ヒトラー・ナチズムの歴史思想


T ナチズムの「新時代意識」



ヒトラーの歴史意識


p.28 「運命によって、言葉の最高の意味において歴史をつくる天命を与えられている・・・」



p.29 転換期のとしての現在

p.30 「1933年は千年続いた状態の刷新以外の何ものでもない・・・」

p.35「@第三帝国は15年間の『体制時代』を終わらせる、Aそれはブルジョア層の百五十年の支配を克服する、Bそれは千五百年のキリスト教的価値観・秩序観の支配に幕を引く・・・」

p.35f.「ヒトラーは多数の声明の中でドイツや世界の公衆に向かってくり返しこう述べた。ナチズムの出現に示される、また、ナチズムの世界観によって形成される第三帝国の国家秩序における新しいこと、
根底的に革命的なことは、この国家がドイツ史上はじめて、民族を国家の実践的政治的組織の決定的な対象に引き上げ、この民族を堅固な統一体にまとめあげ、こうして何千年にわたるドイツ国民のもろもろの身分、階級、宗教、政党、部族、地域への分裂を止揚したという事実である。

p.36
「今日、
新たな国家が創立されたのであり、その独自性は・・・・・結束した民族共同体を最優先することにある。・・・・ドイツ史上、精神、意志形成、指導においてそのような国内統一性が存在したことはいまだかつて一度もなかった。これこそわれわれの前の幾多の世代が熱望していたものであり、幸運なことにわれわれはそれが実現したことの証人である」。


「階層的特権の除去、後進に対する才能次第の平等な上昇のチャンスの保証、労働者の住宅事情、有給休暇、年齢による待遇の違いの改善・・・」
・・・・未来の実現目標

p.37
「あらゆる階級差を平準化する
民族共同体・・・」

「ナチズムが望むような構成をとる
民族共同体は、つねに自民族の成員だけを予定されたあらゆる社会政策的措置の対象と考え、『異人種』や『劣等者』は共同体から排除する、断固たる人種差別的政策の帰結として出現するのである。」


U 歴史の法則

1.「アーリア人の使命」という神話

p.38
ヒトラーのみるところ、「
血と人種は、諸民族の特質をも規定し、その本質的特徴を刻印し、諸民族に特有の能力や業績を決定づけていた。しかし、とりわけ、『人種の価値』はそもそもその存在がはじめてあらゆる歴史的生成を可能にするあの二つの潜在力、国家と文化の発展の前提条件であった。」

p.39
アーリア人種には人類全体の先頭を進む「指導人種」の役割が当然与えられるという確信は、古典的な人種理論の基本理念の一つであり、ヒトラーもまたこれを継承している。

p.40
アーリア人種だけが文化や国家を形成する活動の能力を与えられた『優等人種』であるというフィクション」


アーリア人「指導人種」による「文化的不能」諸民族の征服と支配・・・・


「指導人種」がその権力領域、支配領域を拡大するのを助ける行動は、文化や国家思想を助長するのに役立つのみならず、歴史の法則とも合致する・・・、との意識。






p.42「アーリア人の持つ特殊な文化創造的素質は、
アーリア人だけに固有の共同体感情の形態から生まれたという・・・それは、ヒトラーによれば、個々人の要求や願望を矛盾なく全体の福祉に従属させ、必要ならば個人的な人生の幸せをも「偉大な全体」のために犠牲にする容易の中に明らかである。

「実際、
共同体の維持のために自分個人の利害を断念するこの志操は、真に人間的なあらゆる文化の第一の前提条件である。・・・・この内面的志操にアーリア人は世界におけるその地位を負っている」と。





2.ユダヤ人という「仇役」


 ヒトラーの歴史神話・・・・・ユダヤ人の「世界使命」という対抗神話の構築



アーリア人の歴史的使命、アーリア人の資質の対極にある人種としてのユダヤ人、


   文化破壊的、国家破壊的、寄生的などなど。


p.44
ヒトラーからすれば、ユダヤ人の「使命」の内容ないし任務は人類の「汚染」、「隷属化」