6月30日 教員組合ウィークリー(6月30日)が届けられた。実際に雇用契約書(Pdf版ウィークリーの末尾参照)を示された教員の投稿は貴重である。

サイン(任期制への同意)を求められたこの教員の文章は、理路整然としており、同じような立場にある同僚に大きな勇気を与えると考える。

組合の立場は、昇任を理由とする任期制への同意強制は不法だというものだが、この教員は、公務員として人間としての中間管理職・当局への怒りを表明している。

「上からの命令」を理由とした中間管理職の行動に対する怒りである。「命令したもの」(理事長)、「それに従ったもの」(経営責任者・中間管理職)、双方への抗議であり、道理に基づく理性的批判である。

 

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横浜市立大学教員組合週報
                            
組合ウィークリー
                                                                    2006.6.30
もくじ
 緊急メール
 昇進手続きに関する一組合員からの報告
 集会「話そう!市大改革!〜学生・教員ディスカッション〜」に参加を
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緊急メール
組合員の皆様へ緊急連絡(629日メールで発送分、再録)

教授等への昇任人事問題について新たな動きがありましたので緊急にお知らせ致します。

6月27日、昇進資格付与者に対し、人事当局より昇進にあたって新規の雇用契約書
(5年任期制)が示され、6月30日までに契約書にサインするよう求められました。

当局は、団体交渉の場で、任期制を直ちに受諾しない場合でも、昇進資格を喪失するよ

うなことはなく、昇進資格は継続すると言明しています。昇進対象になっている方は、

事態を冷静に受け止め、慎重に対応を熟考されるようお願い致します。
組合としては、昇進発令にあたり任期制受け入れを強要することは不法であることを再

三指摘してきました。このような強要を撤回させるよう、組合は全力を挙げて当局と交

渉していく方針です。
                            横浜市立大学教員組合
                            執行委員長 岡真人



昇進手続きに関する一組合員からの報告
一組合員から以下の報告がありましたので、お知らせ致します。

教授昇任の際の有期労働契約への同意を求められた件について報告します。
                        一組合員


人事当局から当方の研究室にきて話をしたいとの電話があり、約1時間半後に研究室で 話を聞くと答えた。話し合いは60分をこえた。
まず、「昇任について」の通知(個人宛、6月27日付)および「雇用契約書」(7月1 日付)を示され、署名と捺印を求められた。

当方は、大学の教員等の任期に関する法律の国会審議における文部省高等教育局長の答弁(平成9年5月16日)等の文書を示し、横浜市大の任期制とくに任期契約に同意しないと教授にしないというやり口は、国会答弁に反することを行っているのではないか と質した。人事課長からは、(反するとは認めないものの)反していないという積極的な説明・発言は何もなかった。


「普通にやっていれば再任される」と当局は説明してきたが、今日においてもそのようなシステムは出来上がっていない。にもかかわらず、そのような説明をして、あるいは そのような説明を改めないままに任期契約への同意を求めることは許し難いことであると、当方は主張した。当方は、雇用契約書に記されている「自己都合による退職は少なくとも6ヶ月前までに
申し出る」という定めが、教員にとっていかに不利であるかを説明した。

さらに、次のことを指摘した。労基法による有期労働契約の場合、労働者側が雇用期間満了前に転職・辞職すると、使用者側から損害賠償を請求されることがある。そのようなことはしない旨が契約書に書いてあれば別だがそうではないので、この契約書では損害賠償を請求されたら支払わなければならないことになる(前記「自己都合による退職は少なくとも6ヶ月前までに申し出る」の定めが、6か月前までに申し出れば損害賠償請求しないということを意味する可能性もあるかもしれないが、不明確である。いずれにせよ、6か月前までに申し出なければ労働者側に損害賠償責任が生ずることは間違いない)。


当方は、人事当局が上記のような説明をきちんとしないで、契約書への署名捺印を求めることは許し難いことであると述べた。生命保険の契約の際、セールスレディーがいい加減な説明をして契約させることが以前社会問題になったが、再任されない場合の損失は、だまされて生命保険を契約する場合とは比べものにならないほど大きなものである。したがって、任期制(=有期労働契約)の危険性、そして「普通にやっていれば再任される」システムが(少なくとも現段階では全く)つくられていないことを充分に説明しなければならないはずである、にもかかわらず、それをしないのであれば、人間としてとうてい許し難いことであり、将来にわたって人間としての責任を追及するつもりであると主張した(法的責任ではないので、時効はない)。

 

公務員の場合、係長から課長になる際に任期がつけられて、「課長失格だからクビだよ」ではおかしいではないか、課長失格なら係長に降格させるのが妥当ではないか、と当方が主張したところ、反論はなかった。


当方は、人事課長に放送大学再任拒否事件と京都大学再生研の再任拒否事件に関する新聞記事のダウンロードしたものを示して、任期制では優秀な教員・目立つ教員が再任拒否される場合が珍しくないこと、そしてそのことが任期制の重大問題のひとつであることを説明した。とくに反論・返答はなかった。

「年俸」の額が具体的に記載されていたので、どのようにして決めたかと尋ねたところ、旧給与表の直近上位に位置づけたとの答えであった。そこで当方は、その額のままその後4年間上がらない(つまり据え置き)ということかと尋ねたら、そうだという答えであった。


そこで当方は、それなら教員評価の結果がよくても悪くても増減なしということになるので、教員評価に関して人事当局が説明してきたことと矛盾するのではないかと主張した。
すると、「まだ制度がちゃんとできていないので」といった趣旨の答えが返ってきた。

当方はそれに対し、再任されなければクビが飛ぶというシステムをやろうというのに、制度ができていないというのは無責任であると主張した。公務員として人間として、なすべきことをしていないのではないかと述べた。
                                  以上です。


「(参考資料)雇用契約書」についてはPDFファイルをご覧下さい。

集会「話そう!市大改革!〜学生・教員ディスカッション〜」に参加を

大学改革問題に取り組んでいる学生の有志団体NOBNetwork of OutBurst)は、下記
のように7日に、大学改革について学生と教員が語り合う集会を企画しています。教
員組合は、これを協賛し、多くの教員に参加を呼びかけます。
学生と市大の問題について語り合う貴重な機会ですので、是非、ご参加ください。

目的
・現在進行中の大学改革や実際の大学生活についての両者の認識を共有する
・どこに自分の意見をぶつけるべきかわからない学生のための場を提供する
・学生・教員・職員による三者シンポジウムへの第一歩とする

概要
 位置づけ:NOB学生の為のイベント第3弾
 主催:NOB Network of OutBurst 横浜市立大学有志学生組織
 協賛:教員組合
 協力:市大新聞委員会
 日程:7月7日
 時間:18:0020:00
 場所:横浜市立大学 金沢八景キャンパス いちょうの館

プログラム(案)
 18:00 主催者挨拶(NOB)
 18:10 教員組合のプレゼン(岡委員長)
 18:30 グループディスカッションに向けた説明
 18:40 グループディスカッション
 19:25 休憩
 19:30 全体でまとめに入る
 19:50 最後に(教員組合とNOBから一言ずつ)
 20:00 終了

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教員組合に皆様の声をお寄せください
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発行 横浜市立大学教員組合執行委員会
 〒236-0027 横浜市金沢区瀬戸22番2号
 Tel 045-787-2320   Fax 045-787-2320
 E-mail : kumiai@yokohama-cu.ac.jp
組合HPhttp://homepage3.nifty.com/ycukumiai/index.htm
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6月29日 教員組合委員長からの「緊急報告」を受け取った。「茶番劇はいつまで続くのか」と怒りの声がウィークリーに載せられていたが、いよいよ宣戦布告、というところか? 示されたという雇用契約書は、労使の誠実な交渉と合意に基づくものか? 「5年の任期」の継続更新(ないし打ち切り)に関する明確な条件の提示はあるのか?示すべき諸規定/諸条件を明確な形で提示しないで、5年任期制の契約にサインを求めるという行為自体、不当労働行為ではないのか?

組合サイドは、公立大学時代以来の教員に関しては少なくとも不利益変更に当たり、違法なものと主張していることではないか?(Cf.教員組合ウィークリー619

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組合員の皆様へ緊急連絡

教授等への昇任人事問題について新たな動きが
ありましたので緊急にお知らせ致します。
6月27日、昇進資格付与者に対し、人事当局より
昇進にあたって新規の雇用契約書(5年任期制)
示され、6月30日までに契約書にサインするよう
求められました。

当局は、団体交渉の場で、任期制を直ちに受諾しない
場合でも、昇進資格を喪失するようなことはなく、
昇進資格は継続すると言明しています。
昇進対象になっている方は、事態を冷静に受け止め、
慎重に対応を熟考されるるようお願い致します。

組合としては、昇進発令にあたり任期制受け入れを
強要することは不法であることを再三指摘してきました。
このような強要を撤回させるよう、組合は全力を挙げて
当局と交渉していく方針です。


横浜市立大学教員組合
執行委員長 岡真人

 

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6月23日 「全国国公私立大学の事件情報」(本日付)によれば、九州大学でも、若手研究者の任期制一律適用が問題となっている。

任期制は、使いようによっては若手研究者の従属度を高めると思われる。それを回避するための制度設計がないと、大学の研究職は魅力あるものとはならない[1]

優秀な人材が集まり、研究教育の領域で自由に切磋琢磨する制度設計でないとわが国の研究は衰退するであろう。

 

本学の場合、一律に全員任期制を導入しようというとんでもないものである。それがまかり通れば、いつまでたっても、身分不安定ということになる。

目下進行している各大学の任期制をめぐる制度設計(限定的なもの・・・しかし、大学教員任期法の立法趣旨に一定程度合致したもの)を見るに付け、本学の場合、行政当局がたくさんの教授会等の反対(決議や意見表明)を押し切って大学に押し付けた制度設計(就業規則)だということはますます明確になってきているといえるだろう。

法理に基づいた訂正の方向が検討されているかどうか? 

 

 

 

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6月21日 国立大学は法人化によって、学長の権限が圧倒的に強くなり、その学長の見識しだいでは、とんでもないことになる、というひとつの事例が、任期制に関する宮崎大学の問題だろう。しかし、その場合にでさえ、全員任期制の導入は、あくまでも新規採用からである。

 

------- 「全国国公私立大学の事件情報」より------

宮崎大学における教員任期制問題

新首都圏ネットワーク
 ●宮崎大学における教員任期制問題

宮崎大学における教員任期制問題
会員の皆さんへ
宮崎大学・木花地区過半数代表者 橋本 修輔

 
 現在、宮崎大学(住吉昭信学長:旧宮崎医科大学附属病院長)では、学長の教員任期制導入に関する異常な言動が問題になっています。
 宮崎大学では、任期制については人事制度等委員会(委員長:副学長)で検討され、昨年11月には同委員会の任期制度検討WGが検討結果(WG答申)を委員長に提出し、現在、それについて検討中です。
      (医学部・病院地区は、既に、任期制が導入されています。)
WG答申の主な内容》
 (1)新規採用者から全学的に全員に直ちに任期制を導入することは難しい状況にある。
 (2)当面は、流動型、研究助手型及びプロジェクト型の3タイプの中から、

 各部局等がふさわしい任期制の導入を図ることとする。
 然るに、委員長は、その答申を委員会で審議する前に、独断で、答申内容について役員会に意見伺いを行いました。その後、役員会で答申内容を検討し、本年2月23日開催の役員会は、別記の「教員任期制に対する宮崎大学長メッセージ」を重く受け止め、人事制度等委員会委員長宛に、次のような検討要請を行いました。
《役員会からの検討要請事項》
 人事制度等委員会は新規採用者及び学長管理定員を活用した教員採用にテニュア・トラックを含めた任期制を導入する方向で再検討すべきである。

 このように委員長が委員会で審議する前に、独断で役員会にお伺いする行為、

 また、それを受け、役員会が委員会に対し、委員会での検討の結論を決めるような内容の要請をするなど、民主的な議論を保障しない学長、副学長、役員会のファッショ的行動は、とても容認できるものではありません。
 その後、各学部教授会で役員会の態度が問題となり、この間、人事制度等委員会は開かれませんでしたが、近く、委員会でようやくWG答申について議論が始まるようです。
 しかしながら、学長は、人事制度委員会での任期制に関する結論を待たず、3月と4月、2ケ所の学内共同施設(センター)の教員人事を任期付き採用で強行しました。その際、本来、採用決定(内定)の前に、「宮崎大学任期付き教員の雇用期間に関する規程」を改正しなければならないのに、それを辞令交付直前にしました。
 これは、遅くとも、採用選考(内定決定時)で、応募者に予め、労働条件を明示しなければならないとする労働基準法第15条及び大学教員等任期法第5条に違反したことなります。
 過半数代表者は学長に対して、この法律違反の事実を認め、道義的責任をとる意味で全職員に陳謝するよう伝えましたが、現在まで無視しています。
 また、学長は、各部局等へ視察の際、教職員との意見交換会等の公的な場で、任期制に関連して、以下のような問題発言をしています。

(1)人件費の効率的な活用には任期制が必要。
(2)私の意見に反対なら、大学を出ていってくれ。
(3)組織の方針の組織とは、法人、もっと言えば僕、学長のことだ。

 最近、教職員の中から、このような学長(役員会)の下では、「とてもついていけない、やってられない」という声や「学長を解任しよう」との意見も出てきています。

 以下に、前述した2月23日開催の宮崎大学役員会が重く受け止め、任期制導入の根拠とした「教員任期制に対する宮崎大学長メッセージ」を載せます。
 私は、重く受け止める内容ではなく、薄っぺらな品位に欠けた内容と思いますが、いかがでしょうか。
 皆さんからの意見をお待ちしています。

……

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では本学は?

 

本学の全員任期制の導入・制度設計が、いかに問題であるかは、だれにも明確であろう。

現在問題になっている昇任・昇格者に関していえば、すくなくとも準教授から教授への昇格・昇任の場合、本学に10年以上勤務した教員であり、その身分(的保障)が継承されなければならないことはいうまでもない。

こうした合理的法解釈さえ、昨日の組合員の投稿「茶番劇はいつまで続くのか」(週報619)が物語るように、きちんとしてこなかった、問題を引きずったままにしている。独立した法人経営者なら、これまでに指摘された数々の法的問題をきちんと自立的独立的に考え、論理明快に全学的に周知徹底すべきである。そして、就業規則や学則を法律に則って改定すべきであろう。

 

新規採用に関しても、全員一律の適用が問題であることは、言うまでもない。宮崎大学の場合も、大学内において独立的自立的な組織は教員組合であり、本来の教授会機能(自立的独立的自治的機能)を果たしている(果たそうとしている)のが教員組合だ、といえるであろう。

 

また新規採用で仮に任期制を導入するとしても、その期限のない雇用への、定年までの雇用保障について、きちんと制度(条件など)を整備すべきなのである。そうしたことをきちんとやることで、その実現度に応じて、経営サイドへの信頼回復も進むということだろう。

 

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6月20日〔2〕 全国国公私立大学の事件情報」には、北九州大学の「教員評価システム」に関する教員組合アンケート結果が掲載されている。これも重要であり、興味深い。当初から予想されたことではあるが、「結果概要」が示すように、総体として、マイナス評価、否定的評価が高い割合を占めている。

しかも、79.5%の人が、SとAという高い評価を受け、さらに、実質〔研究費増額という実質〕においては、評価の結果、基準研究費額から増額を受けたものが76.5%という高率において、なのである。マイナス評価された人びとが、数は少ないとはいえいるわけで、そのマイナス評価の基準ははたして妥当だったのか、「弱いものいじめ」ではなかったのかどうか、気になる。常にその落とし穴があるであろう。各種項目で「無回答」というのが結構あり、そこには暗黙の批判も込められているように思われる。

本学の教員からすれば、基準研究費額に驚き、その増額に驚き、そしてなお全体として、評価システムに対してはマイナス評価だということに驚く、というところ。

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北九州市立大学教職員組合、 「教員評価制度に関するアンケート調査」

北九州市立大学教職員組合
 ● 「教員評価制度に関するアンケート調査」

「教員評価制度に関するアンケート調査」

  白紙(質問票)  
  結果 (学部別回答数と比率学部別グラフランク別数ランク別グラフ結果概要

 

 

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6月20日〔1〕 教員組合ニュース,それへの一組合員の投稿記事が、現在の本学の問題状況、「改革」の現段階を示している。すでに「全国国公私立大学の事件情報」にも掲載されているが、念のためここにもコピーしておこう。

         一組合員の投稿「茶番劇はいつまで続くのか」で重要な論点は、「当局による基準作成作業が無理だと判明するや教員に作業を投げ出した」という点であろう。

 

「作業を投げ出し」、基準を作成させて、教員が作ったという形式を整え、経営サイドから全教員に評価を行うことになる。

投稿が正確に問題点を指摘しているように、「作業」を投げ出したのであって、その作業の結果〔基準〕が、経営サイドの意向に合致しなければ、合致するまで、いかようにでも操作できるという可能性でもあろう。

 

とすれば、どこに大学の自律・自治はあるのか? 大学の教学の自立性は、どうなるか?

