広い視野で人種、エスニシティ、民族問題、ナショナリズムなどを考える教材:最新のもの:






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最近(2004年-2005年)出版の「ナショナリズム論」関係図書のなかから(出版年不記載は、2005年の出版物)


1.日本、アジア、ヨーロッパ、世界の現状に関して

平和のリアリズム 藤原 帰一 岩波書店 2004
全面核戦争の脅威の終焉に安堵した世界は、今また新しい戦争の時代に突入した。各地で火を噴く地域紛争、高揚するナショナリズム、そして、テロと帝国の暴力…。激動の世界に対する粘り強い思想の成果を収めた時論集。


比較の亡霊<ナショナリズム・東南アジア・世界> ベネディクト・アンダーソン,糟谷 啓介,高地 薫 作品社
タイ、フィリピン、インドネシアにおける国家の成立過程の精細な分析と「比較」を通してナショナリズムの起源・性質・将来を理論的・実証的に探究し、ナショナリズムの深層論理を明らかにする。


中国はいま何を考えているか<ナショナリズムの深層> 大西 広 大月書店
出口の見えない日中関係に「打開の道」はあるのか? 高まる両国のナショナリズムには歴史的必然があり、その
解消も必然であることを鋭く分析する。『北海道経済』等に掲載したものに大幅に加筆修正し、書き下ろしを加える。


日中相互理解のための中国ナショナリズムとメディア分析 高井 潔司,日中コミュニケーション研究会 明石書店
靖国参拝、「新しい歴史教科書」問題、ナショナリズム、反日デモ…。緊張する現在の日中関係はどのようにつくられ、メディアはそれをどのように報じたのか。JCCのシンポジウムにおける研究発表をもとにした論文集。


講談社文庫 姜尚中にきいてみた!東北アジア・ナショナリズム問答 姜 尚中 講談社


東アジア・交錯するナショナリズム 石坂 浩一,塩沢 英一,和仁 廉夫,小倉 利丸 社会評論社
中国・韓国での「反日」の声の高まり、日本での右派言説の主流化…。そこに噴き出しているのは、グローバル化の時代の「新しいナショナリズム」現象だ。変容する東アジア社会で、多様化する民衆意識をふまえて論じる。


イスラーム地域研究叢書 イスラーム地域の国家とナショナリズム 5  酒井 啓子 東京大学出版会
共同体を形成する推進力の軸や対外抵抗運動の枠組みがナショナリズムからイスラームへと移り、いま世界で発生する紛争を解決する「鍵」をどこへ見出すか。政治的環境に応じて多様なあらわれ方をする国家とナショナリズムの動態的関係の理論的可能性を探求する。


NHKブックス 嗤う日本の「ナショナリズム」 1024 北田 暁大 日本放送出版協会
若者たちはなぜ右傾化するのか。皮肉屋の彼らはなぜ純愛にハマるのか。あさま山荘事件から、窪塚洋介、2ちゃんねるまで。多様な現象・言説の分析を通し、「皮肉な共同体」とベタな愛国心が結託する機制を鋭く読み解く。




中台激震<沸騰するナショナリズムのゆくえ> 保井 俊之 中央公論新社
9・11の同時多発テロ以後、アジアにおける米国の存在感は低下し、中国の台頭が著しい。目前に迫る次の台湾海峡危機に向け、日本の取るべき道とは何か。ワシントンで米国の中国・台湾政策を見続けてきた著者によるレポート。


台湾新潮流<ナショナリズムの現状と行方> 河添 恵子 双風舎 2004
主権在民の実体をもちながら、国際社会のなかで国家として認められない台湾。いわば「国なき国」に生きる人々のナショナリズムとは、いったいどんなものなのか? リーダーたちの発言から、この国のナショナリズムを読む。


ナショナリズムと宗教<現代インドのヒンドゥー・ナショナリズム運動> 中島 岳志 春風社
現代インドのもうひとつの貌とは? インド国内メディアでさえ取材の難しい過激な宗教ナショナリズム運動の内部に入り、その理念と活動に迫る民族誌。第3回アジア太平洋研究賞受賞論文をもとにまとめる。


