣、数字をお答えいただけますか。
○田中政府参考人 日本オリンピック委員会に対する補助金についてのお尋ねでございますけれども、文部科学省におきましては、財団法人日本オリンピック委員会が行います選手強化事業や国際競技大会等への選手団の派遣事業に補助を行っておるところでございまして、平成十六年度予算におきましては、アテネ・オリンピック競技大会の派遣費用も含めまして、二十億円強を計上しておるところでございます。
また、日本オリンピック委員会では、この補助を受けまして、競技団体と一体となりまして、国内外で強化合宿など選手強化事業を実施しておるところでございますけれども、御質問の日本陸上競技連盟に対しましては、平成十五年度実績で申し上げますと、約五千万円の強化合宿費に要する経費を支出しておるところでございます。
○小泉(俊)委員 これは、今お答えいただきましたように、JOCに二十億円ですよ。日本陸連にも、JOCを経由しまして五千万円もの国民の血税が入っているんですね。この国民の血税がこれほど使われている以上、やはりJOCとか日本陸連というのは私は国民に説明の義務があると思います。
それで、これを前提に御質問をいたしますが、この選定の過程で、いろいろ、私も実はこれは大変興味を持っている問題でありまして、ちょっと調べました。それを幾つか大臣にお話しをし、またお答えをいただきたいと思うんです。
まず、大臣、オリンピックというのは当然、日本で一番強い人が出るんですよ。これは当たり前ですよね。それで、高橋選手というのは、シドニー・オリンピックの金メダルを含めて、マラソン六連勝なんです。国民栄誉賞もとっています。実は彼女は、ここ七回一度も日本人には負けていないんです。そして、高橋選手の出るレースというのはみんな逃げちゃうんですよ。
また、もう一つ、今回の選定で非常に問題がありますのは、男子のマラソン、これは選考レースで一番タイムの悪かった選手を過去の実績で選んだんですよ。そして、同じメンバーが選ぶんですよ、選考する人は同じ人が選ぶんですけれども、実は女子に関しましては、選考レースが終わってから、タイムで選ぶという、後出しじゃんけんしたんですよ。そして、これはまるで高橋選手を落とすために後から考えた基準としか思えない節もあるんです。もし最初からタイムで決めるというのがわかっていれば、高橋選手自身、名古屋に出ていたし、小出監督も出したと言っているんですよ。
さらに、実はまだまだいろいろな問題がありまして、報道によりますと、小出監督と陸連幹部との間にいろいろな選手のプロ化をめぐる対立や確執があったんじゃないかと。要するに、選手にプロ化をされますと、陸連やJOCにお金が入らなくなるんですよ。そういった問題の、過去のも含めて犠牲になったんじゃないかと言われている報道もあります。
また、あと、前々からいろいろ言われています、これは高橋選手だけではなくて、過去何度も問題があるときに実はいろいろなところで報道されているんですが、これは先ほどお話しいただきましたように、今年度は陸連に五千万行っていますね。十四年度で見ますと四千四百万円です、国の税金は。国民の税金から行っている。ただ、総収入を逆算しますと、大体八億八千六百万円、十四年にあるんですね。これはほとんど陸連の収入というのは放映権です。ですから、よく言われておりますけれども、三人の代表を選ぶのに、どうして四つのレースをするんだと。これはやはり、四大会とも放映料が入るんですよ。そのために、どうも無理無理四レースで三人を選ぶという結果になっていて、いろいろな不都合がそこから出てきているんじゃないかというのが、これはもう国民みんな知っています。
そして、そもそも、これはいろいろな文章を私読みましたが、マラソンの専門家、特に、鈴木博美さんとか、好タイムを出しながら前に落選した方たち、彼女たちとかが言っているのは、そもそも違うレースで、条件もすべて違うわけですよ、気候も、道も違いますね、アップダウンも。それで比較することができるはずがないと言っているんですね。また、三人しか選ばないのに、これを四つの代表選考レースで選ぶこと自体がもめごとの出発なんですよ、大臣。
そこで、いろいろ私も今回このケースを、非常に国民の関心が大きい問題でありますので、私がこれをいろいろ見て思った結論というのは、やはり問題は、オリンピックの選考基準が極めて不明確で、陸連幹部が裁量で決めている点に私は問題があるんじゃないかと思うわけであります。
そして、大臣、将来のためですよ、こんなばかばかしいもめごとを、私はこんなようなことで二度と国民の夢を奪うようなことがあってはいけないと思います。ですから、これからのためになんですが、今後このような悲劇を起こさないためにも、まず、アメリカなんかは、代表候補を全員一発レースで決めるわけですね、それもまた一つですし、また、三人の候補を選ぶのであれば、三つのレースでそれぞれの勝者を決めていくとか、あとは、一切関係なくタイムで選ぶとか、今回こうなったんですよ。
ところが、後じゃなくて事前にやはり競技者にはっきりとした選考基準を私は明示すべきではないかと。せめてスポーツの世界ぐらいフェアにやっていかないと、私はこれは国民が納得しないと思います。大臣、この点についてはいかがお考えでございましょうか。
○河村国務大臣 今回も含め、選手の選考、これは競技種目の専門性とか選手の競技レベル等を一番把握しているのは競技団体でございますから、その責任においてまず選ぶべきものであろう、こう思っておるわけです。確かに、マラソンには世界新記録というのはないわけですね、世界最高タイムはあっても、それは条件が違うから。そういう点は一種の特殊性、専門性だろうと思います。
今回のアテネ・オリンピック女子マラソンの代表選考は、日本陸上競技連盟が定めたのは、第一点は、世界陸上競技選手権大会でメダルを獲得した者の中で日本人最上位者というのが一つあったのです。それからもう一つが、各選考競技会の日本人上位者の中からオリンピックでメダルの獲得または入賞が期待される者を選考する、これですね。なかなかわかりにくいと言われる、この点がございますが、この二点で厳正にやったということで、理事会は、御指摘のように、ことしの三月十五日、決定されたわけでございます。
この選考基準については、日本陸連においては平成十四年の七月三十日に決定をして、そして選手、コーチへ周知をされて、選手やコーチは、この選考基準を踏まえてみずから出場する選考競技会を選択した、このように理解されておりまして、私もそう思っておるわけでございます。
今回の選考に当たりましては、確かに先生御指摘のようなさまざまな意見があった、電話あるいはインターネット等、随分そういう不満もあったというふうに聞いておりますが、これは、ここまでやっちゃったことでございますし、選考基準、その選考競技会数、それからマラソン選考システムのあり方、今後検討するんだ、こういうことを言っておりますので、この出方を見守っていきたいというのが私の大臣としての公式見解でございます。
○小泉(俊)委員 今、大臣はわざわざ、実はマラソンの試合の始まる前に出していた基準を言ってくれたんですよ。ところが、そうじゃないですよ。結果を見ればわかりますが、タイムで単純に選んだんです、これは。言っていた基準と違う基準で、後出しじゃんけんをしたんですよ。
