928日 教育基本法改正・憲法改正は、日本の財界の強い要望でもあることが、経団連の新内閣への要望で明確になった(「全国国公私立大学の事件情報」本日付)。世界的な軍事「貢献」・武器輸出解禁などを目指す財界の視野と利害は、人類の平和的発展を望む人々からすれば、狭小であろう。平和を求める多くの市民が、この危険に気づき、軍事力を極力削減していく方向性へ、憲法遵守の方向へ日本社会を推し進めていくことが求められる。世界への貢献は、非軍事的なものに限定するのが、現在の憲法の基本精神であろう。

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9月26日 「全国国公私立大学の事件情報」(本日付)によれば、熊本大学でも、大学執行部が教育研究審議会の審議などを経ないで、任期制ポストを設定したことが問題となっている。しかし逆に言えば、これが問題になるほど、任期制の導入に関しては大学教員任期法に基づくしかるべき基準が他のポストについてはまもられているということでもあろう。全員任期制などという非常識な制度が無理強い(昇任人事にあたって研究教育業績が合格であっても法人が発令しないというのもその強制の一形態であろう)されていないことがわかるだけでも、まだ救われる。

 

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925日 久しぶりに意見広告の会のニュースをコピーしておこう。「全国国公私立大学の事件情報」(本日付)によれば、日弁連もあらためて準憲法的な教育基本法の改正に関する提言を行ったようである。新政府が、こうした理性的な提言に耳を貸すことを期待するが・・・・

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「意見広告の会」ニュース356
** 目次 **
1 緊急公開シンポジウム
       
日本教育法学会
2 日の丸・君が代予防訴訟 東京地裁難波判決
2−1 判決要旨
     全体が長くなるので、次号に掲載致します。
2−2 「自由の風」 
     MNから 被処分者の会
2−3 国歌斉唱義務不存在確認等請求訴訟原告団・弁護団 声明
     「日の丸・君が代」強制反対予防訴訟をすすめる会
2−4 判決以前の特集 「東京新聞」こちら特報部 9/19
     『日の丸・君が代』被処分者のいま 私だけが座っていた


***
1 緊急公開シンポジウム
       
日本教育法学会

 教育基本法改正法案
 臨時国会審議において明らかにされるべき論点
 −前国会審議を踏まえての逐条審議の必要性−

日時 2006101日(日) 午後2時から5
場所 明治大学アカデミーコモン 9階 309
報告 164国会における審議の特徴と、逐条審議の必要性」
「逐条審議の論点」

報告者 伊藤進  本学会会長 (明治大学名誉教授、駿河台大学法科大学院教授)
安達和志  同事務局長 (神奈川大学法科大学院教授)
成嶋隆  本学会教育基本法研究特別委員会委員長(新潟大学法科大学院教授)
市川須美子  同前委員長 (獨協大学法学部教授)
中嶋哲彦  同委員 (名古屋大学教育発達科学研究科教授)
世取山洋介  同事務局長 (新潟大学教育人間科学部助教授)
他 
資料代 500
主催 日本教育法学会

教育基本法「改正」情報センター
http://www.stop-ner.jp
fleic@stop-ner.jp


2−2 司法はまだ死んでいなかった
           
自由の風 MNから 9/22

「被処分者の会」 星野です

司法はまだ死んでいなかった。
勿論、私も401名の「予防訴訟」の原告です。歴史的判決の原告席最前席でした。
裁判長の判決主文から、判決要旨説明の25分間、涙があふれてとまりませんでした。5
月の「藤田さん板橋高校」、912の「国立2小」裁判の余りにものお粗末、杜撰な判決
に立ち会ってきて、もうこの国の司法に絶望の気持ちがあった事も事実です。

今回判決も、どこかで落とし穴があるのではと最後まで緊張していましたが、私達の「
完全勝利」でした。
 「教育の自由」を守るたたかい。この国の「平和・人権・民主主義」を守る最後の砦
と原告は必死の思いで弁護士、支援者と共にたたかいを挑んできました。
 前日(920)は、教育基本法改正を最優先すると豪語する安倍自民党総裁が誕生し
、この国の行方が益々「国民の為の教育」から「お国のためにの教育」に180度転換さ
せる動きを、大きくブレーキをかける一歩となりました。
昨日は久しぶりに原告・弁護士・支援者と美酒を浴びるほど飲みました。

