第2回「あり方懇」の報告(倉持教員組合委員長の報告)

 

 昨日(1024)、第2回「あり方懇」が大会議室で開かれた。教員組合の代表として傍聴したので、その様子を簡単に報告したい。わたしの主観も入っているので必ずしも正確ではないかもしれないが、ある程度の雰囲気を伝えられるのではないかと思う。

前半は、学長はじめ各学部長、研究所長から大学と各部局の設置趣旨、教育研究の特色、今後の目指す方向などについて説明があった。後半は「あり方懇」委員(以下、委員)が随時、これに質問とコメントを述べた。質問には学長が主として答えた。

 ここでは質疑応答を順次紹介するというのではなく、委員の発言から浮かび上がった「あり方懇」委員のスタンスの特徴について指摘だけしておきたい。

 まず印象として、かなり挑戦的な発言が多かったということである。学長や各部局長が本学の誇るべき長所として説明したいくつかの点が、ばっさりと否定された。例えば、質問の冒頭で橋爪委員は、本学の少人数教育が長所として説明されたのに対して「教員数が学生数に対して多すぎるのではないか、このために経費がかかりすぎて財務状況の悪化を招いているのではないか」という趣旨の発言をして、まるでそんなことは長所といえないといわんばかりであった。また理学部や総合理学研究科ではバイオなど先端的な研究がされているという説明に対して塩谷委員は、「市大をハーバードやケンブリッジ、東大と比べるのはどうか。リサーチユニバーシティとは違うシティユニバーシティの視点が必要ではないか。」と大学の研究水準の高さなどは問題にならないという感じであった。

 以上のような挑発的な発言にすでに示されているが、「あり方懇」委員のスタンスの特徴はつぎのようなものであると思われる。

 第一に、大学の財務状況の問題を強調することである。冒頭の橋爪発言もそうであったが、森谷委員は大学自体の収支バランスのデータを見て、「病院を除く大学予算について、大雑把に言って30億の収入に対して120億の支出で、毎年90億の赤字を出している、大学に関わる公債残高(病院も含む)が1000億で、償還のために毎年80億が支出されている。これは異常だ、道路公団と同じだ。いくら立派な教育・研究をしているからと主張してもこれでは市民に納得してもらえない。」と大学の財務状況が危機的だと指摘した(データの数値について私には手元に資料がないので確認できないが、)。教育・研究の内容、水準がどうであれ、経営的な問題がより重要であるということであろう。

 第ニに、地域貢献を重視しているということである。この点について医学部を除いて地域貢献について評価は低かった。前半の学長、各部局長の説明においても地域貢献に関して言及されたが、改めてより具体的な説明を求められた。しかし、結局、最終的な評価は、「その程度のことはどこの大学でもやっていることである。」(橋爪発言)というものであった。かといって委員から具体的にどのような地域貢献が望ましいかという発言はとくになかった。

 橋爪委員長が最後に、「われわれは市長から市立大学が市として存立する意義があるかどうかということで諮問されている。医学部はそもそも地域医療という形で地域に密着しているので地域での存在価値があるが、他の学部は必ずどこの地域にも必要だという性格のものではない。もしこれらに存在価値があるとすれば、まずはこれらのアクティヴィティが高いことであり、しかしそうであったとしても地域社会に貢献していなければならない。また仮にある程度、貢献していたとしてもいまの市大のような収支状況ではとても市民の納得は得られない。」という趣旨の発言をした。要するに、いまのところ医学部以外は存立意義がないという判断のようだ。

 わたしは大学行政についてまったく無知であるからほとんどコメントは出来ないが、一番の問題は大学財政の問題にあるようである。そこで、まずどうして大学の財務状況がこれほどまでに悪化してしまったのかきちんとその原因を追求すべきであろう。大学自体の側にどれくらいその原因があるといえるのだろうか。それがはっきりしないで、市から一方的に大学が悪いようにいわれるのは納得できない。

また森谷委員がいまの大学財務状況は異常事態だと断言したが、本当に異常なのかかどうか、異常かどうかを判断する基準はどういうものなのか、きちんと分析しないと、危機ムードだけで事が進められてしまう危険性がある。最近の風潮で、大学も他の営利企業同様に大学自身で収支バランスをとらねばならないというような議論があり、これには危惧を覚えるが、いまさらこれに文句をいってもしょうがないような気がするので、どの程度までなら市が財政負担できるのか、このへんをみきわめる必要がある。このためには行政や財政専門の教員などの助けを借りて、市の財政と大学財政についてきちんと分析すべきではないだろうか。

この「あり方懇」のスタンスからするとそうとうドラスティックな答申が出てくるという危機感をもった。