西洋経済史報告(20051110FH)                         

 

東アジア共同体はいかにして可能か

 

 今回の発表では、前期の講義で取り上げられた「東アジア共同体」について考察する。現在、ヨーロッパではEUという超巨大な共同体が存在している。何世紀も前から様々な戦争や問題を抱えたヨーロッパ諸国が、なぜひとつの共同体になりえたのか。私にとってそれはとても単純な疑問であった。しかしそれは非常に重要な問題であり、「東アジア共同体」を考える上で非常に重要であると思われる。このアジアに生きる一人として、「東アジア共同体」の可能性について考察してゆく。

 

1、乗り遅れた日本

 世界の経済は、国家を超えたグローバル化とそれと共に地域化という動きが進行している。情報技術の発達などにより国家を超えたグローバリゼーションの中、EUやNAFTA、ASEANに見られる地域化が進んでいる。しかし、日本は2000年のシンガポールとのEPA(経済連携協定)の交渉を始めるまでGATT本来の無差別貿易自由化原則を日本の基礎的貿易政策にしていた。

第二次世界大戦後、日本はGATTの恩恵を一番受け、アメリカやヨーロッパに追いつこうとした。そのようにして日本は福沢諭吉の言葉「脱亜入欧」的政策を進めていった。こうして日本はアメリカとの関係を戦後深めていったのだが、あまりにもアメリカの気を害さないような外交ばかりとっていたように思われる。

また日本は、第二次世界大戦で東アジア諸国に多大な被害をもたらしたという事実と戦中の「大東亜共産圏」構想という事実の歴史的・政治的に自責の念があり、東アジアの中でリーダーシップを取る事が出来なかった。そのため東アジアではASEANが地域統合のイニシアティブをとる事となった。

 

2、日本の対アジア貿易

 日本の貿易国の約四割は、東アジア諸国である。そのため、日本はアメリカやEUとの連携を重視するより東アジアを中心に政策を進める必要があると思う。その典型的な事としてFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)がある。現在日本は、シンガポールとFTAを結んでいる。そのため、一部の物を除き関税は取り払われている。このように今後、様々な東アジア地域とFTA/EPAを結べば、物資の移動・知的財産の移動などが活発になり経済の結びつきは強くなり、そして経済だけではなく人々同士の結びつきもより強固なものとなるであろう。

                               出所:外務省HP

3、日本の課題

FTA/EPAを締結するには多くの問題がある。代表的な問題が、農業問題と外国人労働者の受け入れ問題である。経済協定を結べば東アジア諸国からは安い農作物がたくさん国内に入ってくるであろう。今まで日本は米などに手厚い保護をかけており、そのような姿勢を保ったままでは東アジア諸国は満足しないであろう。そのために日本は農業の構造改革をしなければならい。また、外国人労働者の問題も大きい。もし日本が本当に東アジアとより緊密な関係を結びたいのであるならば、外国人労働者のための環境をもっと整備する必要があると思う。しかし、この問題は非常に難しく、フランスやドイツでは外国人労働者問題が深刻な社会問題となっている。

 歴史的問題も非常に難しい。小泉首相の靖国参拝や歴史教育制度など多くの問題を抱えている。

 このように日本は東アジア共同体を積極的に考えていこうとするならば、対外政策も重要であるが国内政策もより力を入れていかなければいけないであろう。

 

参考文献・参考ホームページ

・『東アジア共同体―経済統合のゆくえと日本―』谷口 誠。岩波新書。2004。

    外務省HP http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/

    CEAC(東アジア共同体評議会) http://www.ceac.jp/j/