陸軍後方地域の治安平定は、陸軍最高司令官ブラウヒッチュ治安警察・保安部長官ハイドリヒとの協定により、治安警察・保安部の特別出動部隊(アインザッツグルッペ)が行うことになった。

 

その協定は四一年四月二八日に出来上がった[i]

 

ブラウヒッチュ陸軍最高司令官の自筆署名の協定書によれば、この調整事項は、治安警察・保安部との協力・責任分担関係を明確にするものであった。

 

それによれば、「軍隊外の特別な治安警察的任務の遂行が、治安警察(保安部)の特別部隊(ゾンダーコマンド)の投入を必要とさせる。治安警察・保安部長官との合意に基づき、作戦地域における治安警察・保安部の投入がつぎのように規制される」とした。

 

すなわち、第1に、治安警察・保安部の特別部隊(ゾンダーコマンド)の任務は、a、軍団後方地域に関しては、作戦開始以前に確定した対象(資材、文書、ライヒないし国家に敵対的な組織、団体、グループなどのカード)の保全、ならびに特に重要な個人(指導的な亡命者、サボタージュ行為者、テロリストなど)の逮捕であった。b、陸軍後方地域に関しては、国家およびに敵対的な諸活動の調査摘発であった。

 

2に、特別部隊(ゾンダーコマンド)と軍団後方地域軍司令部当局との共同作業に関しては、治安警察(保安部)の特別部隊はその任務を自己の責任で遂行するものとした。行進、給養、宿泊に関しては軍団に従属するものであった。

 

3に、治安警察(保安部)のアインザッツグルッペならびにアインザッツコマンドと陸軍後方地域司令官との協力が規定された。陸軍後方地域には、治安警察(保安部)のアインザッツグルッペ、アインザッツコマンド(治安警察・保安部の特別出動部隊)が投入される。それらは治安警察・保安部長官の受託者の指揮命令下におかれる。そして、行進、宿泊、給養に関しては、陸軍後方地域司令官のもとに置かれる。 

 

 

 



[i] Regelung des Einsatzes der Sicherheitspolizei und des SD im Verbande des Heeres vom Oberkommando des Heeres, Brauchitsch am 28. 4. 41.

拙著『独ソ戦とホロコースト』日本経済評論社、20012章 独ソ戦の現場とホロコーストの展開からの抜粋。