「おめでとう」のメールとFXが家に帰るとたくさんの友人から入っていました。
二つほど紹介します。転送可です。

【その一】
判決の概要は以下の通りです(被処分者の会事務局 Sさんメモ 予防原告でもありま
す)

@
本訴訟は事前救済を求めるものであるが、通達および職務命令によって、懲戒処分、
再発防止研修、嘱託職員の不採用などの不利益が生じることが推察でき、侵害を受ける
権利の性質を考えると「回復しがたい重大な損害」を生じさせるおそれがあると認めら
れる。よって、事前救済を行うことは適法である。

A
「日の丸君が代」は、その扱いの歴史的経過から、国民の間で宗教的、政治的にみて
価値中立的なものと認められるまでは至っていない。

B
卒業式等において国歌斉唱をすることに反対する世界観、主義・主張を持つ者は少な
からずおり、その思想・良心の自由も、憲法上の保護に値する権利というべきである。

C
起立・伴奏行為について、外部的行為と内心は密接な関係を有しており、切り離せる
ものではない。外形的行為に対する職務の公共性等による制約は、必要かつ最小限度の
制約にすべきであり、起立斉唱・ピアノ伴奏はその制約の限度を超えている。

D
通達は、学習指導要領にもとづくというが、その規定では起立、斉唱、伴奏をする義
務を負わせていると解することは困難である。旭川学テ訴訟最高裁判決によるところの
「必かつ合理的規準の範囲」にはない。

E
通達は、国旗掲揚・国歌斉唱の具体的方法について詳細に指示するもので、各学校
(校長)の裁量はほとんどなく、起立斉唱を強制したものと評価できる。通達は、教育
の自由を侵すものであり、教育基本法第10条1項に違反する。また、一定の観念を強
制すると解することができることから、「教育の機会均等」を阻害するものである。よ
って、起立・斉唱・ピアノ伴奏義務があると解することはできない。

F
教職員は、起立、斉唱、伴奏を拒否する自由を有している。卒業式等において国歌斉
唱を妨害したり、不斉唱を扇動するような行為は許されないが、斉唱を拒否することを
制約することは、憲法19条に違反するものと解することが相当である。国歌斉唱の際
に教員が起立をしなくても、式の進行をことさら妨害することはなく、学習指導要領の
目的(国旗国歌条項)は達成できる。都教委が懲戒処分をすることは、裁量権の濫用と
なる。

G
国歌の指導を音楽の授業で行うことはあるが、式は音楽の授業ではない。また、式に
おいてはピアノ伴奏の代替は可能である。(代替措置は)伴奏者に事前に確認しておけ
ば済むことである。国歌斉唱が全員で行われないことに不満を持つ者もいるだろうが、
憲法は相反する世界観も許容し合うことを求めているものであり、問題はない。

H
以上のことから、懲戒処分はしてはならいと命ずるのが相当である。

I
精神的損害に対する国歌賠償請求は3万円相当を下らない。(よって被告に支払いを
命ずる)

J
国旗国歌法の下で、国旗国歌を尊重する態度は大切である。式において国旗掲揚・国
歌斉唱をやることは有意義なものである。しかし、起立・斉唱・伴奏したくない者に、
懲戒処分を加えてまでやらせるのは、国旗国歌法の制定趣旨に照らして、違法である。

以上です。

【その二
元都立高教員(Tさん)からの転送です

昨日、現場でお会いした方もいますが、私の率直な感じを含め、少しでも憲法・教育基
本法改悪STOPの力になればと願って、長くなりますが、写真付きで。

画期的な判決! 東京都・石原教育行政に鉄槌!    2006.9.21
 
「国歌斉唱・伴奏の義務なし」 「日の丸・君が代の強制は憲法違反」

 
えっ、本当。 誰もがびっくりするような判決でした。若手の弁護士3人が東京地裁
から駆けだしてきて、広げた「全面勝訴」の垂れ幕におおーという大きなどよめきと盛
大な拍手。彼らの満面の笑顔の端には涙の跡も。後は報道陣と法廷に入りきれなかった
大勢の支援者たちに囲まれてもみくちゃに。
 
この報道をTVや新聞でご覧になった皆さんの感想は如何でしたか?
 