新世界事情 インド 国境を越えるナショナリズム 長崎 暢子 岩波書店 2004
インドの近代化と独立を支えたナショナリズムは、内向きの論理として、あるいは地域覇権的な論理として、多彩なインド像を描き出してきた。世界に散在するインド移民コミュニティからナショナリズムの行方を展望する。


ウズベキスタン<民族・歴史・国家> 高橋 巌根 創土社
2005年5月のアイディジャン事件は世界に衝撃を与えた。いま、この国で何が起こっているのか。ソ連時代以降のウズベキスタンの民族と国家の形成過程をたどる。国家の「正統性」を検討し、ナショナリズムの特質を解明する。



倫理としてのナショナリズム<グローバリズムの虚無を超えて> 佐伯 啓思 NTT出版
今日の社会にとって最も枢要なテーマといってよい、「グローバル市場」「国家」「自由」「倫理」を主題とした論文を集成。グローバル市場と国家の役割を相関的に捉え、またリベラリズムとナショナリズムを結び合わせる試み


グローバル・ガバナンスの時代へ<ナショナリズムを超えて> 碓井 敏正 大月書店 2004
覇権的国家・企業が主導し進展するグローバル化。それに対抗して芽生える新たな市民社会の形成を展望する中で、配分的正義にもとづくグローバル・ガバナンス(地球全体の連帯した取り組み)の実現をめざす運動課題を提示する。



帝国的ナショナリズム<日本とアメリカの変容> 大沢 真幸 青土社 2004
超国家的「帝国」を担いながら、偏狭なナショナリズムに陥るアメリカ。「9.11」前夜の滞米経験をふまえ、その変貌のメカニズムを摘出し、同じ病理を別の形で抱える日本社会の危機と未来を展望する。


分断されるアメリカ サミュエル・ハンチントン,鈴木 主税 集英社 2004
「アメリカの世紀」は終焉を迎える時がきたのか? 超大国が直面する分断の危機。針路は世界主義か、帝国への道か、それともナショナリズム? アメリカ人のアイデンティティの問題を正面から取り上げ、明快な指針を提示する。



OD>日本ナショナリズムの前夜 安丸良夫(1934−) 朝日新聞社



日本論 姜 尚中,佐高 信 毎日新聞社 2004
在日という立場からナショナリズムを鋭く批判してきた政治思想史家と、会社社会、日本の病理をえぐってきた評論家が、日本を論じ、日本を変える白熱の討議。国を超える新たな「公」へ!



反日ナショナリズムを超えて<韓国人の反日感情を読み解く> 朴 裕河,安 宇植 河出書房新社
なぜ日本を憎悪し続けるのか? 民族意識、歴史観、マスメディア…様々な言説や誤解を多角的に検証し、日本を敵視する韓国のナショナリズムの根底にあるものを冷静に分析する。


在日ふたつの「祖国」への思い 姜 尚中 講談社
 最も近く遠い隣国!相互理解の入門書!日朝の歴史100年 孤独な時の扉を恋郷者が開く!!占領と分断、背き合い生きた列島と半島の人々の恩讐の声を掬(すく)い希望を紡ぐ情と理とは!?朝鮮半島の100年は、余りにも悲惨な出来事の連続だった。そして東北アジアは、憎しみと対立、侮蔑と反発に覆われ、幾重にも引き裂かれてきた地域である。この地域には、慟哭と痛恨の歴史が刻み込まれているのである。再び、それを繰り返してはならない。(中略)朝鮮半島と日本というふたつの「祖国」がその偏狭なナショナリズムの殻を打ち破り、地域により開

目次
●亡国の民、保護条約締結100年 / ●「大東亜戦争」が残した遺産 / ●朝鮮戦争、憎しみの「殺し合い」 / ●「殺し合い」の年に生まれて / ●日韓条約、遠い接近から40年 / ●北朝鮮の国際的な孤立化 / ●日朝平壌宣言の問題とその克服 / ●韓国の太陽政策と民主的革命 / ●拉致問題解決のシナリオ / ●南北統一への「長い道のり」 /