ですから、私は大臣に申し上げたいのは、やはりスポーツとオリンピックというのは、冒頭申し上げました、大変大きな夢と希望を国民に与えるものであり、国民にとって最大の関心事の一つなんですね。ですから、その選考が不明確な、先ほど申し上げました、選手の問題ではなく、もし違うところでそれが決まるような、少しでもそういうような可能性があるのでは余りにも選手がかわいそうですし、国民を裏切るものだと私は思います。ですから、私が申し上げているのは、どんな基準でもいいんですよ、正々堂々と事前にその基準をはっきりさせるべきだと申し上げています。
そして、大臣に申し上げます。憲法八十九条で、公金は、公の支配に属しない慈善、教育もしくは博愛の事業に対してこれを支出してはならない。当然、これは税金を出しているんですから、JOCも、また日本陸連も、公の支配、国のコントロール下にあるんです。ということは、大臣の支配下にあるんですよ。これを支配できないのであれば、憲法違反ですからね。ですから、私は、税金を出している以上は、言うべきことは言い、正すべきときは正し、指導すべきはすべきだと思うんです。これはそのぐらい重大な問題だと思うんですが、大臣、この点についてはいかがですか。
○河村国務大臣 この今御指摘の点でありますが、これは、オリンピックの代表選手選考の場合については、これまでも、各競技団体に対して、透明性を持って、そして公平性のある選考基準をするように、そして理事会等正当な手続を踏んできちっと決めなさいという指導をしておるわけでございますので、そういう意味では監督下にあるわけでございます。
ただ、それを受けてきちっと厳正な代表選考をやっているんだということでありますから、もちろん、その基準も設定され、公表もされておる、定められた手続にのっとってやっているんだ、こういうことを指導のもとにおいてやっているわけでありますが、事いよいよ最終的な選考のことについては、これはやはり一番責任のある、または選手選考についてまさに一番近いところで一番わかっている皆さんでありますから、その主体性というのはやはり尊重しなきゃいかぬだろう。そういう意味で、文部科学省からこっちがいい、こっちが悪いとか、そういう具体的な指導は適当でないんだというのがこれまでの基本的な認識でありまして、これまでもそういうことでやってきたわけでございます。
一時、テコンドーの問題等々で、あれは極めて特殊な、自分で選んできて、もう自分しかいない、こういう場合は、たまたま団体のいろいろなことでうまくいかないというのは、それはやはりちょっと問題が多いということは言いました。これは、我々の監督下にある、こう思ってやったわけであります。
今の件については、小泉さんおっしゃることは私もわかります。ただ、手続を踏んで決めたことについてこれを覆すような指導は、これまでもやってきていないし、これからもやるべきではないのではないか、このように思っているわけであります。
○小泉(俊)委員 大臣、よく質問を聞いてくださいね。私は将来に向かってと言っています。過去を覆すなんて一言も言っていないんです。そうではなくて、二度とこんな悲劇が起こらないように、これからの将来に向けて事前に選考基準を明示すべきだというお話を、そういう指導をしてくださいと申し上げているんです。
それで、大臣のお話を聞いていましたら、そういう指導もしているということです。ただ、指導が行き届いていないんですよ。だからこれほど国民が怒っているんですよ。ですから、絵にかいたもちじゃしようがないんですね。法律ができても実効性がなけりゃ何の意味もありませんし、指導も実効性がなけりゃゼロですよ、大臣。
ですから、私がお願いしたいのは、ぜひとも、二度とこんな悲劇の起こらないように、事前にはっきりとした選考基準を明示すべきだということを、税金を、血税ですよ、これだけ国民が、三十万人も自殺未遂者がいる中で二十億も出しているんですから、これは私は、重大な問題ですから、その辺をしっかりと指導していただきたいということをお願いします。
そして、最後にこれは委員長に。
これは日本陸連の今度のいろいろな問題があったときに、実は、新聞ででかでか出たのが、河野洋平裁定じゃないかという話が出ました。議長ですね。もし三権の長がこの代表選考に政治力を使って何らかの影響を与えたということになれば、私は大変な問題だと思います。
先ほど申し上げました、税金をこれだけ使っている以上、私は、JOCとか日本陸連というのは説明義務が国民にあると思います。
特に、委員長、私は河野洋平議長の参考人招致を要求します。これは陸連会長ですから、国会で国民に正々堂々と、私は説明していただきたいと思います。それは理事会で諮ってください、委員長。
○池坊委員長 理事会で諮ってお答えいたします。
○小泉(俊)委員 では、引き続き、またオリンピックの問題に移りますが、オリンピックの代表の支援体制なんですね。
実は、きょうも朝日新聞にでかでか載っていました。実は私が話している女子マラソンとか女子バレーというのは非常に恵まれているんですね。ところが、女子のホッケーとか女子サッカー、これは、代表に決まっても、非常に競技人口も少ないですし、まだ人気もない、そういう中で、せっかくオリンピック代表に決まったのに、実はお金がないんですね。そしてアテネへ行っての遠征費とか、強化合宿もできないような状況で、みんな募金しているんですよ。それでまた、選手はアルバイトしながら一生懸命自腹で遠征費を払おうとしたり、これは遠征できないかもわからないというところまで追い込まれていたり。しかし、日の丸を背負って戦うんですよ、大臣。
これはやはり、私は、例えば文部省の会計検査、むだ遣いが指摘されているのは、先年度七十五億五千四百七十二万円もあるんですよ、むだ遣いが。こんなむだ遣いするのであれば、大臣、私は、こういう一生懸命努力してその結果代表をかち取った選手たちに少しでも支援してあげるべきだと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
○小野副大臣 私の方から御答弁させていただきます。
今御指摘の記事につきましては、私も拝見をさせていただきました。二足のわらじを履いて、遺跡発掘、レジ打ち、黙々バイトをしながら生活費を稼ぎ、競技をしておられる、そういう姿に対して胸打たれるものがあるわけでございますが、そういう中から強い選手が生まれてくるというようなことについて、恐らく小泉委員と同じく、私も感動を覚えている一人だと自認いたしております。
文部科学省におきましてどういう対応をしているのかということでございますけれども、もう既に今説明があった部分は重複もありますが、オリンピック競技大会でのメダルの獲得率を倍増させるというのが一つの基本的な考え方で、一九九六年のアトランタ大会のときに全世界のメダルの中で日本選手がとったメダルの割合が一・七%でございますが、これを三・五%まで伸ばそうというふうな目標を持って、平成十五年度から日本復活プロジェクトというのをスタートして、選手強化活動の充実、重点的な強化対策を講じているというふうなことでございます。