ひどい判決が多い中、提訴以来2年半にわたって私も傍聴を続けてきましたが、傍聴
に駆けつけたほとんどの方がこうした判決が出るとはあまり期待していなかったようで
、どんな不当な判決が出ても、また控訴して闘うぞという決意で来られていたので、び
っくりすると同時に、 また喜びもひとしおでした。

外国のメディアを含めて、多数のカメラや報道人に囲まれての記者会見で、尾山弁
護団長は、「教育裁判の歴史の中でも、1970年の杉本判決(家永教科書裁判東京地裁)
に比肩しうる大変優れた歴史的な判決といっても良いのではないか」といっておられま
した。

この裁判は、都教委200310.23通達の「入学式、卒業式等の式典会場において、会
場の指定された席で国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する」という義務は存在しない
確認を求め、 精神的苦痛・損害に対する慰謝料の支払いを求めたものです。『立つも
のも立たないものも、強制に反対するもの皆が裁判に参加できるように』と、処分され
た後からではなく不利益を被る 前に『予防訴訟』として提訴したことに対し、門前払
いすることなく、その訴えを認めたという点でも、今後に道を拓いた画期的な判決でし
た。
(予想された通り、実際に都教委は300人以上を処分してきました。私自身は少し早め
に退職したので入っていませんが、私の友人・知人もその中に多数おり、人ごととは思
えません。)

都の現職教職員だけで400名を超える大原告団+50人以上の弁護団、更にそれを支援
する教職員OB、保護者、教え子、都民、更に全国へと輪が大きく広がっていきました。
  
証言に立った多くの方々が、自分自身のこれまでの教育への思い、自らの実践につ
いて一所懸命に語る姿が印象的でした。時として法廷があたかも国語や歴史の教室のよ
うになることもありました。また、高齢を押しての大田堯東大名誉教授や堀尾輝久氏ら
の証言など教育研究者の全面的な支援もありました。一方、被告の都側は、司法は行政
を追認してくれるものと安心しきっているようで、「教育公務員なのだから指導要領に
従うべきだ」と、繰り返すだけ です。こうした原告側の真摯な訴えが、結構厳しい判
決を書いてきたという難波裁判長の良識を呼び覚ましたのかもしれません。

この判決では、次の点を明確に言い渡しました。
@
教職員が、卒業式などにおいて、国歌斉唱の際に、起立や斉唱、ピアノ伴奏する義
務はない。
A
それらをしないことを理由にいかなる処分もしてはならない。
B
それらを強制する10.23通達によって被った精神的損害に対する慰謝料の支払いを命
ずる。
(訴状通りの満額(1人3万円)を401人全員に、訴訟費用も全額を東京都が支払えと
いうこれも画期的)

判決理由の中では、
『日の丸、君が代は、明治時代以降、第二次世界大戦終了までの間、皇国思想や軍国主
義思想の精神的支柱として用いられてきたことがあることは否定しがたい歴史的事実』
であり、 10.23通達や都教委の一連の指導等は、教育基本法10条に反し、憲法19条の
思想・良心の自由に対し、公共の福祉の観点から許容された制約の範囲を超えている』
と、明確に述べられています。

若い弁護士さんも大勢加わってきていて、それぞれ勉強しながら今日の判決を迎え
、「涙がとまらなかった」「弁護士1年目でこのような判決に出会えるなんて」・・・
と、こもごも感想を述べていました。
澤藤・弁護団副団長も、「弁護士になって36年、こんな司法ならいらないと先ほどまで
思っていたが、今ほど弁護士になって良かったと思ったことはない。『予防訴訟という
より無謀訴訟ではないか』と言われたこともあるが、裁判して本当に良かった。『憲法
を変える、教育基本法を変える』と言って登場した安倍さんに対する大きなプレゼント
になるだろう。都教委攻勢を強め、10.23通達を撤回させるまで闘おう」と、決意を語
っていました。

