Nisshi20060803-31

 

 

831日 今日は、研究院の所属メンバー全員の2000年から現在までの研究およびそれに関連する全業績(学界活動、地域貢献などすべての分野を網羅)を提出する期限だが、さて、どれくらいの人が出したであろうか。いずれにしろ、とりまとめが終われば、100冊程度、冊子にして閲覧できるようにするとのことである。相当膨大な冊子になりそうである。

 

基礎的で網羅的なデータは、各教員の研究活動のありかたを示すものとして、教員相互において、また学生や市民が必要となれば、閲覧できるようにしておく必要はあるように思う。そうした意味で、私はすでに8月中旬に提出した。作成には相当の時間かかり、手間暇かかる作業ではあった。。

閲覧する教職員、学生、市民が、個人としてそれからどのような情報を得るか、どのように評価するか、それは自由である。

ただ、今回提出のデータは、いま問題の教員評価に使うものではない、とのことで提出が求められている。誰が、どのように評価するかという問題と結びついてしまうと、学問の自由、大学の自治の見地から、大変難しい問題がたくさん出てくる。

慎重にも慎重にしながら、行わなければならないだろう。

 

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828日 大学による昇格人事・法人による昇任人事をめぐる不透明なあり方に関して、実際に昇任者が公表された(不利益者が出た)現段階で、再度、有志が学長に質問状を出した。ヴォランタリーな意見表明は、大学活性化のひとつの重要な要素ではなかろうか。

 

人事制度はしっかりした真の意味で透明な制度設計・制度運営が必要なものであって、これはひそひそと議論すべきことではない。オープンな議論(すくなくとも関係する教員全体の議論)が必要である。

だれが昇任したのかを知るのは、少なくともわれわれ普通の教員はごく普通の一般市民と同じく、大学のHPだということが現実である。これは大学自治が機能している大学(自治的機能で昇格・昇任が内部で決定されている場合)ならありえないことではなかろうか。

昇格に値する研究教育業績を上げているかどうかをだれが判断するのか、その判断の根拠となるデータをどのようによむのか、その審査所見はどこでだれによってオーソライズされるのか、といったことは学問の自由に取ってきわめて重要である。学問の自由・研究の自由・教育の自由は、その手続のあり方、決定権の所在などによって大きく左右される。(昇格基準の妥当性、その基準の適用の妥当性、これらの妥当性を大学の自治の見地から保障する手続・主体の妥当性、などいろいろと関連問題がある[1]・・・これらも教授会での審議が行われてはいない、そもそも審議の対象とされていない、教授会マターではない、と)

しかも、今回は、任期制に同意するかどうかでも、差別がなされているようである。差別は任期制同意への強要にほかならない[2]。不利益措置を覚悟で、そうした屈辱に抗したひとがすくなくとも2割以上いると教員組合からの報告(週報参照)である。不確定要因がありながら、労働契約書に署名した人もかなりの割合でいるようでもある。

教員組合は、「任期制への同意如何は、昇進資格になんら関係はありません」との立場であるが(そして、「昇進資格あり」とする点は「法人」も認めているということだが)、現実において不利益が発生するとすれれば、すなわち、法人が昇任差別で、昇進資格ありとする教員をしかるべき地位に任命しない(発令しない・・・その結果としての給与条件、社会的ステータス等の明確な不利益の発生)とすれば、由々しいことではないか。

こうした任期制の適用は、教員組合が繰り返し主張しているように違法ではないかと思われる。とりわけ、公務員として採用され、その身分保障の元で研究と教育を10年以上行ってきたひとについてそうである。しかるべき十分な業績をあげていても、任期制に同意しない限り、差別的措置として法人が昇任を発令しないということは、不利益措置であることははっきりしているだろう。任期制法案審議において、そうした強引な任期制適用は行ってはならないと付帯決議がなされたのではなかったか。

刑法に不遡及原則があるように、任期制が不利益をもたらす恐れが非常にあるときに(利益がはっきりしていない、利益となるのかどうか分からない、基準がはっきりしない、判断の主体がはっきりしないなど種々の問題があるとき)、最近できた法律を適用するものとして就業規則を制定して不利益措置を行うのは、法的見地からして、市民的常識からしても、重大な問題ではないか。10年以上をかけて目指してきた昇任が、しかるべき研究教育上の業績があると大学側で判断されても、法人サイドにおいて「任期制に同意しない限りだめ」と差し止めになるとすれば、良好な労使関係・良好な研究教育環境は維持できるであろうか。

