5月28日 世界史未履修問題・新科目構想
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歴史学研究会からのお知らせ
歴史学研究会事務局より、下記シンポジウム開催につきご案内申し上げます。
事務局長 中野 聡
記
シンポジウム「高校教育における時間と空間認識の統合−世界史未履修問題を
どう解決するか−」の開催について
1.主 催 日本学術会議 史学委員会・心理学教育学委員会・地域研究委員
会合同高校地理歴史科教育に関する分科会
2.後 援 日本歴史学協会ほか
3.日 時 平成20年6月7日(土)午後2時〜6時
4.場 所 東京大学教養学部アドミニストレーション棟3階学際交流ホール
(目黒区駒場3−8−1)
5.次 第
開催趣旨
平成18年秋に判明した高校教育における世界史未履修問題が何故発生したの
かを解明した上で、その解決策を日本史、世界史、地理の3教科の差を超えて
検討する。
開会あいさつ:
小谷王之(東京都立大学名誉教授、日本学術会議会員史学委員会委員長)
司会:
油井大三郎(東京女子大学教授、日本学術会議会員、地域研究委員会委員長、
高校地理歴史科教育に関する分科会委員長)
1.講演(午後2:00 〜4:00 )
第1部 現状と問題点
1) 鳥越泰彦(麻布学園教諭)「世界史未履修問題と世界史必修化」
2) 碓井照子(奈良大学教授、日本学術会議会員)「地理歴史科教員の実態と
地理的知識低下の問題点」
3) 三成美保(摂南大学教授、日本学術会議連携会員)「大学生の歴史素養の
実態と今後の課題」
第2部 解決策の提案
1)櫻井由躬雄(東京大学名誉教授、日本学術会議連携会員)「歴史基礎科
目創設の可能性について−世界史の立場から−」
2)高橋昌明(神戸大学教授、日本学術会議連携会員)「日本史・世界史総
合科目について−日本史の立場から−」
3)山口幸男(群馬大学教授、日本学術会議連携会員)「高校地理歴史科に
おける地理と歴史の関連・融合について−地理教育の立場から−」
2.討論など(4:00〜6:00)
コメンテーター
木村茂光(東京学芸大学教授、日本学術会議連携会員)
小林正人(都立鷺宮高校教諭)
内堀基光(放送大学教授)
閉会あいさつ:
木畑洋一(東京大学教授、日本学術会議連携会員)
*事前申込みは必要ありません。
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5月27日 朝日新聞、神奈川新聞、東京新聞などに、医学部問題(学位取得にかかわる倫理問題)で「内部告発」したとされる医師・パワハラで調査を求めた医師の記者会見記事が掲載されている(「全国国公私立大学の事件情報」にも記事がリンクで掲載されていることを知った)。NHKでも昨夜、同医師の記者会見の模様が報道されたということである。
筋道の通った丁寧な調査・結論が必要なのでは?
それでこそ学内外が落ち着くのでは?
この間、パワハラ委員会の規定を改正(どこでどのような審議を経て?)し、「調査打ち切り」を可能とする条項を入れたという。コンプライアンス委員会への訴え、異論・反論・しかるべき異議申し立てを封じ込める閉塞状況を増幅することにならないか?
一般教員が「自分には関係ない」などと高をくくっていると、実は全教員に関係してくるSDシート問題の処理の仕方にも影響してくるのではないか?
コンプライアンス委員会の対処はどうなっているのか?
巷間からは、「大学内部から大学の現状を変えていこう」という運動が立ち上がらないのか、との疑問が寄せられているようである。
大学改革の過程で、そうした内部から改革していこうとする人々の多くが精根尽き果て、怒りに燃えて退職し、あるいは失望して沈黙し、あるいはしかるべき大学への流出が実現してしまった、という事情があろう。内部改革勢力の力量が全体として縮小している。新しく来た人は、「任期制」公募という条件を踏まえて採用されていることから、自由な発言が、かつての公務員身分継承者よりも、難しい。
公務員身分継承の教員は、昇任差別を何度も見せ付けられており、これまた准教授以下の人々の自由な発言は、困難を極める。
「任期制」が、大学活性化よりは、管理主義的統治体制の武器となっている。大学教員任期法に基づく制度の適切な導入になっていないからである。
こうした状況に対して、正常な教授会が再建されていない現状では、教員組合が孤軍奮闘しているというところである。この7年から10年ほどの教員組合の執行部経験者は、健全な自治的大学を構築していく中心になりうるのではないか、と私は考える。その意味では潜在的な自治的改革の潜在力は存在している。
内部改革勢力の力量が縮小している上に、SDシートといったもの(「上から」任命した管理職が評価を最終評価を管さえるシステム)でも、さらに異論・意義申し立てを押さえ込もう、差別措置をてこに口を封じてしまおう、とする権力主義的対応が当局からだされている。(たとえば、最新のウィークリー参照)
私は、すでに17日付の本日誌でも書いたことだが、きちんとした不参加理由を明記した文書を提出しているものも、第一次評価者の「面接」においてしかるべき理由を述べたものも、教員評価制度の安定的構築のための前向きの態度として評価するべきである。
あるいはSDシートに参加したが「管理職のアドバイス」(?)という介入に不同意の場合にはそれ以降のSDシステムに参加しないという態度をとるものも、認めるべきであるという態度である。管理職に対する夏休みのほんの二日ほどの研修で、評価能力が付くような制度とはいったい何なのか?
さらには、昨年度の評価に関して不服審査を申し立て、不服審査がきちんと行われず、その意味で今年度のSDシートへの参加を取りやめようとするものも、教員評価制度のあるべき構築のための積極的努力の一形態として認め、給料における差別はすべきではない、と考える。
完全な無視でない限り、多様な評価のあり方に関する提言・意見を積極的に受け止める、という態度を当局は示すべきであろう。活性化とはそのような経路を必要とするのでは?
活性化のための教員評価制度であるならば、それに資するかどうかをこそ、判断基準にすべきである。形式的な安易なやり方をとるべきではない。すなわち、SDシート提出と不提出を差別基準とすべきではない、と考える。
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5月26日 教員組合ウィークリー最新号到着。教員評価制度に関する匿名教員の意見は鋭い。当局は、SDシートの問題性の指摘は無視して、あるいは19年度の試行が「95%」の教員の協力でできたことを踏まえて、その総括を説得的に示すことなく、予算の毎年のカットという条件下で、制度だけを押し付ける態度(SDシートの処遇への反映を認めないと号俸アップしない、との態度)をとり続けている。「活性化」ではなく、評価と処遇とを現在のシステムで結びつけることの問題性(たとえば下記、匿名教員の意見、参照)を省みようとしない点で(「評価制度の安定・処遇への反映に関する合意の形成までは一律アップを」という組合の要求に対する現時点までの態度からして)、問答無用の押し付けではないか? 官僚的な計画主義、中央集権的権力的システムで崩壊したソ連のことが想起される。制度の問題を指摘する声に耳を傾けようとする誠実な態度は、感じられない。制度の問題を指摘する声は、圧殺すればいいのだ、といわんばかりのようである。本学における「日の丸・君が代」は、「SDシート提出」ということになろうか?