★  
皆さんどうもありがとうございます。これまで大勢の方々に支援等をお願いして
きましたが、こうした報告が出来ることは、私も感無量です。地裁前、弁護士会館での
記者会見、夜の勝利報告集会・堀尾輝久東大名誉教授などの写真と、原告団・弁護団・
予防訴訟をすすめる会声明を添付します。
  
教育基本法や憲法の改悪を許さないために、今後も更に協力の輪を広げていきまし
ょう。

当面の日程
9月26日(火) 18時〜19時、
教育基本法の改悪をとめよう! 9・26国会前集会
場所  衆議院第二議員会館前
主催  教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会

10月4日(水) 14時開廷、傍聴希望者は13時30分迄に地裁前へ
「君が代」強制解雇裁判
東京地裁103号法廷
土屋英雄筑波大学教授(憲法学)の証人尋問

21日7時のニュースに流れた動画。これに加えて、実際の放送では原告の記者会見
での報告が流れていました。
http://www3.nhk.or.jp/news/2006/09/21/k20060921000190.html


2−3 国歌斉唱義務不存在確認等請求訴訟原告団・弁護団
     「日の丸・君が代」強制反対予防訴訟をすすめる会

声 明
 本日、東京地方裁判所民事第36部(難波裁判長)は、都立高校の教職員らが原告とな
って、東京都と都教育委員会(都教委)を被告として、国歌斉唱義務不存在確認等と損
害賠償を求めた訴訟(いわゆる「予防訴訟」)について、原告らの訴えを全面的に認め
10.23通達を違法とし、@原告らに卒業式等における国歌斉唱の際に、起立・斉唱・
伴奏の義務がないことを確認し、A起立・斉唱・ピアノ伴奏をしないことを理由にいか
なる処分もしてはならないとし、B10.23通達によって原告らが被った精神的損害に対
する慰謝料の支払いを命ずる、極めて画期的な判決を言い渡した。

 本件は、都教委が20031023日付けで、卒業式、入学式等の学校行事において、教
職員に対し、「国歌に向かって起立し、国歌を斉唱する」ことを命じ、それに違反した
場合は、懲戒処分を科すとした全国的に見ても異常ともいえる「国旗・国歌」を事実上
強制する通達(「10.23通達」)を出したことに起因する。 原告ら教職員は、教育現
場での「国旗・国歌」の一律の強制は、教職員一人一人の思想・良心の自由をも侵害す
ることになるとの思いから提訴に至ったのである。

 判決は、義務不存在確認請求、処分差止請求に訴えの利益が認められることを前提に
10.23通達の内容が、過去の歴史的事実から、国民の間にさまざまな見解が存する「
日の丸・君が代」を教職員に対して一律に職務命令や懲戒処分等の手段をもって強制す
るものであって、憲法19条の保障する思想・良心の自由を侵害するものであると明確に
判示した。

 また、都教委による10.23通達とその後の校長らに対する指導名目の締め付けが、卒
業式や入学式について、各学校の現場における創造的かつ弾力的な教育の余地を残さな
いものであることなどを理由に、教育基本法10条1項で禁止される「不当な支配」にあ
たるとした。さらに、判決は、都教委の「不当な支配」の下で裁量の余地なく出された
校長の職務命令は、教職員の思想・良心の自由を侵害する「重大かつ明白な瑕疵」があ
り、違法なものであることを認めた。

 今回の判決は、憲法で保障された思想・良心の自由の重要性を正面からうたいあげた
もので、わが国の憲法訴訟上、画期的なものである。
 また、判決は、今まさに改悪の危機にさらされている現行教育基本法の趣旨を正しく
とらえ、行政権力による教育への不当・不要な介入を厳に戒めたものであり、教育基本
法改悪の流れにも強く歯止めをかけるものといえる。

 都教委は、判決に従い、違法な10.23通達を直ちに撤回し、教育現場での「日の丸・
君が代」の強制をやめるとともに、生徒や教職員の自主性、教育の自由を侵害するよう
な教育政策を直ちに改めなければならない。
 この判決を機会に、われわれの訴えに対し、国民の皆様のご支援をぜひともいただき
たく、広く呼びかける次第である。