戦乱下の開発政策 世界銀行,田村 勝省 シュプリンガー・フェアラーク東京
本書は内戦が開発プロセスにもたらす悲惨な結末を検証することにより,次の3点を指摘する.内戦の開戦あるいは終戦を決断する立場にある人々が考慮していない悪い波及効果.内戦のリスクは経済的な安定性など国の特性に応じて大きく異なる点.グローバルな内戦発生率を削減するために実施可能な国際的措置を検討し,行動のための実際的な政策課題の提案.本書は開発と内戦はまったく別問題とまだ考えている国際社会の人々に対する警鐘となるだけでなく,研究者,学者,内戦や内戦終結後の問題に関心をもっている一般読者にとっても興味深いものであろ


概観 / / 勝敗が決定するまで戦わせておくのか? / 先祖代々の憎悪についてはどうしたらよいか? / 内戦の罠 / グローバルな内戦発生率の上昇傾向 / どうしようもないのか? / 第T部  略奪を命じる:内戦はなぜ問題なのか / / 開発の後戻りを意味する内戦 / 勝敗が決するまで戦わせておいていいのか? / 第U部  内戦はなぜ発生するのか? / / なぜ内戦に陥りやすいのか? / 内戦はなぜこんなに一般的なのか? / 第V部  平和のための政策 / / 何がどこでうまくいくか? / 国際行動のための課題 / 補遺1 推計方法とデータ / / データと


現代世界とさまざまなナショナリズム ラウル・ジラルデ,中谷 猛,川上 勉,長谷川 一年 晃洋書房 2004
世界の事例をふまえ、伝統・世代・記憶・アイデンティティの問題をも分析しつつ、ナショナリズムをどのような基準で分類・整理しうるのかという「類型学」を試み、この概念に秩序と明確さをもたらす試み。


ナショナリズムを越えて<旧ユーゴスラビア紛争下におけるフェミニストNGOの経験から> 江口 昌樹 白沢社 2004
旧ユーゴ紛争下で民族や宗教の違いを越えて女性の戦争被害者を支援したフェミニストNGOがあった。「民族紛争」の実態は、暴力化するナショナリズムではなかったのか。NGOの活動から、ナショナリズム克服の可能性を探る。





2.日本、アジア、ヨーロッパ、世界の歴史に関して

戦後ヨーロッパの国家とナショナリズム マルコム・アンダーソン,土倉 莞爾,古田 雅雄 ナカニシヤ出版 2004
グローバル化時代における様々なナショナリズムのあり方とは。マイノリティー、ヨーロッパ統合とグローバル化、移民、民主主義など、現在直面している諸問題から新たなナショナリズム論を展開する。

不思議の国ベラルーシ<ナショナリズムから遠く離れて>
服部 倫卓 岩波書店 2004
ヨーロッパの中心にある不思議な国、ベラルーシ。波乱万丈の歴史に彩られながら民族主義を公式に否定し、その一方で寛容の伝統で知られている。この国の行く末とともに民族とは、国家とは何なのかを問い掛ける。


平凡社新書 日本の文化ナショナリズム 303
鈴木 貞美 平凡社
「国語」を制定し「日本文学」という伝統を作り出し、「国民文化」の創造に乗り出した明治日本。しかしその歩みは、思いのほかジグザグだった。錯綜する価値の間を行き来した日本の文化ナショナリズム。その道をたどる。


講談社学術文庫 再軍備とナショナリズム 戦後日本の防衛観 1738 大岳 秀夫 講談社


ナショナリズム<その神話と論理> 橋川 文三 紀伊國屋書店


中村屋のボース<インド独立運動と近代日本のアジア主義> 中島 岳志 白水社 、2005
1915年日本に亡命したインド独立の闘士ボース。新宿中村屋に身を隠し、極東の地からインド独立を画策する。アジア主義と日本帝国主義の狭間で引き裂かれた懊悩の生涯。「大東亜戦争」の意味とナショナリズムの功罪を描く。


ナショナリズムと歴史論争<山路愛山とその時代>伊藤 雄志 風間書房
明治大正時代の史論家でありジャーナリストであった山路愛山の生涯と思想を検討。戦前の日本の自由主義思想家のひとりとして、また、
自国中心史観に対抗してマイノリティを重視した社会史研究の先駆者として取り上げる。


漢字圏の近代<ことばと国家> 村田 雄二郎,C・ラマール 東京大学出版会 
「国語」の成立は近代の国家形成やナショナリズムと切り離して考えることはできない。言語とナショナリズムが織りなす「近代」を中国、台湾、朝鮮/韓国、ベトナム、日本の比較から解明。東京大学での講義をもとに編集。