具体的に申し上げますと、日本オリンピック委員会に対する補助として、その選手強化事業、また選手団の派遣事業等に対して、先ほど話がありましたとおり、平成十六年度予算において二十億二千六百万円というお金を計上いたしております。また重点競技における強化事業ということについては、メダル獲得の期待の高い競技種目を重点競技種目として位置づけて、その選手強化を図るため、独立行政法人日本スポーツ振興センターを通じて各競技団体に対して助成を行っておりまして、これが平成十六年度予算においては四億一千万円という金額でございます。
私どもも、日本の国の選手の力が強まることを期待して、これからも努力してまいりたいと思っております。
○小泉(俊)委員 大臣、よろしくお願いいたします。
次に、教育の機会均等ということにつきまして、スポーツに関連してお尋ねいたします。
もうすぐ夏の甲子園の大会が始まるわけであります。私のいます茨城県なんかは、県のどこから球場、例えば水戸に行くにしろ、大体一時間から一時間半で着くんですね。ところが、石垣島や宮古島など離島というのは、大会へ行くのに船で行くと約一日かかるんですね。それで、勝ち続けますと、ずっとそこに通えないわけですよ、だからずっと泊まりながら行くんですが、お金がないんですね。
私はやはり、中学校や、これは野球だけじゃないですよ、バスケットもバレーもありますし、同じ問題が高校だけじゃなくて中学生もあるんですよ。そして、弱くて部員が少なくても、やはりこういうスポーツだけは同じ環境で戦わせてあげたいというのが、私は、教育の本来の機会均等というのはこういうところを大切にしなきゃいけないんだと思うんですが、そういった意味で、こういった離島とかの中学生や高校生について、この辺、そういうのは何とかならないんですか。大臣、いかがでしょうか。
○小野副大臣 思いは私どもも共有するところでございまして、子供たちがスポーツ大会に対して積極的な参加を行い、そのために平素から運動部において努力をしている姿、これは私どもも非常に大事にしていかねばならない問題だと思っております。ですから、文部科学省におきましては、インターハイなどの全国大会、ブロック大会等に関する運営経費の部分に関しましては、適切な補助を行わせていただいているということでございます。
その一方、参加するための経費、今の旅費だとか宿泊費の問題等でございますが、これは通例、自己負担ということになっておりまして、その部分を地方自治体、これは日本全国一律の基準でやれる問題ではないものでありますから、例えば、島が多いという意味で先生からお話ございましたが、沖縄県だとか長崎県、こういうところでは、スポーツ団体に対して、離島の子供が県大会、全国大会に参加する旅費について一定の補助を行う経費を措置している、こういうふうに私どもは聞かせていただいております。
島の子供だからといってこういう大会に参加できないということができる限り少なくなるように適切な配慮がなされることを、私どもは地方自治体に対して期待したいという立場でございます。
○小泉(俊)委員 スポーツ関係予算は平成十六年度で二百六十三億円もトータルであるんですね。ぜひとも大臣、その辺はひとつよろしくお願いをしたいと思います。
次に、歴史教科書の問題に移りたいと思います。
中学校の教科書が、平成十二年に新しい歴史教科書が検定を通り、十三年の採択のときに大きな問題になりました。ことしがまた、平成十六年が検定でありまして、来年が採択になるわけでありますね。
私は、教育というのは、古きをたずね新しきをつくるという温故創新こそが教育の基本に据えられるべきだと確信しているんですが、特に歴史というのは私たち日本人の背骨に当たるものですから、私は特に重要なものだと思います。そして、その基本が歴史教科書なんですね。
たまたま今お手元に、歴史教科書の国際比較の論文、実はこれは月刊文芸春秋に私が書きました。二〇〇一年の七月号に、これは子供たちの使っています七種類の教科書と扶桑社の教科書、あと中国、韓国、アジア、アメリカ、ヨーロッパ、全部読みまして、それで書いた論文なんですが、これは何で書いたかといいますと、実は、教科書問題が議論されているときに、現実には、ほとんど話している人たちが読んでいないんですよ、大臣。
大臣、これは事実関係の確認だけですからあれですが、八種類の中学生の使っている教科書をお読みになられたことはありますか。
○河村国務大臣 全部は読んでおりません。ざっと一通り、目次とかずっと見ていきましたが、中身は全部は承知しておりません。
○小泉(俊)委員 大臣、ぜひとも私の論文を読んでください、参考になりますからね。
かつて、イギリスの哲学者バートランド・ラッセルは、世界の教科書を使って世界史を教えたらいい、ゆがみを通して、自分の姿が最もよく見えてくるだろうと語ったんですね。これは、私は非常に正鵠を得ていると思います。
やはり検定とか採択で物すごい問題になるわけですね。国民とか国会議員が教科書問題を議論するとき、やはり諸外国の教科書との比較検討というのが私は不可欠だと思います。しかし、実際に外国の教科書を読もうとすると、実はほとんど翻訳されているのがありません。これは外務省の外郭団体が四つの国ぐらい訳しているだけなんですよ。あと、せめて手に入るのは中国と韓国ぐらいでしょうね。それで、あっても、物すごく古くて、全く新しい最近の変化についていけないのが現実であります。ですから、基礎的な情報がなしにいろいろな議論をせざるを得ないという状況が実は今の現実なんですね。
その中で、私は一つお願いをしたいんですが、文部省内かないしは国会図書館の中に諸外国の教科書調査室を設けることをぜひともこれは文部大臣に提言をしたいんですが、文部大臣、この点について御配慮いただけないでしょうか。
○河村国務大臣 諸外国の教科書については、外務省所管の財団法人国際情報教育センターが、教科書を含めた外国の資料において日本に関する事項について調査事業をやっております。ここで各国の教科書の収集、翻訳を行っている、こういうふうに聞いておるわけでございます。
また、文部科学省所管の公益法人に教科書研究センターというのがございまして、ここで外国の教科書制度についての関連の資料を収集したりとか調査研究をやってきていますが、その一環として、収集した諸外国の教科書についてもこのセンターで運営する図書館で展示をいたしておる状況でございます。
確かに、そういう意味での把握というのは私も必要だと思います。教科書問題で中国や韓国から注文もつく。しかし、現実に日本が、外国の教科書でどうされているかということを我が方が知らないでそれを発言するというのは、私もおかしいと思います。
ただ、そういう意味で、私は、今調査室をどうかと言われましたんですが、まずは我が国の調査研究機関がきちっと研究をすればその役割を果たせるのではないか、このように考えております。
○小泉(俊)委員 今さっき、外務省の外郭団体、四つの国しかないですからね。これは実は、やはりアメリカ、アジア、ヨーロッパ、世界のGDP一五%を占めるこの日本において、ほとんど手に入る教科書というのはないんですよ。大臣、こんな惨めなことはないですよ。