  2006年(平成18年)9月21日
             国歌斉唱義務不存在確認等請求訴訟原告団・弁護団
                 「日の丸・君が代」強制反対予防訴訟をすすめる



2−4 判決以前の特集
「東京新聞」こちら特報部 9/19
『日の丸・君が代』被処分者のいま
私だけが座っていた
 日の丸・君が代を強いる東京都教育委員会の通達は違憲だとして、教員らが事前に「
処分しないこと」の確認を求めた「予防訴訟」の判決が二十一日、東京地裁で言い渡さ
れる。石原都政下、都が「君が代」がらみで教員の大量処分を始めてから二年半。教育
現場では、校長の権限強化など上意下達の体制が築かれた。その流れは「安倍政権」が
誕生すれば、全国に波及するのは必至。今回の判決の影響は東京のみにとどまらない。
 (片山夏子)

 「国歌斉唱」。二〇〇四年三月、東京都日野市の都立七生養護学校の卒業式。百人を
超える教員が一斉に立つ中で、河原井純子教諭(56)=現・八王子東養護学校=は驚
いた。「えっ。みんな強制に反対していたのに立つの?」。周りを見回すと、座ってい
るのは自分と数人の生徒だけ。「激震だった。林の中にいるような感じがした」
 前年の十月二十三日。都教委は入学式と卒業式での国旗掲揚・国歌斉唱の厳守を通達
した。いわゆる「10・23通達」である。
 「国旗は向かって左に、都旗は右に掲揚する」「教職員は国旗に向かって起立し国歌
を斉唱する」。生徒の位置や教職員の服装まで規定。「教職員が通達に基づく校長の職
務命令に従わない場合は、服務上の責任を問われる」と命じた。
『10・23通達』無効求める

 予防訴訟はこの通達の無効を事実上、求めた訴訟だ。都立高校や養護学校の教諭ら二
百二十八人(現在は約四百人)が〇四年一月、「思想・良心の自由」(憲法一九条)に
抵触すると、都や都教委を相手取って提訴。河原井教諭も原告の一人となった。
 しかし、係争中の同年春、都は国歌斉唱で不起立だった教職員約二百五十人を懲戒処
分。河原井教諭も、その一つの戒告を受けた。
 「10・23通達」前、七生養護学校では生徒と教職員が話し合って式典を計画。国
旗は会場の隅に三脚で置かれ、国歌については内心の自由を説明した後、「ご賛同の方
はお立ちください」とアナウンスし、伴奏をテープで流していた。起立していたのは、
教員では数人だけだった。
 通達後も職員会議で「国旗国歌の歴史的な背景を考えると問題がある」「強制は教育
現場になじまない」といった意見が相次いだ。従来通りを求める教職員側の要望を校長
は「通達通りだ」と抑えた。そして、卒業式当日。反対していた大半の教員も校長に従
った。
 不起立だった河原井さんは呼び出しを受け、立たなかった時刻を確認させられた。文
字通り、取り調べだった。「答えたくない」と告げると、校長は「職務命令を出すぞ。
処分が上乗せになる」と脅した。

起立の同僚『退職金が』

 「起立」派の同僚には「かつて私たちを冷たい目で見た人たちも皆、立ったじゃない
」と言われた。その「皆」たちは「国旗国歌には反対だけど家のローンがある」「退職
金をふいにできない」とこぼした。
 現在まで、四回の不起立で減給や停職一カ月の処分を受けた。「職務命令が乱発され
、職員会議は伝達の場に。学校はもの言えぬ場になった」。何が河原井さんの抵抗を支
えるのか。
 「私はこれまで、生徒たちに自分で考えてイエス、ノーと意思表示をしなさいと教え
てきた。ここで抵抗しないと、今度は自分が子供たちにあれこれ強制しなくてはならな
くなる」
 「10・23通達」以外にも主幹制や人事考課制導入、さらに校長判断で同じ職場で
一年の勤務だけでも「飛ばす」ことが可能となった異動要綱改正など、都教委は教員の
管理を強めてきた。

