ベーコン,F.(哲学者)
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プロローグ |
ベーコン Francis Bacon 1561〜1626 イギリスの哲学者・政治家。近代科学思想の先駆者。
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政治家としての生涯 |
ロンドン、ストランド街のヨーク・ハウスに生まれ、ケンブリッジ大学のトリニティ・カレッジにまなぶ。1584〜1614年の間下院議員として活躍。エリザベス女王の特別顧問官になり、かつての親友エセックス伯を反逆罪で処刑台におくる。女王のあとをついだジェームズ1世のもとで出世し、1603年にナイト爵に叙され、法務次官(1607)、法務長官(1613)、枢密顧問官(1616)、大法官(1618)をへて、18年にヴェルラム男爵、21年にセント・オルバンズ子爵となる。「学問の前進」(1605)はジェームズ1世にささげられている。
1621年、国会において収賄罪で告発され、禁固刑をうけ、一切の公職就任を禁止された。これ以後、ベーコンは著述に専念する。1626年4月9日、ロンドンにて死去した。
III |
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著作 |
ベーコンの著作は、哲学的著作、文学的著作、専門的著作の3種類に分類できる。哲学的著作としては、当時の学問状況の概観である「学問の前進」と「ノウム・オルガヌム」(1620)が重要である。「学問の前進」は英語で書かれたが、その増補ラテン語訳が「学問の尊厳と進歩」(1623)として出版されている。
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ベーコンの論理学 |
ベーコンは、人間は自然のしもべにして解釈者であり、真理は権威に由来するものではなく、認識は経験の果実であることを強調する。そして、抽象的な三段論法を基礎とする従来のアリストテレス的論理学に、新しい論理学を対置する。演繹的方法にかわって、帰納法、つまり、実験にもとづいて個々の事例の比較と吟味によって自然の一般法則を発見するという方法を提唱したのである。帰納法により、科学的仮説の更新を通じて経験的真理に近づく道がひらかれた。これは科学の方法の根本的進歩であった。
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ノウム・オルガヌム |
「ノウム・オルガヌム」は、科学に精密な観察と実験とをもちこんだ。この著書において、ベーコンはただしい知識獲得の妨げとなる偏見や先入観をイドラ(偶像)とよび、4種のイドラをあげている。(1)人間性一般につきものの「種族のイドラ」、(2)個人の特殊な条件によって生じる「洞窟のイドラ」、(3)言語が精神におよぼす影響によって生じる「市場のイドラ」、(4)既成の哲学体系やあやまった論証方法から生じる「劇場のイドラ」の4つである。「ノウム・オルガヌム」の基礎にある諸原理は、それ以後の経験主義思想の発展に大きな影響をおよぼした。
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随筆集その他 |
ベーコンは生涯を通じて評論や文学作品を書いている。「随筆集」(1597)はひろく受読されてきた。「ヘンリ7世治世史」(1622)は、ベーコンの学者としての才能をしめしている。空想的な「ニュー・アトランティス」(1627年著。死後出版)では、科学アカデミーの設立が提案されている。専門的著作としては、法廷での弁論と法律論文をあつめた「法律についての格言集」(1630)などがある。
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