ハルトムート・ケルブレ(ベルリン・フンボルト大学教授、パリ大学名誉教授)

『ヨーロッパ社会史 1945年から現代まで』        赤松 廉史

 

 本書の歴史を見る視点

  ○多様な動きの中に、長期の流れの中に、一つの共通した潮流を見出そうとする

  多くの多様な事象を俯瞰する。

  進歩的な潮流・ヨーロッパの共通性・その未来をめざす動きを追う

 

第三部 社会と国家

第9章   メディアとヨーロッパ世論

 戦後、ヨーロッパ世論の兆候

 1980年以後、その発展、専門家世論の発展。

 国際的ヨーロッパ世論を準備 国際間の繋がり・環境の進展。

 

     メディアの多様化・供給の増大

     私的空間の拡大・家庭での情報の授受

     新しい公的空間の生成(インターネット上)

 

ヨーロッパにおける世論の特質

 :個別の相互に結びついた政治・経済・学問・文化・教会の多様な世論

  世論の中に、政府への多様な批判の存在、市民社会の発展を。

 

第10章 社会運動・社会紛争・市民社会

 戦後      無気力・無感動が人々を覆う

 195060年代 国境横断的なヨーロッパ市民社会の萌芽

             市民社会:他人への援助・連帯・洗練・信頼・非暴力

一般の利益という価値に方向付けられ、

組織的に中央集権化されておらず、

組織・運動・計画の多様性からなる。

世論と密接に結びついて、

もっとも、排他的になってしまう面も。

             アムネスティ・インターナショナル

             国際的な組織・団体の生成

 60年代以降 社会運動の発展

           ← 生活・価値変化 社会性・教育の変化

             自由化の進展

         都市間のパートナーシップ

         学生・生徒の交流 国境横断的な情報・技術・伝達。

         ヨーロッパの人々間のコミニケーションの発展

 

第11章 福祉国家

    戦後、福祉国家の発展  

        ↑未来全体へのオプティミズム

         普遍的物質的進歩へ信仰

         並外れた経済成長の時代 国家収入の増大

         1930年時 世界経済恐慌時、市場の信用の失墜

 

1970年代以降 

 福祉国家は、停滞することになるが、決して後退することは なかった。

      ヨーロッパの共通性を推進していくことへ

     EUの政策

      EU内すべてにおける移動・職業の移動の自由

      人間らしい労働の権利の発展と共に      

 

第12章 都市の成長と都市計画

  ヨーロッパにおける都市の発展

   戦後、急速な都市の発展

   →その発展の結果、交通量の重荷にあえぐ都市中心部の非人間的状況

            都市中心部の根こそぎの再開発

            機能主義の単調性

   →人間的ネットワークを持ち、古い建物を改修

    歩行者、環境を重視した新しい都市空間

   都市の計画に携わる人々らの国際的な繋がり、共有性も増す。

 

第13章

  教育の拡張

     大学・中等・高等学校の発展・拡充

  

戦後、教育機会の均等を目指す。→教育部門の財政・効率性のチェック

      →教育は経済的な原動力としても世論に認識。

20世紀に、ヨーロッパの教育に起こった変革の影響は、21世紀の最初の数十年になって初めて、ヨーロッパ社会全体の中に、現れるようになる。」