■“
服従の強要雰囲気着々と
 今回の訴訟の原告ではないが、やはり処分を受け続けてきた町田市立鶴川二中の根津
公子教諭(55)は「教育委員会が、あるいは校長が言うからと、おかしいと思っても
従うように強要される雰囲気がどんどんつくられていった」と話す。
 根津さんはことし三月、卒業式の君が代斉唱に不起立で抗議したため、停職三カ月の
処分を受けた。停職期間中、鶴川二中と異動前の勤務先だった立川市立立川二中の校門
前にメッセージを記したプラカードを手に日替わりで訪れた。
 「給料もったいないから立っちゃいなよ」「君が代歌っても戦争になるわけじゃない
でしょ」
 登下校する生徒が声を掛けていく。「私も含め大人たちの話をうのみにせず、自分で
考えてみて」。生徒にはそれだけ告げた。
 警察に通報されたり、保護者から苦情がきたり。「信念貫くって大変ですね」「自分
を守るため(上に)従っちゃう大人ばかりだから」。そう声を掛ける通りすがりの人々
もいた。
 根津さんは「見えない苦情におびえない。見える励ましに希望を重ねる」と自らのイ
ンターネット上の日記(ブログ)に書いた。
 「日の丸・君が代は歴史的に問題があると思うが、いろいろな意見があっていい。で
も、なぜ議論があることを生徒に知らせないのでしょう」。根津さんの心情はこれに尽
きる。
 立川二中では、ある女生徒に「くびになっちゃうと困るから立ってよ」と言われてい
た。「くびになるかもしれないけれど、ちゃんと意見を発信しないと意味がないのよ」
と答えた。
 根津さんの初めての処分は九四年。八王子市立石川中の卒業式で、職員の反対を押し
切って校長が掲げた国旗を降ろして、減給処分に。「生徒らが降ろそうと言うので、生
徒処分を受けるならと私がした」
 校長は生徒に「全生徒が反対しても揚げる」「公務員だから上司の命令に従う」と言
った。憲法には思想信条の自由が保障され、その憲法を公務員が順守する義務(憲法九
九条)については触れなかった。

■“
嫌がらせ遠隔地異動
 それ以来、根津さんは処分の代名詞にもなった。日の丸・君が代に触れたプリントや
不起立で受けた懲戒処分は八回。嫌がらせとしか思えない通勤往復四時間の学校への異
動もあった。
 何回も、処分された教員を対象とした都教委の「再発防止研修」を受けさせられたが
、「一度も国旗掲揚・国歌斉唱の根拠や意義を説明されたことはない」(根津さん)と
いう。
 相次ぐ都教委の「教育改革」で「どんどんもの言えぬ現場になり、一人で悩み病気に
なったり、辞めたりする教員が増えている」。
 ただ、その一方で、予防訴訟に三百人弱の教職員が名乗りを上げたことをみて「異議
ありと立ち上がった教師がいるのをみて、希望を感じた。上意下達の都の教育現場に少
しでも歯止めがかかれば」と期待する。
 一方、次期首相に最有力とされる安倍晋三氏は教育分野に熱心だ。教育基本法改定を
はじめ、首相直属の「教育改革推進会議」の設置、四十年ぶりの全国学力テストの実施
、指導状況などを国が評価する「学校評価制」、教員免許更新制などの導入を掲げる。
 そんな「公約」を横目に根津さんはこう懸念する。
 「都教委のここ数年の施策とどれもこれも重なっている。結局、石原さんが『東京か
ら国を変える』と言った通りになっていく」

<デスクメモ> 旗を振ってお題目を並べるのはヤボだが、旗ならぬ権力を振り回すの
はもっとヤボ。それに迎合しちまって、長いモノに巻かれるやからは下品でいけねえ。
江戸庶民の伝統は「意気地」と「心意気」。それが粋ってもんだ。「心の東京革命」?
 革命たあ恐れ入った。こちとら根っからの「保守派」なもんで。(牧)