ですから、ぜひとも研究機関でも何でもいいですから、現実に世界じゅうの教科書、国連加盟百九十一カ国あるわけでありますが、全部とは言いませんよ、だけれども、せめて主要な国の歴史教科書ぐらい翻訳したものを国民とか国会議員が見られるようにしてください。それをお願いしたいと思います。
時間がだんだんなくなってまいりましたが、実は、義務教育というのは、やはりこれは主権者たる、主権者として活動できる能力を身につけさせるものなんですね。ですから、子供たちが使っている教科書というのは、ただ子供たちだけのものではなくて、当然これは、親もおじいちゃんもおばあちゃんも国民も、みんな知る権利があるんですね。見られて当然なわけですよ。
大臣、ところが、教科書は数少ない特定の書店でしか売っていなくて、実際はほとんど入手できません。そして、実は私がこの論文を書くときに、文部省の国会担当者に小中学校の教科書を見せてほしいと頼んだら、小学校の教科書はありませんと答えが来ました。そして、買いに行けとファクスが来ました。ところが、文部省にじかにかけたら、あるに決まっているんですよ。ありましたよ、ちゃんと。ですけれども、国会議員ですら教科書を手に入れるのにそれほど大変なんです。
ですから、私は、今後、教科書の持つ重要性を考えるのであれば、堂々と、三千二百の市町村みんな図書館はありますよ、そこに、公共の図書館にやはり教科書ぐらいは、大臣、置いてください。そしてまた、ホームページで日本全国どこでもだれでも教科書の内容ぐらい見られるようにしていただきたいと私は思うんですが、そういった仕組みをつくるべきじゃないですか、大臣。
○河村国務大臣 必要なことだと思います。これは文部科学省としても、各都道府県教育委員会が、自分のそれぞれの県に公立学校の図書館あるいは公立図書館がございますから、そこに教科書を整備するようにということは徹底していきたい、こういうふうに思います。
○小泉(俊)委員 大臣、ぜひともよろしくお願い申し上げます。現実には、ほとんど手に入りません。国会議員でも手に入らないですからね。これは自分で聞くとわかるんですが。
次に、時間が最後五分になりましたので駆け足になりますが、小中学校の教育についての提言をちょっと幾つかさせていただきたいと思います。
私が今地元に帰りましてどんな年齢の方に会っても、やはり教育はみんな心配しているんですよ。教育基本法の改正なんかも今議論されているわけでありますが、私は、大切なのは、できるところからできるものをいち早くやっていくことだと思います。
その中で、私自身、実は小学校三年生のときに松下幸之助さんの、ナショナルの創始者の伝記を読んで、私は実業家になりたいと思ったんです。もし小学校三年生のときに松下幸之助先生本人に会っていたら、私の人生は変わっていたと思うんですね。
イギリスなんかでは、香港の領事、総領事のトップの方が退官すると、実は小学校の先生に戻るんですよ。日本に関しましても、日露戦争の立て役者でありました秋山好古は、伊予松山のふるさとの私立中学校の校長先生になったわけですね。あと、大臣、テレビでごらんになられているかどうか知りませんが、三チャンネル、NHKでは「ようこそ先輩」という、やはり自分の出身小学校で、いろんな世界で活躍されている人が小学校に来て教壇に立つ、それをやっているわけですね。あれは非常にすばらしいですね。
そこで、私は、日本の教育を立て直すために、大臣にぜひともお願いしますが、政界や、大臣もそうですよ、大臣はもちろん総理大臣もそうなんですよ、あと実業界、官界、またありとあらゆる世界、分野で活躍されている方が日本人はごまんといるんですよ。この人たちをぜひとも小中学校の教壇に立てていただきたいと私は思うんですね。これをカリキュラムの中に入れることによって、魂は人から人にしか伝わらないんです、実は。
大臣、この点についてはいかがでしょうか。
○河村国務大臣 私も「ようこそ先輩」というのを見ておりますが、なかなかいい番組だし、子供たちは生き生きとしておりますね。ああいう方はなかなか授業も上手で、先生方がある意味ではかなわぬと言っておられるそうであります。
私は、そういう人材がどんどん学校現場に入っていく、これは大変有意義なことだとかねてから思っておりまして、そういう意味で、特別免許制度とか特別非常勤制度とか、学校現場においてもきちっとそういうことができるような仕組みはつくりました。あとは、総合学習の時間というのも設けました。これは自由にやれるわけであります。こういうものを大いに活用していただきたいと思います。
それから、経済界、実業界も、学術会議、あるいは経団連、経済同友会の皆さん方も積極的に地方へ、そのメンバーはどんどん出ていこうということを話し合っておられるようであります。やはりそれをちゃんと受け入れる素地もなきゃいけませんから、大いにそれを進めてまいりたい。皆さんにひとつボランティアでやっていただきたい、こう思っておりますので、今の御提言をしっかり受けとめて、奨励をしていきたい、このように思います。
○小泉(俊)委員 カリスマ美容師とかシェフなんかにもすばらしい方いますよ、デザイナーはもちろんそうですが。ありとあらゆる人材をぜひとも日本の教育界、それが日本の将来のためになりますので、よろしくお願いいたします。
最後に、実は地元の中学校、高校の卒業式に出ていましたら、某市立なんですけれども、非常に礼儀正しいんですね。何でかなと思いましたら、実は授業の中で小笠原流の講義を取り入れているんですね。
大臣、いろいろなところへ出まして、お茶ができないで困ったことはありませんか、お茶の作法を知らないで。ですから、私なんかもあるんですね。実は小中学校のときに、まさにお茶なんかは禅の集大成なわけですよ、すべてのエッセンスですから。そういったことがもし義務教育の中で、お茶でもお花でもいいんです、お花の先生おりますが、そういうのを身につけてくれることが、大人になったとき実はすごく役に立つんですよ。
ですから、そういった日本の文化とか歴史とか伝統というのは、そういった様式美の中にかなりあらわれていますので、大臣、やはり書道だけではなくて、私は、お茶とかお花とか、将来、私もそうすると恥をかかないで済んだんですね、もっと早くやってくれれば。大臣、そういうのを私はカリキュラムに取り入れるべきだと思うんですが、いかがでございましょうか。
○河村国務大臣 御指摘の点は大事なことだと思っておりまして、こうした伝統文化、茶道、華道、こういうものはやはり体験的学習の中にしっかり取り入れていくということが大事だ、こう思っておりまして、今、子供の文化事業といいますか、子供の居場所づくりなんかでもそういうものを率先してやっていただこうということで進めておりますので、教育にもきちっとそれを織り込みながら、そうした礼儀作法を一緒に学ばせる、これは意義がある、こう思いますので、これも奨励をしなきゃいかぬ課題である、このように受けとめさせていただきました。
○小泉(俊)委員 何しろ、冒頭申し上げましたように、日本は国力の源泉は人材しかありません。それを担っているのが、文部大臣初め文部省の皆さんなんですね。ぜひともその誇りと責任を持って今後とも邁進していただきますことをお願いして、質問を終わります。