策定された基準〔内容〕が、今後問題となろう。

 

その評価においては、最終的に、次のような問題が改めて問われることになろう。

経営サイドは誰が選び任命したのか?

基準策定作業を行う教員メンバー〔コース長その他〕は、だれが選任したのか?

誰が、どのような手続でオーソライズしたのか?

自治・自律の要素はどこにあるのか?

以 上のような問題群が、繰り返し浮かび上がってこよう。教授会が徹底的に排除されている現状の問題ということでもあろう。

 

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横浜市立大学教員組合週報

組合ウィークリー

2006.6.19

  もくじ

任期制への同意如何は、昇進資格になんら関係はありません

 6月定例執行委員会概要

 団体交渉の要求事項に関する大学当局の再回答が手交されました

 投稿「茶番劇はいつまで続くのか」


任期制への同意如何は、昇進資格になんら関係はありません

現在昇進人事が進行中であり、今後も昇進人事が進められていくとの情報が入っています。
昇進人事に関わり大学当局は、団体交渉をはじめとした公的な場で、昇進対象者としての推薦から昇進資格認定までの過程では、当該教員が任期制に同意するか否かは問題としないこと、その後の昇進発令の手続き段階で任期制への同意を求めることを表明しています。したがって、少なくとも昇進資格認定の段階までは、任期制への同意如何は全く影響を及ぼすものではありません。そして、任期制への同意如何を尋ねられることもないはずです(いや、あってはなりません)。
さらに、任期制への同意を昇進発令の条件とすることは違法行為であり、この問題については現在交渉中で、労使間においてはなお未解決な問題です。
こうした問題に関してはこれまで随時お知らせしており、組合員の皆様におかれましては十分にご認識のこととは存じますが、重要な問題ですので、ここに再確認させていただきます。


 

6月定例執行委員会概要

615日(木)に6月の定例執行委員会が開催されました。以下はその議事概要です。

1.      当局との折衝経過 すでに組合ウィークリー等で周知しているとおり、昇進問題、評価制度、就業規則改正についての手続き上の問題、今年度の賃金凍結、入試手当、など課題は山積しているが、推移を注意深く見守り適切な対応をとる必要があることを確認した。

2.      学生有志団体主催の集会への協賛について学生有志団体の「NOB」が77日(金)学内で集会を計画しており、教員組合に対し何らかの協力を求められた。教員としてこの問題をどのように受け止めているか、教員組合の立場から知らせ学生からも学ぶ機会としたい。本組合としては「協賛」という形で、岡委員長が参加することを承認した。。

3.      今後の予定

o        代議員会 629日(木) 1800 小会議室

o        総会   713日(木) 1800 小会議室

o        選挙公示 714日(金)

o        開票   727日(木) 1200 組合会議室

o        引継執行委員会 同日   18:00〜 

4.      次期執行委員候補・選挙管理候補について確認した。

5.      「組合ウィークリー」について紙やインクなど資源節約の観点から、今後「組合ウィークリー」は原則としてメールでの配信とすることを確認した。希望者には従来どおり配布する。

6.      議案書の作成について分担を確認した


 

団体交渉の要求事項に関する大学当局の再回答が手交されました

5月22日付組合ウィークリーでお知らせしておりますように、4月25日におこなわれた団体交渉において積み残しになった項目につき、その後大学当局より文書での回答がありました。しかしその回答内容には不適切・不十分な点が多々あり、そのまま承諾できるものではありませんでしたので、当組合は折衝をおこなうとともに、5月22日に再度、「団体交渉の文書回答項目に関する要求書」を提出しました。これに対し、6月9日に当局より再回答文書が手交されました。
当組合としては、この再回答も依然不十分なものであり、諸課題が多く残されたままであると考えていますが、まずは以下のとおり、再回答内容を組合員の皆様にお知らせいたします。
当組合では、この再回答内容の検討を進めるとともに、多くの懸案事項解決に向けて、今後も当局とねばり強く交渉していきます。

団体交渉の文書回答項目に関する要求書

4 25 日に行われた団体交渉において積み残しとなった項目につきまして、その後、文書による回答をお示しいただきました。つきましては、これに関する当組合の見解を以下項目ごとに申し述べますので、再度ご回答いただきますようお願い申し上げます。ご回答は、再度の団体交渉の開催、もしくは文書により、6 月上旬までにお示しいただきますよう要望いたします。


一 現在、大学当局が進めている教員昇任人事および関連事項に関する要求

1.      現在、大学当局が進めている本学教員の昇任人事プロセスは不透明かつ説得力に乏しく、教員間に不安や疑念を引き起こしている。今回は特に昇任候補者の推薦が誰のどのような判断基準に基づいて行われたのかについて明快な説明を求める。さらに、今後どのようなプロセスを経て昇任決定に至るのかについて具体的な説明を求める。

当局側回答 425日団体交渉で回答済み。

組合の見解 425日には、申し入れ書の後の推移を中心とした説明はなされたが、申し入れ書で求めた「昇任候補者の推薦が誰のどのような判断基準に基づいて行われたのかについての明快な説明」は依然として不十分であると考える。より明確で透明性のある説明をするよう努められたい。

当局側再回答 今回の推薦手続きについては、各学部長等の考えに基づき実施され、手続きの詳細について多少異なるところがありました。今後昇任に当たってどのようなルールで進めていくかについては、検討し次回の昇任作業に反映させていきたいと考えています。

2.      今回の大学改革における教員全員任期制の導入は関連法規の条文と付帯決議、法曹界での議論にてらして違法性が極めて強いばかりでなく、関係教員の労働条件の一方的な不利益変更にあたるというのが当教員組合の一貫した基本的見解である。横浜市立大学から公立大学法人への移行に際して、教員の身分は法に基づいて継承されている。この身分継承者が教授等への昇進に際して、すでに獲得している定年までの期間の定めのない雇用保障に関する権利を放棄するよう強制されることは重大な労働条件の不利益変更に当り違法である。したがって、昇任有資格者と認定された者に対して、任期制受け入れの諾否に係らず速やかに昇任の発令をすることを求める。昇任の機会を利用して任期付き雇用契約への同意を強制することは、重大な違法行為であると当組合は考えていることを通告する。

当局側回答 通告なのでコメントはありません。

組合の見解  「重大な違法行為であると当組合は考えていることを通告」したのに対してコメントがないというのであれば、当組合の主張する違法性を認めたと解される。ただちに、昇任人事にあたって任期制受け入れを条件とする方針を撤回したことを文書で確認することを求める。もし、当組合の主張を受け入れず違法性の認識がないというのであれば、当局は合法性の論拠を明確に述べる義務があり、このような回答では団体交渉における誠実交渉義務を果たしているとは言えない。期間の定めのない雇用における昇進の機会がある制度からその可能性がない制度への変更は、重大な労働条件の不利益変更に当たるという組合の再三の指摘に、当局はこれまでなんら明確な反論をしていない。再度の回答を求める。

当局側再回答 教員全員に任期制を導入することは違法性が高いという見解が示されていることは承知しております。しかしながら、市大では法人化にあたって任期制を基本とした制度設計をしており、昇任に際しては新たな雇用契約を前提としていますので、引き続き任期制に同意していただけますよう働きかけてまいります。

3.      任期付の雇用契約を教員が受け入れた場合、どのようなメリットとリスクが生じるかについて、雇用主としての公立大学法人は詳細な説明を行い、労働契約条件を文書で示し、しかるべき考慮・検討時間を保証する必要がある。このプロセスを欠いた労働契約は無効であるというのが当組合の基本的見解である。この立場を踏まえ、次の事項を要求する。

1.      昇任後の賃金、労働条件について文書で明示することを求める。

当局側回答 雇用契約書及び労働条件通知書を示し、雇用契約を結ぶ手続きを行いますので、その際に賃金等について明示されます。

組合の見解 「任期付の雇用契約」を受け入れる以外に昇進はないという提示のしかた自体に問題があると考えているが、さしあたり当該契約について以下の点を求める。
 (i) 雇用契約書及び労働条件通知書の雛形を組合に提示されたい。
 (ii) 今年度の昇任人事における賃金算定基準についての原則ないし考え方を説明していただきたい。

当局側再回答 
(i)
別紙のとおりです。
(ii)
従来の横浜市における昇格手続きを参考にして決定します。

2.      昇任人事に際して昇任候補者に推薦された教員が任期つき労働契約の締結を検討しようとする場合、「再任」の基準・条件が明示されていない状況においては、契約締結の諾否について適切な判断を当人が行うことは困難である。これに関して「普通にやっていれば再任される」という趣旨の発言が以前の当局説明会においてなされたが、「普通」とは具体的に何を意味しているのか曖昧なので具体的で明確な説明を求める。

当局側回答 再任手続きの詳細については、現在検討中ですが、再任は説明会でもお話ししましたが、普通にやっていれば再任されるという考えを基本としております。詳細についてはしかるべき時期になりましたらご説明します。

組合の見解 「具体的で明確な説明を求める」とした当方の要求に答えていない。「しかるべき時期」はすでに法人化をした昨年までに過ぎ去っており、現在再び昇任人事に際して問題になっている。これ以上曖昧なまま引き延ばすような態度は認められない。

当局側再回答 任期制・年俸制・評価制が連動して運用されるよう検討しておりますので、その進捗状況に応じて、できれば年内には基本的な枠組みをお示ししたいと考えております。

 

4.      今回の昇任人事に関する規程および内規は平成171220日施行とされているが、当組合がその存在を確認したのは平成1821日の団交時であり、全文入手にはさらに数日を要した。教員の身分や労働条件に関する重要事項について、当局が当組合に速やかな周知を行わなかったことは労使間の誠実で信義ある関係を損なうもので極めて遺憾である。このような事態の再発防止を強く求めるとともに、今回の昇任人事規程および内規について内容を再検討するための協議を当組合と速やかに行うことを求める。

当局側回答 一般的に施行日と手続き開始時期は、ずれます。なお、学内における情報共有システムについては検討を進めており、夏前にはご説明できるものと考えております。

組合の見解 組合が提起している問題に対する回答になっていない。以下の点を含めて再度の回答を求める。
(a)
 規程第104号「教員昇任規程」(平成171220日施行)の決定は、いつ、どの機関によってなされたのか。
(b)
 各「教員昇任内規」(平成18124日施行)の決定は、いつ、どの機関によってなされたのか。
(c)
 これらの規程がただちに全教員に対して周知されなかったのはなぜか。
(d)
 .昇任人事の推薦を求めた際、推薦者およびそれを補助する教員管理職にこれらの規程は示されたのか。示されたとすれば、その際、これらの規程を他の教員に明らかにしないように指示したのか。指示したとすれば、それはなぜか。
(e)
 これらの規程の決定に当たって、教員組合との協議を経なかったのはなぜか。
(f)
 これらの規程の内容を再検討するための協議を当組合と速やかに行う用意があるか。

当局側再回答 
a)「教員昇任規程」は1220日の教員人事委員会で決定しております。
b)「教員昇任内規」は124日の教員人事委員会で決定しております。
c)一般的に推薦を必要とする昇任については、必ずしも全体に周知した上で実施しなければならないものとは思われませんが、次回以降の検討課題とさせていただきたい。
d)今回の推薦手続きについては、各学部長等の考えに基づき実施され、手続きの詳細について多少異なるところがありました。今後昇任に当たってどのようなルールで進めていくかについては、検討し次回の昇任作業に反映させていきたいと考えています。
e)及び(f)様々なご意見については今後の参考とさせていただきたいと考えております。

二 賃金および労働条件に関する要求

1.      当局は賃金制度について教員評価制度に基づく年俸制を導入するとしているが、その具体的内容については一年以上にわたり当組合に対して必要な説明を実施していない。当局は近い将来の制度導入に向けて検討を進めていると聞くが、事実とすれば、その検討内容について説明を求める。本件は極めて重要な労働条件の変更にあたるので、当組合との交渉に応じるのは当局に課せられた法的義務であることを申し添える。

当局側回答 425日団体交渉で回答済み。

2.      平成18年度における賃金等の改善についての当局の見解を求める。

当局側回答 425日団体交渉で回答済み。

3.      公立大学法人への移行時に講師と助教授の職名が準教授に統合された。法人化以前の特に文系学部における人事慣行では、講師と助教授の講義負担は大差なく、講師から助教授への昇格は比較的に短期間で行われていた。このため、法人化により講師から準教授になった者に対しては、以前の助教授並みの処遇体系に移行させるのが妥当なので、早急な改善を求める。

当局側回答  21日の団交時にも回答しましたが、(講師から準教授になった者に対する給与調整は)考えておりません。

組合の見解  21日の団交の際、当局は「これまでの給料表はなくなっており、年俸決定の際に評価し、年俸に反映させていきたい」と回答した。したがって、労働条件の不利益変更という違法状態を解消するために、当局が今年度の年俸決定の際にこの条件を加味してどのように評価を行いそれをどう反映させるかを明らかにするのが当然の義務である。今回の「文書回答」はその点に触れておらず、違法な不利益変更を放置しようとするものであって、認められない。これまでの助教授昇進のあり方などを踏まえつつ、従来であれば助教授に昇進していた(昇給していた)と想定される人への配慮方法につき、組合と協議をおこなうことを求める。

当局側再回答 法人化後の賃金体系について、特に教員職の給与のあり方については、十分議論した上で検討させていただきたい。

4.      公立大学法人移行後に採用された教員に対する労働契約の内容と提示方法について説明を求める。

当局側回答 法人移行後に採用された教員は、任期制等の労働条件について了解の上、公募に応じたものと考えています。

組合の見解 このように「考えている」などというのは、労働基準法第15条および厚生労働省令の定め(労働条件の明示、書面による交付)を無視した異常な考え方であり、重大な疑義がある。また、実際の賃金水準の決定はどのようになされているのか、当該教員および当組合に対して明示することを求める。

当局側再回答 平成184月以降に採用された教員に対しては雇用契約書及び労働条件通知書を示し、雇用契約を結ぶ手続きを行っております。
また、賃金水準の決定は、従来の横浜市における昇格手続きを参考にして決定しております。


 

投稿「茶番劇はいつまで続くのか」

一組合員より以下の投稿があり、組合執行部の正式見解ではありませんが、組合員の討論の素材として提供します。

茶番劇はいつまで続くのか?