--------横浜市立大学教員組合週報--------
組合ウィークリー
2008.5.26
もくじ
●
平成19年度から平成20年度への職務業績給の一律アップ要求に対する当局回答の問題について
● 「教育研究費付加交付分限度額の大幅かつ唐突な減額に関する質問状」に対する当局回答
● 教員評価制度に関する組合員の声
● 平成19年度から平成20年度への職務業績給の一律アップ要求に対する当局回答の問題について
昨年度の教員評価制度の実施前に、組合は当局から平成19年度の教員評価結果は平成20年度の処遇に反映させないという確認をとり、組合員の皆様にお伝えしました。
昨年秋、当局は平成20年度の職務業績給を平成19年度と同額に据え置くといってきましたが、組合は、評価結果が処遇に反映されるまでは、職務業績給を毎年一律3-4号アップすべきであるということを要求しました。これに対して、当局は、今年度の教員評価結果を平成21年度の処遇に反映させることに組合が同意するならば、平成19年度のSDシートを提出した者に対してのみ職務業績給を1号アップさせるという、不当な回答をしてきました。
組合は、このような差別をすることは、平成19年度の評価結果は平成20年度の処遇に反映させないと言っていたことに反しており、これを認めれば組合の信義にかかわるとして当局にその撤回を強く求めました。紆余曲折の結果、当局はこれを撤回するに至りましたことを、この組合ニュースにて報告させていただきます。
今年度の教員評価制度の平成21年度の職務業績給への反映については、今後の組合と当局の折衝によって反映方法とその内容について両者間で合意が成立することを必須条件とし、昨年度から今年度への職務業績給の一律アップ号数(平成19年度SDシート提出に無関係)については、この合意が成立した段階で協議する方向で折衝を行っていく予定です。
●
「教育研究費付加交付分限度額の大幅かつ唐突な減額に関する質問状」に対する当局回答
教員組合が過日学長・理事長に提出した「教育研究費付加交付分限度額の大幅かつ唐突な減額に関する質問状」に対して、次のような回答がありました。なおこの文書は、研究推進センターより別途メールで教員に送信されています。
しかし、この内容は、上限額をどのような理由で決めたのかについて説明がなされていません。例えば、「研究戦略委員会での検討を経て、1人あたりの配分可能額を算出した」と書いてありますが、いつ開かれた研究戦略委員会でどのような検討が行われて、いかなる理由で算出したのか不明です。この問題について組合員のご意見をお寄せください。
平成20
年度教育研究費の付加交付分の考え方について
平素は研究費の適正な執行にご協力いただき、誠にありがとうございます。
5 月7 日(水)付にて皆様にご連絡いたしました通知(「平成20 年度教育研究費の付加
交付分について」)に関して、多くのお問合せをいただきましたので、改めて以下に付加交付分の考え方等をお知らせいたします。
本件に関して、説明が不足していたことをお詫びいたしますとともに、何卒ご理解くだ
さいますよう、お願いいたします。
1. 5月7日付通知にある付加交付分の上限額について
当該通知にある「上限額」は、正しくは「申請上限額」です。
2. 今年度の考え方
(1) 教育研究費(付加交付分)については、昨年度、以下のようなご意見をいただきました。
<平成19 年度付加交付分配分の際にいただいたご意見>
・上限額が50 万円とあるのに、実際配分された金額は大きく異なっている。
ならば、初めから現実的な額を上限額とすべきである。
・計画書に記載した付加交付分額と決定された額とは大きな差があり、再度計画を大幅に見直す必要が出てきた。大きな見直しは非常に煩雑な作業である。
(2) 今年度の配分方法について
@ 平成20 年度予算の状況(配分の考え方)
厳しい財政状況を踏まえ、横浜市からの運営交付金が削減される中、教育研究費を含めた平成20 年度の学費対象経費予算(人件費、学生教育費、教育研究費、施設の管理運営費等)は、平成19 年度予算の10%減の配分となっています。
これは、リベラルアーツ教育の充実、学生数の増加といった経費の増加要因がある一方で、財源を削減することが難しい状況にあることを考慮し、
・条件はすべての所属において平等であると考えられること
・特定の事業について聖域を設ければ他の事業の削減額が更に大きくなること
などから、一律に10%削減となったものです。
A 平成20 年度教育研究費予算の配分方法
こうした中においても、基礎的な研究費となる定額基礎分については、前年度同額(30 万円)を確保させていただきました。
そのため、付加交付分の配分総枠は、前年度に比べ大幅な減となりました。その上
で、上記(1)にあるご意見を踏まえ、次のとおり算出しました。
教育研究費予算残額(予算額−定額基礎分配分総額)から、想定される申請者数(昨年度の申請割合から算出)を考慮の上、研究戦略委員会での検討を経て、1人あたり配分可能額を算出したものです。
付加交付分配分までの手続きについては、次のとおりです。
@5月23日(金)までに付加交付分の申請を受け付けます。
A上記@の申請総額を集計し、予算残額から各コースごとの付加交付分の配分総枠
を算出します。
B上記Aの配分総枠をもとに、学部長・研究科長を通じて、各コース長に実際の配
分案の作成を依頼させていただきます。
C各コース長からいただいた配分案をもとに、教育研究会議・教育研究審議会へ諮
り、最終的な配分額を決定します。
DCの決定に基づき、決定通知書を教員へ配布します.(付加交付分ついては、4月
1日以降の支払いに使用することができます。)
●
教員評価制度に対する組合員の声
ある組合員から、教員評価制度の問題点について次のような意見が寄せられましたので、ご紹介します。
そもそも教員評価制度を行うにあたり、根本的な問題として、教員組合が幾度となく指摘しているように、学問の自由を侵害する危険な内容であるということが、最も大きな問題であると思われるが、評価結果を処遇に反映させることの是非について、組合の声明で指摘されなかったある視点について述べたい。
大学が法人化し、雇用関係が民間企業と同様となったが、民間企業と異なり、法人化前と変わらないこととして、人件費が横浜市の予算内で決められていることがある。
民間企業であれば、社員一人一人が皆それぞれ、頑張って業績をあげれば、その企業の業績も上がり収入も増え、従って個々の社員の賃金も、それぞれ上がることはあっても下がることはない。
ところが、市大の場合、毎年横浜市から降りてくる予算は、今年度の教育研究費の唐突な大幅減額にみられるように、いくら教員ががんばって仕事をしても減ることすらあっても増えることはない。
当局は、教員評価制度を処遇に反映させることを、努力した人が報われる制度 といっていたが、市大の場合、どんなに教員が一生懸命努力して、その年度の目標以上のことを達成したとしても、市大教員の人件費の総額が、横浜市の予算で既に決められている以上、その努力や成果に対する賃金のアップ等はないであろう。
例えば、もし仮に、市大の教員全員が、一生懸命努力して、個人個人がその年度の目標以上のことを達成したとしても、教員の人件費の総額が、横浜市の予算で既に決められている以上、その努力や成果でたかい評価となり、賃金がアップした人が出るとすれば、必ず、同じように努力し成果をあげた教員の中からも賃金がダウンする人が出てくるということである。
民間企業であれば、社員全員が努力すれば、それに応じて全員の賃金がアップということが考えられるが、市大ではそういうことがない。そこが民間企業と異なる点である。
つまり、教員評価制度を給料等の処遇に反映させられとなると、最高評価Sがつく人がいれば、どんなに頑張ってもかならず最低評価Dがつく人がでてくるということである。
当局は、いやそんなことはない と反論するかもしれないが、現実に、その人が頑張って成果をあげたにも関わらず、経営上の理由 ということで昇進をストップさせられた人がいるではないか。つまり、当局は、がんばっても自分達のいう事をきかないと給料はあげないといっているのである。当局のいう、努力した人が報われる制度 といった安易な言葉に絶対にだまされてはいけない。
結果的に、最終的な評価者が大学の執行部の数人であるかぎり、当局や市の言いなりなり、大学当局に媚へつらう人だけが高評価、高処遇を得る仕組みになっている。(以上)
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5月22日(2) 今回の教員評価システムの通知の中には、「教員評価の結果について」(通知)および、「平成19年度教員評価に係わる不服申立ての取り扱いについて」なる文書が入っている。「20年度に検討予定の苦情処理制度が整備されるまでの暫定的な取り扱い」だという。
そして、「平成19年度教員評価不服申し立ての手続きに関する取扱」なる文書も入っている。
直ちに気付く問題は、「教員評価不服審査委員会」の組織構成である。
委員長が理事長(市長によって任命されたもの)、委員は、(1)事務局長の職にあるもの(・・・事実上、市長・市当局により任命されたもの)、(2)副学長の職にある者(・・・理事長および副理事長としての学長による任命なので、これまた市当局の意向下にあると考えられるもの)、(3)外部理事または学識経験者等(・・・これまた、誰が任命するかが明確に示されていないが、法人がどこかからつれてきた人物、その意味で、市当局の意向の下にある者)となっている。
教育研究の専門家はどこにいるのか?
教育研究の現場を知っているものがどこにいるのか?
どこに最先端の教育や研究で現場で苦闘している人がいるのか?
本学の学生と接触している人がどこにいるのか?
本学の院生と接触している人がどこにいるのか?
教育研究で日々精力をつぎ込んでいる人がどこにいるのか?
評価も不服審査も、素人・門外漢がやっては正当なもの・公平なものとならないのでは?
評価におけるピア・レヴュー原則を不服審査においても実現すべきではないか?