地方公務員として、公立大学で研究教育に励んできた法人化前に採用された教員に関しては、以前に一般的に適用されていた原則にしたがって、粛々と昇任の発令を遡って平等に行うべきであろう。

法人化後、「任期制」を掲げた募集で採用された人の場合も、その制度には、教員評価のありかたをはじめ、非常に問題がおおいのであるから、時間をかけて、すくなくとも2年か3年かけて、法人と教員組合との十分な議論を踏まえて、安心できる制度にしていくべきであろう。35年の任期で採用されたとすれば、少なくとも2年程度、しっかり法的諸問題、大学の自治の観点での十分な検討などを行い、教員組合との合意の上で、就業規則を改定するなどが必要となろう。

種々な観点からして、現在のやり方は大学教員の多くを納得させるものではなかろう。

 

 

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816日 教員評価制度案(法人案?・・・どこでだれがどのような手続で決定したか?理事長責任?最高経営責任者・副理事長責任? いずれも市長任命だが・・・)に対する組合の質問状が組合員に知らされた。至極当然の、基本的スタンスにおいて賛同できる質問・意見であり、夏休みにもかかわらず、こうした見解をまとめられた執行部の尽力に感謝したい。だれが責任を持って回答するか、回答文書の責任の明記(不明記)に関しても注目したい。

      91日には、回答も示されるであろう。いずれ組合がそれを公開するであろう。

      いずれにしろ、本来であれば、大学自治の担い手としての教授会が機能すべき問題だが、それが機能しない現状で、教員組合だけが大学の自治・学問の自由の見地できちんとした見解を表明している。かつての教授会機能の重要部分を教員組合が担っている、いまでは教員組合がかつての教授会だ、という現状が浮かび上がってくる。

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横浜市立大学教員組合週報

組合ウィークリー

2006.8.15

  もくじ

教員評価制度案に関する質問書を当局に手交しました


教員評価制度案に関する質問書を当局に手交しました

 815日(火)の午後、当局と折衝をおこない、以下のとおりの質問書を手交して、文書にての回答を求めましたので、組合員皆様にお知らせいたします。折衝ではあわせて、拙速な実施を控えるべき旨を重ねて当局側に伝えました。
 評価制度に関する問題点は、今回の事項だけに留まるものではありませんので、今後必要に応じさらに質問をおこない、説明を求めていく予定です。
なお、今回の質問に対する当局の回答は、回答文が示され次第、速やかにお知らせいたします。

2006815

横浜市立大学教員組合

 

教員評価制度に関する質問事項


 去る83日の折衝における、教員評価制度に関する資料(「公立大学法人横浜市立大学の教員評価」(以下、「評価制度案」とする)等)の手交および口頭での説明を受け、下記の事項について質問しますので、文書での回答をお願いします。なお、回答は91日までにお願いします。

− 記 −

1.      評価制度と学問の自由の保障との関係について

o        「評価制度案」は学問の発展・蓄積に貢献すべき社会的存在たる大学の使命について明確にしておらず、この使命を果たす上で不可欠な憲法上の理念たる「学問の自由」を具体的に担保するあり方を明記していない。逆に、知的ユニバースの一員としての社会的責務を果たすべき教員の研究について「学長、学部長の立てた目標にもとづく」としており、さらに、具体的手続きにおいても、コース長等の評価者との面談における確認を要求し、目標変更に関しても同様の手続きを想定している。これらは制度上、「学問の自由」を侵害するおそれのある内容となっている。「学問の自由」を担保する制度上の保障はどこにあるのか、説明を求める。

 

2.      評価制度の内容について

2-1 評価対象について

2-2 目標の設定について

2-3 評価の方法について

2-4 評価の公正性について

3.      人事処遇との関係について

o        3-1 評価制度の目的について、「評価制度案」は「大学全体の教育・研究を活性化し、教員一人ひとりが常に能力向上を図る」としている。一方、大学当局は教員評価を反映させた処遇制度についても団体交渉の場などで正式に言及してきた。このことは教員評価制度と教員処遇が連動していることを意味しているものであり、したがって、処遇への反映のさせ方をどのようにおこなうのかについての協議・交渉と切り離して、評価制度を論じることはできない。この点の確認を求める。

o        3-2 仮に、評価を賃金水準や再任の可否などの処遇と連動させるというのであれば、教員の職務内容について評価の対象となる事柄が、適切かつ公正に設定にされねばならない。適切とは、教員それぞれの職務特性を反映させたという意味であり、公正とは、職務特性の差異が不利な評価とこれに基づく不利益な処遇をもたらさない、という意味である。この原則の確認を求める。

