企画書: エクステンション講座
場所:みなとみらい・ランドマークタワー13階・横浜市大エクステンションセンター
日時:2007年5月9日(水)、16日(水)、23日(水)、30日(水)、6月6日(水)
各回とも時間は、18:30−20:00
「ヨーロッパ統合の到達点は何を意味するか−極端の世紀20世紀を振り返って−」
パレスチナ問題、イラク戦争とその後の泥沼化、イランの原子力(核開発?)問題など、中東地域を巡る紛争は深刻です。どこから展望が切り開かれるのか、想像もつきません。
しかし、20世紀ヨーロッパはどうだったでしょうか。
20世紀前半、ヨーロッパは総力戦を二度も戦いました。しかし、第二次大戦後、ヨーロッパ諸国は復讐心・敵対関係を克服し、一歩一歩、融和と統合を前進させてきました。何がそれを可能にしたでしょうか。歴史から学ぶべきことはたくさんあるように思います。
EUは今年はじめにルーマニアとブルガリアが加わって、いまや27カ国体制となりました。確かに、EU憲法の批准では座礁に乗り上げた感があります。しかし、今年の議長国ドイツを中心に、局面打開を図る努力が続けられています。
こうしたヨーロッパ統合の到達点を、大きく、20世紀の歴史の中で振り返って見ると何がみえてくるでしょうか。この問題を、「戦争と平和」の研究、ヨーロッパ統合史研究の最先端を行く5人の研究者の方に最新の専門研究の成果をわかりやすく講義していただきながら、みんなで考えてみたいと思います。
2007年5月9日(水)18:30−20:00
1.帝国主義時代の克服の模索
−社会主義インターナショナルの群像−
講師:西川正雄(東京大学名誉教授)
(趣旨)「国際連帯」と「反戦平和」を掲げたインターナショナルの担い手たち、その思想と活動について、西川正雄先生(東京大学名誉教授)が最近岩波書店から刊行された御著書『社会主義インターナショナルの群像 1914−1923』をもとに、エッセンスをわかりやすくお話いただきます。
2007年5月16日(水)
18:30−20:00
2.ナショナリズム克服の道は?
−「ナショナル・アイデンティティという奇跡−二つの歌に注目して−」-
講師:小野塚知二(東京大学大学院経済学研究科教授)
(趣旨)ナショナリズムを高い次元で克服しつつあるEUの歌はベートーベン第9(歓喜の歌)ですが、それはどこまで人々の心をつかんでいるでしょうか。世界の国々は伝統のある国歌を持っていますが、国歌とナショナリズムはどのような相互関係にあったでしょうか、また、今後あるべきでしょうか。「ナショナル・アイデンティティという奇跡−二つの歌に注目して−」(永岑・廣田編『ヨーロッパ統合の社会史』第5章)を市民向けにご講義いただきます。
2007年5月23日(水)
18:30−20:00
3.小国の生存の道は何か?
−ヨーロッパ統合へのベルギーのイニシアティヴ−
講師:小島 健(立正大学教授)
(趣旨)『欧州建設とベルギー』(日本経済評論社、2007年2月刊行、科学研究費出版助成による)のエッセンスを市民向けにわかりやすく解説していただきます。ベルギー、オランダ、ルクセンブルクといった小国、フランス、ドイツ、イギリスといった大国にはさまれた小国の生存の道こそは、民主主義的な統合の道でした。その小国のイニシアティヴを解きほぐしていただきます。
2007年5月30日(水)
18:30−20:00
4.ヨーロッパ統合と国際関係
講師:木畑洋一(東京大学大学院総合文化研究科教授)
(趣旨)『ヨーロッパ統合と国際関係』(日本経済評論社、2007年)の主題・エッセンス等をわかりやすく市民向けにご講義いただきます。
2007年6月6日(水)
18:30−20:00
5.仏独和解とヨーロッパ統合
講師:廣田 功(新潟大学教授・東京大学名誉教授)
(趣旨)『現代ヨーロッパの社会経済政策』(日本経済評論社、2006年)のエッセンスを踏まえてご講義いただきます。統合と和解がどのような歴史的関係にあったのかを論じていただきます。統合というと、一般に政府間の関係ばかりが論じられますが、シューマン・プランを構想したとき、モネが「下からの統合」を考えていたことの意味に焦点をあて、「東アジア共同体」の問題を論ずるとき重要な論点を提示していただきます。