 

2006年6月8日

 

一組合員


教員評価のルール作りについて突如、「コース長と各コースの若手教員一名ずつから構成されるワーキンググループを立ち上げる」ことが本日の会議で検討された。
さかのぼって2003年10月。多くの教員の意見を無視して発表された「横浜市立大学の新たな大学像」には、年俸制・任期制が盛り込まれ、全国の大学の中ではじめての任期制全員適用として注目された。これで横浜市に誕生した「全国に先駆け」はまた一つ増えた。
しかし、「オリンピックで金メダルをゲット」と宣言したわりには、基礎トレーニングはまったく行っていない。年俸制・任期制に必要不可欠な評価基準は不明のままで、2005年4月に横浜市大は新体制に突入した。「新たな大学像」が発表されてから2006年6月現在まで、大学当局は教員説明会や組合交渉の席で「これから急いで評価基準の作成を検討する」と繰り返してきたが、基準案どころか、その作成にあたって誰がどのように作るかでさえ、はっきりしない。「オリンピックの試合はとっくにはじまったのに、これからトレーニング方法を考える」というようなものだ。
もう一つ言えば、「新たな大学像」が発表された際、評価基準もできていないのに、結果を見る前に「この改革案が、時代を先取りした魅力あふれるものであり、厳しい社会経済情勢と大学間競争に勝ち抜けるものである」(小川学長メッセージ、20031031日)と言い張る(言わせる)手法は、そもそも「風説の流布」に当たるのではないか?改革論議の難しさはこの点と関係する。風説を流布してはいけない。しかし、現実には風説の流布をした人は必ずしも全員逮捕されるわけではない。時間と資源が限られているので、法律はすべての出来事に対して白黒をはっきりさせる答えを用意できないからである。われわれは中途半場な世界に生きているのだ。だから、この点を悪用する人たちは非難に値する。
そして今日、2006年6月8日、”only one”や「時代を先取り」など装飾をいっぱい付けた新体制が発足してから1年以上経過して、当局による基準作成作業が無理だと判明するや教員に作業を投げ出した。上記のワーキンググループの議論はこうした背景で突如出てきたのだ。大多数の教員の意向を無視して年俸制・任期制を一方的に発表した後、評価基準が作れないから、教員に戻して案を作ってもらおうと、いくらなんでも、それはないだろう。大学の根幹に関わる問題をこのようなアドホックなやり方で行うと将来はどうなるか?
横浜市に若手市長が誕生してから、横浜市立大学における茶番劇がずっと続いた。ほかにいくつか見ておこう。

·         2002年8月、市大の問題を客観的に評価するにあたって、大学基準協会のような、信用性の高い機関に依頼せず、どこからもその信用性が保証されていないし、第三者機関ともいえないような市長の設立機関、あり方懇談会に依頼した。その結果非常に無責任な答申案が出された。

·         1140億円の財政負担といっているわりには、誰がその予算の責任者でどのような執行の仕方をしていたか、また投資案件のコストパフォーマンスがどうなったかといった重要なポイントは問題視すらされなかった。

·         大学の予算書は少なくとも2005年まで教員や学生には公表されなかった。社会的一般常識として、たとえば端午会(商学部教員親睦組織)のような年間予算数十万円程度の親睦組織でさえ、きちんと毎年の決算報告書を出すのに、巨額の「負債」を抱えたこの大学では、決算報告書や監査報告書を見た人、聞いた人は誰もいない。にもかかわらず、「納税者が満足できるような改革」(中田市長メッセージ、200357日)においては、予算プロセス、決算報告、監査制度といったきわめて基本的な制度作りにまったくタッチしなかった。

·         2003年3月20日から2004年3月14日の間、商学部、国際文化学部、理学部、総合理科研究科八景研究科、看護短期大学部、木原生物学研究所の教授会から計20回以上の決議や要望が出され、そのほとんどが学部統合に反対し、改革プロセスの問題点を指摘するものだった。にもかかわらず、「大学が決めた」こととして、八景キャンパスの学部は一つに統合された。

当局は予算権を握りながら、予算に関する諸問題に対して責任がとれる体制を構築していない。これまでのように、財政問題を理由に関係ない部分の改革(解体)を求めるという責任転嫁の時限爆弾がこれからいつ再投下されてもおかしくない。また改革によって人事権まで教授会から取り上げられた。しかし、教授会を解体し、この大学をどうにでもできる権力を手にしたわりには、大学の運営管理について、学生通知、名簿管理といったきわめて基本的なこともきちんとできていない。
新体制になって2年目。当局が評価体制の実施について慎重である点は評価できる。しかし、とんでもない内容の改革によって実施方法もわからないまま全員適用の任期制・年俸制はすでに宣言された。今の大学はまるで接岸できない船に乗せられているようなものだ。
新体制になってから1年以上も経過した今、教員参加の評価基準作りをはじめようとしている。この茶番劇はいつまで続くのか?


以上


 

20060620

横浜市立大学、「茶番劇はいつまで続くのか」

横浜市立大学教員組合
 ●「教員組合週報」(2006.6.19

投稿「茶番劇はいつまで続くのか」

一組合員より以下の投稿があり、組合執行部の正式見解ではありませんが、組合員の討論の素材として提供します。

茶番劇はいつまで続くのか?
2006年6月8日
一組合員

 教員評価のルール作りについて突如、「コース長と各コースの若手教員一名ずつから構成されるワーキンググループを立ち上げる」ことが本日の会議で検討された。
 さかのぼって2003年10月。多くの教員の意見を無視して発表された「横浜市立大学の新たな大学像」には、年俸制・任期制が盛り込まれ、全国の大学の中ではじめての任期制全員適用として注目された。これで横浜市に誕生した「全国に先駆け」はまた一つ増えた。
 しかし、「オリンピックで金メダルをゲット」と宣言したわりには、基礎トレーニングはまったく行っていない。年俸制・任期制に必要不可欠な評価基準は不明のままで、2005年4月に横浜市大は新体制に突入した。「新たな大学像」が発表されてから2006年6月現在まで、大学当局は教員説明会や組合交渉の席で「これから急いで評価基準の作成を検討する」と繰り返してきたが、基準案どころか、その作成にあたって誰がどのように作るかでさえ、はっきりしない。「オリンピックの試合はとっくにはじまったのに、これからトレーニング方法を考える」というようなものだ。
 もう一つ言えば、「新たな大学像」が発表された際、評価基準もできていないのに、結果を見る前に「この改革案が、時代を先取りした魅力あふれるものであり、厳しい社会経済情勢と大学間競争に勝ち抜けるものである」(小川学長メッセージ、20031031日)と言い張る(言わせる)手法は、そもそも「風説の流布」に当たるのではないか?改革論議の難しさはこの点と関係する。風説を流布してはいけない。しかし、現実には風説の流布をした人は必ずしも全員逮捕されるわけではない。時間と資源が限られているので、法律はすべての出来事に対して白黒をはっきりさせる答えを用意できないからである。われわれは中途半場な世界に生きているのだ。だから、この点を悪用する人たちは非難に値する。
 そして今日、2006年6月8日、”only one”や「時代を先取り」など装飾をいっぱい付けた新体制が発足してから1年以上経過して、当局による基準作成作業が無理だと判明するや教員に作業を投げ出した。上記のワーキンググループの議論はこうした背景で突如出てきたのだ。大多数の教員の意向を無視して年俸制・任期制を一方的に発表した後、評価基準が作れないから、教員に戻して案を作ってもらおうと、いくらなんでも、それはないだろう。大学の根幹に関わる問題をこのようなアドホックなやり方で行うと将来はどうなるか?
 横浜市に若手市長が誕生してから、横浜市立大学における茶番劇がずっと続いた。ほかにいくつか見ておこう。

・2002年8月、市大の問題を客観的に評価するにあたって、大学基準協会のような、信用性の高い機関に依頼せず、どこからもその信用性が保証されていないし、第三者機関ともいえないような市長の設立機関、あり方懇談会に依頼した。その結果非常に無責任な答申案が出された。
・1140億円の財政負担といっているわりには、誰がその予算の責任者でどのような執行の仕方をしていたか、また投資案件のコストパフォーマンスがどうなったかといった重要なポイントは問題視すらされなかった。
・大学の予算書は少なくとも2005年まで教員や学生には公表されなかった。社会的一般常識として、たとえば端午会(商学部教員親睦組織)のような年間予算数十万円程度の親睦組織でさえ、きちんと毎年の決算報告書を出すのに、巨額の「負債」を抱えたこの大学では、決算報告書や監査報告書を見た人、聞いた人は誰もいない。にもかかわらず、「納税者が満足できるような改革」(中田市長メッセージ、200357日)においては、予算プロセス、決算報告、監査制度といったきわめて基本的な制度作りにまったくタッチしなかった。
・2003年3月20日から2004年3月14日の間、商学部、国際文化学部、理学部、総合理科研究科八景研究科、看護短期大学部、木原生物学研究所の教授会から計20回以上の決議や要望が出され、そのほとんどが学部統合に反対し、改革プロセスの問題点を指摘するものだった。にもかかわらず、「大学が決めた」こととして、八景キャンパスの学部は一つに統合された。

 当局は予算権を握りながら、予算に関する諸問題に対して責任がとれる体制を構築していない。これまでのように、財政問題を理由に関係ない部分の改革(解体)を求めるという責任転嫁の時限爆弾がこれからいつ再投下されてもおかしくない。また改革によって人事権まで教授会から取り上げられた。しかし、教授会を解体し、この大学をどうにでもできる権力を手にしたわりには、大学の運営管理について、学生通知、名簿管理といったきわめて基本的なこともきちんとできていない。
 新体制になって2年目。当局が評価体制の実施について慎重である点は評価できる。しかし、とんでもない内容の改革によって実施方法もわからないまま全員適用の任期制・年俸制はすでに宣言された。今の大学はまるで接岸できない船に乗せられているようなものだ。
 新体制になってから1年以上も経過した今、教員参加の評価基準作りをはじめようとしている。この茶番劇はいつまで続くのか?

 

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6月19日 「全国国公私立大学の事件情報」〔本日付〕もつたえているが、この間、任期法のり立法趣旨・基本精神に則った制度が、文部科学省によって推進されていることは一般新聞でも報道されている。

大学教員任期法については、まさにこのような適用運用の仕方こそ、立法の趣旨にかなったものである。まさにこうしたことこそ、任期法の創出の意味だ、ということである。それを文部科学省が各国立大学との連携の中で、手本として示しているといえよう。

任期法を、大学教員全体に適用して、大学教員を萎縮させ、研究教育の自由を縛ってしまうことが、目的ではないのである。本学では、教員組合の情報から明らかなように、いまなお、その問題が明確に理解されてはいない。筋の通らない就業規則を変更しようという検討が始まっているのかどうか?

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京大、若手登用へ新制度 5年目評価 准教授に

http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2006061600024&genre=G1&area=K00

 京都大は15日までに、新領域の研究を開拓する若手研究者を登用する新たな人事制度を本年度から実施することを決めた。教室に所属せず研究に専念する助教(助手)を国際公募して研究資金を支給、5年後には一定数を准教授(助教授)に採用する。独創的な若手研究者の確保とともに、オープンで公平な競争を行うことで、硬直化しがちな人事の改革につなげる。 ……

 

 

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6月15日(2) 先日、抜粋的に紹介した堀尾東大名誉教授の国会における意見表明が、教育基本法「改正」情報センターに掲載されていた。以下に、コピーしておこう。

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堀尾輝久参考人の意見陳述・質疑応答(2006年6月7日)

·         堀尾輝久参考人意見陳述

·         田中和徳委員に対する質疑応答

·         池坊保子委員に対する質疑応答

·         糸川正晃委員に対する質疑応答

·         大畠章宏委員に対する質疑応答

·         石井郁子委員に対する質疑応答

·         保坂展人委員に対する質疑応答

※以下は、センターが衆議院TVから起こしたものです。正式の議事録とは異なります。( )内はセンターで補充したものです。

堀尾輝久参考人
堀尾です。こういう機会を与えられましたことを光栄にも思いますし、緊張もしております。緊張している1つの理由は、私は法学部を卒業して、法律と政治学をやりまして、その後教育に変わって、そして、専門としては教育哲学、教育学、あるいは子ども青年の発達の問題、そして教育法の問題、国際比較教育学という領域の研究を長年続けてきた者であります。同時に、日本教育学会の会長を2期務め、日本教育法学会の会長も2期務めてまいりました。

私はここに立っているのですけれども、もちろん、今日私個人の意見を申し上げるわけですけれども、同時に、この長年研究してきたその研究の同僚や、あるいは教育に関して言えば現場の先生たちとの交流を通して深めてきた、私の知見を披瀝しなければならないわけです。しかもこの場では大変少数意見である、ようであります。この議論の中でも「一部の教育関係者が」云々という議論がなされています。で私はそういう意味では一部の教育関係者かもしれない。しかし私が研究してきたことはそんなにかたよっているとは決して思っていません。

短い時間ですので、やや僭越ですけれども、『いま教育基本法を読む』という本を岩波から出しております。これは是非、おそらく継続審議になるであろうその期間ゆっくりと読んでいただきたい、というふうに思います。それからもう1つ資料として、日本教育法学会の会長の伊藤先生の見解を皆さんにお示ししました。私自身日本教育法学会の会長を2期務め、その間に、教育基本法改正問題が本当に、改正論議ではなくて法案作成という方向で動くなかで、危機意識を持って、教育基本法研究特別委員会というのを学会に設置されました。その研究成果は、これはこれでまとまっております。もしまだ先生方のお手元に無いとすれば、これは政府案の批判を中心に各条、細かな批判をしております。是非ご覧頂きたいと思います。お示しいたしました会長談話は、特別研究委員会の成果を踏まえ、さらに会長の見解を表現したということであります。

そいうわけで、私が緊張しているという意味は、この研究者仲間の考え方がどこまで正確に伝えられるか、あるいは現場の先生方の願いがどこまで伝えられるかということで緊張しているということでございます。

この国会を通して、皆様方、教育とは何かという議論を深くされました。非常に通俗的なあるいは常識的な議論から、非常に深い教育の本質論を含めてのご議論がありました。私も丁寧にこの国会の議事録を、手に入る限り、読ませていただいております。それだけに、この国会で皆様方が教育の問題についてこれだけ多面的に議論をされているということには本当に敬意を表しています。同時にその意見が多様であるということ、それこそが大事なんではないかと思っております。それに重ねて、なぜこういう教育に関する議論が、もっと日常的にみんなのものに広がっていかないのか、ということを残念にも思いました。たまたま教育基本法の改正という、そのことをめぐってこういう議論がなされている。そのことは逆に言うと、不幸なことだと思っております。

国会で議論されている教育の本質をめぐる問題は、それはそのまま教育基本法改正問題という形で連動するものではないわけです。それこそ各党派を超えて、教育の本質、そこには国がやるべきことなんだという言い方から、教育には押し付けが必要なんだといい方から、そうではなくて教育の基本は一人一人の人間を育てることだ、人間を人間として育てることが機軸にならなければならない、
個人の尊厳を重んじ、お互いに大事にしあうという人間が実は国を作っていく、平和的な民主的な社会と国家の形成者になっていく、その国民が同時に、現在、私は地球時代と捉えているのですが、その地球時代を担っていく、新しい世界市民的な感覚を持った、国際人を育てていく、そういう議論を私はしているわけです。それに近い議論も国会の中でありました。考え方はどこを軸にしていくのか。今日は見城さんのお話にもありましたけど教育は基本である、その冒頭に教育は国の仕事であるとかかれてありました、そのあとで愛国心の部分で議論されたことは私はまったく同感だと思いました。それぞれの意見の中にも矛盾を含みながらも大事なことを言っている。誰の意見が正しいということではないんですね。

その際、私は戦後の教育のとらえ方、なぜ教育基本法の改正が必要なのかという根拠については理解ができません。たとえば今日も青年会議所の方が「敗戦トラウマ」という言葉を使われました。これはこの国会で先般町村さんが「戦後後遺症」という言葉を使われました。果たしてそうなんでしょうか。私は振り返ってあの戦後、まさに敗戦、占領下の中で私たちの先人がどういう思いで新しい人間を育て、新しい国を作ろうとした、その思いが教育刷新委員会の議論、それを通して教育基本法を作っていったということであります。その中心になったたとえば田中耕太郎、あるいは南原繁、あるいは安部能成、務台理作、そういった人たちは、本当に人間を思い、国を思った人たちです。

