20100721ナショナリズム論配布資料
3人の自発的報告者に対するおおむね肯定的な高い評価。
そのうえで、若干の紹介(批判的なもの、注文も)。
クルド問題:
「クルド人の問題の存在はなんとはなくは知っていたが、ここまで体系的に知ることができたのは初めてだったので、非常に興味深かった。トルコはクルド人のアイデンティティを否定したというが、日本の場合、琉球やアイヌのアイデンティティを否定はあったのだろうか。確かあったはず。今は彼らのアイデンティティを否定したりしないが、北海道や利沖縄で独立の気運が高まっていないのは、過去の政策の『成果』であるのではないか・・・」
「イラクにおけるクルド人を扱っていたが、トルコの方がネタが多いのでは?トルコ軍によるクルド攻撃など、よく新聞に載っているので。」
「クルディスタンは、トルコ、イラク、イランなど多くの国にまたがっているため、資源問題など複雑であることが分かりました。イラクによる化学兵器使用の黙殺にドイツ企業がかかわっているとのことには驚きました」
「クルドはあまりニュースで見かけない地域のことだったので勉強になった。豊富な資源に群がるということに関しては、日本、とりわけ日本の多国籍企業も、決して無関係ではないのだろうと思った」、
「地図を利用し、視覚的に分かりやすかった・・欧州の利権や資源問題など、掘り下げてほしかった」
「パレスチナ問題について研究しているので、同じ中東地域の問題としてとても参考になりました。アラブ人についてばかり見ていましたが、中等地域の多様性、欧米諸国、周辺諸国が絡むクス雑性を改めて実感しました」
「ナショナリズムを考える上で、国家や指導者といった力を持つ立場の存在が、どれだけ利己的に行動しているか、着目すべきだと思いました」
ネット右翼問題:
「自分たちのゆるぎない価値観が欲しいという欲求と結びつけたネット右翼評価が興味深かった」、
「ネット右翼にはさまざまのタイプがあり、反米タイプ、戦う相手としては中国・韓国の方が楽なので反米はやらないタイプ、など分類をもう少し行うべきでは」
「ネット右翼のナショナリズムは、中国や韓国を劣っているとみなし、欧米に対しては自分たちが劣等感を抱いているため、批判できない・・・」
「近年日本はナショナリズムの高まりを見せていると感じるが、それは戦時中の票なナショナリズムとは違う。戦時中の日本は、情報も特に入ってこない中、勝手な想像を作り出した。・・・現在は既に多くの情報・事実を知った上でのナショナリズムの高まりであり、かなり客観的で、『自分が育った国が一番いい』、『日本の生活水準はやっぱり高い』など、化学的事実的立証が可能で、他国批判というより、『自国の良さへの気付き』であると思う・・・」
「いじめとネット右翼が同じ構造であるというのは面白い見解・・・」
「データやプレゼンで使っている資料のソースをスライドに記載すべき。一部図書のみ記載されていたが、乗せるならすべてに。」
「ネット右翼については発表者と同じ意見・・・あまり、頭の良くない(←書き方が悪いのですが)人が他人の発言をまねして騒いでいるだけ・・・ただ、最近このネット(ニコ動や2チャン)にアクセスする人の年齢は低くなっています。こういったネット右翼の無責任な発言は、何も知らない子どもには非常に影響があると考えられます。そしてこれが拡大し、この子どもたちが成長し、社会に出るような時には・・・」
「政治活動をしようとしているのではないという解釈は面白かった・・・」
・・・コメント:「政治活動とは何か」が問題。「ネット右翼」の活動も、広い意味での政治活動である。行動右翼だけが、政治活動をしている右翼ではない。
「左翼を理性的と位置付け、右翼を情緒的感性的と位置付けるのは疑問。かつてゲバ棒をもって大学・社会を混乱に陥れた左翼もいた・・・」
・・・コメント:たしかに、理性的と感性的、理知的と情緒的などの比較基準・比較の物差しと、右翼・左翼の物差しとは、区別すべき。右翼・左翼・中道と言った政治の諸潮流のそれぞれの中に、理性的なものから情緒的なものが、さまざまのレベルとニュアンスで存在することは事実。
韓国反日ナショナリズムの問題:
「韓国反日ナショナリズムも、ネット右翼と同じように、少数派の、一部の意見であることに留意すべきだ。反日ナショナリズムは、現代社会において韓国の経済発展に合わせて生まれたもの・・・」
・・・コメント:1910年韓国併合から100年。日本が西洋列強に見習い、それらと肩を並べるべく植民地主義・帝国主義の政策をとったこと、その植民支配の苦い歴史経験が、土台にある。その点を意識したのが次の感想。
「韓国の反日ナショナリズムも、私に非常に興味深いテーマです。支配を経て独立した韓国にとって、反日感情が国をまとめていた部分は、大きいと思います」と。「しかし、それが今も生成されている点が気になります。」
・・・コメント:どのような問題の発生で、反日意識が高まるのか、目覚めるのか、それを具体的に検証してみる必要がある。その時、こんかいの報告をやった人のように、日本の研究の蓄積だけではなく、韓国の研究の蓄積も、きちんと検討する冷静さが必要であろう。
「私も韓国の反日ナショナリズムについて調べて研究しています。なぜドイツはEUという社会の一つの国になれたのに、日本はいつまでもアジアの中に入れないのか、というところから始め、主にマスメディアについて研究しています。・・・」
・・・コメント:「東アジア共同体」構想は、少しずつ前進しているのではないか? なかなか難しい問題だとは思うが。研究に期待したい。
「反日ナショナリズムに関して、韓国の側の人々がどう考えているかは知らないので、興味を持ちました。日本の教科書問題は言われますが、韓国の教科書問題はあまり言われないので、面白いと思います。」