男のイメージ<男性性の創造と近代社会> ジョージ・L.モッセ,細谷 実,小玉 亮子,海妻 径子 作品社
騎士道、ギリシア礼讃から近代体操の発明、ユダヤ人・同性愛者迫害を経て、第二次世界大戦後の大衆文化へ。近代社会の成立から20世紀末までを射程に、ナショナリズムの主要素としての「男らしさ」のイデオロギーを解明する。


占領と平和<〈戦後〉という経験> 道場 親信 青土社
「菊と刀」の抜本的読みなおしなど、日米合作の占領が作り上げた東アジア冷戦体制とナショナリズムを再審にかけ、反戦平和運動の実践と思想のうちに豊饒な抵抗の歴史を見出す、新たな戦後史研究。『現代思想』等に大幅加筆。


戦後日本人の意識構造<歴史的アプローチ> 須崎 慎一 梓出版社
著者による論文「対米従属と保守思想・ナショナリズム」をはじめとし、神戸大学国際文化学部日本文化論大講座で、著者が指導した学生の卒業論文を収める。日本人の戦争観・平和観、安全保障・国際貢献観などをテーマとする。


ナショナリズムとヨーロッパ ヘルマン・ヘラー,大野 達司,細井 保 風行社
ナショナリズムに関連した「社会主義と国民」「ヨーロッパとファシズム」を翻訳。国家論のエッセンスを示す事典の一項目として執筆された「社会と国家」もあわせて収録する。


メキシコ 民族の誇りと闘い<多文化社会のナショナリズム形成史> 山崎 眞次 新評論
統合のイデオロギーに抗い、多様なルーツを個々に希求してきたメキシコの人々。民族意識や歴史観をめぐるメキシコ史上シンボリックな事件・事象を軸に、メキシコ・ナショナリズム形成のダイナミズムを捉えようと試みる。


講座 戦争と現代 ナショナリズムと戦争 4 後藤 道夫 大月書店 2004
ナショナリズムと帝国主義の関係は、親和的なのか、対抗的なのか。日本におけるこれまでの「ナショナリズムと戦争」理解とはことなった方向での新たな問題提起を行う。


日本映画史叢書 日本映画とナショナリズム 1931−1945 1 岩本 憲児 森話社 2004
ナショナリズムが高揚し軍国主義へと傾斜していった時代、権力からの要請に直面した映画の協力やためらい、あるいは逸脱とは。テーマ別に読む日本映画史。「戦争とプロパガンダ」をめぐる論考を収める。


漱石の時代<天皇制下の明治の精神> 林 順治 彩流社 2004
暗雲立ちこめる万世一系の神話。
開国とナショナリズム、近代化と前近代の対立葛藤に忍びよる天皇の影。悪戦苦闘する明治人の心は? 近藤勇から「心」まで、天皇制下の明治の精神を問う。


叢書・比較教育社会史 
ネイションとナショナリズムの教育社会史 望田 幸男 昭和堂 2004
ナショナリズムの形成は教育を抜きに語ることはできない。近代教育とネイションの関係を縦糸に、近現代ドイツ、マイノリティ教育、歴史教育を横糸に編んだ論文集。


評伝 北一輝 中国ナショナリズムのただなかへ 3 松本 健一 岩波書店 2004



マックス・ヴェーバーとポーランド問題<ヴィルヘルム期ドイツ・ナショナリズム研究序説> 今野 元 東京大学出版会 2003
ドイツ帝国最大の問題のひとつであるポーランド問題についてヴェーバーはいかに関わったのか。ポーランド農業労働者排除を唱導した前半生と、「ロシアの脅威」への対抗を重視した後半生に焦点を当て、ドイツ・ナショナリズムの史的展開を跡付ける。

講談社選書メチエ 
文明史のなかの明治憲法 この国のかたちと西洋体験 286 滝井 一博 講談社 2003
国の内外で識者から迎え入れられた明治憲法。ウエスタンインパクトとナショナリズムの19世紀、木戸、大久保、伊藤、山県らが西洋体験をもとに描いた「この国のかたち」とは? 日本型立憲国家が誕生するまでのドラマを描く。