南原さんについて一言申しますと、南原さんは『祖国を興すもの』という本を書かれています。それから新しい日本の文化を作るんだという講演を東大の総長になったときに行っています。同時にその講演も1946年の2月11日、当時の紀元節です、紀元節にあえて新しい国を興すという、そしてその日、東大には日の丸をたてたのです。私は戦後改革を担った人たちというのは、そういう意味で本当の愛国者だと思っています。敗戦後遺症という形で、我々の先輩をとらえていいのだろうか。

占領軍の押し付けによって作られた、そんなことはないんです。もちろん占領下です。ステアリングコミッティを通していろんなアドバイスもあったかもしれません。すくなくともお互いに情報を伝え合っていたことは事実です。しかし
教育基本法の作成は、本当に私たちの先人たちが、過去の反省を踏まえて、新しい人間を作る、その人間を軸にして新しい国を作るんだ、その際、中心になるのは一人一人の人間の尊厳、そして真理と平和を希求する人間、これを作るんだ、これが教育基本法の精神です。それが新しい世界を開いていく、決して平和は一国の平和主義ではないんです。日本の理念を、新しい理念を国際的に広げようとする、そういう責任の自覚、使命の自覚を通して、憲法を作り、教育基本法を作ったのです。

わたくしは、勝手なことを言っているんではありません。わたくしは研究者です(から)。戦後改革がどういうものであったのか、については実はこういう本があるんです。これは、東京大学の出版で戦後教育改革のシリーズで、全10巻です。スタンフォード大学との共同で始まった仕事です。そして、わたくしはこの巻、このシリーズで、教育の理念の成立過程、つまり憲法の成立過程と教育基本法の成立過程を丹念に調べた本を書いています。それから10条に関しては、この教育行政の巻で、残念ながら昨年亡くなりましたけれども、鈴木英一さんが、非常に丁寧な仕事をしています。そういう仕事を通して(きたのだから)わたくしたちは「戦後敗戦後遺症」などとは決して違うのです。(それは)新しい思いを、新しい理想うちに秘めながら、次の世代をどう育てるかということということで教育基本法を作ったわけであります。

その歴史というものは、ですから非常に大事なわけで、この本でも「歴史」「争点」、そして「再発見」という言葉を使っています。

わたくしたちが基本法、憲法の精神を本当に現実に生かすというのは、それは法の条文を守るということではない。その精神をどういう風に具体的に自分たちのものにしていくのか、そしてさらにそれ発展させることができるのか、教育現場のなかで、そして一人一人の未来を担う子供たちに、この精神をどういう風にいかしていけばいいのか。そういう方向で教育を考えてきた一人であります。

しかし、ご存知のように教育基本法も憲法も、自民党は結党以来これを改正するのが当然であるということを言い続けてきたわけですね。そうして、ようやくこの21世紀、新しい時代に入ったのだから、ということで今度はそれを強調しながら教育基本法の改正を急いでいるわけであります。が、わたくしに言わせれば、改正の根拠というものがぜんぜんわからない。

これは国会の議論を通してもそうです。たとえば今日の議論が、参考人の議論が、そのままなぜ教育基本法の改正につながるのか。わたくしは教育というのはいろんな人がいろんが議論をするのが大事なんであって、それを法律でしばり、一つの方向付けを国がやるということは、非常な越権である。実はそのことは戦後改革のときに実に丁寧に議論されているわけです。みなさんにも配られているこの第92帝国議会の議論のなかで(は)、なんでも法律にしたらいいということではないだろうと、本当にくりかえし強調されていますよね。佐々木惣一さん、澤田牛麿さん。澤田牛麿の意見など「この法案は、説法ではないか。」つまり、教育基本法のことですよ。「そもそも法律で書いていいことと悪いことがあるんだ」ということを非常に強調している。

教育の目的なんていうことを法律で決めるということわたくしは無理だと思う。金森国務大臣は「法律で決めてしかるべき範囲とそうでないものの範囲にはおのずから分野があるものと存じます」というふいに言われている。しかし、なぜ教育基本法を作ったのか。それはその戦前の教育、そのとき支配的であった教育のありかたというものが、あまりに、戦前の教育勅語を軸にしたいわゆる「教育」、国家主義と軍国主義に支配された教育であった(ため、)それをどう克服するかというそういう現実の課題のなかで教育目的についても規定せざるをえなかった、という対応をしています。

さらにそのことは当時の文部大臣であった田中耕太郎さんが、その後は最高裁長官になるわけですけれども、1952年の1月に出されました『ジュリスト』、『ジュリスト』の創刊号です、そのなかに教育基本法第一条について、教育の目的を規定することがいいことか悪いことか、いう議論をなさっています。この文献などわたくしは、非常に大事だというふうに思います。「なにも規定しなければアナーキーがくるだろう。しかし、反対に、もし、法が教育の隅々まで規定するようになれば、教育はその溌剌たる生命を失い、死物化してしまう」。死んでしまう、そういうことをことが免れないと。

教育の固有の領域というものは、法になじまない領域もあるんだ。皆さんが議論するのは当然なんです。私は皆が議論をして、国民の教育についての合意の水準を高める。これが教育のあり方(だと思います)。そして、その教育を担うのは現場の教師であり、もちろん、父母であり、地域の住民であり、教育行政もそれに関わるという、ことになるわけですけれども、それぞれがどういう仕事をするのかということを丁寧に腑分けしながら、教育の自立性、自由というものを軸にした教育のシステムをつくらなければいけない。自由民主党というならば、実はその教育の自由の領域をこそを守る、これが、自由民主党のあるべき主張であるはずだ、というふうに思います。

しかしその点に関しては、今度の教育基本法の改正(案)は、まさに、国が教育に口出しをする、口出しではなくて統制する、そういう方向で書かれている。その最たるものが、2条を新しく新設したことです。教育の目標。さらに、10条を大きく変えて、「教育は不当な支配に服することなく、国民全体に対して直接に責任を負」うという規定を大きく変え、教育は法律に従って行われるものだ、という書き方をしている。私は現行法の10条の構造、これは非常に大事なんであって、10条は教育行政の条項なんですけれども、その第1項は先ず「教育は」という主語で始まっている。第2項に「教育行政は」この教育の目的を実現するために必要な条件を整備するんだ、という書き方になっているわけです。その構造、つまり教育と教育行政の区別という、そういう観点がまったく無くなってしまったのが、今度の法改正案だ、というふうに思います。ここのところは、政府案も、民主党案も非常に問題を持っていると私は思っています。丁寧に10条の立法の精神、そして10条の構造、不当な支配とは何なのか(を検討すべきです)。

「不当な支配」ということに関しても、この国会でも随分と議論になりました。小阪文部大臣は学テ最高裁判決を引きました。しかし重大な解釈上の間違いがあるというふうに私は思っています。文科省、文部省はこれまでも繰り返し、国が教育内容に関与する、これは学テ最高裁判決によって、判決によって確定しているという言い方をされている。しかしこの読み方が、実にいい加減で、都合の良い所を読んでいる。時間が無いので丁寧に紹介するわけにはなりせんけれども、そういう問題を含んでいるわけですね。

そして法というものがどこまで関与して良いかと言うのは、それこそ基本法が成立するときに、教育目的まで本当に書くのかという議論を含み(ます。)そして、田中耕太郎さんのご紹介した論文では、あれは日本の「変態的」という言葉を使って(説明して)います、非常に変則的なんだ。いうなれば、近代国家はそういう人間の内面的な領域には、国が関与しないというのが、近代原則なんです。(委員長より時間を超えていることを告げる発言)

後で時間があれば補足したいと思いますけれども、法と教育の関係が非常に大事だということ、なんでも法で決めれば良いというんじゃない。なんでも法で決めれば本当に現場でどうなるかということを、本当に考えていただきたいと思います。

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※以下は、センターが衆議院TVから起こしたものです。正式の議事録とは異なります。( )内はセンターで補充したものです。

田中和徳委員(自民)
「定時制・通信制の充実は欠かせないと考えるがどうか。」「全日制への全入という意見もあるが、どうか。」

堀尾参考人
田中さんと呼ばせてください。田中さんが定時制の問題、通信制の問題に非常に深く、貢献されていると言うことに、私は敬意を表しています。今、格差社会ということが言われています。ますます格差が広がるであろう。それは教育の格差ということで言えば、例えば高校に関しても、いわゆる中退者が増えている。中退者の中にはもう学校についていけない、不適応だという青年もいますけれども、経済的な理由から中退せざるを得ない、こういう青年たちも増えているわけです。そういう人たちの救いの場というのは、定時制の場、私は特に定時制のことを中心にお答えしたいと思うんですけれども。

不登校の青年たちも、あらためて定時制に行くことで、そこで救われるという、そういう人たちもいます。それは定時制には教育があるからなんですね。つまりテストで、競争で、人を評価するという、そういう教育では無い、本当に傷ついた青年たちを大事にしよう。あるいは経済的に貧しい、そういう負担を負っている青年もがんばっている、それを支えようという、その空間が定時制なんですね。山田洋次さんが、『学校』というシリーズの映画の中で定時制を特に取り上げた映画もつくっています。非常に、感動的なものです。そういう視点で言うと、夜間中学校の問題も同じような、初めてそこで救われたという、そこに教育があるからなんですね。そこに教育があるからだといったことと、今、つまり今現実に競争、競争、評価、評価ということで縛られているところに本当に教育があるのかという問題とを対比させて考える必要がある。

私は今の教育政策の進行の中で、実は学校から自由が逃げていく、教育から人間が消えていくという、そういう状況が広がっている、というふうに思っているんです。これは教育基本法の精神が生かされていないからだと思っています。そういう視点で言うと、定時制はまさにこの精神が生きているところだと私は思っています。

東京都の政策ではこの定時制を減らすという方向で動いています。こういう問題に対して、ジュネーブの子どもの権利委員会は、ご存知だと思いますけれども、政府の報告に対して、NGOの報告書も精査しながら、勧告を出しています。その中で昨年出された国連子どもの権利委員会は、東京都の定時制問題について非常に厳しい指摘もしているんです。もっと大事にすべきだという。この点も是非田中さんには見ていただ(きたい)。子どもの権利委員会は何を言っているのか。日本の競争的な教育システムが人間をダメにしている。そういう視点を含んでの指摘なんですね。私は教育基本法の解釈の場合にも、国際的な条理の展開、それとあわせながら、教育基本法の精神をより豊かにする。そのときには子どもの権利条約だけではありません。その他の条約あるいは学習権宣言、これは民主党の方には非常に興味深いところだと思いますけれども、そういうものも参考にしながら教育基本法の精神を豊かにするという方向で考える場合に、田中さんのやっているお仕事と言うのは非常に(重要なので)、敬意を表しています。

池坊保子委員(公明)
「全面改正を望んでいる私は、教育基本法がいけないと、教育基本法がいけないから、教育現場が荒廃した、と言っている人はだれもいないんです。人格の完成も、個人の尊厳も、良いのだと。でも21世紀にふさわしい付け加えるべきことが、沢山あるのではないか。それを付け加えて、より積極的に、前向きに良い方向に教育を、持っていこうというのが、私たちの考えでございますが、そういうお考えでも反対ですか。」

堀尾参考人
現在の教育が病んでいる
ということは誰しもが認めることですよね。子どもを持っている親でもそうですし、現場にいる教師もこれで良いのかと考えている。子ども自身も悲鳴を上げている。それを私は先ほど、学校から自由が逃げている、教育から人間が消えていくという一言で表現しました。そういう状況がある。そういう表現に同意していただけるかどうかが、次の問題になると思う。

教育が病んでいる、だから教育基本法を変えなければいけないといった人は誰もいない、と今おっしゃいました。本当にそうだったら、私は大変良いと思います。だけども何人もの方が、そうおっしゃっているんじゃないでしょうか。それは中教審のあるいはその前の教育改革国民会議、そしてその周辺の議論を含めて私はそうだと思います。にもかかわらずこの議会で、教育基本法を変える理由として、今の教育は病んでいる、だから教育基本法を変えなければいけない、というふうに直裁に行った責任者はいないと思います。だからそこんところをどう考えるのか。一般の人たちに伝わっているのは、とにかく教育基本法を変えれば、教育の病理がおさまるんだと受け止めている。教育基本法を変えなければいけないのではないか、という世論もつくられている。というふうに私は思います。それは問題なんじゃないか。病んでいるのはどこなのか、ということを本気に問わなければならないと私は思っています。

むしろ、憲法や教育基本法の精神が、現場に本当に生きていない、そしてその精神を豊かに発展させていく、させようという実践の自由というものが、むしろ制約されている。場合によっては、それは不適格教師だという形で、学校から排除される。そういう問題を含んでむしろ、教育が病んできているんではないか、というふうに私は思います。

教師の重要性と言うことも先ほど語られましたけれども、教師は本当に自分の責任を深く自覚する中で、子どもの人間的成長発達を助ける大事な仕事だ、そのためには、不断の研究が必要だ(と思います)。それは教育の内容についても、子どもの発達についても(です)。父母の要求についても、誠実に耳を傾けながら最終的にどういう授業をやるのかという、その実践の責任というものは教師が持っている。だからこそそれは、崇高な使命とも言える。しかし今度の改正案の中では、教師は崇高な使命をもっているという言葉はあるけれども、今の教育基本法にはなく付け加えられた。ではそういう教師がやる教師とは何なのか。法律に従えば、法律に従わなければならないんだ、そういう書き方になっている。つまり教師が法律に従わなければいけないという意識だけで教育実践をやる。それが何で崇高な使命なんでしょうか。私にはとても考えられない。その法律の限界というものをどこまで自覚するか。私が冒頭で十分には言っていません。この機会に法律が関与して良いところと、そうではないところ、関与してはならない領域があるということを、しっかりと共有の認識にする必要があるというふうに強く思っています。

糸川正晃(国民)
<国家とは何か>

堀尾参考人
どういうコンテキストでお答えしたら良いのかがよくわからないということがあります。といいますのは私は法学部の政治学科を卒業しているんですけれども、学生時代、国家とは何か、というのが学生たちを含んでの、講義での中心的なテーマでした。法哲学では、国法学というものを尾高先生に学びました。そういう視点からしますと、国家とは何かという問題を短い時間で、お前どう考えるのかといわれても、困っちゃう。先ほど、中島さんはヘイズの言葉を引きました。それに加えて国家論と言うのは膨大なものがあるわけですね。それこそ一方では、階級支配の国家論もあれば、多元的国家論もあれば。

この原案に即して言えば、教育目的のところで、愛国心云々のところで国家が問題となっているわけですね。そこでは統治機構では無いという了解が得られている。もし自分が生まれた郷土、そして国を愛する。これは誰しも否定する必要の無いことですよ。誰も否定しないと思います。よっぽど型破りな人がいるかもしれない。しかしその人はまたその人で自由は(ある)。それはけしからんという必要は無い。しかし多くの人は自分の郷土を愛し、国を愛する当たり前じゃないか、という思いを持っていると思います。他方で今度の法案で、10条(を)改正した16条には、国という言葉が出てきます。では16条の国と、前文や1条で言っていた国とはどこでどういうふうに関係するのか。さらに17条には政府が出てきます。国と政府と、統治機構ではない国、そういうものが今度の法案のなかにはそれこそ含まれているわけですね。平明な気持ちでこれを学ぼうとした場合、これどういうことなの、と言うことになると思います。

16条、17条に書かれている国というのは明らかに統治機構であります。そして、国はあるコンテキストで言えば被告にもなるんです。家永三郎さんが国を相手に訴訟を起こしました。教科書(裁判)で。そのときの被告は国なんです。国を代表するのは文部大臣なんです。そういう構造で国というものが現実の関係の中であるわけです。国を愛するのかどうかということ、国をどう思うのかと言うのは、本当に、へたをするとお前はそういうことを言っているから愛国者ではないみたいな議論(になりますし)、これが議論されることは、私は危険だし、問題だと思っています。