○池坊委員長 石井郁子君。
○石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。
もう質問に入りますが、平成十五年度末の大阪の教員の退職者ですが、定年退職七百二十四名でございましたが、四十歳から五十九歳の特別退職者千五百九十六名と二倍に上っております。広島県の場合で見ますと、教職員の定年退職者数が百八十二名で、若年の退職者が三百十六名と、やはり一・七三倍なんですね。この中の教員の場合だけで見ると、定年退職された方が四十四名でした。若年退職者が二百四十人ですから、実に五・四五倍ということになっております。
そこで、大臣にお答えをいただきたいと思いますけれども、教員が定年を待たずにこのように大量にやめていっているという事態をどのようにお考えでございましょうか。
○河村国務大臣 教員の皆さんが途中でやめていかれるということは、これはやはり教員も、経験を積み、いろいろな体験をしながら教育現場で頑張っていただかなきゃなりませんから、それを放棄していく形でやめていただくというのは、教育的な効果ということから考えてもやはり残念なことだと私は思います。
ただ、確かに、今御指摘の数字ございましたが、私の手元にある平成十二年度の教員の離職者数は、全離職者の二万二千三百八十九名のうち定年退職者数が一万五千四十九で、六七%は定年退職というふうな報告でございます。
しかし、自主退職された方々、それぞれの理由がおありだと思いますが、やはりこれは教育委員会が任命権者でございますから、個々の判断をいたしております。これに対しても適切な対応をしていかなきゃなりませんが、もちろん、お仕事の関係、大変疲れる等、いろいろな理由があると思います。
しかし、やはり教育には非常に熱情を持って子供の方を向いて真剣に取り組んでもらうことによって、また子供と向き合うことによってファイトをわかして頑張っていただけるような先生を養成し、そういう先生が子供たちと一緒に成長していって、そしてその職務を全うしていただける、やはりそれであってほしい、私はそういうふうに考えております。
○石井(郁)委員 少し、現場の実態について、お声をちょっと申し上げたいと思うんですが、六十歳まで勤められないというのは職場環境としてはいかがかという問題がありますし、やはり教師を取り巻く困難な状況を示しているというふうに見なければいけないと思うんですね。
全日本教職員組合というのがありまして、二〇〇二年の調査がございますけれども、過半数以上の五三・二%が学校をやめたいと。だから、現職の方で、定年のはるか前で学校をやめたいという声が上がっているんですね。その最大の理由に、やはり学校現場は忙し過ぎるということを言われています。
これは、ちょっと実際の声を聞いてきましたので申し上げるんですけれども、群馬県では、五十歳代の女性教員ですけれども、何しろ忙しい、次の週の教材研究をしようと思っても、その週の五日間でやらなければいけないということで、できないから自分の休み中にそれをこなさなければいけない、子供に申しわけないと。教師は本当に、今大臣おっしゃったように、子供たちに満足なことができなければ、やはり自分を責めちゃうわけですね。そういう形で自分を責めるということですね。
もう一つは、四十歳の広島の教師です。これも女性教師なんですけれども、とにかく本当に忙しいんだ、仕事が山積みだ、どうしてこなしていけばいいのか、そして宿泊学習の準備がある、日々の授業の準備というところで、子供たちのいいところを見つけてやりたいと思っても、その心のゆとりがとれない、常にいらいらした状態だということで、これでは本当にSOSを発したいし、教育の危機ではないのかという訴えがあります。
やはりこういう教員の声、教員の状態、これは日本の教育にとっても危機的と言えるのではないかということで、重ねてもう一遍大臣に御感想を伺います。
○河村国務大臣 学校教育の成否というのは、まさに教員の皆さんにかかっておるわけであります。その直接の担い手の皆さんが十分な教育ができない環境があるとすれば、これは問題でありますから、この点はきちっと仕事に専念できるような環境づくり、これは大事なことだと思っております。
公立学校の教員の皆さんの勤務実態は、これはまず、服務監督権者と言われておりますが、教育委員会がその権限と責任において適切に管理しなきゃならぬ、こういうことになっておるわけでございまして、文部科学省にその個々の具体的なところまで特にその情報を上げておるわけではございませんけれども、教職員の勤務については、その教育委員会、さらに直接の監督者であります校長先生、それが適切な勤務時間の管理をしていただかなきゃなりません。
校務分掌等においても、どうしても一部の先生に負担がかかるようなことは、これはそういうことがないような管理もしていただくとか、会議が頻雑に行われてそれに時間をとられるとか、こういうことについてはやはり効率的な校務運営の責任が校長先生にあります。
このようなことで、教職員の皆さんがやはり使命感を持って職務に専念できるように、これは全国共通の課題でございますから、文部科学省としても、今後ともそういうような事例が現実にあって、どんどん職務多端で対応できないというような現状があるとするならば、これは大いに考えていただくという意味で、教育委員会に対してはそういうことのなきように努力するように指導をしていかなきゃいけない課題であろう、このように思っております。
○石井(郁)委員 これから申し上げるのは、やはり大変シビアな現実があるんですね、教師の勤務時間の問題として。私はこれから御質問したいと思うんですが、文部科学省の国立教育政策研究所が、学校・学級経営の実態に関する調査を行っております。平成十三年九月の速報版というのを見ますと、学校で仕事をする時間は九時間四十二分だと。自宅に戻ってからも教師は採点とか授業の準備をいたしますので、それに一時間十七分費やしていると。だから、勤務時間の合計というのが十一時間だという報告なんですね。この研究所自身が、時間的ゆとりのなさが心配だという指摘をしております。
先ほどの全教の調査でも、一カ月の平均超過勤務時間八十時間十分だということが出ているんです。
そこで、きょう厚生省においでいただいているんですが、八十時間の超過勤務ということについて、これは厚生省が二〇〇二年二月、過重労働による健康障害防止のための総合施策という通知を出されていますので、労基法が適用されるという労働者の場合で結構ですが、これは是正しなければならない時間外労働時間というふうに考えていいんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
○恒川政府参考人 お答えいたします。
先生御指摘の、過重労働による健康障害防止のための総合対策でございますが、これは平成十三年の十二月に改正した、脳・心臓疾患の労災認定基準における労働時間の評価の目安を踏まえて策定されております。