4.      教員評価制度の導入手続きについて

o        4-1 「評価制度案」においては、教育に関する事項が評価対象の一つとされている。教育に関する重要事項は教授会の管掌事項であるが、本件に関する教授会での審議または説明についてどのように考えているのか、説明を求める。

o        4-2 「評価制度案」は1年の期間で実施することを想定するものであるので、その試行期間も、少なくとも実際のタイムスケジュールに合わせた、同等の期間を設定する必要がある。この点の確認を求める。また仮に、その必要はないとするのであれば、その論拠について明確な説明を求める。

o        4-3 評価制度実施に至る手続きに関して明確な説明を求める。すなわち、試行結果についての検討方法、試行を踏まえた手直しの手順、それが教員および教員組合に提示される手順、処遇への反映に関する手続き等について具体的な説明を求める。

5.      総括的質問

o        総じて、このような煩雑な制度を導入・運用することによって、結果的に「評価のための評価」に陥る、本末転倒といった事態も十分に予想される。このような評価制度を実施する現実的効果について説明を求める。

以上

 

 

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88日 教員組合から新執行部の紹介、副委員長、書記次長の挨拶を掲載したウィークリーが届いた。組合HPにもすでに掲載されていることを知った。

30年ぶりに役員を務める」ことになった副委員長の挨拶も示すように、本学の現状はますます教員組合という自立的・自治的組織(その自立的自主的行動)なくしては立ち行かないような事態になっている。有期契約に署名しないかぎり昇任発令をしないとの法人・経営者による不利益措置に直面する教員、不利益措置が目の前にある昇任候補段階の若手の人々、昇任し昇給はしたが有期契約に署名したために精神的に束縛される人びと、その人びとのために、そしてどん底に落ちた大学の自治の再構築と自由で活発な雰囲気の大学の創造のために、新執行部の活躍を期待したい。

 

新書記局次長の挨拶、特に印象的なところは、人件費削減の具体的数値を示して批判しているところである。この数値は大学全体についてであるが、本当はもっと分野別にも見ていく必要があろう。「国際教養」を掲げながら、実質的には文科系・教養系の教員の大量の減少が補充されていない(定年退職不補充・流出若手教員ポスト不補充)ことが、この数字だけからでは分からなくなっているからである。おそらく人件費削減のもっとも大きな部分が文科系教員の減少によるものであろう。周辺を見回せば、それははっきりしている。

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横浜市立大学教員組合週報
 
組合ウィークリー
              2006.8.8

もくじ
 執行委員会報告
 新執行副委員長の挨拶
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新書記次長の挨拶
●      
皆様の疑問、意見をお寄せください
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 執行委員会報告(略) 

 
新執行副委員長の挨拶

副執行委員長就任にあたって
横山晴彦

 この度、副執行委員長になりました国際総合科学研究科理学系の横山晴彦です。どうぞよろしくお願い申し上げます。私が前回教員組合の執行委員を引き受けたのは30年前で、今回が2回目になります。執行委員をやった回数が少なかったことから何度も頼まれたことがありましたが、その都度お断りしてきました。しかし、今回は年貢の納め時のようです。お断りしてきたのは、時間的な余裕がなかっただけでなく、組合に加入しないでも恩恵を被っている人達がいることを考えたとき、高い(安くない)組合費を支払っているだけで十分貢献しているのではないかと思っていたことや、自分の考えと教員組合の考えが必ずしも一致しなかったことなどによります。市労連の中で自由度に制限があった教員組合の存在意義自体に対し疑問に思うこともありました。言いにくいことを申し上げたかも知れませんが、自分の考えは率直に述べるのが私の主義で、大学には自由な意見を言える場と環境がなければならないと私は思っています。自民党の郵政選挙後のように党内で物が言いにくい状態になってしまってはおしまいだと思います。