糸川
<現行法が長年にわたって、教育、社会において果たしている役割について。>

堀尾参考人
今の質問もなかなか難しい問題です。つまり、現実に教育基本法がどういう役割を果たしたのかということになるわけですから。私は、現場の教師たちとのつきあいも多いんですけれども、本当に憲法や教育基本法の精神を大事にする、それは法律にあるからではなくて、教育というものが本来こういうものだという、つまり教育の条理に響きあう教育基本法というふうに捉えて、そしてその条理をさらに豊かに展開するという仕方で現場には生きていることは相当にあります。学校のメインのビルディングにはいるところに教育基本法を大きく掲げているような学校もあります。そういうところでは、生徒たちの意見を聞き、あるいは最近では三者協議会という形で父母、そして子ども、教師たちが一緒に、議論をするという、そういう場も作られています。私は教育基本法の精神だと思っています。

他方でしかし、教育基本法は改正すべきだという意見、これは、もうそれこそ自民党結党以来50年続いているわけですよね。それが現場に、教育行政を通して、いろいろと浸透してきています。東京都などでは早々と、それまで教育委員会のやるべき仕事として憲法、教育基本法の精神に即して、という文章を削除する子どもの権利条約の精神を大事にというものも削除する仕方で、今やられているのはまさに統制的な教育行政なんです。そこでは教育基本法は生きていないんです。生きていないところで教育は混乱しているというふうに私は見ています。

大畠章宏(民主)
<教育勅語、教育基本法の成立過程に関する説明><中教審が二年間にわたって、公聴会を5回もやり2年間すべての審議を公開しながらやってきた。与党協議会による協議は少数で密室で行なわれてきた。その間の論議が与党の議員に知らされていない。中身が公になっていない。歴史に禍根を残すのではないか。>

堀尾参考人
ご質問の中で教育勅語の成立の問題、そして教育基本法の成立の過程。歴史の問題があったと思います。これを答えていると大変なんですけれども、私は、近代教育思想史に関する大きな本を1冊書いています。教育勅語の成立についても書いていますし、教育基本法の成立に関してはこういう本(戦後教育改革のシリーズの1冊を取り上げる)を書いています。

そういう立場から言いますと、教育勅語に関しましてはご指摘のように、あれは天皇の言葉と言うことになってはいるけれども、つくられたわけですよね。誰が作ったのか。元田、中村正直、井上毅、そして山縣も最後に関係しています。そういう人が文章を作って、それを天皇の勅語にしたということですね。もう1つ言っておきたいことは、井上毅の考え方と言うのは非常に面白いと思ったのですけれども、これを法律にするかどうかという議論をやっているんですね。しかし人間の道徳に関わる問題を議会で決めるべきものではない、と。ここまでは、私が冒頭に説明したことと同じなんですね。法の限界ということが。そこで日本には天皇がいる、天皇は、政党からも中立である。で天皇の言葉として勅語を出した。こういうことでもあるんですね。勅語に求めたというその思いは、非常に評価できる。しかし実は間違った求め方をした、というふうに思うんですね。

が入るべきでないという領域というものは、人間一人一人が国民一人一人が自分たちで、豊かに考えていこうという、これが教育の領域の問題、あるいは、文化の問題、学問の問題ですね。そういうところに国は口出ししてはいけない。だから戦前は勅語にあったわけです。戦後は、国民主権、一人一人を大事にする、そして教育は人権である、そういう考え方で自由な領域というものを法は保障しなくてはならない、という形で教育基本法が作られた。ですから、つくられるときに、冒頭でも少し紹介しましたように、非常に抑制の原理というものを持っていたわけです。そこまで書くのかという思いを持ちながら、しかし日本の歴史を考えてみるとここまでは書かざるを得ない。しかしこれ以上書くような方向で改正してはならないぞ、というのが田中耕太郎の意見でもあったわけですよね。

その制定過程(に関連すること)で(大畠さんは)GHQのことを言われました。確かに占領下(ではあった)。(しかし)そのなかでいかに私たちの先輩たちが、独立の精神で、自分たちの思いをつくったのか。これは非常にはっきりしているんです。

この国会でも何かGHQの強制があったかのような、強制という言葉ではなくて、その枠の中で、非常にかたよったものだという言い方がありますけれども、例えば1つご紹介します。アメリカ使節団がやってきたとき、阿部能成が日本の文部大臣でもあったわけですけれども、彼はこういう挨拶をしているんですね。日本がこれまで植民地国で、日本の教育を押し付けてきた。これは間違いである。アメリカから専門家が来たのだけれども、そういうことをやらないで欲しい。そういう挨拶をしているんです。これは非常に立派な挨拶だったと思います。

先ほど南原さんのことで少し紹介しましたけれども、南原さんが家永裁判の第1回の証人をやっています。そのときの証言の最後に、教育基本法の成立について、これは外から占領軍が押し付けたのだろうという反対尋問をされています。それに対して南原さんは、教育刷新委員会の委員長として、毅然としてこういうふうに言われました。「我々の委員会はそんなケチな委員会ではない。このメンバーを見たまえ。」これでこの証言は終わっているんです。これは私はすごいものだと思っています。実際にその(日本と教育使節団との)関係がどうだったのか。アメリカの使節団それ自体が、私たちは日本の教育をこれまで抑圧してきたものを取り除くために、やって来たんだと。抑圧するため、枠をはめるために来たのでは無いということを、これは非常にはっきりとしている。アメリカ教育使節団の良識であったと、いうふうに私は思っています。

石井郁子(共産)
<政府案16条において教育と教育行政が区別されていないのは重大な問題。教育を法律で縛るのかという問題がある。教育は人間的で文化的な営み。人間の内面形成を法律で縛ることができるのか。人間の自由な活動を法律で縛るのは憲法に反すると思うが、意見を聞きたい。>

堀尾参考人
教育を法律で縛るということが、どういうことかという質問でもございます。これは改正法案第16条に関わる問題であります。

この私の証言のひとつのポイントは、そもそも教育基本法にしても、どこまで教育の目的や理念を書けるのかということを非常に慎重に、抑制しながらつくったんだ、ということ。

近代法というのは本来、そういうことをしてはならないんだという原則が確立もしている。この点に関して言えば、フランスのコンドルセの思想。例えばコンドルセは、「政府はどこに真理が存し、どこに誤謬があるかを決定する権利を持たない。政府によって与えられる偏見は真の暴政である。」ということを言っている。コンドルセの意見というのは近代教育の思想の中でも非常に大事な民主主義的な教育の思想家として、みんな評価しているものなんですね。(コンドルセは)フランス革命期の(思想家で)、ジャコバンに殺される。あるいは、ドイツのフンボルトは、「国家活動の限界規制に関する考察」の中で公権力からの教育の自律性を主張しています。あるいはフランスの法哲学者のデュギー、彼は、国家は学説をもたない。あるいはイエリネック、皆さんは、法律を勉強された方が多いと思います。私が上げた方はみんな偉大な法学者です。イエリネックは「市民国家というものは、人間の内面性に属するものは何者も生産しない。」こういうことを言っているんですよね。これが近代の法であり、そして法が介入してはならない人間の内面的な領域、これが確立しているわけです。

戦後の改革期、法学者たちは当然こういう流れについても承知している。だから、教育基本法でどこまで書けるのかという議論を真剣にし、あの歴史的状況の中で、例外的に、変則的ではあるけれども抑制的に、教育の目的も書いたということになるわけです。

ところが今度の改正案では2条という新しい条項を作って、教育の目標という項目を作った。これ自体が大問題なんです。愛国心がどうだという以前に、法と教育の問題ということで、そんなもんを作る必要があるのか。しかもそれは学習指導要領に規定されているものをそのまま持ち込む。そいうことでもあるわけで、現に行われていることを基本法に持ち込むことによって一層統制力を強める。学習指導要領の場合にはまだ、その法的拘束力をめぐっても、最高裁判決の解釈として、解釈が分かれているわけですね。

この点私は是非言っておきたいわけですけれども、小阪文科大臣、ここには残念ながらいないようですけれども、私は直接質問もしたいわけですけれども、この法案の提出と関わって、「昭和51年の最高裁判決におきまして法律の命ずるところをそのまま執行する教育行政機関の行為は不当な支配とはなり得ない。」こういうふうに引いているわけです。でもこれは非常に重大な問題を含んでいるわけです。この最高裁判決を丁寧に読んでいない。小坂さん自身、そこを衝かれて、これは志位さんが質問をしましたけれども、私はそこままだ読んでいません、というそういう回答もしましたよね。どこが問題かと言うと、文部省が引いているところは実は、判決によりますと「憲法に適合する有効な他の法律の命ずるところをそのまま執行する教育行政機関の行為がここに言う不当な支配足り得ないことは明らかである。」つまり「憲法に適合する有効な他の法律」という言葉が書いてあるわけです。それが引用のときには、「法律」以下が引用される。そして文部省はこれまで繰り返し、これをやってきたんですね。つまり、判決によって確定した。そのことは教育研究者として非常に問題としてきた。どうしてそういう判決の読み方ができるんか、と思っていたら、今度の国会で、非常に明快にそういう読み方をしているということがわかったわけです。これは明らかに判決の読み違いである、と私は教育法学研究者として文科省の人たちに是非言っておきたい。

その問題は10条改正問題になっているわけですね。それが16条になる。先ほどちょっと申し上げましたけれども、教育と教育行政というものをカテゴリーとして区別しながら教育は、こういうものでなければならない、自立性が保障されていなければならない。法によれば何でも良いということとは違うんです。そして行政はそれを本当にサポートするという重大な責任を持っているということで10条はできるわけです。

度の改正案の16条、17条というのは非常におかしな改正になっている。私はそこは、非常に重大な問題を含んでいると思います。さらに17条の教育の基本計画のところでは、政府が計画をつくり実行し、それを国会に報告すれば良いと言うことになっている。そうすると政府にフリーハンドを与えることにならないか。しかも、基本法がそれを許している、それも基本法を根拠法としながら政府のフリーハンドを許す。そうすると政府が変わったら教育自体が大きく動くではないか。教育の安定性と言うのは非常に大事なわけです。だから、教育の自律的な領域というのが保障されなければならない。そしてそこには、衆知を集めて議論をし、本当に子どもたちを育てていくという、その仕事ができやすくするために法律というものがあり、政治というものがあるんだというふうに、私は基本的に考えております。17条に関してもっと言えば、競争と選抜をますます強めることになるんだろうと思っています。

保坂展人(社民)
教基法制定者の精神について、敷衍して欲しい>

堀尾参考人
作った人たちの精神は何であったのか。南原さんは、教育刷新委員会の委員長でもありましたけれども、東大の戦後初代の総長でもあります。南原さんの書いた本、『祖国を興す者』という本がございます。それから『新日本文化の創造』というものがあります。これは、敗戦の翌年ですね、東大の総長として、そして教育刷新委員会の代表として、果たされたその人たちの思いというものを私たちは汲まなければならないだろう、というふうに思っています。本当に国を興すという、新しい国をつくろうではないか。そして彼は日の丸も掲げた。彼は天皇制に関しても、天皇制を守るという意識を持っていたわけですけれどもそれは、新しい天皇制である。国民主権という憲法の下で、我々の天皇制というものを選んで創っていくんだ、そういう思いでこの天皇制も思いをかけたわけですね。

それぞれ思いの違いはありましょうけれども、おおむね戦後新しい国を作るんだ、もう戦争をしてはいけない、そして、新しい本当に一人一人を大事にする教育、そして文化をつくろうではないか。そして世界に誇るべき国をつくろうではないか。これが戦後の改革者たちの基本的な思いだったと思っています。

保坂
<教育勅語と教育基本法の関係について>「ご本では、教育勅語の効力がまだ続いているという意見が強かった。田中耕太郎文部大臣もそうであった。他方で、羽仁五郎氏は、『内容的に一点の瑕疵や誤りはなくても、専制君主の命令で国民に強制をしたというところで間違いがあった』と。こういった意見の対立があった(と紹介している)。」その後衆参両院で失効・排除に関する決議がなされた。その数年の間に何があったのか。

堀尾参考人
48年の国会での決議、これがあたかも、GHQからの指示があったかのようなごとき発言がこの(特別委員会の)中でもあります。しかし、それは私は間違いだと思います。

なぜなら皆さんお持ちのこの資料を見れば、まさに、基本法を成立させるその国会で、教育勅語と基本法の関係はどうなのか、というふうに質問されて、高橋文部大臣が、憲法と抵触する部分は効力を失う。教育基本法と抵触する部分は効力を失う。従ってこれは政治的なあるいは法的な効力を持つ部分というのは否定されたんだ。しかし、そこの中に盛られている道徳訓は、モーゼの十戒と同じように今も生きているんだと。そういう言い方をしているんです。これは高橋文部大臣。基本法の成立するその国会でです。

48年の国会での、衆議院と参議院での決議ですね、6月19日の。このときに、確かにGHQからの何かの申し入れがあったかもしれません。しかし基本的にこの基本法が成立するときに、この高橋文相の説明、同じことを田中耕太郎文部大臣も言っていたわけですけれども、そういう形でけりがついているんです。「生きている」ということを田中耕太郎が言ったことも確かですけれども、それは法的なものとして生きているわけではない。

法的というのは勅語は戦前では法的効力も持ったわけです。つまりいろんな学校関係の規則などに教育勅語の精神に基づいて、という形で、つまり法規の中に書かれることによって法律的な効力を持ったわけですね。だからそういう効力は持たないと。道徳訓として、という言い方をしたわけです。ですから、これをけしからんというのかという問題とはぜんぜん違うのですね。そういう仕方で既に決着がついていたわけです。

国会での議決に関しては、私が皆さんに差し上げた本のなで、220頁に私はあえて参議院の決議を引用しました。同じ日に衆議院でも決議がなされるわけですけれども、これは教育勅語の排除の決議。戦後改革のプロセスを見ると参議院の方が、冷静に法的にきちんとした扱いをしている。憲法教育基本法が成立したところでこれは効力を失っているんだということを書いている。そしてそれを提起したのは田中耕太郎である。参議院の文教部長として。これは非常に大事なわけで、これをGHQが指示したからこれをやったというのは非常に間違いであると私は思っています。

保坂
<日本教育法学会会長声明の第2点目において、法案2条について、態度を通して徳目を内面化させる仕組みであるとの批判がなされていることを取り上げて>「徳目を法律で掲げることにどういった問題点があるのか」

堀尾参考人
それは先ほど石井さんの質問にかなり答えたことですけれども、国家が、政府が、人間の内面に関与する、介入するということは抑制すべきである、というのが原理なんですね。ですから道徳律を法律に書くということは非常に問題がある

これは私が差し上げました小さな文章の中でも小林直樹先生の文章も引いておきました。田中耕太郎が書いたのは52年の1月、ジュリストの創刊のとき(でした。そこで)日本の法律の有りかたとしても書きすぎているんだという自戒の念(を表明している)。そして法律と教育の関係というものを捉える学問もまだ成立していない。そこをやる学問が必要だということも言っている。最後のところに言われているんです。それが教育法学なんですね。

教育法学会というのは、憲法学、行政学、教育法学それに重ねて、教育学の人たちが参加して、学会が作られているんです。まさに、法律と教育の狭間になっているものを、どういうふうに考えたら良いのか。法の限界をどう意識するのかということを含めて(研究をしている。)

逆に言うと、今度の改正案では16条に法律、法律と書いていますけれども、法の中には実は慣習法もあれば、条理法があるわけですね。法源として条理というものが非常に大事なんで、特に教育法に関しては条理が大切だ。条理というのは別に法律に書いてあるもんじゃない。それこそ人間の英知、子どもを育て、人間として育てるその実践の積み上げの中で、そして国家と教育との関係、政治と教育の緊張の中で、言うなれば創りあげられてきた条理というものがある。条理というのは事柄の本質、条理法というのは事柄の本質に即した法と言う意味なんですね。教育という事柄に即してはどうなのか。それが条理法なんです。