具体的にこの目安を御紹介いたしますと、一つは、発症前一カ月間ないし六カ月間にわたって一カ月当たりおおむね四十五時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど業務との関連性が徐々に強まると判断されること。二番目といたしましては、発症前一カ月間におおむね百時間を超える時間外労働が認められる場合または発症前二カ月間ないし六カ月間にわたって一カ月当たりおおむね八十時間を超える時間外労働が認められる場合は業務との関連性が強いと判断されることというふうになっております。
厚生労働省としては、長時間労働の抑制という観点から、この総合対策に基づき、個々の事案に応じて適切に対応を行っているところでございます。
○石井(郁)委員 どうもありがとうございます。
その場合、適切な対処というか対応をお願いしているということですけれども、どういう是正措置が求められるでしょうか。
○恒川政府参考人 過重労働による健康障害防止のための総合対策の中身でございますが、まず事業主に対しては、一つ、時間外労働を月四十五時間以下とするように努めること、二つ目として、年次有給休暇の取得促進を図ることなどを求めております。
また、労働者の健康管理に係る措置としましては、一つは、健康診断等の徹底を行うこと、もう一つは、時間外労働を一定時間以上させた労働者には産業医等による助言指導等を行うなどの措置を求めております。
○石井(郁)委員 教職員の時間外労働が平均的に月八十時間ということでありますし、休憩が保障されない場合ですと九十六時間にもなるということもございますので、これはもう時間外労働の短縮に向けてやはり何らかの手を打たなければいけない、こういう事態ではないかというふうに今厚生省の説明を聞いて思うわけですけれども、文部科学省としてはどのような措置をとっているでしょうか。
○近藤政府参考人 お答えをいたします。
公立学校教員の具体の勤務実態につきましては、服務監督権者であります各教育委員会がその権限と責任において適切に管理すべきものでございますが、先ほど大臣も御答弁申し上げましたとおり、やはり、各教育委員会に対しまして、あるいは教育委員会を通じまして各学校におきまして、学校の事務、業務の効率化でありますとか、そういうものを促すことによりまして、教職員の適切な勤務時間管理について、これまでも指導してきたわけでございますけれども、さらに指導してまいりたいと考えております。
○石井(郁)委員 私は今、文科省としてのどのような対策というか、措置かと。結局、文科省は何もしていない、教育委員会にちゃんとやりなさいと言っているだけにしかすぎないというのが今の答弁なんですが、大変これは重大な問題なんですね。
現に最近、教師の間での過労死があって、いろいろ裁判闘争もございます。二〇〇三年には東京・八王子市の中学校教師の死、過労死と認定されました。四十一日間連続して働いた結果でした。広島の西川先生はクモ膜下出血でした。京都府の内藤先生は急性心不全でした。大阪の鈴木先生は脳梗塞で亡くなっておられます。すべてこれは過労死として認定されているものです。
教職員の給与等に関する特別措置法というのがありまして、これでも、「勤務時間を超えて勤務させる場合は、文部科学大臣が人事院と協議して定める場合に限る」ということになって、この場合においては教職員の健康と福祉を害することがないよう勤務の実情について十分配慮がされなければいけないというふうに第七条であるわけですね。だから、今健康と福祉を害している状況がやはりここに示されていると思いますけれども、文科省はそのような認識はしていますか。
○近藤政府参考人 お答えをいたします。
先生御指摘になりました公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法によりまして、これは時間外勤務を無定量に命じられることがないように、正規の勤務時間を超えて勤務させる場合は、いわゆる超勤四項目など政令で定める基準に従い条例で定める場合に限る、こういうふうになっておるわけでございまして、私どもは、各教育委員会におきましては、こういった政令に基づいて条例を定めていただき、その条例に従って適切な勤務時間管理を行う必要があるわけでございますので、これまでも各種会議等を通じてこのことは徹底をしてきたわけでございますし、さらに各教育委員会を指導してまいりたいと考えております。
○石井(郁)委員 少し具体的に伺いますけれども、私は、今、教職員の間に健康と福祉を害している状況が本当にただならない状況だというふうに認識しておりまして伺うわけですが、文科省も、病気休職者の推移あるいは精神疾患者の推移、いろいろ数字でお示ししていると思いますけれども、在職者に占めるその割合、一九九〇年代で結構です、九一年、九五年、二〇〇〇年、二〇〇二年ということで数字をお示しください。
○近藤政府参考人 お答えをいたします。
公立学校の教職員の病気休職者の在職者に占める割合でございますが、平成三年が〇・三八%でございました。平成七年〇・三八%、平成十二年〇・五三%、平成十四年が〇・五七%ということでございます。
また、精神疾患による休職者の在職者に占める割合でございますが、平成三年の〇・一一%から平成七年〇・一三%、平成十二年が〇・二四%、そして平成十四年が〇・二九%、このような状況でございます。
○石井(郁)委員 数字だけではちょっとわかりにくいので、私自身、グラフにしてみたんですけれども、九〇年代に入ってから、特に中ごろ以降、急速にこのグラフではふえているんですよ。これはグラフにしてみるとよくわかります。特に近年、急上昇しているわけです。その中で精神疾患者も増大しているということがあります。
ここで、その原因等々でいろいろ言っていきますと、本当にいろいろな角度から見なければいけないと思うわけですが、やはり多忙化だけではないとは思いますけれども、先ほどの全教というところの調査によりますと、九二年と二〇〇二年の調査を行っていますが、九二年の場合は、仕事時間が、持ち帰りの仕事を含んで九時間二十七分だった。ところが、二〇〇二年には十一時間二分となっている。
だから、明らかに仕事の量がふえている、仕事に係る時間がこの十年の間で一時間三十五分ふえているということで、そういう仕事の時間の増大、そして多忙化ということがいろいろ重なって、精神疾患の増大を見る必要があるのではないか。これも、教職員の平均、平日一日の生活時間というのを見ますと、明らかに睡眠時間も少なくて、仕事の持ち時間がぐっとふえているということがあります。みずからの食事とか余暇の時間というのも少なくなっているということもございます。
私は、今本当にこういう状況で見ますと、健康と福祉を害している実態だというふうに思いますが、これは文科省、認めるとか認めないというふうになるとあれですから、やはり文科省としてこういう勤務実態をつかむことが先ではないのか。先ほど来、局長の答弁は、教育委員会にちゃんと指導しているというか、言っているというような話に終わっているんですけれども、やはり教職員の勤務実態をちゃんとつかむ、把握をする、そのことが文科省がまず第一にやるべきことではないのかというふうに思いますが、いかがですか。