 独立法人化後の教員組合は、自律が要求され、教員の労働条件や身分保障など様々な重要な問題に対して重責を担うことになったと考えています。このような状況の変化を考えると、イデオロギーの違いなどの問題を超越した強い組合づくりの必要性が感じられます。独立法人化は、時代の流れで避けられなかったと思いますが、その流れが急激であったため、現在、大学は極端な方向に振れていると思います。私は、大学は復元力も備えていると信じており、辛抱強い努力を続けることにより、将来的には、新たな望ましい大学が生まれてくるのではないかと思います。教員組合は、この時代の流れを率直に受け止め、冷静な判断のもとに今後活動することが必要だと考えています。教員組合がどの程度関わり合えるかは別として、大学改革の拙速さにより生じた多くの問題点を是正するには、大学はこれまで培ってきた優れた点を再評価し、トップダウンとボトムアップを融合した迅速かつ双方向的な意志・情報伝達機構と協議機構を構築し、決定事項・通達事項に対しては責任の所在を明確にするシステムを構築することが必要であると考えます。また、個人的には、できるだけ横浜市による制約を受けない自律した大学を目指すべきであると考えます。

 現在、組合は給与、昇任人事と任期制、教員評価などに関する重要な課題を抱えています。個人的な意見はできるだけ控えたいと思いますが、現在の給与システムに関しては全く中途半端かつ不完全で、対応が遅れていると言わざるを得ません。これは、任期制、昇任、評価、旧給与システム等との関係の整理・調整ができていないためそのような状態になっていると推測します。また、年俸制と言っていますが、どこが年俸制といえるか私には理解できません。当初の考えである本給は固定し、業績給は評価により変動させるというのであれば、例えば、年齢に無関係に、教授、準教授、助手の本給はそれぞれ一律とし、本学の従来の教授、助教授、助手の平均給与実績に一致させるというようなやり方が考えられます。善し悪しは別としてこれはこれで一応筋が通っているように見えます。しかし、この場合には、これまでの給与が大幅に減るという教員が当然出てきますので、新規採用者や昇任により大幅ベースアップする人への適用以外は実際的ではありません。今回、昇任した教員の新たな給与は、従来の給与表の直近上位へ位置付けられたと思われます。従って、もし、本給が固定され、また、業績給は平均額を基準に上下振動するシステムであるとしたら、年齢の低い教員の給与は定年まで給与が低いまま実質的な上昇はほとんどないという全く不当な給与システムということになります。今回、昇任者の給与が直近上位に位置付けられたのであれば、それと矛盾がないよう、経験年数を考慮した給与システムを即刻全教員に適用すべきであるというのが私の主張です。持論を述べてしまいましたが、現在組合が抱えている諸課題に対して、副執行委員長としてできる限りの力を注ぎたいと思っています。


 
新書記次長の挨拶

書記次長就任にあたって

石川文也
(国際総合科学部国際文化創造コース準教授)

 現在、横浜市大で「改革」の名でおこなわれている大学の解体は、大胆な改革なくしては廃校もありうるという内容を現市長に答申した諮問委員会「市立大学の今後のあり方懇談会」(以下、あり方懇)の『市立大学の今後のあり方について 答申』(以下、『あり方懇答申』)に端を発していることは周知のとおりです。市長は、「[大学には]現状認識に危機感がない。少子化の中で教職員がこのままでも何とかなると思っており全学的な議論をしていない。」(「市長定例記者会見質疑応答要旨」(200357日))と大学を公然と批判し、「横浜市が有する意義のある大学として市立大学が再生」(2003227日答申式発言)するためには大胆な改革が必要だと強調していますが、『あり方懇答申』を見れば、市長あるいはあり方懇が改革をしなければならないと考える最も大きな理由は、大学の財政の問題であることがわかります。『あり方懇答申』によれば、その算出方法は明確にされていませんが、「市民一人あたり、毎年約7千円弱の支出にあたる」(p. 2 )額を一般会計から繰り入れているとのことです。民間でおこなうと収益は見込めないが、社会の視点から見ると必要不可欠である事業こそを本来なら行政が進んでおこなうべきであるはずですが、現に起こっている「改革」は、長期的ヴィジョンに立ってこれまで大学がおこなってきた研究・教育(人材育成)・地域貢献の蓄積、あるいは営利第一主義に基づかずに付属病院がおこなってきた地域への福祉・医療事業の展開の蓄積を全く無視した、短期的な成果のみを高く評価する「上からの改革」です。先に引用したように、市長は大学には全く危機感がない、全学的な議論はしていないと発言しましたが、これについても周知のように、大学は独自に、学長の諮問機関である将来構想委員会が――その活動は、教員も「改革」に積極的に協力してしたという当局のアリバイ作りのために利用されましたが――『将来構想委員会中間報告書』(20021225日)を学長に答申しており、全学的な議論をしていないのではなく、さらにその内容を読めば大学が現状に対して全く危機感を持っていないわけでないことは明らかです。

