ミュンヘン
I |
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プロローグ |
ミュンヘン München ドイツ南部にあるバイエルン州の州都。アルプスに源を発し、ドナウ川に合流するイーザル川が市内を貫流する。古くから南ドイツを代表する産業および文化の中心地、交通の要衝として発展してきた。南ドイツの歴史と文化が凝集した都市として、おとずれる観光客も多い。近郊にある国際空港や鉄道・高速道路網によって、ドイツのほかの地域やヨーロッパの諸都市とむすばれている。1972年には第20回夏季オリンピックが開催された。人口は119万2100人(1998年推計)。
世界的に有名なビール醸造にくわえて、鉄道機材や電機、製薬、光学機器、精密機械、食品加工などの工業がおこなわれる。18世紀にこの地で石版印刷が開発されて以来、印刷と出版の中心地となっている。多くの紡績工場があり、ファッション産業も盛ん。多数の国際博覧会や見本市が開催されている。
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都市景観 |
旧市街はイーザル川左岸に位置し、バロック様式やロココ様式の建物が多数ある。そのほとんどは18世紀前半につくられたもので、イタリア建築をモデルとしている。旧市街の中心には有名なマリーエン広場があり、1867〜1908年に建設された仕掛け時計で有名な華麗な新市庁舎がそびえている。市庁舎の隣には、高さ99mの2つの塔をもつゴシック様式の巨大なフラウエン教会(15世紀建築)がある。
ゼントリンガー門(1310)やイーザル門(1337)などは、12世紀につくられた市壁を大きくとりかこんで建造された第2の市壁に付随した城門である。1789〜92年につくられた広大なイギリス庭園には、湖や中国風のパゴダ(仏塔)、「芸術の家」とよばれる美術館がある。1664年に建設がはじまったバロック様式のニュンフェンブルク宮殿は、うつくしい景観をほこる公園の中に位置する。イーザル川右岸には、バイエルン州議会が開かれるマクシミリアネウム(1857〜74)がある。
III |
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教育と文化 |
市内には博物館や美術館が多い。イーザル川にうかぶ島にあるドイツ博物館は科学技術の世界的な博物館で、バイエルン国立博物館は中世から19世紀にいたる美術品と工芸品を所蔵する。アルテ・ピナコテーク(1836年設立)はドイツを代表する美術館のひとつで、デューラー、ピーテル・ブリューゲル、ルーベンスなどの巨匠の絵画を数多く展示する。ノイエ・ピナコテークは第2次世界大戦で破壊された美術館にかわって1981年に開館したもので、19世紀のヨーロッパ芸術の重要なコレクションで知られる。またグリュプトテークは古代彫刻をあつめている。
ミュンヘンでは、ワーグナーの楽劇を初演したバイエルン国立オペラ劇場(ナツィオナールテアター)を中心に、音楽会が頻繁に開かれる。ウィッテルスバハ家の宮殿には、キュビエが設計したロココ様式のキュビエ劇場がつくられている。
ミュンヘン大学(ルートウィヒ・マクシミリアン大学)は1472年にインゴルシュタットに創立され、1800年にランツフートに移転したのち、26年にミュンヘンにうつされた。ほかに工科大学(1868)もある。
IV |
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歴史 |
1158年、バイエルン大公ハインリヒ獅子公によってイーザル川に橋がつくられ、関所と貨幣鋳造、市場の町として創建された。1255年にバイエルンが分国されると、上バイエルンのウィッテルスバハ家の居館がきずかれる。1327年に火災による被害をうけたが、のちに神聖ローマ帝国皇帝ルートウィヒ4世によって再建された。16世紀初頭からは、ふたたび統合されたバイエルンの首都として繁栄。三十年戦争では、1632年にスウェーデン王グスタブ2世に占領される。
近代におけるミュンヘンの産業と文化の発展は、マクシミリアン1世、ルートウィヒ1世、ワーグナーの後援者として名高いルートウィヒ2世という3人のバイエルン王の功績によるところが大きい。19世紀末から第1次世界大戦までの時期、ミュンヘンは前衛的な芸術家や作家を数多くひきつけた。美術ではミュンヘンで最初の分離派(ゼツェッシオン)が結成され、芸術誌「ユーゲント」が創刊されている。ここからドイツのアール・ヌーボー様式であるユーゲントシュティールが展開された。第1次世界大戦の末期には、一時期、ドイツ革命によってレーテ共和国が樹立されたが、それがたおされると一転して右派の支配するところとなった。こうした動きは、やがてヒトラーひきいるナチスの台頭へとつながっていく。
1923年11月、ヒトラーは市内のビヤホールで開かれた集会を占拠してミュンヘン一揆をおこしたが、失敗におわる。38年にはヨーロッパの列強4国の会談がおこなわれ、ミュンヘン協定によってチェコスロバキアの一部であるズデーテン地方がドイツに割譲された。第2次世界大戦時に、ミュンヘンははげしい空襲により大きな打撃をうけた。
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