評価や不服審査において、大学の自治が大切にされなければならないのではないか?
裁判においてさえ、市民参加が求められる時勢ではないか? 大学教員集団における「市民」とは?
教員組合は、管理職がはいる不服審査委員会では、そもそも公平な審査など望めない、ということで、不服審査委員会の構成を問題にしてきた。まさに、今回の委員会構成は、不服審査の必要条件・前提条件を満たしていない、一方的なものというべきであろう。
これを見て、配布されたSDシートのあり方・記述項目とあわせるとき、教員の閉塞感・窒息感・意気粗相の思い(「これでは何を言ってもどうしようもない」との思い)が、つのるのではないか? 恐るべきシステムだと感じる。観念的か? 2007年度は、処遇への反映がない、ということで、不服も少ない(表面化しない)はず。
さて、来年度は?
若い人はやりきれない思いでいっぱいになるのでは? 定年まで残り3年未満となった私は、どうとでもなるとして、若い人が気の毒。思い過ごしか?
過敏すぎるか? 今年度の評価にほとんどの人が満足して、不服申し立てをしないですむのなら、そんなに過敏になる必要はないか?
95%の人が参加し、そこで「重圧感」のもとにあるのならば、われわれのようなものも同じ苦痛を味って、連帯して不服申し立ても積極的に行うべきか?
昨年参加した人の実感、観念的でない意見を、どしどし組合に伝えておくべきでは?[1]
そうした意見をバックにして、教員組合による不服審査委員会のあるべき姿の提案とその実現が、必要となろう。
すでに寄せられた怒りの声によれば、たとえば、「対象は全教員」としながら、その除外者の第Cのグループとして「年度末退職者等」とある。これはいったいどうしたことか?と。
年度末退職者は、来年度処遇に関係ないので、その処遇との関係だけで「除外」する、参加しなくていい、ということかと。評価システムは、一方では大学の活性化といっているではないか、活性化が目的ならば、年度末退職者が目標を立て、それを関心ある人々が参考にし、刺激となって、「活性化」に資することもあるのではないか、と。
また、管理職の権限が絶大な部局では、SDシート作成段階から評価の段階まで、相当恣意的なことが行われているようで、目標100%達成=B、目標110%達成=Aであるなら、自分はAのはずだと交渉したが、内容も読まないままでBとしてしまっている、と。他方、その管理職の覚えめでたい若手教員は、「沢山仕事をしている」との理由で、Aの評価を与えられていると。
「上から」の覚えめでたく、A評価をもらった人が「不満」を漏らすはずがない。したがって、管理職(一次評価者、二次評価者など)との関係が良好な教員は、「寛大」(おお甘)な評価をされている可能性があり、実際に、ある関係者からは、そのデータを見たとの情報が寄せられた。A評価をした評価者のコメント部分が、不当な理由付けとなっていると怒っている。しかし、そうしたA評価のコメント・理由付けが公平かどうか、本人と評価者しか知らないとすれば、暗闇の中でのお手盛りが横行することになりはしないか?
権力=権限と恣意的評価とが結びつくことが危惧されたが、すでにそれが発生しているようである。少なくともその教員は不服審査の申立てを行ったという。今後の成り行きを見たい。処遇と関係させるとき、深刻な問題と化するのではないか?
不服審査の制度が機能するかどうか、一人では弱い立場であろうから、教員組合執行部(とくに委員長や書記長)にどしどし意見を寄せられることが望まれる。
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5月22日(1) 教員組合ニュース: 教育研究費付加分の大幅削減に対する説明要求。
拡大執行委員会で話題となったデータからすれば、昨年度付加分上限がコースにより大きく違っており、4割減から7割減・8割近くに削減。
------------横浜市立大学教員組合週報-------------
組合ウィークリー
2008.5.22
もくじ
● 「教育研究費付加交付分限度額の大幅かつ唐突な減額に関する質問状
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● 「教育研究費付加交付分限度額の大幅かつ唐突な減額に関する質問状
平成20年度教育研究費の付加交付分が大幅に減額されるという知ら
平成20年5月15日
横浜市立大学
学長 布施 勉 様
公立大学法人横浜市立大学
理事長 本多 常高 様
横浜市立大学教員組合
委員長 榊原 徹
教育研究費付加交付分限度額の大幅かつ唐突な減額に関する質問状
5月7日付の研究推進課からの通知によると,今年度の教育研究費付
市からの交付金の減少によって大学の財政が豊かでないことは想像で
しかし、大幅な減額にもかかわらず,一方的に事務局から通知された
このような突然で一方的な措置は,教員の教育研究活動に大きな支障
また、付加交付分の上限は、個々の教員によって異なっており
教員組合は、今回の限度額の削減の見直しを要求します。
もしも減額が不可避であるというならば、その具体的根拠
付加分申請の期限以前に文書で回答することを要求します。
教員組合拡大執行委員会では、教員評価制度に対するこれまでの教員
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5月21日 SDシートを提出した教員に、昨年度の評価結果が示されたそうである。仄聞するところでは、総合評価でBとされた教員が、自分の仕事を何も見ていない人物がなぜBと判定できるのかと怒っているそうである。それは当局が示した制度からして必然の結果であり、当初から予測されたことではあるが。
それにしても、そうした怒りをもつ人は、「評価結果に納得しない」との抗議を、理由を明示して申し出るべきであろう。そうでなければ、「納得した」ことになってしまうであろう。教員組合にもそうした「不当だ」と思うことを伝えておくことが望ましい。まさに不服申し立て・不服審査の制度の構築、それを通じる透明な審査、判定が求められるからである。そして、そうした改善・根本的制度改革は、単独の不平不満の表明では、実現に向けての効果がない(少ない)ことだろうからである。
昨年度、教員組合委員長として、SDシートへの突然の記入要求(5月連休の谷間)、その期限設定の問題性など、多面的な問題で、教員(組合員)の不利益にならないようにがんばったが、その当局の不誠実な対応に抗して、仮登録以上には進まなかった。そのため、「評価できない」との文言の文書が配布されていた(22日に確認)。これは客観的事実のとおりである。「最低の評価」などという「脅かし」文句があったが、評価欄に、「最低である」との文言、あるいはそれに相当するランク付けは見られなかった。
新たな文書では、一方で「SDシートを提出しない場合、最低の評価」との文言、他方で、学長文書では提出しない場合、「他より低い評価」とのこと。
昨年度は、「処遇に反映させない」との労使団体交渉合意事項にもとづき、処遇に反映することは行われなかった。
今年度は、「処遇への反映」を教員組合に提案してきている。それだけに、昨年、前プロセスに参加した人々の、内部からの問題の指摘が必要であろう。教員組合のアンケートへの回答では、さまざまの分野で一次評価者からの「介入」があったとされる。それが、どのような精神的影響をもたらしたのか、あるいは実質的影響をもたらしたのか?
「95%の参加」ということなので、実際に最終評価が処遇に反映された場合、どのようになるか、参加した人々からの教員組合への情報が必要と思われる。
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5月19日(2) 「全国国公私立大学の事件情報」本日付より。下記の記事によれば、内部通報者の医師の専門外の診療科への移動は、「通常」のことだという。
「市大としては」、とは? どこで誰が決めたのか? 移動の決定権を握るのは誰・どのような委員会?
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同大コンプライアンス(法令順守)推進委員会に学位の謝礼問題を内部通報した医師が、県内にある病院の専門外の診療科に異動していた問題も取り上げられた。市側は「市大としては、通常の異動で適正な手続きだったということだ」とした。
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「専門外の」診療科に異動することが、本学の医学部関係では「通常の移動」なのか? 市当局の答弁には問題がある。きちんと説明すべきだろう。
専門外の診療科では、実力・実績の向上は、したがってまた経歴のアップは、見込めないのではないか? 門外漢からはそのように見えるが・・・[2]。それがごく普通の人の常識的判断ではないか?
「謝礼」については、どこまで(どこから、どの程度)が問題になるのか?
