横浜市大学内集会アピール

教育基本法「改正」に反対する

 

 政府・与党は、11月15日、16日の衆議院において、与党単独採決を強行し、教育基本法「改正」与党案を通過させました。そしていま与党は、臨時国会会期中に参議院で「改正」法を成立させることをめざしています。わたしたちは、大学に学び、教え働く者として、またさまざまなかたちで大学に関わるものとして、以下に挙げる理由から、この法案に反対し、これを廃案にするよう強く求めます。

 

@ 「愛国心」の押しつけ/心の自由の否定

 愛国心を持つかどうか、持つ場合はどのようなかたちで持ったり示したりするかは、個人が自由に判断すべきことであり、人格の自由な発展を掲げる現行の教育基本法は、それを保障しています。これに対して「改正」案は、どのような愛国心を持つべきかまで政府が強制できるようにするものです。「日の丸」・「君が代」の強制もねらいに含まれます。法案は、自由な人格の形成を否定し、基本的人権である心の自由を奪おうとしているのです。

 

A 政府・政治権力による、教育の全面的な支配

 現行法は、政府が教育の内容を支配することを、「不当な支配」として禁止しています。これに対して「改正」案は、該当する部分を正反対の意味に変え、どのような価値観を持つべきかすら国家が決めて、こどもと教員に強制することを可能としようとしています。さらに、そのような強制を学校のみならず、家庭・地域にも及ぼそうとしています。

 

B 大学における学問の自由を脅かす

 「改正」案が成立すれば、大学も無事ではありません。「改正」案では、大学にも特定の価値観を「教育の目標」として強制し、さらに同第16条(教育行政),第17条(教育振興基本計画)の規定によって評価と財政配分を通して大学の教育内容を、国家が統制できるようになってしまいます。これによって今でもすでに脅かされている学問の自由と大学自治の原則が、さらに踏みつぶされるおそれがあります。

 

C さまざまな差別・格差/男女平等原則の否定

 現行の基本法は等しく教育を受ける権利を保障しています。ところが「改正」案は、能力主義的な差別を行い、平等に教育を保障することをやめて、格差を拡大しようとしています。また、現行法にある、男女平等の原則のために男女共学を保障する条文を、「改正」案はそれを削除しており、男女平等の原則を否定しようとするものといえます。

 

D 憲法改悪/平和主義の否定

 現行の基本法は「前文」において憲法の原則との結びつきを明示してるのに対して、「改正」案は、当該の部分を削除して日本国憲法との関係づけを断っています。このような点に端的に現れているように、「改正」案は、平和主義の原則を含む憲法の理念・原則を切り捨てようとしているといわざるをえません。安倍現政権は数年以内の憲法改悪実現をめざしています。この教育基本法改悪案もそのための準備の一環なのであり、断じて許すことはできません。

 

E 「改正」の理由はない/審議過程に重大な瑕疵

 現行の教育基本法を変える必要があるというのであれば、それ相応の十分な理由が必要です。しかし、そのような理由はまったく挙げられていません。教育現場をめぐる深刻な問題は、現行の教育基本法にのっとった教育が行われていないために起きていることであって、その「改正」の理由にはなりません。

 また、タウンミーティングにおける「やらせ」に見られるように、政府が「世論」を捏造することによって法案成立を有利に運ぼうとしてきたことが、明らかになってきました。

 衆議院でも、こうした問題の真相を究明したうえで十分な審議を尽くすべきであったのに、与党が単独で採決を強行しました。このような進め方は到底適切なものとはいえません。

 

 人々が声を挙げれば、この不当な「改正」案の成立は阻止することができます。すべての人に、ともに法案の廃案を求めるよう訴えます。

 

                          2006年12月6日

 横浜市大学内集会(ぷちしんぽ教育基本法の改悪に反対!)参加者一同