「コミッサール命令」
攻撃二週間ほど前の四一年六月六日、国防軍最高司令部は後に「コミッサール命令」として有名になる命令を発した。それは、ソ連軍のの取り扱いに関する指針であった。この命令を伝達する秘密書簡は、次のように記している。「“バルバロッサ”地域における戦時裁判権の行使に関する五月一四日(ママ)の総統指令の補足として、政治委員取り扱いに関する指針を送付する」と。この指針の「配布は、軍団の最高司令官、ならびに航空隊長までとされたい。それ以外の司令官に対しては口頭で行われるように」と[i]、極秘中の極秘であることを注意した。なぜそのように極秘としたか、それは命令本文を読めば理解できる。戦時法規に関する国際法など無視せよというのである。
すなわち、この「政治委員取り扱いに関する指針[ii]」は次のように命じる。
「 ボリシェヴィズムに対する闘争では、人間性や国際法の基本原則にしたがった敵の行動を見込めない。抵抗の本来的な担い手として、特に、あらゆる種類の政治委員からは、我々の捕虜に対する憎悪に満ちた、残酷な、非人間的な取り扱い方が予測される。
軍隊はそこで以下のことを自覚しなければならない。すなわち、
1.
この戦いにおいては、これらの分子に対する寛大さや国際法上の配慮は間違いである。そのようなことはみずからの安全と征服地の速やかな平定にとって危険である。
野蛮なアジア的な戦闘方法の張本人が政治委員である。したがって彼らに対しては、ただちに、 躊躇なく、仮借ない厳しさで措置を取らなければならない。それゆえ、彼らが戦おうとしたり抵抗しようとすれば、原則的にただちに武器で片付けなければならない。」