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922日 東京都の400人ほどの教員が訴えていた「国旗・国歌」強要違憲訴訟の東京地裁判決が昨日出た。違憲判決であり、訴えた教員側の全面勝利の内容である。新聞報道で識者が指摘するように、もしも現在計画されている教育基本法「改正」案が通れば、違憲訴訟どころではなく、憲法の下位の法律で教員、ひいては生徒の精神の自由が拘束されることになろう。国家主義的な教育システムが日本の自由と民主主義を壊滅させてしまわないように、教育基本法「改正」案の廃案こそ、必要不可欠であろう。その意味で、歴史研究者・教育者の教育基本法『改正』案への反対アピール(廃案を求める声明)の意義をかみ締めなおした。

 

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920日 歴史研究者・教育者の教育基本法『改正』案への反対アピール(廃案を求める声明)が、発起人→現代史研究会を経由して送られてきた。さっそく署名し、同時に次のアピールHPにもリンクを張って掲載した。

ヒトラー、ナチス研究者として、ナショナリズムの危険な傾向(国家的強制)に対しては、自由に(といっても現在の日本は東京都などの国旗・国歌強制事件・処分事件を見るにつけ、小・中・高の教員をはじめとする学校関係者・教育関係者にとってきわめて自由が制限されていると思われるが)意見表明ができるときに、微力を尽くしておくことはきわめて重要だとの信念からである。

「改正」(改悪)案がもし通るようなことがあれば、その推進勢力の狭隘なナショナリズムの傾向からして、教育の現場では強制がますます強化され、混乱し、アジアにおける日本の位置、世界における日本の位置も危うくなる可能性がある。

 

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912日 本日アクセスしてみたら、教員組合・緊急のウィークリーが組合HP公開されたので、リンクを張っておこう。

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911日 教員組合から緊急のウィークリーを頂戴した(いずれ組合HPに掲載されるのではなかろうか)。当局が強行しようとする「試行」の問題性、その前提としての「説明会」がたんなる儀式に終わり、「説明はしましたよ」という正当化に使われ、「試行」に多くの教員が安易に参加すると、なし崩し的に教員評価が「制度化」され、その「結果」の給与条件・「昇任」や「再任」等への反映などが強行される危険性があることを指摘したものである。

       教員評価委員会の位置づけ、権限はどのようなものか?

       法人(経営サイド)との関係は?(自立性・自律性、その担保は?)

       トッフル問題と同じような問題をはらんでいるかに思える。これに関しては従来のあり方の責任をだれが取り、その上で、どこでだれが審議し、だれが新たな方向性を見出すのか?

       教員評価の問題も、ごり押ししてしまうと、深刻な問題をさらにつけ加えることになりはしないかと危惧される。 

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96(2) 教員評価制度に関する組合の質問状への回答が出されたようである。公正性がどのようにして保障されるのか、煩雑な書類作業がどれだけの時間を必要とするのか、だれが点検するのか、その点検者はどれだけの時間を使うのか。

かける時間にもよるが、時間が必要であればあるほど、あまり研究教育に時間を割かないものだけが、そのようなことが可能だと思われる。その想定が当っているとすると、研究教育にあまり時間をさかない人(その必要のない人、スキルアップなるものにつとめようにもその時間がない人などいろいろ考えられる)が、点検をおこない、研究教育のあり方についてコメントするということになるが、それはフェアなのか? 

教員評価案をめぐる一連の作業は、研究・教育・地域貢献などをどの程度やっている人が行ったものだろうか? 

教員組合の評価では回答は「極めて不十分なもの」との評価であるが、一番目に付くのは、教授会のありべき機能に関する質問には、まったく答えていないということである。教員評価は、関わる全教員で構成する教授会のマターではないとしているようである。法人は、評価問題において教授会の機能を認めない姿勢だけははっきりしているということか。少なくとも、教授会の主体的自主的な教員評価制度の設計()ではない、ということはこの回答が示すであろう。

回答の主体として、「公立大学法人横浜市立大学」となっている。文中に、「法人としての」という文言があるので、理事長が責任者ということのようである。とすると、理事会で決めたということか。公立大学法人横浜市立大学の名前で意思を表明できる機関は理事長あるいは理事会ということだろうが?理事会審議の議事録は?

教授会で議論されたことは一度もない。そもそも教授会がこの問題を議題に載せたことがない。こうした事実をきちんと踏まえて、今後の展開をみていく必要がある。説明会が開催されるような文言になっているが、どうなるか?

