ワイマール体制下のドイツ経済
(1973年刊)
「ドイツ資本主義は、戦後世界資本主義のいわばマイナスの焦点として、第一次大戦を契機に発生した現代資本主義の病痾をもっとも早期に示していた・・・」
「流入外資のうち過半が短期信用であり、このことだけでも外資がドイツ経済の不安定要因をなしていたということができよう。なぜなら、国際短資はたんに利子率の高低によって移動するばかりではなく、通貨不安や政治不安に促されて、きわめて「均衡破壊的」な動きをするようにすでになっていたからである」
短資・・・アメリカ依存度の高さ・・・・アメリカ経済の動向に世界経済が左右される構造
独占と価格の硬直性
相対的安定期の数年間に、労働時間は減少気味・・・・合理化・生産性の向上により、そして労働者の諸権利の確立により、労働時間短縮化
機械工業の低利潤率(過剰生産能力、鉄鋼独占価格の硬直性)
ワイマール期における所得階層の下方へのシフト
資本形成阻害要因・・・当時の支配的論調は、「租税や賠償や高賃金に求める」
「内外の政治状況からくる制約要因が特に強く作用したのは、合理化の可能性が少ない農業経営や中小企業・・・」
カルテル支配率・・・市場支配力
垂直的巨大資本・・・コンツェルンの支配
鉄鋼業の利益率など。・・・相対的安定期にしっかり、利益を上げている。
相対的安定期においては、大企業は利益を上げ、配当もしっかり行っている。
独占・カルテル
コンツェルンの支配
独占の支配による価格硬直性
第一次大戦の結果、ドイツの地位が大きく低下したこと(アルザス・ロートリンゲンという石炭鉄鋼業の地帯がフサンスのものに)(表83参照)
独占体による高い国内価格: 世界市場での競争による低い価格(表84参照)
化学工業における巨大独占体の成立とカルテル(市場支配・市場規制)
巨大独占体イ・ゲ・ファルベン社の成立
「独占体制の基本構造としては、化学工業においても、トラストを頂点とするピラミッド的資本結合を中核に、製品別の多数のカルテルがそれに配置されるという、先に重工業についてみた重層的構造をなしていた・・・・」
化学工業においては、「IIG自身がトラスト本来の市場規制的役割を十分に果たしていたために、すくなくとも国内市場に関する限り、合同製鋼がカルテルによる補完を必要としたほどにはそれを必須なものとはしていなかったという点に両部門の差異がみとめられるのである。」
イ・ゲ・ファルベン社の成立
巨大な会社が統合。その巨大な力で市場支配・利潤確保
→自由な競争が欠如するだけに、価格は高くなる・・・独占価格(市場支配力のある国内での製品価格の相対的高さ)
国内において「トラストを中核に参与と利益共同協約を主要手段に、カルテルを補助手段として」ほぼ完全な市場支配
その結果としての利潤の安定的確保・・・・その背後には、相対的高価格(独占価格)の負担を担う関連企業群・中小企業・農民
国内独占体制を武器に、世界市場への再進出・世界市場における大きな力
イ・ゲ・ファルベン社の世界戦略−ナチとの接近の背景−
イ・ゲ・ファルベン社の「広域経済圏」戦略−ナチ世界強国建設路線との共鳴可能性−
電機工業における巨大独占体の支配−二大巨人ジーメンスとAEG−
電気製品輸出をめぐる世界的競争
電気製品コストにおける労働力(人件費)のウエイト・・・・相対的にドイツ、そしてフランスの人件費(労働力費)が低いことがわかる。
原料費、経営按配費、租税などが同じであり、従って、市場での競争条件は、労働力の費用だけになっている。
米英に対するドイツの強みが、低労働力コストだということになる。
・・・