 そのような矛盾を内包したまま、『あり方懇答申』は2003227日に市長に手渡されました。そこには、「論理的に考えて」大学に残された4つの選択、すなわち、「〔1〕大胆な改革で生まれ変わり、存続する、〔2〕有力私立大学に、売却する、〔3〕私立大学に、転換する、〔4〕廃校とする」(p. 2)内容と、付記「現状のままで存続する道は、まったく考えられないことを強調しておきたい。」(p. 2)が示され、それらを受けて「横浜ならではのオンリーワンの改革案[に基づく]大胆な改革」(「市立大学改革について〜市長のメッセージ〜」(200357日))が市長から提言されたことはみなさんもご存知の通りです。同時に市長は「まず決めるのは、大学自身です!」と、あたかも大学側に主体的思考の余地が残されていることを明言していますが、その時点ではすでに大枠は決められていて、それは、その後に立ち上げられた学内検討組織「市立大学改革推進・プラン策定委員会」(通称:「プロジェクトR」)の実権が横浜市立大学事務局大学改革推進部に掌握されていたことが示すとおりです。

 その「プロジェクトR」は、概念自体が矛盾を含む「プラクティカルなリベラルアーツ(実践的な教養教育)」)ということばを載せた報告書『横浜市立大学の新たな大学像について』(20031029日)を出しているのですが、その冒頭には、次のように書かれています。

 本学も真摯に自らを省み、これまでのともすれば硬直化しがちな教育研究体制にメスを入れ、優れているものはさらに伸ばすとともに、改善、削減すべきものには勇気をもって対応しなければならない。横浜市が有する意義ある大学、横浜市民の要請に応える大学の実現に向け、いまこそ全学を挙げて大胆な大学改革に取り組む所存である。(p. 4

 この引用箇所は、字義通り取れば、学内の検討組織である「プロジェクトR」はあり方懇の改革方針、つまり大胆な改革で存続するという選択肢が示す方針を踏襲するように解釈できますが、『公立大学法人横浜市立大学中期目標中期計画』、「平成17年度予算概要」(横浜市大学事務局)からは、実は大学が選択したのは必ずしも選択肢の〔1〕「大胆な改革で生まれ変わり、存続する」ではなく、〔3〕「私立大学に、転換する」に限りなく近いものであったことが読み取れます。それは例えば、『公立大学法人横浜市立大学中期計画』に示された運営交付金・貸付金の削減運営交付金総額: 142.1億円(17年度)から115億円(22年度)(p. 25)、人件費の削減(経常経費のうちの人件費の割合:57.%(17年度)から50%(22年度))(p. 26から明らかであり、特に後者の枠組みで強引に実施されようとしている任期制・年俸制と、短期的な視点から見た業績評価に基づく教員評価制度の実施は、現在進められている「改革」が、市の財政からの大学の完全な切り離し、大学の独立採算制への移行をも視野に入れたものであることを暗示するものであると言えます。人件費を削減できるところまで削減し、かつ授業料を値上げして収支決算が健全になれば、後は大学独自が自らの生き残りを判断すればいい、市としては危機的な状況を警告し、事前にやるべきことはすべてやったということを横浜市側が考えていないとは断言できません。事実、大学の「改革」に携わった横浜市側の責任者の多くは「改革」の方向性がある程度決まったと判断した後、別の部局に異動してしまっています。