患者が手術等の成功で心から感謝の気持ちを何らかの形で表そうということと、「謝礼」の強制とは違うであろう。「地獄の沙汰も金次第」という問題もある。手術の成功への「感謝」だけでなく、手術後、丁寧に扱ってくれるかどうか、不安でいっぱいの患者とその家族が、「謝礼」するのは、巷間の噂では相当広範にありそうである。何年もたってから、「謝礼」が期待通りの結果をもたらさず、不満が蓄積することもあろう。そのあたりの振り分けはなかなか難しそうである。それを明確化していくには、大変な作業が必要になろう。
博士号取得者からの「謝礼」ではなく、普通の病院でも考えられうる患者からの「謝礼」までが問題化し始めると、果てしない泥沼に入り込むのではないか、との危惧を心ある人々ももっている。これは医学部つぶし、医学部・医学部病院の売却を画策する勢力の策動かなどとも。
学位審査のあり方に関する本来の問題がどこかに行ってしまう。
今日の医学界の到達点からして、医学博士号の授与の条件をどのように公明正大に設定するか、これが求められている。
耳にする限りでは、医学博士号の授与条件は現代的な公明正大な基準が必ずしも樹立されているわけではなさそうである。まさに今回の問題を契機に、それをこそはっきりさせるべきなのだろう。学内の場合でも、研究科によって違いがあるようである。今回の医学部・医学研究科の学位審査では主査の他、副査が2名という。経済学研究科(この間の改革で廃止されてしまったが)では、5名、しかも審査の公明性・第三者監視を確立するために外部審査委員を一名は入れるなどしてきた。さらに、博士論文を提出する前提として、レフェリー制学術専門雑誌への掲載(掲載決定証明書)を求めるなどしている。内部の(仲間内の)、「お手盛り」評価・判定ではないことの客観条件を設定しているのである。こうしたことが必要となろう。
まさにその意味で、教員評価においても、公開性・透明性・公平性を保障するシステム(判定のための客観的データのできる限りの提示)の構築が必要なのである。業績評価においても昇任審査においても、そうした客観的条件提示のないままでは、「お手盛り」を可能とする。したがって、差別や恣意の介入を公然と許す制度(「上から」任命の管理職―理事長・学長を初め実質的にはすべての管理職がそうなっている、下からの選挙による一定の修正はまだ一部のコースであるに過ぎない―による評価を基礎にしたSDシートだけを評価素材とする制度)は、許容できない。
公開性・透明性の点で教員評価を段階的に行うとすれば、顕著な業績(学界において、あるいは社会的に)をあげたもの、ほとんどの関係者から文句の出ようのない業績をあげたもの−ある教員は比ゆ的に「ノーベル賞級」の業績を示唆、つまり特別クラスはほとんどいない、誰をも納得させる抜きん出た客観的業績を上げることもそれを立証するのも難しい、ということでもある−を特別に処遇するということくらいか? それ以外は、「どんぐりの背比べ」といったところであるとすれば、段階的差別化は至難の業、労ばかり多くして効果の少ない、教員相互間の不平不満・軋轢ばかりを増やすもの、したがって大学における教育研究の活性化の逆の効果ばかり、ということにもなろう。
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---------この調査結果:「全国国公私立大学の事件情報」(21日付)より------
証言食い違ったまま
横浜市立大医学部の学位取得を巡り謝礼を受け取っていた嶋田紘教授(64)は19日、患者の家族から現金100万円を受け取ったとされる問題について、同大の事情聴取に「記憶にない」と答え、家族の証言との食い違いを見せた。…
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5月19日(1) 教員組合ニュース: 教員評価制度に関する声明。英文の組合加入の勧誘。
教員評価制度に関する私の意見(17日付のメモ-同日日誌の内容)は、組合に伝えた。
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横浜市立大学教員組合週報
組合ウィークリー
2008.5.19
もくじ
● 平成20年度教員評価について
● 教員評価制度に関する声明
● Message for Non-Members of
Yokohama City University Teachers’
Union (英文版教員組合入会勧誘文書)
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● 平成20年度教員評価について
平成20年度の教員評価制度について、その評価結果を翌年度の処遇に反映させるか否かは、教員組合と大学当局との協議事項であり、当局も認めているところです。したがって、教員組合との協議が成立しない限り、評価結果が処遇に反映されることはありません。
法人化後の大学教員は、公務員の勤務関係とは異なって、民間企業と同様の雇用関係となりました。法令上、人事考課のあり方は労働条件の一部として労使交渉の対象ですから、労働者側の合意なしに教員評価結果を処遇に反映することはできません。
教員組合では、当局とこの問題について折衝を重ねてきており、現在も折衝中です。
なお、教員評価制度についてご意見を教員組合にお寄せください。
● 教員評価制度に関する声明
教員組合拡大執行委員会では、教員評価制度に対するこれまでの教員組合の主張と組合員から寄せられた声を「教員評価制度に関する声明」にまとめました。学長、理事長に提出し、現在当局が進めようとしている教員評価制度の問題点を指摘し、改善を求めます。
2008年5月15日
教員評価制度に関する声明
横浜市立大学教員組合
1 評価制度の根本的問題について
・
教員評価制度は「学問の自由」を侵害する危険な内容である。知的ユニバースの一員としての社会的責務を果たすべき教員の研究について学長、学部長の立てた目標にもとづくこととなっており、さらに、具体的手続きにおいても、コース長等の評価者との面談における確認を要求し、目標変更に関しても同様の手続きを想定している。研究についての目標は、教員個々人が設定し、コース長等はアドバイスを行うにとどまるように改められなければならない。
・
近年、大学内でのパワーハラスメントの問題が注目されるようになった。学長、学部長、コース長などの選挙制度をとっていない本学においては、教員評価制度がパワーハラスメントの道具として悪用される危険性が極めて高い。
2 評価制度の内容について
・
評価対象となる事項については、被評価者としての各教員が自ら責任を負うことが可能な事項に限定される必要がある。しかしながら、それに反するものが存在する。例えば担当科目の受講者数はカリキュラム編成の如何に影響されるし、入試委員等の学内業務は各教員が主体的に決められるものではない。こうした個々の教員の権限の及ばない事項については評価の対象から除外すべきである。
・
教員が学長、学部長等の指示をふまえて教育・研究・診療・地域(社会)貢献・学内業務に関する目標を設定し、期末に自己評価することとされている。各教員はこれまで自主的に、大学人として目指すべき理想と現実的な計画実現性とを勘案して目標設定を実施してきており、その具体的なあり様は個性に富んでいて多様である。したがって、評価目標設定における各項目のウエイトの設定について、教員が評価者等から修正を強制されるべきではない。当局はすでにこの点を基本的に認めているが、ここで再度確認する。
・
評価者である学部長、コース長が、教員に先立って自分たちの「目標シート」を作成して例示すべきである。
3. 人事処遇との関係について
・
評価制度の目的は、「大学全体の教育・研究を活性化し、教員一人ひとりが常に能力向上を図る」とされている。したがって、教員評価制度による評価結果をそのまま処遇に反映させることはできない。
・
仮に、評価を賃金水準や再任の可否などの処遇と連動させるというのであれば、教員の職務内容について評価の対象となる事柄が、適切かつ公正に設定されねばならない。
4. 教員評価制度の修正・改善について
・
教員評価制度においては、教育に関する事項が評価対象の一つとされている。教育に関する事項は教授会の管掌事項である。したがって、教育に関する評価項目・評価基準については、教授会または代議員会あるいはコース会議での審議事項でなければならない。
・
当局は、教員組合の質問に対して繰り返し「実際の運用において生じる問題点は、引き続き検証し、見直しを行っていく」旨の回答をしてきた。平成19年度の教員評価に関していかなる検証を行い、平成20年度にどのような改善・修正をすることになったのか、十分な説明が必要である。
● Message for Non-Members of Yokohama
City University Teachers’
Union (英文版教員組合入会勧誘文書)を作成しました
執行委員の中谷崇先生のご尽力に余より、このたび教員組合への入会のお誘いの英訳版ができあがりました。教員組合のホームページにも掲載しますので、日本語よりも英語が得意な未入会の教員にお知らせください。
Message for Non-Members of Yokohama City University Teachers’ Union
April 10th, 2008
As the result of the reorganization of Yokohama City University into a
public university corporation, our position, previously protected under the
Special Law concerning Public School Teachers, has been greatly changed for
the worse. The administration has expressed their intention to refine and
use the result of the teachers’ evaluation system, introduced last year, to
determine each teacher’s wage. There are various criticisms of this
policy, such as skepticism on substituting the system designed for
self-improvement for such a purpose, and concerns both for uneven standards
of evaluation among first evaluators and for the lack of any system to deal
with protests for the result of evaluation. We believe that the system
first needs to be much improved to satisfy these criticisms before it can be
used for evaluating teachers.