今度の16条はまったくそういった条理法的な領域があることを無視した。法律に書けば良い。さらに、政令だって良い。例えば東京都の10・23の通達、これも法律でしょ。そういう形で法律に従う教育が本当に豊かな教育を作り出すことになるかどうか。16条、17条問題というのは非常に問題だ。2条をつくったことと重ねて問題だと思っています。

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615(1) 教育基本法「改正」案は、廃案にはならなかったようである(教育基本法「改正」情報センター614日付http://www.stop-ner.jp/)。現在の与党の勢力からして当然の結果かもしれない。しかし、現在の国会の勢力図は、「郵政民営化」一本に絞った劇場型総選挙の結果であり、教育基本法「改正」や共謀剤に関する民意をきちんと確認したうえでのものではない。それぞれの法案に関する民意がどこにあるか、それを示すのは、さまざまの形態での反対の意思表明であり、その結集でしかないだろう。その意味で、緊急の署名活動の結果、1619名もの廃案声明に賛同の署名が集まったことも、重要であろう。

------http://www.stop-ner.jp/------

声明と賛同者募集(電子署名)結果のご報告
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杯対豪戦キックオフとともに開始した電子署名運動は、141000までに1619名の方の賛同を得ることができました。この人数と、お名前の公表を可とされた1468人分の名簿、そして声明を、本日、衆院・教基法特別委員会の理事全員と理事を出していない共産・社民の議員に提出しました。残念ながら、政府案を廃案にすることはできませんでしたが、賛同者数の多さは理事たちに驚きをもって迎えられました。今回、全国・世界の皆さんと気持ちが一つになったような気がしました。ご賛同とご協力、本当にありがとうございました。

 

 

 

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613日 教育基本法「改正」情報センター代表、佐貫浩・法政大学教授)が集めている署名の知らせを受け取った。現在の「改正」案を廃案にするように求める署名である。以下にもその情報を掲載しておこう。どの程度の賛同者がいるかわからないが、またどの程度、多数を制した与党が、あるいは対案を出した民主党が、耳を傾けるのか分からないが、やむにやまれぬ思い、現在の法律を守ろうとする気持ちが大きな声に結集することは、日本の将来を考えるとき、重要であろう、

 

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緊急 教育基本法「改正」案の廃案を求める声明への
賛同者を募集します

私たちは、

政府提出の教育基本法「改正」案の廃案を求める声明

の賛同者を募り、その一覧を衆議院・教育基本法に関する特別委員会理事懇談会へ提出する運動に取り組んでいます。ご賛同いただける方は、下記の方法で、ご協力ください。


(1) ↓下のイラスト部分をクリックすると、メールソフトが起動し、送信先アドレスが自動的に記入された送信画面になります。お名前(必須)とご所属(任意)記入して、送信して下さい。なお、理事会へお名前の公表を希望されない場合だけ、お名前の後ろにある「※公表不可(  )」欄の(  )内に○印をご記入ください。公表可の場合は空欄のままで結構です。

(2) お送りいただいた情報は、教育基本法「改正」センター事務局にて集約し、署名用紙に転記したものを、衆議院・教育基本法に関する特別委員会理事に提出します。お名前の公表を不可とされる方は、人数のみ集約して提出します。

(3) 6月13日、15:00までの到着分を第1次集約、6月14日、10:00までの到着分を最終集約とします。理事懇談会は6月14日、12:15から開催される予定です。

(4) メールアドレスは理事懇談会に提出いたしません。また、いただいた情報は賛同署名用紙作成以外の目的には使用しません。メールは、署名用紙に転載後、すみやかに破棄します。

賛同します!

※メールソフトがうまく立ち上がらない、文字化けするなどの場合は、お手数ですが、件名に「廃案を求めるセンター署名に賛同します」、本文に「お名前」(必須)と「ご所属」(任意)を記入の上、petition@stop-ner.jp宛に直接メールしてください。お名前の公表を不可とされる場合のみ、その旨付記してください。

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政府提出の教育基本法「改正」案の廃案を求める声明 (PDFファイル

教育基本法「改正」情報センター
2006年6月12日午後10時

今国会に政府によって提出された教育基本法案の審議は、衆議院教育基本法に関する特別委員会によって5月24日以降行われてきました、しかし、国民注視の下で多くの問題点が明らかになる中、法案の採決に至ることなく、6月18日の国会会期終了日を迎えようとしています。

来る6月14日の理事懇談会においては、与党が、継続審議、国会閉会中の審査会の開催を求めていることが伝えられています。

しかし、教育基本法「改正」情報センターは、以下の理由から、6月14日に開催される特別委員会理事懇談会において、政府法案の廃案を決定することを要求する緊急の声明を発表するとともに、インターネットを通じて多くの方々に本声明への御賛同をいただき、国会に提出することにしました。

1 特別委員会は一国会の会期中だけその活動を許されることを条件に設置されるものです。衆議院教育基本法に関する特別委員会が、その活動を許されている会期中に審議を終了し、採決する展望も生み出すことができなかった以上、法案は廃案とされるべきです。なお、論点が多数残されているのでまだ審議が必要であることが明らかになっており、しかも、地方公聴会も実施していないにもかかわらず、法案の強行採決をすることは論外です。

2 与党は閉会中審査における地方公聴会の開催を6月14日の理事懇談会で決定しようとしていると伝えられています。しかし、閉会中審査は、災害などの緊急事態など国会開会を待つことなく対応すべき事情がある場合にのみ、すべての会派の合意に基づいて行われるべきです。地方公聴会を閉会中に実施すべき理由はどこにもありません。与党が、多数の力によって、地方公聴会開催のために閉会中審査を行なうことを決定することに道理はありません。それは国会会期の原則を無視するものです。通常の法案はもとより、準憲法的な性格、あるいは、政府の表現を用いれば、“憲法と密接な関係を有する根本法”としての教育基本法案の成立のために用いられるべき手法では絶対にありえません。

3 小泉内閣総理大臣は、本会議および特別委員会における答弁で、与野党間の合意形成による会期中の法案成立を望む意思を、再三、表明していました。政府法案を提出した内閣の長自身がこのような条件を表明しているにもかかわらず、政府および与党からの歩み寄りを示す発言はまったくなく、与野党間の合意を形成の芽さえも生まれていません。総理大臣が示した条件が満たされなかった以上、すみやかに、廃案とすべきです。

4 次の臨時国会では首班指名が行われ、内閣総理大臣が交替することは確実です。前内閣総理大臣のもとで政府法案として提出された重要法案については廃案とし、新しい内閣総理大臣による対応を求めるのが筋です。法案は廃案とされるべきです。


事態は急を要しております。御賛同される方は、急ぎ、以下の方法で電子署名をしていただくとともに、多くの方々に賛同の環を拡げてくださいますようお願いいたします。


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6月12日(2) 府大教ニュースが評価の基本原則を認めさせたこと報じている。「全国国公私立大学の事件情報」(本日付)で知った。問題は、その原則を、だれがどのように実行するかである。言葉だけはあっても、実際には、多様な経路で一次評価者・二次評価者が不当な評価を為しうるようになっていれば、被評価者からの異議申し立てのシステム、その実質的保障と機能がなければ、組織は腐敗する。

大学自治との関係で言えば、本学のように一次評価者、二次評価者が被評価者からの同意確認なしに(評価する権限を持つものが、評価の権限に値するかどうかの認定・同意なしに)、定款などに基づき経営サイドから任命されるシステムでは、5原則の実質的機能が問題となるのであり、言論・思想・精神活動の自由は大幅に制限されてしまうことになろう。自立的自治的組織が、制度上、保障されていないなかで、5原則はどのように実質が保障されるであろうか?

現在の大学で唯一自立的自治的な組織として存続している教員組合の重要性がますます高まりそうである。

 

 

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6月12日(1) 本学元教授・佐藤真彦先生のHPに堀尾東大名誉教授の教育基本法「改正」案に反対する意見(国会における特別参考人の意見)が掲載された。現在の教育基本法の根本精神とその誕生の由来・つくった人々の思いが簡潔に述べられている。侵略戦争に対する反省という、日本人の真の意味での愛国的精神の発露・発現として教育基本法の基本精神がある。一人一人の人間の尊厳、その普遍的な追求こそが世界平和の創造・構築であるという見地。排外的排他的ではない愛国、それは人類(人間)の一人一人の尊厳を基礎においたものであるという。

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         先人たちが過去の反省を踏まえて、新しい人間をつくり、その人間を軸に新しい国をつくろうとした。その際中心になるのが一人ひとりの人間の尊厳です。真理と平和を希求する人間です。その人間をつくることが教育基本法の精神です。それが新しい世界を開いていく。けっして一国の平和主義じゃないのです。日本の平和主義を世界に広げていくという使命の自覚を通して、憲法をつくり教育基本法をつくったのです。

 

人間を思い作った教育基本法 衆院教育基本法特別委参考人質疑 堀尾東大名誉教授の発言(要旨)

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6月5日(3) 久しぶりに、「意見広告の会」のニュースをコピーしておこう。教育基本法「改正」案の問題点を、教育法学会がきちんと指摘しており、一人でも多くの人が、教育基本法「改正」の根本問題を知るためには、重要な資料である。

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「意見広告の会」ニュース346

*ニュースの配布申し込み、投稿は、
  qahoujin at magellan.c.u-tokyo.ac.jp まで、お願い致します。
*迷惑メール防止のため@atに書きかえています。アドレスは@に直して下さい。
*「投稿」の場合は、その旨を当初から明確にしていただけると、確認のための時間が
かかりません。ご氏名、ご所属等の掲載方法などもご指定下さい。


** 目次 **
1−1 教育法学会:政府の改正案廃案に 国家統制の危険性訴え
       『毎日新聞』2006528日付
1−2 教育基本法案の廃案を求める声明
       2006527日  日本教育法学会 会長 伊藤
2−1 教育基本法改正:「改正案廃案を」県内文化人らがアピール
             
『毎日新聞』奈良版 200661日付
2−2 教育基本法「改正」法案に反対し、廃案を求めるアピール
             
5月31日
3 NHKへの抗議声明・続報
              NHK
受信料支払い停止運動の会
       NHKにおける政治介入の問題を考える市民の広場
4 都教育庁の電話
        毎日新聞 記者ノート 2006.05.29 東京朝刊

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1−1 教育法学会:政府の改正案廃案に 国家統制の危険性訴え
             
『毎日新聞』2006528日付

 教育学者らでつくる「日本教育法学会」(会長、伊藤進・駿河台大法科大学院教授)
は27日、名古屋市内で定期総会を開き、政府が今国会に提出している教育基本法改正
案について「現行法を全く異質な新法に置き換えるものだ」とし、廃案を求める緊急声
明を出すことを決めた。

 同学会が声明を出すのは1970年の発足以来、初めて。30日に東京都内での記者
会見で声明を出すほか、公開シンポジウムなどを重ねて法案の問題点を訴えていく。

 声明文は法案について、「自主的・自律的な人格形成の営みを保障している現行法
国家による教育の統制を正当化するものに転換させている」と指摘。

 愛国心など多くの徳に関する事項を「教育目標」に掲げて道徳規範を強制し、思想と
良心の自由を保障した憲法にも明らかに反するとしている。民主党案についても「同様
の問題を含んでいる」と反対している。【阿部浩之】


1−2 教育基本法案の廃案を求める声明
                           2006527
                        日本教育法学会 会長
                      伊藤 (明治大学名誉教授・
                      駿河台大学法科大学院教授)

 政府は、今国会に教育基本法案を提出した。本法案は、現行教育基本法を全面改正す
ることにより、実質的に現行法を廃棄し、これとは全く異質な新法に置き換えるものと
なっている。そこには、以下のように看過することのできない重大な問題点が含まれて
いる。

 第1に、国民一人ひとりの自主的・自律的な人格形成の営みを保障している現行法を
、国家による教育の権力的統制を正当化する法へと転換させている点である。教育の自
主性を保障する現行101項を、「教育は、この法律及び他の法律に定めるところに
より行われるべきもの」と変えた法案161項には、法律の力によって教育を統制しよ
うとする志向が明瞭にあらわれている。

 第2に、「愛国心」や「公共心」をはじめとする多くの徳目を「教育の目標」(法案2
条)として掲げ、「態度を養う」という文言を介して、道徳規範を強制的に内面化させ
る仕組みを導入したことである。法案2条の主要部分は告示にすぎない学習指導要領の
「道徳」の部分を法律規定に格上げすることにより、道徳律に強制力を与えるもの
であるが、これは思想及び良心の自由を保障する憲法19条に明らかに抵触する。

 第3に、教育に関する「総合的な」施策の策定・実施権限を国に与え(法案162項)
、政府に「教育振興基本計画」の策定権限を与えることにより(法案17条)、国が教育
内容の国家基準を設定し、その達成度の評価とそれに基づく財政配分を通して、教育内
容を統制する仕組みを盛り込んだ点である。この仕組みにより、すでに進行している競
争主義的な格差容認の教育「改革」がますます加速することになる。

 今回の法案は、国民的な議論を経ることなく、密室で作成された。提案に際して、
行法を改正しなければならないことの説得的な理由は何ら示されていない。憲法と一体
のものとして教育のあるべき姿を定めた《教育の憲法》を改変するには、あまりにもず
さんな手続といわなければならない。

 政府案に対して提出された民主党の「日本国教育基本法案」は、政府案と同様の問題
点を含んでおり、また法案として一貫性・体系性を欠いている。

 日本教育法学会は、1970年の学会創設以来、教育の自由を研究の主軸に据えてきた。
また、教育基本法改正問題が現実の政治日程にのぼってきた2001年以降は、特別の研究
組織を設けてこの問題に取り組んできた。この研究の成果を踏まえ、本学会会長として
、内容的にも手続的にも多くの問題をはらむ政府法案はもとより、民主党対案について
も、その速やかな廃案を強く求めるものである。


2−1 教育基本法改正:「改正案廃案を」県内文化人らがアピール
             
『毎日新聞』奈良版 200661日付

 政府・与党が今国会に提出している教育基本法改正案について、県関係の教
育研究者や文化人の有志ら10人が31日、法案廃案を求めるアピール文「教
育基本法『改正』法案に反対し、廃案を求めるアピール」を発表した。近く県
内の各政党や、市民団体に送付するほか、法案反対の集会などで配布するとい
う。

 奈良教育大の生田周二教授(人権教育)と山田昇・奈良女子大名誉教授(近
代教育史)がアピール文を作成して呼びかけ、大久保哲夫・奈良教育大名誉教
授(生涯教育)ら教育研究者のほか、佐伯快勝・真言律宗(西大寺)宗務長な
どの宗教者や弁護士、児童文学者が賛同した。

 アピール文は、現在の改正案について、国民に責任を求める意味合いが随所
にあり、戦前の教育勅語のような道徳的な性格を帯びている国や郷土などへ
の公共への奉仕の精神や、道徳心、愛国心を強調する内容になっているなど
と指摘して、廃案を求めている。【大森顕浩】


2−2 教育基本法「改正」法案に反対し、廃案を求めるアピール
             
5月31日
                生田周二(奈良教育大学教授)
                岩井宏實(帝塚山大学名誉教授・前学長)
                梅村佳代(奈良教育大学教授)
                大久保哲夫(奈良教育大学名誉教授・前学長)
                佐伯快勝(真言律宗総本山西大寺宗務長)
                高見敏雄(日本キリスト教団牧師)
                中塚 明(奈良女子大学名誉教授)
                藤田 滋(弁護士)
                溝江玲子(児童文学者・作家)
                山田 昇(奈良女子大学名誉教授)

