ネアンデルタール人 

「Neanderthal Man 現生人類より1段階前の旧人のひとつ。1856年、ドイツのデュッセルドルフの郊外のネアンデル谷より、額の傾斜した大きな頭をもつ奇妙な人骨が発見された。これをしらべた研究者はケルト人以前の原始的人種だと考えた。1864年、学名ホモ・ネアンデルターレンシスと命名された。当時の学会は前代未聞の発見物を前にして珍論議を重ねたが、騒ぎは学会権威の否定によって終息した。

しかし、似た人骨がヨーロッパ各地から次々と発見され、20世紀初頭には現生人類以前の人類としてネアンデルタール人は広く学会にみとめられるようになった。その後もヨーロッパ各地をはじめ、イスラエル、イラク、ウズベキスタンなどから同類の人骨が出土した。なお、これら以外の地域で出土した同じ時代の旧人は、ネアンデルタール独特の細かい特徴を欠くため、ネアンデルタール人とはいわない。

ネアンデルタール人は、頭蓋(とうがい)容量は1400〜1600ミリリットルで現生人類並み、もしくはそれ以上ある。しかし頭骨自体は前後に長く、そして低く、とくに前頭部のふくらみが弱い。顔面頭蓋は大きく、突顎(とつがく)が強く、歯列弓は大きい。また、下顎骨のオトガイの発達が弱いなどの点で、現生人類である新人(ホモ・サピエンス)と顔貌(がんぼう)がことなる。短身でずんぐりした体格であるため、一時は猫背のみにくい人間として戯画化されて広くうけとられた。今日では彼らが死者を埋葬(→ 葬制)するなど、人間的精神をもっていたことを多くの研究者がみとめており、そうした野蛮であったという先入観は修正されている。しかし、のちに彼らにとってかわる新人は、より先進的な文化と、そしておそらく柔軟な知性をそなえていたと考えられている。」Microsoft(R) Encarta(R) Reference Library 2003. (C) 1993-2002 Microsoft Corporation. All rights reserved.