I am convinced that we need to stick together, exchange
information, and express what we have to say so that we can protect
ourselves and fulfill our duty as educators and researchers on a free and
productive ground. Divided, we cannot hope to protect either our rights
or
our freedom in education and research. If we fail, responsibility of the
university to contribute to the society through education will be greatly
compromised.
Now that the role of the teachers’ union has been greatly
increased, we need the power of as many people as possible. I cordially
invite you to join the union so that we, united together, will be able to
handle problems we daily meet in our job.
These are the union’s position, achievements, and roles.
Our Social Position
1. We represent the majority of the teachers working at Yokohama City
University. As a result, we are authorized under relevant laws to
negotiate
teachers’ interests and demands with the administration.
2. We protect the rights of the teachers working at Yokohama City University
through direct negotiation, as they do in labor unions at private companies.
This is the most important change concerning the position of the Teachers’
Union resulting from the reorganization of the university into a public
university corporation.
What We Have Achieved So Far
1. We have effectively fought back the administration’s forcible request
for us to agree on limited-term contracts by asking the members to submit
letters of commission to the union.
2. We have informed members, as well as non-members, of our legal right to
reject the administration’s forcible request to agree on limited-term
contracts.
3. We have prevented unfavorable treatment of those who have refused to
accept limited-term contracts.
4. We have successfully demanded the administration equally to pay reward
for teaching graduate school to everyone who has a position there.
5. We have won an increase of the annual wage for the school year 2006.
6. We have kept the level of income of teachers intact when the
administration adopted a new salary system.
7. We have made improvements, such as an increase of the base salary, on the
new salary system the administration proposed.
8. We have successfully negotiated with the administration to keep up the
level of retirement pay for the next several years.
9. We have persuaded the administration, on promotion of instructors (koshi)
to associate professors (jun-kyoju) to adjust to the present title system,
first to decide the salary of qualified instructors under the former salary
system for associate professors and then switch it to the new salary system,
so that the salary of newly promoted people will be appropriate for
associate professors.
10. We have prevented the administration, on promotion of former assistants
(joshu) to assistant professors (jokyo) to adjust to the present title
system, to force them to accept the limited-term employment system.
11. We have got rid of ambiguities and arbitrariness concerning the
conditions for the renewal of contract with the teachers employed under
limited-term employment system.
12. We have won the promise from the administration to decide the conditions
for the renewal of contract on an agreement with the union.
13. We have won the promise from the administration to reflect the teachers’
evaluation system upon our working condition such as salary only on an
agreement with the union.
14. We have helped teachers in the Nursing Department in their effort to
prevent the administration from forcing them to move to the junior college
against their will.
15. We have successfully negotiate with the administration to promote
qualified teachers even when they refused to accept limited-term contract.
16. We have won the promise to reflect the teachers’ evaluation system upon
our working condition only when the teachers are persuaded that the system
is reasonable.
17. We have successfully persuaded the administration to keep up the level
of pay for the job related to entrance examinations, regarding the nature of
the task, when they decided to distontinue special task pay (tokushu-kinmu
teate).
What We Plan to and Have to Do
1. We will negotiate with the administration about how the merit-based
salary (shokumu-gyoseki-kyu) will be decided under the new salary system.
2. We will negotiate with the administration about our salary in general.
3. will negotiate with the administration about the way the teachers’
evaluation system is reflected upon our working condition, such as the
merit-based salary (shokumu-gyoseki-kyu) and renewal of employment contract,
among others.
4. We will demand fair working conditions and their improvement both for
those working under the limited-term employment contract and for those who
have refused to accept the contract.
5. We will demand improvement of and keep an eye on the teachers’
evaluation system.
6. We will protect our employment and fight back infringement of our rights
as workers.
7. We will demand appropriate environment for our job.
8. We will listen to teachers’ complaint about problem they face in their
job.
9. We will provide relevant information (by the union news [kumiai news]
etc.).
Campaign for New Members
New members will be required to pay no member fee until the next general
meeting (which will be held in July or August). For details please
consult
the April 27th, 2007 issue of the weekly news (shuho).
For the time being, members at Kihara Institute for Biological
Research (at Maioka) and Supramolecular Biology (at Tsurumi) are under no