○近藤政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますが、公立学校の教職員の勤務実態につきましては、服務監督権者であります各教育委員会がその権限と責任において適切に管理をするという事柄であろうかと思っておりまして、私ども、全国で公立学校の教職員、九十万ほどおるわけでございますけれども、個別具体の勤務状況を一律に把握をするというのはなかなか難しいのではないのだろうか、しっかりと教育委員会におきましてこの勤務時間管理を徹底していただく、こういったことで引き続き指導してまいりたいと考えております。
○石井(郁)委員 何かいかにも文科省はこのことに責任がないかのような答弁なんですけれども、しかし、文科省がいろいろ出してくる教育政策のもとで現場は動いているわけでしょう。
こういう仕事がふえているという背景には、やはり指導計画をつくるだとか調査報告の文書を作成するだとか、それからチームティーチングが導入された、総合学習も導入された、その打ち合わせなどに大変時間がかかっているわけですね。それから五日制、これも国として進めたわけですから、五日制に伴って平日の上乗せなどでその時間、仕事量が増大するということがあるわけですね。
だから、文科省は自分の責任と全然別なところでこの問題が起こっているかのような顔をする、私は、そこが大変、そういう態度では済まされないということを強調したいわけです。
この問題でもう少し言いますと、教職員の給与等に関する特別措置法が審議されたときに調整手当というのが出されました。そのとき、勤務時間が青天井になってしまうのではないかという危惧がありまして、時間外勤務を命ずる場合に関する規程というのを設けられていますね。「教育職員については、正規の勤務時間の割振りを適正に行い、原則として時間外勤務は命じないものとする。」ということが第三条にあります。また、第四条では、「教育職員に対し時間外勤務を命ずる場合は、次に掲げる業務に従事する場合で臨時又は緊急にやむを得ない必要があるときに限る」ということで、それは「生徒の実習に関する業務」ということで具体が挙げられております。
だから、臨時でまたかつ緊急にやむを得ないものに限るということにされていたのが、きょう申し上げましたように、過労死ラインの月八十時間が常態化、平均化しているというのは本当に異常としか言いようがないと私は思うのであります。
そういう点で、これは国の法律としてあるわけですから、国が示しているところなわけですから、やはり緊急に実態調査を文科省として行うべきじゃありませんか。また、私は、今何らかの施策が要るのではないか、手を打つことが必要でないのかという意味でこれは文科省に申し上げているわけでありますが、いかがでしょうか。
○近藤政府参考人 先生御指摘になりました公立の義務教育諸学校の教育職員の給与に関する特別措置法、平成十六年から国立の方は法人化をされたわけでございまして、公立につきましては、政令でもって定める、政令でその基準を定めるということで、その基準は基本的には従前と同じように、今先生御指摘になったような場合に限る、教育職員に対し時間外勤務を命ずる場合にはということで限定をしておるわけでございまして、これは、この精神、趣旨にのっとって、当然、条例に定めていただきまして実行していただくということだろうと思っております。
それからまた、教員につきましては、そういうことから、いわゆる職務と勤務態様の特殊性に基づきまして、時間外勤務手当を支給せずに、いわゆる勤務時間の内外を包括的に評価するものとしての教職調整額を支給する、こういう仕組みになっているわけでございまして、私ども、先ほど来るる申し上げて恐縮でございますけれども、まず一義的に、服務監督権者である各教育委員会において適切にこの問題は管理をしていただく、そういうことがまずは大事であろうと思っておりますし、私どもはそういう観点から引き続き促してまいりたいと思っております。
○石井(郁)委員 一貫して文科省は教育委員会の服務監督の権限の範囲内だということで、促すという話にしかならないんですけれども、結局、そういう、教育委員会にずっと任せきりにしてきた、その結果が今日のこの異常な勤務状態、過労死ラインに達するような状況をつくり出しているんじゃありませんか。健康と福祉を本当に害する状態になっている、また法律違反という状態になっているじゃありませんか。
そして、文科省は今もって実態調査をしないという態度のようですけれども、文部省は一九六六年の四月から六七年にかけてはちゃんと教員の勤務実態調査をやっているんですね。このときの調査で週平均の超過勤務時間は一時間四十八分でしたから、今は、最初申し上げたように、国立教育政策研究所の調査でも週平均十五時間、六倍ですよ。だから、今の時点でちゃんとした調査をやってみる、それでやはり何らかの手を打つ、これは文科省として当然やるべきことじゃないのか、教育委員会に任せたら済むという問題ではないんだということを私は申し上げているわけであります。
別な角度からこの問題でお伺いしたいと思っていますが、平成十三年の四月、これも厚労省の労働基準局長名で「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」という通達が出されました。それは、労働時間の適正な把握のために、労働日ごとに始業、終業時間を使用者が確認をする、記録をするというものでございますけれども、文科省もこの適用を認めていると思うんですね。これは国会答弁でされているわけですが。
では、この通達について文科省としてどのように周知をし、あるいは実施をしているのか、その状況を御報告ください。
○近藤政府参考人 お答えをいたします。
御指摘の厚生労働省が定めた、平成十三年四月であったかと思いますが、これは地方公務員にも適用されるわけでございますから、公立学校の教職員にも基本的には適用されると考えておるわけでございまして、例えば、始業、終業時刻の確認及び記録や確認、記録の原則的な方法でありますとか、労働時間の記録に関する書類の保存、こういったところが適用されると考えておりまして、この通知が出された後、平成十四年、平成十五年、平成十六年と各都道府県の教育委員会の人事担当者を集めた会議におきまして、この厚生労働省の通知も配付をし、お示しをしながら、具体にこの通知の趣旨でありますとか内容につきまして周知徹底を図るとともに、教職員の勤務時間管理を適切に行うように毎年この会議で指導をしてきたところでございます。
さらに、引き続き、今後とも各教育委員会にいろいろな会議等の場を通じまして指導を徹底してまいりたいと思っております。
○石井(郁)委員 局長の答弁はいつも指導の徹底で終わるんですけれども、具体的に状況をちゃんとつかんでいるかと聞いているんですよ。あなた、言いっ放しじゃありませんか。ちゃんとつかんでください。
私は、最後にこの問題で大臣に伺います。
今、勤務実態というのは、本当に十年前とさま変わりしている、一九六六年の時点と大きく違っている。この時点できちんとしたやはり実態調査を文科省としてやるべきじゃないか、責任を持って調査すべきだ、そのことは伺いたい。
