1941年10月のローゼンベルク東方占領地省大臣(担当者ヴェッツェル)からオストラント(バルト三国・白ロシア)担当全権委員宛の書簡
「ユダヤ人問題に関して:
1.オストラント(バルト三国・白ロシア)担当全権委員宛
ユダヤ人問題に関する貴殿の1941年10月4日の報告に関して。
1941年10月18日の私の手紙と関連して、総統府のブラックが、必要な宿舎および食糧の供給に際して 協力すると表明bereitserklärt hatしたことを連絡する。目下のところ、当該必要施設は十分には存在しない。まさに今後建設しなければならない。ブラックによれば、当該施設をライヒの中で建設することは、現地で建設するよりはるかに大きな困難をもたらすので、ブラックは、ただちに自分のところの人材、とくに部下の化学者カルマイヤー博士をリガに派遣するのがもっとも目的にかなっていると見ている。・・・ブラックはさらに、採用される処理方法は危険がないとはいえないので、特別の保護措置が必要だとのことである。
こうした事情の下では、あなたのところの上級親衛隊警察指導者を通じて総統官邸のブラックに化学者カルマイヤー博士と何人かの補助員を派遣するように願い出て欲しい。
この処理の仕方に関しては、ライヒ保安本部のアイヒマン、ユダヤ人問題専門担当者も同意していることを伝えておきたい。アイヒマンの連絡によれば、リガとミンスクにユダヤ人用収容所が建設されるとのことである。
そこには場合によっては、ライヒからのユダヤ人もいれることになろう。
目下、ライヒ本土Altreichからユダヤ人が疎開させらているが、彼らはリッツマンシュタットに向かっている。しかし、後で東方に、労働能力がある限りで労働投入をするために、さらに別の収容所に送られるかもしれない。
状況にかんがみれば、労働能力のないユダヤ人が、ブラックの補助手段で除去されても、何の懸念もない。
ユダヤ人射殺が公開で行われた−これは今後は許されない−ためヴィルナで起きたような問題は、この方法なら起きない。
それに対して、労働可能な者は、労働投入のために、東方に送られることになろう。
以上、文脈からして、「必要な宿舎および食糧の供給」とは、労働不能なユダヤ人に対する一酸化炭素ガスによる<安楽死>施設のこと。
-----出所:
アイヒマン裁判記録(録音テープ、抜粋)、
ユダヤ人抹殺数に関する統計など付属資料
参考: ハンナ・アーレント『イエルサレムのアイヒマン』
ヴィルヘルム・ヘットゥル証言(アイヒマンとユダヤ人抹殺数について話した人物:ニュルンベルク裁判検察側証人)
(Berlin 1982), (Ullstein Nr.33042, Frankfurt/M, Berlin, Wien 1985)