obligation to work for the executive committee (shikko-iin-kai), although
they reserve the right to join the committee.
To Contact Us:
Please contact the teacher’s union office (kyoin-kumiai jimushitsu).
The office will be open on Monday and Tuesday from 10:00 to 13:00,
on Wednesday through Friday from 10:00 to 16:00
(will be closed on holidays, and during summer and winter vacations).
Address: c/o Yokohama City University
22-2 Seto, Kanazawa Ward
Yokohama, Kanagawa 236-0027.
Tel: 045-787-2320
Fax: 045-787-2320
E-mail: BWA03267@nifty.com
You will see all
relevant documents, such as weekly news (shuho), as
well as our rules and our resolutions and assertions so far, on this web
site:
http://homepage3.nifty.com/ycukumiai/index.htm
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5月17日 教員評価問題の件。
1.教員評価(そのための対象とされるべき仕事の内容とその検証素材)とSDシート提出とは同じことではない。
2.教員を評価するには、とりわけ、客観性・透明性・公正さを確立するためには、すくなくとも、ピアレヴュー(教育における、研究における、社会貢献における、それぞれの該当のピアの客観性・公開性のある評価)が必要である。そのピアレヴュー原則に基づく段階的評価(S,A,B,C,D)と、その処遇への反映の仕方に関しては、いまだまったくデータが蓄積されていないし、合意形成がない。その点で、「教員評価の処遇への反映」の現時点でのあり方は、慎重な検討が必要であり、段階的評価の妥当性が合理的説得的に証明されないかぎり、処遇への段階的差別的反映は、現段階では許容されるべきではない。
3.SDシートは、執筆者の本人とコース長、学部長等の管理職しか見ないものであり、しかも、本学の学則上、そして運用上も、管理職は「上から」任命され、「上から」の意志に従う評価の仕方をする権能を持ち、大学における教育研究をゆがめる危険性がある。そうした管理職が、主観性の高いSDシートを段階的に差別化するのは、恣意性・非公開性・検証不可能性によって、大学の教育研究の本来的あり方を大きくゆがめるものとなることは確実である。したがって、SDシートを教員評価の処遇への反映の素材に使うのは、慎重の上にも慎重に、何重ものチェックが必要である。教員評価におけるウエイトは低く・小さく位置づける必要がある。号俸における差別の道具とすべきではない。提出者は、一律に処遇に反映すべきである。現時点で問題を抱えるSDシートおよびその評価システムに対する問題提起者・非提出者を軽々に差別すべきではない。昨年来、「非提出者を最低ランクに位置づける」と当局はことあるごとに主張しているが、それは、評価制度の現状(多数の問題点の存在)を踏まえるとき、大学教員のものの考え方を号俸差別で抑圧しようとするものであり、みとめるべきではない。
4.また、SDシート非提出者は、教員評価自体を否定しているわけではなく、教員評価制度の構築における拙速さ、一次評価や二次評価の恣意性・学問の自由への侵害の危険性などについて異議申し立てをしているのであって、そうした明確な理由を示しているのは、教員評価制度の建設的提案と受け止めるべきものである。ある意味では、何も意見を言わずに、ただSDシートの空欄を埋める作業よりも、精神的肉体的に多大の労力と時間を要することをきちんと見据えるべきである。したがって、しかるべき疑義・異論を文書で出すなり、コース長等の評価者との面談でその非提出理由を明確化している人に関しては、提出者と同じかそれ以上のウエイトで評価すべきものである。したがって、処遇においては、提出者と差別すべきではない。正当な理由を示す異議申し立ては、評価制度に関する全くの無関与・非協力・無視の態度ではないからである。大学における学問・思想の自由は、マイノリティの正当な主張の擁護という点にこそある。
5.教員の仕事(実績−研究・社会貢献等)を検証できる素材としては、公開性の点で、すでに研究業績目録があり、毎年更新されているので、これを何らかの形で活用すべきである。SDシートは提出しないが、研究業績目録は提出する、という教員も、教員評価制度への積極的参加者と位置づけ、処遇への反映ではSD参加者と一律にいちづけるべきものである。この場合の一律の意味は、ピア・レヴューに基づくウエイト付けが現段階では困難なので、その評価のための客観的素材としての研究業績目録提出者は、提出という事実のみで(内容を問わず)、処遇においては他の参加者と同じに扱うということである。
6.教育の実績評価に関しては、持ち駒数、受講者数等の客観的データは、コンピューターで確認できるものであり、それを基礎データとしなければならない。その際、科目を基幹科目・基礎科目と位置づけるか周辺科目と位置づけるかにより、必修度の違いにより履修者数がことなるので、単純な数字データを評価に使うべきではない。必修度の高いものは、各コースの全員が参加する形で配置しなければならないだろう。カリキュラム編成のあり方、持ち駒の決め方という本来教授会が学校教育法に基づく審議事項として決めるべきことが前提となる。また、本来、持ち駒数は、文科系の場合ほぼ4コマとか5コマとかが普通の大学での負担基準なので(理系・医学系もそれぞれの基準があろう)、こうした他大学の普通の水準を基準として、それ以上の持ち駒数の担当者には一定の配慮をする必要があるが、そもそも教育と研究の相互の緊密な関係を踏まえるとき、ノルマの設定とそのノルマでの負担とを整合させる必要がある。週40時間で行える教育の時間、研究の時間、社会貢献等の時間は、おのずから相互に制約しあうからである。
7.SDシートへの参加者は、第一段階の仮登録から第二段階の本登録、ついで、その一次評価者・二次評価者によるチェックの第三段階、さらに、12月提出の自己評価の段階、その一次評価者・二次評価者によるすべての段階で、「差し戻し」などがある場合、不服審査の対象とし、そのやり取りを明文化して残し、次の段階に進まない自由を認めるべきである。
8.処遇に反映させるべきSDシートへの参加とは、本人の本登録だけで可とする(すなわち、その次の段階、すなわち管理職による差し戻しなどがあっても、個々の教員がそれを承認・承諾しない、「上から」の修正に応じない場合でも)、可とするものでなければならない。SDシートのシステム自体が上記のような沢山の問題をはらんでおり、評価システムとして未確立・不十分であり、管理職に各教員の研究内容等に関して判断できる能力はないからである。「上から」の管理職任命システムを強行するあまり、准教授を管理職につけている。これにより、事実において准教授が教授の目標を評価することができるとしている。このような大学など、世界で他にあるのか?これもオンリーワンであろう。
9.この間、仄聞している意見では、そもそもSDシートには、仮登録もする気はない、との考えの教員もいる。その教員は、昨年までの体験から、その理由を明確にもっている。当局に質問状も出している。教員組合は、その意見書(当局提出のもの)を組合としても掌握し、当局との交渉においては、こうした制度自体への意見表明も、教員評価制度構築への建設的意見として(単なるシート記入以上の精神力・作業時間の必要なものとして)、教員評価システムへの参加者として、処遇においては、SD参加者と同等の扱いをする(いや実質上の精神的肉体的負担からすれば、それ以上の扱いをすべきだというのが私の考えだが、ともあれ最低限、提出差と同等扱いとすべきだという意味である)、ことを勝ちとらなければならない。
10.
教員組合は、以上のような評価のあり方と現状を踏まえた処遇のあり方を提言すべきであり、非提出者への問答無用の一律の処遇による差別(最低ランクに位置づけるなどという粗暴なやり方)に対して反対し、当局と交渉すべきではないか。
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5月16日 名古屋市大問題:
--------「便宜」供与:合否と無関係?------
名市大汚職:漏えい「合否と無関係」 公判で被告、情状酌量求める方針 /愛知
http://mainichi.jp/area/aichi/news/20080515ddlk23040365000c.html
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5月14日 「全国国公私立大学の事件情報」本日付、本学学位審査問題中間報告。日本全国が関心を持っていることのひとつの証明として。
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横浜市立大学の学位審査等に係る調査について
中間取りまとめ報告書
1 中間報告にあたって
当委員会は、横浜市立大学大学院における学位審査の問題等について、事実関係の調査並びに再発防止策の策定などを早期に行い、大学の信頼回復を図ることを目的に設置された。
これまで委員会を4月11日、17日、25日の3回開催し、医学研究科の学位審査における金銭等の授受に関する調査結果について、委員会における議論を踏まえ、中間報告としてまとめた。
調査にあたっては、委員会に調査部会を設置し、調査部会による調査結果をもとに委員会において事実関係の解明に取り組んだ。
調査部会による調査は、平成16年度から平成19年度までの間、学位審査に関係した教員に対する聞き取り調査と平成16年度から平成18年度までの間に学位を取得した者に対する記名式アンケート調査により実施した。
調査は、学位審査に係る金品の授受及びその理由を中心に実施し、調査対象である61名の全教員への調査を行うとともに、学位取得者についても、226名のうち102名から回答を得ることができた。
この102名は宛先不在で返送された51名を除く調査対象者の約58%を占めており、半数を超える対象者から回答の協力を得た。
調査部会の調査は、任意の調査であるため、学位取得者の中に多くの未回答者がいることや教員調査と学位取得者アンケート調査との間に不一致があるなど、一定の限界はあったものの、医学研究科にお2ける学位審査に係る状況については、概ね実態を把握することができたものと考えている。
金銭の授受に関しては、調査対象となった教員のうち、16名から「金銭を受け取ったことがある」という回答があるとともに、「金銭を受け取ったことがない」と回答した教員においても、20名から「金銭をもってきたが、受け取りを断ったことがある」という回答があった。
今回、金銭の授受が確
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5月12日 医学部問題では、「審査謝礼」の情報の内部通報者が切り捨てられ配置転換させられたという報道がなされている(「全国国公私立大学の事件情報」本日付より)。これが事実であれば、今後何か問題があっても、専門外の部署への配置転換があり身分保障がない、ということを関係者に示すことになる。内部問題のコンプライアンス委員会への通報は、その善悪・当否にかかわらず、差別措置により封殺されることになる。恐るべきことではある。コンプライアンスの推進などということは絵空事になってしまう。
「謝礼」に関する内部通報者がいなくて、何年か後に「収賄」事件・刑事訴追などが発生した場合、大学に対するダメージはもっと大きいのではないか? 今回、内部通報者がいたことによって、かえって、「病気」の早期発見につながったのではないか?
だが、そのようなことは、関係者の意識にも上らないか?
通報者差別・配置転換という事態は、新聞報道のとおりであれば、「謝礼」が学位審査には影響しなかったとしても、学位取得後の身分保障・職場保障と密接に関連している、ということでもあろう。「謝礼」は、そうしたあとあとの職場保障・身分保障(=便宜供与)のため、ということになるか?