それから、来年度の概算では、第八次の公立義務諸学校教職員の定数改善計画をつくらなきゃいけない。だから、その前に緊急に教職員の勤務の実態調査をすべきじゃないのか、多忙化解消のための教員加配だとかいろいろな形での加配だとかの措置を考えなきゃいけないときではないのかという意味でも、きちんとした現状把握、実態調査をすべきだということで、これは大臣の御決意を伺いたいと思います。
○河村国務大臣 国と地方の役割分担ということをずっとこれまでも指摘を受けやってきながら、国立大学の附属の学校については国が責任を持つ、それから、各義務教育段階、給与については責任を持つけれども、実際の学校の服務規程と運営は地方の教育委員会にお願いをしたいということで、これまで役割分担をやってきておるわけであります。
ただ、全体的に、そういう、今石井郁子先生御指摘のような問題がそれぞれの現場にあって、実際の教育上問題があるということであれば、これは、県の教育委員会に我々の方でも照会をすれば県の全体のことはわかるはずだ、私はそう思っておりまして、教育委員会の判断において、各県において実態調査があれば、それを我々としていただいて、全体的な国の、全体にそういう状況がある、これについて対応するには、先生をふやせば解決する問題なのか、給料を上げれば解決する問題なのか、これは我々教育センターとしていろいろ考えなきゃいけない課題かと思っておりますし、今御指摘の点、一律にその九十万人を国が命令して実態をという、これはなかなか容易ではないと私は思っております。
しかし、事職場におられる先生方の働きに関することでございますから、各県に十分その点、今御指摘をいただいたような点、問題があるのか、これも含めて状況を、我々としても、各県の教育委員会とも、こういう問題についてきちっと対応しているかどうか、こういうことをお互いに情報交換をし合いながら、勤務実態等について我々が知るべきことは知っていくということは大事だろう、このように考えております。
○石井(郁)委員 もう時間が参りまして、私、きょうもう一つ、四月に文科省が発表になりました長期欠席の子供の状況調査というのがありまして、これは児童虐待問題ともかかわって、大変重要なデータが示されたと思って伺いたかったんですが、それは要するに、児童虐待では、子供の安全確認ということが本当に大事だ、早期救出が大事だという観点からすると、今、学校も、それから関係する機関の職員も、子供に会えない、子供の安全を確認できていない、そういう子供が九千九百四十五人もいる、これは私、驚くべき数字だというふうに思いました。
この問題で、実は、文科省が出されている通知も、本当にこれで対応ができるのかということを思っておりまして、質問したかったんですけれども、時間が参りましたので、以上で終わります。どうもありがとうございました。
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○池坊委員長 内閣提出、参議院送付、著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。
趣旨の説明を聴取いたします。河村文部科学大臣。
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著作権法の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
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○河村国務大臣 このたび、政府から提出いたしました著作権法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
我が国の著作権制度については、情報化等に対応してこれまでも逐次整備を進め、その充実を図ってまいりましたが、知的財産基本法に基づき昨年七月に策定された知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画を着実に実施し、知的財産戦略を推進するため、その一層の充実が必要となっております。
この法律案は、著作権の分野について知的財産戦略を推進し、著作物の適切な保護と活用を図るために必要となる改正を行うものであります。
次に、この法律案の内容の概要について御説明申し上げます。
第一は、アジア諸国など物価水準の異なる国において許諾を受けて生産された商業用レコードが、我が国に還流してくることを防止する措置を講じることであります。
近年、アジア諸国において、我が国の音楽の人気は年々高まっております。ところが、これらの国において我が国の権利者から許諾を受けて生産された商業用レコードが、我が国に還流し、安価に販売されることにより、権利者の経済的利益に大きな影響を与えるという事態が生じております。
今回の改正は、このような事態を解消し、我が国の音楽文化の海外普及を促進するため、専ら国外において頒布することを目的とする商業用レコードを、情を知って、国内において頒布する目的をもって輸入する行為等を、著作権または著作隣接権を侵害する行為とみなすこととするものであります。ただし、国内において最初に発行された日から七年を超えない範囲内において政令で定める期間を経過した商業用レコードについては、適用除外としております。
第二は、書籍または雑誌の貸与について貸与権が及ぶこととすることであります。
著作者等に貸与権が認められた昭和五十九年の著作権法の改正においては、貸し本業が長年自由に行われていた経緯等にかんがみ、所要の経過措置を設け、書籍または雑誌の貸与による場合には、当分の間、貸与権の規定は適用しないこととしておりました。ところが、近年、事業を大規模に展開する貸し本業が出現しつつあり、漫画家、小説家などの著作者の経済的利益に大きな影響を与えるという事態が生じております。
このため、この経過措置を廃止し、書籍または雑誌の貸与による公衆への提供について貸与権が及ぶこととするものであります。
第三は、著作権等を侵害した者に対する罰則を強化することであります。
具体的には、基本的に、懲役刑は三年以下、罰金刑は、個人は三百万円以下、法人は一億円以下とされているものを、特許権侵害または商標権侵害と同様に、それぞれ、五年以下、五百万円以下、一億五千万円以下に引き上げる等の改正を行うとともに、懲役刑及び罰金刑を併科できることとするものであります。
なお、この法律は、平成十七年一月一日から施行することとし、所要の経過措置を講ずることとしております。
以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願いいたします。
○池坊委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
次回は、来る二十八日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後四時五分散会
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