 奈良県にお住まいのみなさん。奈良県におつとめのみなさん。
 いま、教育基本法「改正」法案が提出され、政府・与党は今国会で可決成立をさせよ
うとしています。
 教育基本法は、子どもたちのすこやかに育む日本の教育と日本の将来にとって教育の
「憲法」ともいわれる非常に重みのある法律です。
 私たちは、教育基本法「改正」法案が、国民的な討論を経ないままに、短期間の審議
を経るだけで多数決により採択されることは絶対に認めるわけにはゆきません。私たち
は、今国会に提出されている教育基本法「改正」法案について、次の諸点で疑問を呈す
るとともに、廃案を求めるものです。
 第一の疑問は、教育基本法の位置づけが逆転し、戦前の教育勅語のような性格を持っ
ている点です。そもそも現行の教育基本法は、過去の過ちを反省して、新しい憲法のも
とで国が国民に対して行う教育の基本的な原則を定めたものです。これに対して、今回
の「改正」法案では、現行法の基本的な原則を曖昧にするとともに、国民の側に責任を
求める意味合いが随所に表れ、道徳的な性格を帯びています。
たとえば、「第六 学校教育」において「教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要
な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めること」と勉学に取
り組む姿勢が問われています。「第十 家庭教育」では「父母その他の保護者」の責任
、さらに「第十三 学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力」では関係住民の「役
割と責任を自覚する」ことなどが説かれています。
 第二の疑問は、一人ひとりの個人が大切にされるというよりは、国や郷土などの「公
共への奉仕の精神」がくりかえし強調されていることです。現行法の前文では「普遍的
にしてしかも個性豊かな文化の創造」がうたわれ、個性の多様性と自発性が強調されて
いますが、「改正」案では、しきりに「態度を養う」という表現が登場しています。そ
して、「道徳心を培う」ことを強調し、一定の行動スタイルや枠にはめこもうとする意
図さえ感じさせられます。その延長線上にあるのが、「第二 教育の目標」の「伝統と
文化を尊重し」に見られる、いわゆる「我が国と郷土を愛する」「愛国心」の強調です

 第三の疑問は、教育行政が本来、積極的に行うべき教育条件整備への言及がなくなっ
たことです。「改正」案の「第十六 教育行政」では、教育は「この法律及び他の法律
の定めるところにより行われるべきもの」とすることで、行政機関が教育内容に関する
様々なことがらにこれまで以上に口出しできる枠組みを作ろうとしています。重大な問
題は、教育基本法第十条に定める「教育は不当な支配に服することなく、国民全体に対
して直接に責任を負って行われるべきものである」「2 教育行政は、この自覚のもと
に、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければなら
ない」という教育の自立性、教育行政のありかたを根本から変えようとしていることで
す。
 第四の疑問は、項目が増えたことで教育基本法というよりは、下位の法律の寄せ集め
的な性格が強まっている点です。改正法案では「生涯学習の理念」「大学」「私立学校
」「教員」「家庭教育」「幼児期の教育」「学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協
力」「教育振興基本計画」が新しい項目として入り、「男女共学」が削除されました。
新設された項目を見ると、政府・与党が近年、関心をもって推進してきた施策が中心に
なっていると思われます。つまり、今回の改正法案は、長期的に21世紀の教育のあり方
を展望するというよりは、児童虐待、いじめ、学級崩壊、学ぶ意欲の低下など、現在の
子どもたちや日本社会が置かれている問題状況への「処方箋」としての位置づけを、教
育基本法の改正に期待しているものといえます。
 以上のような疑問の根本には、第一点目で述べたように、教育基本法の発想の逆転が
あると考えられます。国の教育行政の基本を明らかにした現行法の理念をないがしろに
し、現在の目先の問題状況に対応するために、国民に一定の価値観、行動様式をとるよ
うに強いる「責めたてる教育」観が中心になっています。このことは、民主的な国家・
社会の形成者としての個人の人格形成、主権者の教育といった、戦後、大切にしてきた
教育の基本を葬り去り、戦前への回帰をめざすものといえます。
 「公共の精神」「伝統と文化を尊重」「豊かな情操と道徳心を培う」「規律を重んじ
」などといった文言は、最近の問題状況を受けてあらためて登場してきた言葉ですが、
現行の教育基本法ではより具体的に、「実際生活に即し、自発的精神を養い、自他の敬
愛と協力によって」(教育の方針)、「個人の価値をたっとび、勤労と責任を重んじ、
自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成」(教育の目的)という方針が規定さ
れています。現行法の表現は、より主体的、自主的に、実際生活を切り開いていく能力
を育成しようという意図が込められています。現行教育基本法の精神こそが、時代の変
化に柔軟に対応できるとともに、多文化化し、多様化する時代に沿った方向性を先取り
していると考えることができます。
 今回提出の「改正」法案は、個人の力の発現に期待するというよりは、それに枠をは
める危険性さえ伴った法案であり、廃案をつよく求めるとともに、現行の教育基本法を
生かした教育改革の推進を求めるものです。

2006
531


3 NHKへの抗議声明・続報
                 NHK
受信料支払い停止運動の会
         NHKにおける政治介入の問題を考える市民の広場

永田浩三、長井暁氏を番組制作部署からはずすというNHKの事実上の報復人事に抗議す
る声明への賛同を530日に野中章弘(アジアプレス・ネットワーク代表)と醍醐聰(
東京大学教員)の連名で呼びかけたところ、実質半日のうちに375名の方々(4団体を
含む)から賛同が寄せられました。

31
日、呼びかけ人2名を含む4名で、16時過ぎにNHKの西口へ出向き、NHK広報と視
聴者センターの担当者に橋本会長宛で抗議声明と賛同者名簿を手渡しました。
なお、抗議声明と賛同者一覧は「NHK受信料支払い停止運動の会」のHP(ブログ版)に
掲載されています。
http://blog.goo.ne.jp/shiharaiteishi/

また、提出後にも25名の方々から賛同が寄せられています。その名簿は次のとおりです

(上記ブログに掲載)

マスコミはこの件についてほとんど報道していませんが、短期間にこれだけの賛同が寄
せられたことは政治におもね、真相解明に背を向け続けるNHKに対する批判が決して衰
えていないことを示すものと思われます。こうしたエネルギーを持続させ、実効性のあ
る運動に発展させる戦略を今後、各市民団体、メディア専門家の方々と相談し、迅速に
提起していきたいと考えています。
皆様のご支援に対するお礼を兼ねてひとまずのご報告をさせていただきます。
                           (文責:醍醐聰)


4 毎日新聞 記者ノート:都教育庁の電話
      5/29 
 某日午前。東京本社の教育取材班の電話が鳴った。相手は、東京都教育庁指導企画課
の職員。都教育庁と言えば、毎日新聞が報じた「職員会議での挙手・採決禁止通知」で
全国に勇名をはせた役所である。

 その日の朝刊には、別の問題で都内のある小学校校長の肉声を匿名で紙面に載せてい
た。電話の主は「この学校名を教えてくれませんか」。この問い合わせにはたまげた。

 「残念ながら教えられません」「せめて自治体名でも……」「何を言ってるんですか
。あなた方に知られないようにする目的で、匿名にしてるんじゃないですか」「だめで
すか」「お引き取り下さい」

 「取材源(ニュースソース)の秘匿」は、新人記者が最初に学ぶ大原則だ。記者に本
音をしゃべって我が身が危うくなるなら、取材に応じる者などいなくなる。絶対にない
がしろにできない。

 都庁官僚が「取材源の秘匿」を知らないはずはない。それでも電話をかけてくる都教
育庁。現場の先生たちのやむにやまれぬ問題提起をつぶそうとするのは、本当は現場か
らの告発が怖いのだろう。どこかの独裁者のようだ。【井上英介】

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6月5日(2) 「教育基本法『改正』」案に対する反対ビラを2日に配布したが、200人ほどが受け取ったということである。

教育基本法『改正』(=改悪)の法案は、審議延期になっただけである。国民がこの法案が本当にいいのかどうか、考える時間が与えられたわけである。現在の法律が民主主義的原則の上で、第二次大戦の反省の上でつくらられたものとして、すぐれたものであることをかみ締めることは、きわめて重要である。民主主義的法律を守ることは、国民の意志として重要である。

「郵政民営化の是非」だけを掲げて圧倒的多数を取った小泉政府・与党が、その多数にまかせて、選挙で問いもしなかった教育基本法案や共謀剤法案など、国民全体の民主主義のあり方・憲法体制に関わる法律を強行採決してしまうことになれば、まさに重要論点を隠した詐欺に基づいた選挙(国会解散自体の合法性も問題になっているが)で憲法体制を破壊することになるといえよう。憲法体制を根底から崩すような自衛隊のイラク派兵や米軍再編問題と連動して、たいへんなことになるであろう。

国旗・国歌の法制化と東京都における強制問題を考えると、教育基本法が改正された場合の国民への拘束力、小さな子供たちへの教育を通じる強制力のほどは、計り知れないものとなろう。

 

---------- 

「教育基本法改正」って

 

教育基本法「改正」は正しいのでしょうか?

 

横浜市大の学生・教員のみなさん!

 いま政府・与党は、国会で教育基本法「改正」案を可決させようとしています。そのねらいは、おおまかに分けると以下の四つのことがらです。

 

@ 「愛国心」の押しつけ/心の自由の否定

 愛国心を持つかどうか、持つ場合はどのようなかたちで持ったり示したりするかは、個人が自由に判断すべきことであり、人格の自由な発展を掲げる現行の教育基本法は、それを保障しています。

 ところが、「改正」案は、どのような愛国心を持つべきかまで政府が強制できるようにするものです。「日の丸」・「君が代」の強制もねらいに含まれます。

 法案は、自由な人格の形成を否定し、心の自由を奪おうとしているのです。

 

A 政府・政治権力による、教育の全面的な支配

 現行法においては、政府が教育の内容を支配することを禁止しています。

 ところが「改正」案では、どのような価値観を持つべきかすら決めて、現場に強制することを可能とします。

 そうなれば、大学も無事ではありません。「改正」案のような法のもとでは、今でも脅かされている学問の自由と大学自治の原則が踏みつぶされるでしょう。

 さらに、家庭・地域などを通じて、全面的に教育が統制されることになります。

 

B 男女平等原則の否定/さまざまな差別・格差

 現行の基本法は男女平等を保障していますが、「改正」案はそれを削除しています。そのほかにもさまざまな面で、教育の機会の平等な保障をやめようとしています。

 

C 平和主義の否定/憲法改悪・戦争する国民づくり

 現行の基本法は日本国憲法の基本原理、とりわけ平和主義に基づくことをうたっていますが、「改正」案は平和主義原則を切り捨てようとしています。

 政府・与党は、憲法9条を変更して、戦争する国家体制を築こうとしています。そのような戦争への道をはばむ教育基本法をまずは変えてしまい、戦争する国民を作り出そうとするのが、この「改正」案のねらいなのです。

 

 こんな法律を作らせていいのでしょうか?


法案に反対を!

 わたしたちは、こんな法案は許せないと思っています。

 いっしょに法案に反対し、廃案を求めましょう。

 

まだ間に合う! 声を挙げましょう!

 「それでも、与党が決めると言ってるからしょうがない」とあきらめている人もいるかもしれません。

 でも、まだ間にあいます。世論の抵抗が強ければ、「改正」法案はストップできます。みんなのパワーで強引な悪法づくりをやめさせましょう。

 

よくわからないと思う人、だからこそ、

法案採決にストップをかけましょう

 上に挙げた問題点については、十分な議論はなされていません。少なくとも、強引に可決せずに、社会全体ではば広くみんなで議論したうえで決めるべきですよね。今急いで採決することには反対しましょう。

 

 

連絡してください。

 

 このことに関心を持ったあなた! ぜひ連絡してください。

 ほかの学生や教員といっしょに、もっと考えてみませんか?

 下記までメールでどうぞ!

 

テキスト ボックス: 横浜市大学生・教員有志(参加も募集中)
 
教員: 上杉忍・乙坂智子・倉持和雄・中西新太郎・永岑三千輝・藤山嘉夫・山根徹也
   
問い合わせ先(是非、ご連絡を):
        yamane@yokohama-cu.ac.jp(山根)
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


参考

 サイト

 教育基本法の改悪を止めよう!全国連絡会議  http://www.kyokiren.net/

 図書

高橋哲哉『緊急報告 教育基本法「改正」に抗して全国各地からの声』(岩波ブックレット)2004年

 

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6月5日(1) 米軍再編問題と関連するのが、池子における米軍住宅であり、その拡大である。神奈川県・逗子市と国との間での協定を踏みにじる形で、米軍住宅建設が進められようとしている。逗子市がその契約違反を訴えて裁判をしている。いま、どこまで裁判はすすんでいるのか?

 

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****池子の森シンポジウム2006617日(土)******
池子・金沢・円海山・横須賀の環境を守るシンポジウム
横浜・金沢・横須賀の環境が危ない:今ならまだ間に合う!

企画書(案)

2006
517
修正:2006年5月31日

1.開催の趣旨:
 池子の森は首都圏に残された大規模な緑地(約290ha)であり、近郊緑地特別地区の円海山地区の約3倍の広さです。横浜・鎌倉から三浦半島に広がる
森の架け橋となっており、多摩丘陵にもつながる「いるか丘陵」(慶応大学岸由二教授)と言われるグリーンベルトの欠かせない緑地となっています。多様な
植生があり、自然の宝庫です。高等植物の種類は736種と円海山(411種)の1.8倍。鳥類は天然記念物のオジロワシや希少種のオオタカ・ハヤブサ・
ハチクマ・チョウゲンボウ・フクロウなど109種、昆虫は808種も生息しています。このまま、後世に引き継ぎたい大切な自然の博物館です。

2003
年、この池子の森の横浜市域側(37ha)に4カ所の市内米軍基地返還と引き替えに米軍住宅を800戸増設すると日米両政府は発表しました。も
し、米軍住宅増設を許せば、緑地が大幅に減少し、生態系が破壊され、生物多様性は失われてしまいます。さらに、米軍再編問題から横須賀基地に原子力空母
を就役させるという話も具体化しつつあります。池子は横須賀から6圏内ですので、核の危険にさらされかねません。

横浜市金沢区及びその周辺は、水とみどりに恵まれた環境良好な地域ですが、「横浜金沢シンシア産廃焼却工場建設計画」、また、近郊緑地特別地区の円海山
周辺では、「上郷開発計画といわれる市街地調整区域の大規模開発計画」等によって、環境破壊の危機が迫っています。しかしながら、今、市民が立ち上がれ
ば、これらの開発や環境破壊を阻止することは可能です。是非、多くの方のご参加をお願いします。

2.開催日時と会場:

2006
617日(土)1330―16303時間)

会場=横浜市立大学ビデオホール(横浜市金沢区瀬戸、京急金沢八景駅徒歩5分)(予定)

3.シンポジウムのプログラム:

開場(参加受付開始): 13:00(池子の森のVTR放映予定)

基調講演:13:3014:10(40分間)
 安田八十五(関東学院大学経済学部教授・工学博士:池子の森を守る会共同代表)
 演題『池子の森を守ることの地球的・世界史的意義池子の森の価値は世界遺産クラス-

休憩:14:1014:20(10分間)

パネル討論:14:2016:30(130分間)

パネラーと発題:

沢光代(元逗子市長・関東学院大学非常勤講師)『池子裁判地裁判決の意味:池子地区米軍住宅追加建設は3者合意への契約違反』

呉東正彦(弁護士・原子力空母の横須賀母港問題を考える市民の会共同代表)『原子力空母母港化問題から見た池子地区米軍住宅追加建設問題の意味』

佐々木美智子(横浜リサイクラー会議・反焼却市民の会)『横浜金沢シンシア産廃焼却工場建設計画による環境破壊金沢区の児童の喘息罹患率は横浜でワー
スト1

金田平(神奈川県自然保護協会事務局長)『上郷開発計画による円海山の危機』

コーディネーター:安田八十五(関東学院大学経済学部教授・環境政策学・工学博士)

16:3017:00『池子の森を守る会』総会

4.主催:米軍住宅増設をやめさせ、基地返還と池子の森を守る会

主催:関東学院大学環境・地域政策研究会

共催:ヨコハマ市民環境会議・横浜リサイクラー会議

5.参加費は無料、先着順(先着80名):ただし資料代は必要
6.連絡先; 事務局0452410005:   ホームページ: http://www.ikego.com
 または、関東学院大学経済学部安田八十五研究室TEL&FAX: 045-786-9802,
 Email: yasuda85@kanto-gakuin.ac.jp ホームページ:http://www.yasuda85.com

****************************************
ご案内:池子の森・現地野外調査:講師=澤光代元逗子市長他、200671日(土)945−1430、京急逗子線神武寺駅集合、参加希望者は、
氏名・振りがな・生年月日・自宅住所・電話を記入し、安田八十五に電子メールまたはファックスで612日(月)までに申し込む。米軍基地の中に入りま
すので、当日は顔写真付の身分証明書(運転免許証またはパスポート)の提示が必要です。
***********ここまで*************************

 

 

 

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6月2日 教育基本法改正反対の声明(呼びかけ・ビラの配布)に賛同し、教員有志の一人として呼び掛け人に加わった。本日、そのビラがシーガルホール食堂前で配布された。次ぎの時間の受講生から、「受け取りました」との反応があった。

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「教育基本法改正」って

 

教育基本法「改正」は正しいのでしょうか?