毎日新聞記者の調査によれば、「謝礼」はまさに、構造問題であり、医師の人事配置・身分保障と密接にかかわっている。それだけに、問題が表面化していない全国の医学部において、「謝礼」が横行しているのではないか、と。
本学における全教員にかかわる問題で言えば、教員評価は、まさに身分保障(昇任のあり方)・処遇のあり方と関係させるとき、きわめて重大な問題となる。それだけに、教員評価は、軽々に、管理主義・行政主義的に行うべきではない。
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横浜市立大医学部の学位取得を巡る謝礼授受問題で、同大コンプライアンス(法令順守)推進委員会に内部通報した医師が、神奈川県内にある病院の専門外の診療科に4月1日付で異動していたことがわかった。
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2008年5月9日 夕刊
学位審査をめぐる金銭授受が判明した横浜市立大学の嶋田紘前医学部長(64)からパワーハラスメントやセクハラ(性的嫌がらせ)を受けたとする申し立てを、部下だった女性医師が同大ハラスメント防止委員会(防止委)に提出していたことが九日、分かった。申し立てから四カ月近く経過したが、調査結果は女性医師に届いておらず、大学側の調査姿勢を疑問視する声も出ている。
----------「謝礼」は、医局の構造問題との論説---------
名古屋市立大大学院医学研究科の元教授が、医学博士論文審査で便宜を図った見返りに博士号申請者から現金を受け取ったとして、昨年12月、愛知県警に収賄容疑で逮捕された。その後、横浜市立大でも、前医学部長らと大学院生との間で現金授受が発覚し、医学界の「カネと学位」をめぐる問題が広がりを見せている。
名古屋市大事件を受けて取材した複数の大学OBの医師は「謝礼の慣習は全国にある」と証言したが、私はこの信用性は高いと確信しつつある。また、こうした慣習の背景に、教授1人に権力が集中する構造を支えてきた医局制度があるのではないかとも考えている。博士号の権威を取り戻すには、国公私立を問わず全国の大学が内部調査を行って実態を公表し、古い体質を見直すべきではないか。
愛知県警の調べなどによると、名古屋市大大学院の伊藤誠元教授(68)=収賄罪で公判中=は05年2月ごろ、博士号を申請した医師13人に「肺がんの治療法について聞くから」などと口頭試問の内容を事前に教えた。そして博士号を取得した13人から謝礼各20万〜30万円計270万円を受け取り、自家用車の購入や生活費に充てた。
伊藤元教授の逮捕後、名古屋市大OBの医師たちから話を聞き、耳を疑った。「なぜ伊藤先生だけが逮捕されるのか」「謝礼の慣習は全国どの医学部にもある」。事前に問題を教えるといった便宜は認められないにしても、高額の謝礼は当然という感覚だったのだ。
私は逮捕から2週間後、謝礼の慣習の有無について医学研究科を持つ全国50の国公立大大学院を対象にアンケートを行った。横浜市大を含め、ほとんどが慣習は「ない」と回答、「『ある』または『あると聞いたことがある』」と答えたのは和歌山県立医大だけだった。一方で「調査も注意喚起も行っていない」と回答した大学院は65%に達し、慣習が「ない」とする根拠は不明確で、医学部の閉鎖性を垣間見る思いがした。
ところが、こうした「公式回答」とは逆に、取材に応じた名古屋大や東北大、大阪大などのOB医師たちは「自分も払った」と口をそろえ、「100万円が相場の医局もあった」「支払わないと変人と思われる」などと説明した。慣習を否定していた横浜市大で現金授受が発覚したのは、アンケートからわずか3カ月後だった。
こうした慣習はどうして生まれ、どうして維持されてきたのか。今年4月、名古屋市大は医学研究科の教員の約3割が現金を受け取ったことがあるという内部調査結果を明らかにした。西野仁雄学長は「背景にあるのは医局制度」と分析。「問題の本質は、教授に人事と経理の2点が集中することに尽きる」と断じた。
大学医局は、内科学や外科学など講座ごとに教授を頂点としたピラミッド型に組織され、教授は系列病院への医師派遣や研究費の配分などに強い権限を持っている。04年度に始まった臨床研修医制度で、医学部卒業生が所属医局を決めずに研修先を選択できるようになった上、へき地勤務や給与面での待遇の悪さが嫌われて勤務医離れが進み、医局そのものが弱体化の傾向にあるとされるが、依然として医局内での教授の存在は絶対だ。
医事評論家の水野肇さんは「医局は、教授が一国一城の主(あるじ)として君臨する明治以来の徒弟制度が残った特殊な世界。外からはチェックできない」と指摘する。
伊藤元教授について後輩医師の一人は「高額の医療機器や薬剤の選定に権限を持ち、親分肌で面倒見が良かったが、逆らう人間は医局から排除された」と振り返る。別の大学OBの医師は「自分一人だけ謝礼を断れる雰囲気ではなかった。結婚の際、教授に対する100万円の仲人料も常識だった」と話した。
名古屋市大は事件の教訓を教員向けの倫理綱領にまとめ「社交の程度(5000円)を超える物品は受け取ってはならない」「返却できない場合は倫理委員会に報告し、指示通りの処理をする」などと具体的な注意を盛り込んだ。私は全国の医学部が「教訓」にならい、医局内の物品の受け渡しを制限するのはもちろん、人事も透明化するなど改善を図るべきだと思う。名古屋市大の内部調査にOBの医師たちからは「若い研究者が集まらなくなることが心配」と事件の影響を憂える声が上がったというが、同じ懸念は私大を含め他の大学にもあてはまる。
博士号の権威は患者の医師に対する信頼の一部を支えてもいる。徹底的な自浄を図ることが、医療の現場を守ることになる。(中部報道センター)
毎日新聞 2008年5月9日 0時03分
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5月7日 「賄賂」と「謝礼」との違い(?)。名古屋市大における学位審査問題では、刑事訴追において「賄賂」(便宜供与:「口頭試問の内容を事前に教えた」)が問題となっており、本学の学位取得者から教授への現金の授受の調査においては、「謝礼」が問題となっている。学位審査に影響はなかった、と。両者の区別はきわめて重要となろう。本学の場合、中間報告(新聞報道)によれば、
---------(「全国国公私立大学の事件情報」本日付より)-------------------
便宜供与は全員が否定しており、対策委は「慣習として受け取っており、金品授受による学位審査への影響はなかった」と。
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学位審査(学位論文の評価)問題を一般的な業績審査(業績評価)問題と関連させてみれば、全教員にかかわる問題として浮上しているのが、教員評価の問題である。
教員の業績をどのように評価・審査するのか、誰が評価・審査するのか、これが問題となる。
お手盛り評価・お手盛り審査はだめ、内部の権力者による評価・審査(恣意的・非客観的な評価・審査)はだめ。「お手盛り」や「恣意的評価」は、「便宜供与」と本質的な意味合いにおいて違うものか?
今問題になっている医学部関連で言えば、親子関係、親類関係で学位審査を行ってはならない、それは学位審査の信頼性を崩壊させる、とすれは、管理職による非公開評価はどうなるか?
SDシートなるものが昨年、当局の非常な圧力の下で強行されたが、Self Developmentの諸項目の妥当性・問題性、それを管理職の第一次評価者、第二次評価者が評価することの問題性・妥当性、業績評価の客観性と恣意性などが、論点となる。業績を評価しているのか、管理職の第一次評価者・第二次評価者との相性のよさ、彼らへの従順さの度合いを評価しているのか?