 わざわざ現市長のことばを借りるまでもなく、大学が旧態依然のまま競争の時代を生き残ることができる可能性が少ないことは、現場にいる教員の方が実感を通してよく理解していることです。大学が変わっていくことはしたがって必要ですが、問題なのは、現在進行している「改革」が始められるにいたったプロセスとその「改革」の内容です。あらかじめ枠を嵌めておいた上で教員側に主導権があるように見せかけて教員に作案作業をさせ、そのようにしてできた教員側の案の内容を「イイトコ取り」し、時には全く無視して、教員が当局側に協力した事実だけを誇張し、あたかも大学が一丸となって改革をおこなっているように公表すること、政治・行政のディスタンクティヴなアリバイ作りのために、「何よりも市民のため」、「ナンバーワンよりオンリーワン」などのプロパガンダを反復して唱え長期的なヴィジョンを全く欠いた短期的結果優先主義を「改革」の内容の格子に据えて、それを「教員とともに大学が一丸となって」実践すること、そのようなことが2002年度以降非常にラディカルなやり方でおこなわれてきました。

 「批判的な知」の実践者である大学人が、そのような一方的な「上からの改革」を許すわけにはいきません。自らをも律する大学人として「批判的な知」を行使して、現在も進行している「改革」の矛盾点を明らかにすること、そして、長期的なヴィジョンに立って我々自身の力で大学を大学として再構築していくこと、そのようなことが大学の生き残りのためには必要です。真に「市民が誇りうる、市民に貢献する大学」とは、政治家の任期中に結果を出せる大学でも、中期目標・中期計画的な枠組みの中だけで結果を出せる大学でもありません。今後20年あるいは30年以上先も「批判的な知」を展開・伝達・発信し続けることができるような大学、次世代の横浜市民も誇ることができる大学、そのような大学こそが、真に「横浜市が有する意義ある大学」です。そのような大学を実現するためには、何よりもまず長期的なヴィジョンに立った大学を再構築できる場を教員の手中に回復することが必要です。そのような場が回復できれば、それは結果的に研究・教育・診療者としての我々の仕事、そして生活を守ることに繋がります。

微力ですが、そのような視点から組合員のみなさんのお力になれればと考えています。よろしくお願いいたします。



      本文で言及した大学「改革」の経緯に関する行政文書は、一部散逸しているようですが、横浜市立大学の公式の旧HP200683日時点)から引用しました。URLは以下のとおりです。

http://www.yokohama-cu.ac.jp/ycu_old/daigakukaikaku/daigaku/daigaku_kaikaku/dk00.html

皆様の疑問、意見をお寄せください

8月3日付のメール


    
本日8月3日、大学当局より教員組合に対し、教員評価制度に関する同プロジェクトでの検討状況につき、別添(添付ファイル)の通りの資料を示しながら、説明がありました。
           
当局の説明によれば、資料に示されている内容すべてが確定したものではなく、まだ今後の修正もありうる、途中段階のものであるとのことです。
           
また、われわれ教員組合としても、今回はあくまで当局の状況説明を受けただけであり、その内容に関しては何ら了解を与えたものではありません。今後精査を進める中で、疑問点・問題点等をあらためて当局に質していくことになります。
           
以上のような状況の中でのものではありますが、ことの重要性に鑑み、まずは組合員の皆様に情報としてお知らせいたします。
           
ここで示されているものは決して確定したものではないという、上記の事情を十分にお含み置きいただきながら、宜しくご判読頂ければ幸いです。
           
なお別添資料はZIPファイルに圧縮してあります。一度、デスクトップなどに保存し、ダブル・クリックをすれば解凍できると思います。

           
横浜市立大学教員組合

上記に関して、教員組合に皆様の疑問、意見をお寄せください。
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発行 横浜市立大学教員組合執行委員会

 〒236-0027 横浜市金沢区瀬戸22番2号

 Tel 045-787-2320   Fax 045-787-2320

 E-mail : kumiai@yokohama-cu.ac.jp

組合HPhttp://homepage3.nifty.com/ycukumiai/index.htm

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87日 本学の教員評価システム・シートなどに関する案(法人案?)が、教員組合に対して提示された。すでに北九州市立大学などで実施されている教員評価のシステムを参考にしたのではないかと思われるが、その実施大学では、教員の圧倒的多数が批判的であり疑問を抱いている。北九州市立大学の場合、どこが主体となって案を作成したのか、だれが主体となって評価を行っているのか。本学のような法人・経営サイドによる作成なのか、教授会等での審議をきちんと踏まえたものなのか。

 

