2002111日 評議会で出された学長声明(入手した文書には「案」となっている。評議会で発言したことと文書との関係は当事者でないと明確ではない)によれば、冒頭

要旨 平成141016日評議会で発生した異常事態の再発防止を事務局長に要請するとともに、その発生を余儀なくした原因を明らかにし、大学改革の礎とします」とある。

 

「異常事態」の内容が学則等本学基本規程における評議会権限や職務分掌規則に違反した行為であることを明確にしていない。この文章は評議会と学長の権威が脅かされたこと、前代未聞の出来事であることを不問に付したものとして、ゆゆしいものである。深刻な問題を孕んだ文章といわざるを得ない。

 

背景要因」では、「本学の将来構想委員会は残念ながら答申を繰り返すばかりで、ここ数年を送ってきました」とある。

 

諮問したのは学長だ。学長を支えるのは、設置者権限を振りまわす事務局責任者ではないのか?

諮問に対して出された答申をどう実現するか、どう予算措置を講じるか、どう評議会で具体的提案をして議決を取り改革していくかは、学長および事務局長の責任である。その意味では、学長と事務局の無為を追認した文章となっている。したがって、論理的内在的には、この文章はこれまでの学長と事務局長の責任を問うものである。ところが、文章の上では、将来構想委員会の責任を問題にしている。この数年の将来構想委員会の委員はどのように考えるか? はたしてこのような論理は通用するのだろうか?

無為の責任を転嫁された将来構想委員会の責任者として、伝えられるところでは、将来構想委員長がこの部分に怒りを表明し、退場したという。評議員の中に現在と過去の将来構想委員はたくさんいたはずだが、その人々はどのような行動をとったのか?

学長は声明文で、続けて、「全学をあげて大学改革に取り組めるよう各評議員は一学部代表という立場を乗り越えて大所高所から大学運営を担ってくださるよう」注意を促している。この文句は、総務部長が評議会を一方的に退席した際に発したと伝えられる言葉と同じだ。部下全員を引き連れて退場するという以上、このような捨て台詞を発したことは確実だろう。つまり、この主張は総務部長の主張だ。それを学長はそのまま自分の声明にとりこんでいる。

だが、こんなことを評議員は認めるのか? これでは各評議員は全学的立場になってこなかったようである。これは評議員に対する侮辱となるのではないか?

そもそも、各学部の教授会が提起した諸問題を全学的見地から十分に咀嚼し検討することは、なにも各学部だけにかかわることではない。各学部・研究所等から大学は構成されており、全学的な見地はそのような構成学部・研究所の意見を汲み上げ批判的創造的に検討し、建設的政策に練り上げなければならない。その意味で全学的問題・課題として提起された問題をクリアしなければならない。全学的見地の評議会の任務はそこにあるだろう。

今回の機構改革が教養部廃止や学部事務室廃止という教学体制への重大な変更を含んでいるのだが、それは十分に検討されているとはいいがたい。年度末、入試繁忙期に、教職員の過労死や拙速主義の必然的結果としてのその他の大変な問題が起きなければいいのだが。商学部教授会見解や教員組合の意見書などによって、今回の事務機構改革案に関わる問題点は天下周知である。それを無視して、強引に突き進んだ場合、その推進者の責任が問われることになろう。

学長の声明(案)では、「平成14101日と16日の両評議会で機構改革についての意見はほぼ出尽くし」たとしている。その上で、

「第1に今回の機構改革は推進し、来るべき大学改革に結び付けます」という。「来るべき大学改革」のあり方をすでに先取りするかのような内容が「今回の機構改革」ではないのか、その点が評議会ではきちんと議論されたのかどうか?いかなる形で議論は集約され、議事録にまとめられたのか?

「第2に学生サービスの低下を招かないよう、残された時間を従前に活用し教学組織との調整を行うよう事務局長に要請します」と。教員の研究教育条件の問題、一般の事務組織のオーバーワークなど、欠落している重大問題が多いように感じられる。

「第3に副学長2名の役割、選考方法などについて検討を進めます」とのことである。すでに前学長時代に将来構想委員会などで提案されある程度検討された改革を、やっと検討し始めるということのようである。つまり、手順を踏んで時間をかけてやるべきことをこれまでやってこなかったのは、(学長と[1]事務局責任者(事務局長と総務部長)ということになろう。設置者「権限」だけは主張する事務局責任者は都合の悪いこの側面は見ようとしない。

こうした歴史的問題は不問に付して、突然、強行的に事務機構改革だけをやってしまおうとするところに相当の無理がある。商学部教授会見解や教員組合の意見書はこの点を問題にしていると考える。

学長文書は、随所に事務局長に「要請する[2]」という言葉を使っている。この言葉自体、事務分掌規則上の法的規定(学長が事務局長に命じる立場にあるとの規定)とは違った権限関係、大学の教学サイドが歴史的に置かれてきた実際の立場を示唆するものである。評議会開催中に事務局責任者の指令で事務局関係者が総退場するという大学の教学側無視・規律違反・法秩序違反の現象は、その露骨な表面化に過ぎないだろう。



[1] なぜ括弧をつけたかといえば、事務局専制体制=事務局責任(一方における能動的責任、他方における無為の責任)を明確化するためである。それが、今回の能動的な「総退場」で象徴的に示された。

[2] よう‐せい【要請】#強く請こいもとめること。必要とすること。「時局の―に応える」

[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]

 

こ・う【乞う・請う】#神仏・主君・親などに対して人・臣下・子などが祈り、また、たのみ求める。祈る。お願いする万葉集3「木綿ゆうだたみ手にとりもちてかくだにもわれは―・ひなむ君にあはじかも」。「出馬を―・う」「許しを―・う」「―・う、御期待」

人に対し物を与えよと求める。欲し望む。所望する。古事記中「前妻こなみが肴な―・はさば」。万葉集3「潮干なば玉藻かりつめ家の妹が浜づと―・はば何を示さむ」。「家宝を―・いうける」[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]