 

横浜市大の学生・教員のみなさん!

 いま政府・与党は、国会で教育基本法「改正」案を可決させようとしています。そのねらいは、おおまかに分けると以下の四つのことがらです。

 

@ 「愛国心」の押しつけ/心の自由の否定

 愛国心を持つかどうか、持つ場合はどのようなかたちで持ったり示したりするかは、個人が自由に判断すべきことであり、人格の自由な発展を掲げる現行の教育基本法は、それを保障しています。

 ところが、「改正」案は、どのような愛国心を持つべきかまで政府が強制できるようにするものです。「日の丸」・「君が代」の強制もねらいに含まれます。

 法案は、自由な人格の形成を否定し、心の自由を奪おうとしているのです。

 

A 政府・政治権力による、教育の全面的な支配

 現行法においては、政府が教育の内容を支配することを禁止しています。

 ところが「改正」案では、どのような価値観を持つべきかすら決めて、現場に強制することを可能とします。

 そうなれば、大学も無事ではありません。「改正」案のような法のもとでは、今でも脅かされている学問の自由と大学自治の原則が踏みつぶされるでしょう。

 さらに、家庭・地域などを通じて、全面的に教育が統制されることになります。

 

B 男女平等原則の否定/さまざまな差別・格差

 現行の基本法は男女平等を保障していますが、「改正」案はそれを削除しています。そのほかにもさまざまな面で、教育の機会の平等な保障をやめようとしています。

 

C 平和主義の否定/憲法改悪・戦争する国民づくり

 現行の基本法は日本国憲法の基本原理、とりわけ平和主義に基づくことをうたっていますが、「改正」案は平和主義原則を切り捨てようとしています。

 政府・与党は、憲法9条を変更して、戦争する国家体制を築こうとしています。そのような戦争への道をはばむ教育基本法をまずは変えてしまい、戦争する国民を作り出そうとするのが、この「改正」案のねらいなのです。

 

 こんな法律を作らせていいのでしょうか?


法案に反対を!

 わたしたちは、こんな法案は許せないと思っています。

 いっしょに法案に反対し、廃案を求めましょう。

 

まだ間に合う! 声を挙げましょう!

 「それでも、与党が決めると言ってるからしょうがない」とあきらめている人もいるかもしれません。

 でも、まだ間にあいます。世論の抵抗が強ければ、「改正」法案はストップできます。みんなのパワーで強引な悪法づくりをやめさせましょう。

 

よくわからないと思う人、だからこそ、

法案採決にストップをかけましょう

 上に挙げた問題点については、十分な議論はなされていません。少なくとも、強引に可決せずに、社会全体ではば広くみんなで議論したうえで決めるべきですよね。今急いで採決することには反対しましょう。

 

 

連絡してください。

 

 このことに関心を持ったあなた! ぜひ連絡してください。

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教員: 上杉忍・倉持和雄・中西新太郎・永岑三千輝・藤山嘉夫・山根徹也

問い合わせ先(是非、ご連絡を):

        yamane@yokohama-cu.ac.jp(山根)

 

 

参考

 サイト

 教育基本法の改悪を止めよう!全国連絡会議  http://www.kyokiren.net/

 図書

高橋哲哉『緊急報告 教育基本法「改正」に抗して全国各地からの声』(岩波ブックレット)2004年 

 

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組合週報(2006.6.1)をお送りいたします。
添付ファイル、組合HPでもご覧になれます。


横浜市立大学教員組合週報
 
組合ウィークリー
2006.6.1
もくじ
●  4
25日の団体交渉記録(確定版)
 就業規則改正にかかわる大学当局の杜撰かつ違法な手続き
 教員評価制度の検討作業が進行中――組合への速やかな情報開示を求めていきます


----------------------------------------------
4月25日の団体交渉の記録が確定しました
4月25日におこなった団体交渉の概要については、先の組合ニュースでお知らせしていますが、この団交における当局側回答、および双方の発言に関する記録が確定しましたので、以下のとおりお知らせいたします。

2006
425日団体交渉の記録(横浜市立大学・教員組合)

2006
42517:4519:15 第一会議室にて
出席者:
(経営側)松浦・副理事長、田中・事務局長、田邊・学務センター長、松山・人事担当課長、竹前・経営企画統括課長、渡邉・人事担当係長、植木・給与担当係長、神内・人事企画担当係長
(組合側)岡・執行委員長、真鍋・副執行委員長、本宮・書記長、和仁・書記次長、上杉・独法化対策委員、中西・独法化対策委員、随・独法化対策委員、山根・独法化対策委員

組合側発言 今回、申入れから2ヶ月たってようやく団交が実現するというのは極めて異例なことであり、正常な労使関係とはいえない。当局の対応は労働法に定められた誠実対応義務違反にあたり、極めて遺憾であると考えている。団交開催の遅れについてどのように認識しているか、まず回答を求める。
当局側発言 皆さんが「何をやっているんだ」と言われるのは当然と認識している。本来ならば法人化の初年度に幹部の主要メンバーを横浜市に依存しない体制を作るべきであったが、なかなかできなかった。新しいスタッフを迎えてそういう体制を作るための準備の必要があって、時間が経ってしまった。年度末にもやるように事務方へは何度も指示をしていたが、対応をとりきれなかったということをここでお詫びしたい。
組合側発言 今回は遅延したが、今後は正常かつ円滑にやっていきたいという表明と受け取るが、それでよろしいか。
当局側発言 そのつもりでいる。今日来ているスタッフは皆そのつもりでいる。

組合側発言 申し入れ書を提出した時点から、時間の経過とともに事態が変わってきている。今日の重点として、以下3点について回答を求める。

第1点――平成18年度賃金に関する質問についての組合側要求
 平成18年度賃金に関する件について、327日に一方的な賃金凍結方針が人事当局から通告された。45日の新年度はじめての給与支払い直前に、突然給与水準の凍結を通告し、当方の抗議(44日付け)にもかかわらず、昨年度水準のままで給与支払いを強行したのは実質的な労働条件の不利益変更であり、労働法違反に当たる。このような労務管理手法は今後とも絶対に認めることはできない。平成18年度賃金に関する団体交渉を可及的速やかに開始すべきである。この点の確認をいただきたい。

第1点についての当局側回答
 法人化後の賃金体系について、特に教員職の給与はどうあるべきかについて、まだ十分検討されていないので、十分議論した上で考えたい。今年度については910月頃に市の人事委員会勧告もあり、公租公課の負担増の実態も踏まえて考えたいので、少し時間をいただきたい。

組合側発言 今年度については凍結で終わりということではなく、改めて協議の場を設けるという趣旨を確認されたい。協議の結果、今年度上げるとなれば4月に遡って支払いをすることを確認いただきたい。
当局側発言 もう一度きちんと説明し、協議の場を設けることをする。遡って支払いをするかどうかという点は、それを含めて話し合いの対象とする。
組合側発言 定期昇給に関する「経過措置」をなおも続けるべきだと考えるのが自然ではないか。
当局側発言 皆さんのお考えがそうだということは理解した。年俸制だから定期昇給はないという基本原則を前には言ったが、単にそういう言い方ではなく、市の人事委員会勧告等も受け止めて検討するということが必要ではないかということで考える。

2――教員評価制度についての組合側要求
 学長は44日の国際総合科学部教授会で教員評価制度の「プリテスト」を本年度実施すると宣言した。当方はこの点について同日、当局への申し入れをおこない、翌5日に声明を発表した。教員評価制度の内容、評価と賃金・処遇などとの関係について具体的な説明を行わずに、一方的に人事評価制度のプリテスト実施を宣言することはきわめて遺憾であり、労働法違反だと当方は考えている。プリテストの実施以前に、その内容について労使間の誠実な協議が行われるべきであり、それをせずに強行するようなことになれば教育現場に混乱が生ずることが予想される。この点について当局の認識を質したい。

2点についての当局側回答
 昨年3月までにある程度できていた教員評価の枠組みは、実際に実施するには使い勝手の悪いものであったので、抜本的に作り変えることになり、ある程度まとまった案を早ければ5月くらいには示せると考えている。まだ検討中の案であるが、秋以降一部の人たちを対象として試行をしてもらって、もう一度使い勝手を検討した上で、来年度以降その範囲を全員に拡大し、それから本格実施をしていくということも想定している。処遇にどう反映させていくかということはそれから先の話になるが、労働条件に関わることであるから組合と協議する。年俸への反映ということ以上に重要なのは、大学としてどのような研究・教育をしているかという自己点検・自己評価に使うということであると考えている。

組合側発言 評価制度の制度作りに当たっては、自己点検・自己評価のための制度をどう作るかという基本的な立場に立って、教員の協力を得ながら進めていくこと、それに関しては組合と協議しながら進めていくことを確認していただきたい。
当局側発言 処遇に反映させるときには当然協議する。その前の制度作りの段階においても、十分意見を聞き、話し合いながら進めていきたい。
組合側発言 「普通にやっていれば」という話があったが、5段階相対評価のような制度では、皆が努力しても、2以下で普通でないということになってしまう人が出てくることが考えられる。制度作りにあたっては、公平・公正・公明で、同時に評価を受ける者にとっても納得性の高いものにしていただかないと、制度自体が成り立たないことに留意していただきたい。民間企業のような評価のやり方を考えているのか。
当局側発言 もちろん、考えていない。研究教育の世界においては、営利企業のように数字で目標達成何パーセントというのはできない。民間企業のような相対評価のやり方をわれわれは考えていない。

3――昇任人事問題についての組合側要求
 昇任人事問題については、昨年度末に、教員側に昇任審査選考用の書類提出などを急がせておきながら、その後何の音沙汰もない。4月冒頭での昇進発令を期待して、短期間に非常な努力を払った教員たちの間には、不信、不安が渦まいている。この異常事態に関する経過説明、ならびに今後の日程について明確な説明をいただきたい。

3点についての当局側回答
 昇任人事の経緯については、もっと早くお知らせすべきことであった。41日付で医学部・病院については昇任人事を行なった。医学部医学科および看護学科で5名、付属病院7名、センター病院9名であり、そのうち教授昇任が1名(看護学科)、他は準教授への昇任である。内規の基準に則り、順位をきちんとつけて行なったものであり、病院の場合は診療に影響が出る、医学部の場合もポジションが空いているということがはっきりしていたからであって、例年の範囲内の数であった。八景キャンパスについては、旧学部のやり方で候補者を挙げていただいたが、文系理系の違いもあり、学長のレベルで納得が得られなかったので、学長が人事委員会への諮問をしなかった。もう一度推薦者へのヒアリングのし直しをして学長の納得を得次第、人事委員会にかけていただく、旧学部例年ならば何人くらいという枠におさめる、その作業に今入っている。

組合側発言 八景での昇任人事は5月中にも行なわれるということか。
当局側発言 それは進捗状況によるが、早急に、作業が整い次第人事委員会にかけていただく準備がある。
組合側発言 大学にとって重要なピア・レビューは行っているのか。
当局側発言 やっているかどうかをはっきりさせたい。医学部・病院はきちんとやっていることを確認した。
組合側発言 われわれ教員が学生に対する成績を、年度末を過ぎて2ヶ月後に出すなどということはありえない。大学当局の教員に対する扱いには問題があることを認識していただきたい。
当局側発言 その点は重々承知している。

その他の項目に関する回答
 39日付申し入れ書に関して、その他の項目については明日文書で回答する。


就業規則改正にかかわる大学当局の杜撰かつ違法な手続き
 このたび、就業規則の改正について、当局側が組合側の意見を聴取しないまま改正規則を施行、ホームページに掲載(学内のみ閲覧可能)していたという、違法行為をしていたことが判明しました。
 昨年4月より施行されている「公立大学法人横浜市立大学職員就業規則」につき、当局より変更の通知がありました。その主な変更点は、任期付きの「職員」に関する規程に関し、「任期付大学職員」を「任期付一般職員」と範囲を広げたこと、休職事由の規程追加などです。変更の内容に関する組合としての見解は、後日改めてお知らせしますが、ここで取り急ぎ組合員皆様にお知らせしなければならないことは、上に記した当局の改正手続きに関する問題性です。
 すなわち、本年2月末の折衝の中で当局から、就業規則の改正があるので組合の意見書をお願いすることになる、内容は後日知らせるとの口頭での通知があり、その後変更内容の文書が手交されたのは4月20日のことでした(その文書は、文書の作成主体、宛先、作成日、さらに規則の改正日などは記載されておらず、組織の正式文書とは言えない、メモのようなものです。その書式の杜撰さは手交の際に指摘しておきました)。
 ところが、本件に関する当局との折衝の準備のために大学ホームページに掲載されている就業規則を確認していく中で、4月20日に手交された内容の変更が既になされており、その改正の施行日が2月1日になっていることが判明しました。
 就業規則の改正に際しては、当局は組合側の意見聴取をおこなう義務がありますが、その手続きを始めるよりも、はるかに前に改正を施行していたことになり、 改正内容の検討は置くとしても、これは手
続きの面で、法律上極めて問題がある行為と言わざるをえません。
 この就業規則の問題に限らず、昇進人事にかかわる規程をめぐっても、当局は手続き上かなり杜撰なことをやっており、当組合ではその問題性を質してきているところでもありました。
 このような当局側の、杜撰、不誠実、かつ違法な行為が繰り返されることがないよう、われわれ組合は厳しい姿勢で対応していきます。本件に関する今後の経過については、改正内容の検討も含め、随時お知らせいたします。


教員評価制度の検討作業が進行中
組合への速やかな情報開示を求めていきます
 5月30日の組合員の皆さんへのメール(「組合速報」)でお知らせしていますように、評価制度の検討作業が進められている模様です。
 評価制度の策定と実施に関し、4月25日の団体交渉において当局は、単なる事前説明だけではなく、今後当組合との協議、意見交換をおこない、教員側の意見を尊重しながら適切な制度設計をおこなっていく旨を表明していますので、当局に対し本件についての正式な情報開示を求めていきます。
 同時に、内容の重要性にかんがみて、まずは組合員の皆様に速報でお知らせすることにいたしました。「組合速報」をぜひご一読下さい。









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教員組合に皆様の声をお寄せください
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発行 横浜市立大学教員組合執行委員会
 〒236-0027 横浜市金沢区瀬戸22番2号
 Tel 045-787-2320   Fax 045-787-2320
 E-mail : kumiai@yokohama-cu.ac.jp
組合HPhttp://homepage3.nifty.com/ycukumiai/index.htm

 

 



[1] わざわざ特別枠のテニュアへの移行の可能性を設定した制度は、その弊害を直視したものといえよう。