いまのところ、教員組合を通じるルートしか、一般教員には情報源がない。何がどのように進められることになるのか?

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96(1) ミスで機関砲20発発射というニュースは、横須賀に配備されるという原子力空母の突発事故による放射能汚染を連想させ、不気味だが、アメリカでは、未臨海核実験を繰り返しているようである。「公共哲学」関連のメール情報によれば、三鷹市議会は機敏にも、それに反対する決議(抗議の意思表明)をあげたようである。

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三鷹市議会本会議は、9月4日、開会・休憩後、再開の冒頭で、米国の未臨界核実験

に抗議する決議を急施案件として全会一致で可決・採択しました。

 

   アメリカ合衆国の未臨界核実験実施に対する抗議決議

 

 アメリカ合衆国が、現地時間8月30日午前11時(日本時間31日午前3時)に

西部ネバダ州の地下実験場で実施した未臨界核実験は、平和と核兵器廃絶を願うすべ

ての国家、自治体、市民の意思に真っ向から挑戦する行為であり、極めて遺憾であ

る。

 ヒロシマ、ナガサキの惨禍から半世紀以上を経過した今もなお、多数の被爆者がそ

の後遺症に苦しんでいる現実を直視し、人類が破滅の方向に向かうことのないよう、

核兵器を廃絶し、恒久平和を早急に実現することが、我々に課せられた責務である。

 「ユニコーン」と名づけられた今回の実験について、米国エネルギー省は、「保有

核兵器の安全性と信頼性を維持するため」と説明している。

 1997年以来、通産23回目となる今回の未臨界核実験をアメリカ合衆国が実施

したことに対し、非核都市宣言をしている三鷹市議会は、国際社会を深く失望させた

未臨界核実験の実施に強く抗議するとともに、今後一切の核実験を停止し、21世紀

を核兵器のない平和な世紀とするため努力することを強く要請するものである。

 

 上記、決議する。

 

                       三鷹市議会

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95日 独立行政法人化によって、大学の自治は風前の灯、あるいはほとんど無に帰した感があるが、いまや教育基本法自体が国家統制型のものに改悪されようとしている。来るべき自民党総裁・総理大臣候補は教育基本法改正の点では全員一致しているかのようである。これに対し、教育法学会をはじめとして、今回の自民党案・民主党案のいずれもが重大な問題をはらんでいることを指摘している。自由で民主主義的な社会を発展させる見地からすれば、逆の、国家統制型の社会への突破口として教育基本法「改正」問題がある。全国民的な運動が求められている

 

------歴代教育法学会・会長の見解(826)------- 

 

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91日 研究業績などの評価が、いかに安易になりうるか(商売になるか)は、米国におけるいかがわしい学位商売が示しているようである。前々から語られていたことだが、よくよく実態・内実をキチンを調べなければならないということだろう。

研究業績評価は、それぞれの専門分野の厳しいチェック(ピアレヴュー・・・同僚評価、しかし、その「同僚」の意味は学問内容に即した学界レベル[1]の同僚であって、かならずしも学内の同僚という意味ではない、その意味を強調してピアレヴューを「外部評価」と訳す場合さえある)を経過したものでなければならないだろう。

ところが逆に、素人(純然たる「外部者」、学問・科学研究の素人)が、学問外の権力や権限・実利誘導・便宜提供その他で、大学の教員研究者の地位や業績評価に口を出すようになる(まかり通るようになる)と大学は崩壊してしまう。その純然たる「外部者」を、だれが任命するか? だれの(何の)意向に従順な人々が選ばれるか?

さらに、昇任資格を任期制への同意の有無で決定するとすれば、給与と社会的地位の両面で大きな実質的利益に関わるだけに、研究の活性化とは逆の効果が深刻となろう。

 

「全国国公私立大学の事件情報」の記事(本日付)より。

 

 

 



[1] 「学界レヴェル」も広狭、国内外さまざまのレベルがある。

最近、本学のHPに若手教員の国際的評価が特筆されるようになっているが、素晴らしいことだ。ただ、気をつけないと、それはまた一面的になる可能性もある。文科系諸学問のように、地域と諸個人の個性の豊かさが問題になるような研究が多い場合には。