昨年度は、「処遇には反映させない」という当局の説明の下に、したがって、その限りで、各教員の「Self Development」に資するため、という正当化理由で、多くの教員が参加した。しかし、当局は、その参加率の高さを背景に、マイノリティとしての不参加者をいけにえにして、問題の多いSDシートを処遇にまで反映させる素材にしようとしている。SDシート提出者には昇給を行うが、不提出者にはペナルティとして昇給を行わない、というのである。
この当局提案は、昨年度に関しては、団体交渉における当局の言明・約束をすら否定するもの、労使交渉の信頼関係を根底から破壊するものとして、団体交渉の場での強い抗議を受けて、撤回した。しかし、SDシート提出と昇給とを結び付けようという方針はまだ撤回されていないようである。
その取り扱いは組合の団体交渉に任せるとして、問題なのは、SDシートを素材に、教員評価を行っていいのかということである。
教員評価と処遇とを結びつけるのは原理原則としてありうることである。いや、現在は、日本でも世界でも、それぞれの持ち場での仕事に関する公正な客観的評価は、求められようになった。
しかし、SDシートはまさにその公正な客観的教員評価という主目的からは不適切きわまる(SDシートの作成をひとつの前向きの努力の証拠として、教員評価のごくわずかのウエイトでの利用は考えられるが。処遇に反映させるものとするには慎重でなければならない)。客観性、公開性の点で、SDシートはまったく必要条件を満たしていない。SDシートを見ることができるのは書いた本人と第一次評価者、第二次評価者など管理職だけである。管理職のSDシートは全員公開すべきだと思うが、それは行われていない。
教員の仕事の客観的データとしては、法人化後、全教員の所属する研究院によって作成されている研究業績目録がある。これは印刷物(大部の冊子)として公刊・公開であり、誰がどのような仕事をしたか、どこにどのように発表しているか、学界・社会からどのような評価を受けているか、誰でも検証できる。
しかも、この研究業績目録は、狭い研究だけではなく、社会貢献や外部資金獲得に関するデータも掲載されている。各教員が自らの研究に基づいて行っている活動とその成果が、この公刊された目録ではっきりわかるのである。このデータをこそ、処遇と結び付けるべきであり、その仕方を検討すべきである。
大学教員のように非常に専門分野が違い、研究の評価が難しく、だからこそ学問の自由、研究教育の自由の原則からしても、ピアレビューこそが確立されなければならないところで、「処遇差別」を手段に、管理職のコース長や学部長といった内部者が第一次評価者、第二次評価者として、SDシートを下に評価(審査)を行うことは根本的に問題である。「賄賂」と「謝礼」の区別以上に重大な問題を、大学の研究教育に及ぼすというべきだろう。当局が公開している3月20日の教員評価委員会の議事録は、SDシートに関する問題の検討としては、きわめて不十分なことしか議論していない。教員評価=SDシート記述、となってしまっている。その一面性は明確である。根本的に批判するような人が教員評価委員会のメンバーに選ばれていないということであろう(「お手盛り」?「内輪の議論」?)。
「大学教員の評価の基本は、まず研究です。良い研究ができない教員は、良い教育はできません。そこで、研究評価を、より厳密化させていくという方向を目指す」べきで、「多岐にわたる、きわめて専門性の高いそれぞれの研究分野を、一次評価者、二次評価者が十全に評価できるはずなどありません」と言うのは、正論である。SDシートを直接に処遇にまで反映させる評価シートとしてしまおうとするのは、時代錯誤であり、「外部評価こそが重要だ」とする時代の認識に反するものである。大学人の見識が問われている。
SDシートは、主観的なものであり、その形式を埋めるだけならば、一時間もあれば、形だけは整えることができる。「作文がうまいものが得をする」と。
それに反して、研究業績目録に掲載される業績の場合は、どれひとつとっても何時間も、何十時間も、いや何ヶ月、何年もの研究蓄積が必要なものである。文科系と理科系。医学系の間では、また医学系では臨床系と基礎系の間などでは、業績の出し方が違う。この大学教員の本来的な仕事(質量の違い)を客観的なデータに基づいて評価するシステムをこそ構築すべきである。そして、それは簡単なことではない。どのような仕事をどのように評価するのか、時間をかけて、ひとつひとつ問題を解決していくべきものである。
不十分きわまる議事録だとしても評価委員会(3月20日)の議論から分かるように、SDシートは主観的であるだけに、コースや学部によってA,B等の分布おいて非常な差があるようである。すなわち、ある学部ではAが圧倒的に多く(申し合わせ、内々の話し合い、権力者の指示・・・?)、別の学部ではほとんどがBである。Aのとらえ方、Bのとらえ方が違うのであり、また、各教員の自己評価のスタンスも違うのであろう。たとえば、Aに4号俸の昇給、Bに2号俸の昇給、Cに1号、Dはゼロといったようなウエイト付けを行うと、こうした学部間格差・個人間格差などがまかり通ることになる。
処遇差別(当面、1号差別)を強引に押し付けようとすれば、仕事時間1時間なにがしかの作業量として、多くの人は割り切って、形式を整えるだけである。こんなことがまかり通っていいはずがない。いや、当局にとっては、形式だけが必要なのか?
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5月2日 組合ニュースを受け取った。学生教育費に関する配分等においては、かなり問題がある(大学の管理運営の「トップダウン」の制度問題とその運用のあり方に起因するもの)ようであり、それが今回の当局への組合からの質問となったもののようである。
かつては、教授会等の機関が、さまざまの疑念や配分のあり方・基準等を討議する場として機能し、執行機関=管理機関に対する議会の役目を一定程度はたしえた。しかし今回の予算決算問題においても、教授会が開催されず、その代わりとされる代議員会もチェック機関としてまったく機能していない(問題提起はされたようにも仄聞する)ことと関係するようである。
専制的システムと不透明な予算・決算のあり方の問題は、密接に関係する。教員組合がこのような問題を提起しなければならないこと自体が、民主的システムの解体状況を物語っているといえよう。
--------------横浜市立大学教員組合週報-------------------
組合ウィークリー
2008.5.2
もくじ
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「研究費に関する質問状」を当局に手渡し、回答を求めました
● 「研究費に関する質問状」を当局に手渡し、回答を求めました
法人化によって、研究費の執行については、行政の予算執行手続きとは異なる、大学の特性に応じた柔軟なシステムになるべきにもかかわらず、逆に様々な点で研究費が使いにくくなっているという声があがっています。検収制度に対する疑問と不満にも大きなものがあります。研究戦略プロジェクトについても様々な疑問の声が聞かれます。
そこで、執行委員会では、3月末から組合員に呼びかけて疑問や批判の声を募り、それらを集約して当局に対して返答を求めることとしました。
先日4月30日、以下のような「研究費に関する質問状」を当局に手渡しました。回答の内容については、後日、週報でお知らせする予定です。
2008年4月30日
公立大学法人 横浜市立大学
理事長 本多 常高 様
横浜市立大学 教員組合
委員長 榊原 徹
研究費に関する質問状
法人化の目的のひとつは、行政組織とは別の法人組織にすることによって、その組織の特性に応じた柔軟な組織運営を行うことができるようになる点にあります。
しかし、本学の教育研究費の運営に関しては、それに逆行する動きが強まっています。
それは研究費の執行のみならず、学生教育費や研究戦略プロジェクトなどの研究費の配分・採択の不透明さの拡大という点でも同様です。
法人化以降、教員の間では、研究費等について、様々の不満や疑問の声が広がっていますが、今回、教員組合に寄せられた声を、以下に列挙しました。
いずれも多くの教員が抱いている疑問点ですので、関係部局による真摯な返答を求めます。
教育研究費について
教育研究費で購入した物件等について、研究推進センターが必要性に疑問をさしはさんで、教育研究上の必要性を文書で書くよう求められることがあるが、いかなる基準にしたがって、そのような要求を行うのかできるだけ具体的に説明してほしい。
研究推進センターは、月はじめに前月購入分の物品等の書類をすぐに提出するよう求める通知を教員に送ってくるが、業者から納品書等の書類が届くのが翌月になる場合があることを配慮してほしい。
3月に使用したコピー機の使用料(パフォーマンスチャージ費)の金額が4月になってから請求されるにもかかわらず、翌年度の研究費から支払うことができないことは、著しく不合理である。また、金額が4月初めまで不明のため、研究費の処理上も大きな支障をきたしている。
役所の予算は単年度主義であるが、法人化したのであるから、単年度主義にとらわれない運用をしてほしい。
学生教育費について
学生教育費について、平成19年度におけるコースごとの配分結果、購入物品名称と数を示してもらいたい。
平成19年度において、学生研究費の配分決定の手続きはいかなるものであったか。
平成20年度の学生研究費の配分方針・配分手続きを示してもらいたい。
研究戦略プロジェクトについて
科研費と同様、研究戦略プロジェクトの採択結果を公開することを求める。採択が決定した時点で直ちに、研究テーマ、研究費、研究代表者および分担者・協力者など、採択結果を公表することを要求する。また、研究院の会議で採択結果を印刷して配布することを求める。
18年度、19年度で研究戦略プロジェクトに採択され、同研究費を合計数百万円支給されているにもかかわらず、『教員研究業績目録・平成19年度版』によると、少なくとも平成18年1月〜19年9月の期間、論文・著書はおろか、地域貢献もゼロの教員がいる。当該研究戦略プロジェクトについていかなる評価が行われたのか、説明を求める。
講義を実質的に免除されるほど多忙なはずの管理職教員が研究戦略プロジェクトによる研究費の支給を受けている。@講義免除とA管理職手当、それに加えてB内部資金による追加的研究費受給では、三重取りではないか。この点についての見解を求める。
当然のことだが、外部委員、外部機関による採択審査、事後評価は欠かせない。外部資金獲得実績との連動も、透明性を高めることにつながるであろう。いかなる外部委員・外部機関が審査と評価にどのように関わっているのか、具体的な説明を求める。
[2] その辺の事情に詳しい人に尋ねたところ、「専門医」、「専門科」に早いうちから入りたい人(それを育てようとする方針)と最初はジェネラリストとして多様な診療科を経験することを希望する人(それを育てようとする方針)とがせめぎあっており、「専門外」への移動が、それだけでは「差別」、「左遷」とはみなせないようである。
本人がどう感じるか(左遷、差別と感じるかどうか)、それと関連して、その所属の部局がどのような方針でこれまで移動を進めてきたのか、そうしたこととの関連で、本当に「差別」、「不当処遇」なのかどうかが、判定できるようである。
今回の場合、実際にはどうなのか? 検証が必要ということになろう。