------「全国国公私立大学の事件情報」----------

20060807

北九州市立大学教職員組合、「教員評価制度に関するアンケート調査」

■北九州市立大学教職員組合

 ●「教員評価制度に関するアンケート調査」

 

 

「教員評価制度に関するアンケート調査」の集計結果(概要)

 

実施:2006 4 19 日〜5 12

 

1. 全体の概要

1 研究費が増加すると回答した人が70.6 %もいたにもかかわらず、82.3 %の教員は評価制度がモチベーションの向上に貢献しないかマイナスと回答した。

2 83.9 %の教員は、評価制度は、能力・資質向上には役に立たないか、むしろマイナスと考えている。

3 82.4 %の教員は、研究費格差が勤労意欲の向上に貢献しないだけでなく、むしろモチベーションの低下につながると回答。一方、95.5 %の教員は職場環境の悪化をもたらすと回答した。

4 今後、評価結果に基づき教員の待遇格差を拡大させることについては、91.3 %の教員が勤労意欲の向上に役立たないか、むしろマイナスと回答したことが明らかとなった。高い評価(S ランク、A ランク)を受けた教員に限定しても、その88.8 %が同様の回答を行なっている。……

 

 

 

 

Posted by 管理人 : 掲載日時 20060807 00:01 | コメント (0) | トラックバック (0)

URL : http://university.main.jp/blog3/archives/2006/08/post_1858.html

 

大阪府大学教職員組合、職員の人事評価規程に関する確認書を交わす

■大阪府大学教職員組合

 ●府大教ニュース

 

 

評価の運用や給与への反映については労使協議を約束

 

5月と6月に数回にわたって労使協議で議論された「公立大学法人大阪府立大学職員人事評価規程」と「人事評価結果を給与に反映させる制度の導入」について、府大教は評価制度の拙速な導入に反対ですが、法人の責任で行なわれる今回の措置について確認書を交わしました。

 

人事評価規程に関する確認書

 

……

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85日 スウェーデンで原発事故発生のようである。公共哲学関連のメールによれば、次のとおりであり、原潜母港化問題を抱える現在の横浜市民、横須賀市民、東京湾岸市民にとって、かならずしも他人事ではない。

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昨日、スウェーデンで原発事故

日本のマスメディアは一切報じていないようですが、昨日、
スウェーデンで原発事故が起き、現在すべての原発が稼動を停止しています

欧米の20以上のメディアの関連記事を以下に掲載していますのでご覧下さいただし、英文

独立系メディア「今日のコラム」
http://eritokyo.jp/independent/aoyama-column1.htm

http://blog.livedoor.jp/aoyama211111/archives/2006-08.html#20060805  

 

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83日 昨夜のプロボクシングの判定は、いかに内内で判定すると(試合の行われる場とそこから発される圧力への審判員の従属度によって)勝敗が逆になり「白が黒になり、黒が白になる」かを日本と世界に公然と示した。日本のボクシング界、それを取り巻く人々に対する不信は国内外で厳しいものがある。

大学内における昇進人事などでも、これは言えることだろう。公然とデータ・資料を提示し、公然とした場で審議し、その記録を残し、しかるべき公表するということがないと、競争者間での評価は上と同じような逆転した結果になるだろう。今後予想される教員評価問題において,それは露骨になってこよう。

さらに、大学における資格審査で合格しても(研究教育上の資格要件が十分あっても)、労働基準法14条による有期契約に同意しない限り、法人が昇任人事を発令しない(差別措置)、予算措置を講じない、有期契約不同意者への不利益措置がまかり通るということであれば、大学の研究教育の法人(法人経営者・最高責任者の任命は市長・市当局である)への従属は決定的となろう。これは、大学の自治を根底から覆し、憲法に違反するものであろう。不同意者の怒りと不利益に思いを馳せる時、なんともいいようのない気持ちになる。研究や教育のための精神的自由・時間がどうしても削減されざるをえないであろう。

これに関連しては具体的には、湘南工科大学の昇格任用における差別問題も参照される必要があろう。ここでは法人の行為に対しては、地労委が関係するようであり、その点の検討はおこなわれているだろうか。昇任差別は明確な不利益措置となるからである。

 

 

 



[1] たとえば、一楽教授による昇任規定の問題点-の指摘を参照されたい。

[2] 教員組合は、強要に反対する声明(200626日ウィークリー)を出しているが、それが踏みにじられたというのが現段階である。