教養ゼミ担当者(山根徹也先生)執筆
(共通教養コース長より6月7日に配布されたもの:赤字強調は引用者による)
レポートの書き方
はじめに
レポートとは
授業などで提出する、学習成果を報告する文書をレポートという。レポートは、大学における学習の根幹をなしており、知的活動を行うトレーニング、学習成果の証明、また、卒業論文の予行演習などの目的で課される。
レポートの種類
レポートには以下のような、いくつかの種類がある。
研究レポート: (定められた枠のなかで)自主的に選んだテーマについて研究して書くもの。
読書レポート: 1冊の本をよく解釈、研究して書くもの。
授業報告レポート: 授業内容を報告するもの。
感想文・感想カード
以下では、レポートの基本となる研究レポートの書き方を説明する。ただし、レポートについての考え方はさまざまなので、各科目の担当教員の指示に従う。
1.研究レポートの大原則
目的 自分の学術的な研究の成果を報告・公表する。
条件 自分なりの研究・判断。
引き写し・引き写しの切り張り集、1冊の本の要約は、不可。
他人のレポートを無断で写すなどの悪質な行為は、処分の対象となる。
学術的なルールにしたがって執筆・報告し、読み手に理解させる。
研究 おおよその手順(飛び越し、逆行、途中での行き来もよくある):
1.問題設定→ 2.文献・資料の収集→ 3.読解/分析→ 4.構想
→ 5.叙述
2.テーマと問題の設定
・対象(テーマ)設定: 何を研究するか?
点検事項: 研究の意義があるか? 研究可能か? 課題に沿っているか?
・問題設定: 問い、研究の角度、方法を決める
・適切な問題を設定するためには、日頃の受講、読書、調査、体験、(教員、学生との)討論を通じての思索が必要。
3.研究文献・資料・史料
・原則
- テーマに関する信頼できる文献を、なるべく多く読む。
- 代表的文献を重視。(cf. 概説書・入門書の表示)
・文献の信頼度
- 学術研究にもとづいているか? (その分野の研究者か?)
- 信頼できる書き方をしているか? (論理、証拠)
- 信頼できない文献には依拠しない。
- インターネット・サイトの参照は、なるべく避ける。
・読書の目的
- テーマに関する既存研究の論旨、考え方を理解する。
- 情報を収集する。
4.構想
情報の整理・合成、自分なりの見解の構築
・根拠(事実・既存の研究成果)が必要:
・データ・史料の提示
・依拠する研究文献の提示
・理解可能(ひとりよがりではなく)でかつ論理的に整合的なければならない
・自分なりの判断
・既存研究の吸収・整理・評価(研究史): レポートの場合、これが主要課題
→ これをふまえ、自分で、設定した問題にどう答えることができるか考える。
5.書く
体裁
- 分量: 定められた規定を守る。通常、4000字から8000字程度。
-
用紙材質: ルーズ・リーフ不可。感熱紙不可。感熱紙で印字せざるをえない場合、コピーを提出。
-
用紙の大きさ: 教員の指示に従う。
-
縦書きか横書きか: 教員の指示に従う。
-
パソコン使用: 可かどうか、教員の指示に従う。
-
手書きの場合、万年筆かボールペンを使用。楷書体で清書する。
- 原本 コピーの提出は原則として不可。
-
表紙・目次ページ以外のページには、ページ番号を付す。
-
ゴシック体は原則不可。特に強調する以外は、明朝体で。
-
簡略に製本する。横書きの場合、左上1カ所、もしくは左横2カ所で綴じる。
-
字の大きさ、行間、余白、とじしろが適切かどうか、注意する。
-
折り曲げない。
-
その他、常識として、読みにくい、あるいはきたないレポートを提出しないよう注意する。
全体の構成
表紙 授業名、年度・学期、レポートの種類(期末レポート等)、タイトル*(+副題)、所属、学生番号、氏名、提出年月日
* 表紙部分のレポートのタイトルに「」、『』は不要。
目次 章・見出しとページ番号
序章 問題設定の説明。「はじめに」などとする。
本文 中心的な分析の論述。2〜3章ぐらいに分ける。
結論 問題への解答を示す。「おわりに」など。
(巻末注) 注を巻末に置く場合。(6.参照)
文献目録 文献リスト・参考文献一覧などともいう
感想・謝辞など なくてもよい。
本文の構成
章立てと、章内の段落の順序は、論理と情報を理解しやすく、説得的になるように構成する。テーマと論旨は一つにしぼる。二つあるなら、2本のレポートを書くべきである。
文章
正確で理解可能な叙述、客観的で論理的な証明と論証、正しい日本語表記・文法・用語にこころがける。
- 文体 原則として、だ・である体に統一する。そうしない場合にも統一。
- 主語 主語は明確か。主語と述語はただしく対応しているか気をつける。
- 呼応 正しい呼応関係を整える。
例 × 「これによって、〜は〜である。
」
○ 「これによって、〜が〜であることがわかる。」
-
読点(、) 適切な場所に置く。置き方が不適切だと読みにくくなり、さらには、意味が異なってしまうこともある。
- 簡潔な文 通常の学生レベルの文章力では、長い文は避けた方が無難。
-
一人称 主観的であるという印象を避けるため、原則として、一人称単数を主語としては用いない。
-
私事 個人的体験、個人的感想、個人的な研究の経緯なども原則として、本文に書いてはならない。書きたければ、「感想」などとして別に書く。
-
漢字 漢字の意味に注意し、誤った用字を避ける。 (例: × 門戸解放)
-
語彙 単語の意味を誤って用いる学生が多い。辞書を引いて確認する。
表記の形式
表記のルールを守る。
-
段落 適切に区切る。小学校なみの常識だが、段落冒頭を1字分下げる。
-
禁則 禁則を守る。句読点、「っ」、「ゃ」などは、行頭に置かない。
-
行空け むやみと行を空けてはならない。
-
!・? 多用しない。用いる場合、直後は1字分空ける。
-
「」・『』 「」・『』は、引用もしくは作品名表示にのみ用いる。『』は、「」内でさらに引用符が必要な場合、および、1冊の刊本となっている書籍の書名を表示する場合にのみ、用いる。
-
「」(。) 引用の場合、閉じる鍵括弧())の直前に句点(。)は置かない。
-
数字 横書きの場合、数を示すためには、アラビア数字を用いる。その場合、漢数字とアラビア数字は、ことばか数字かで使い分ける。縦書きの場合、原則として漢数字を用いる。
概念
正しく学術概念を用いる。レポートのキーワードとなるものは、どのような意味で用いるのかを、説明する。
(よく用いられる概念: 資本主義 民主主義 実存 ロマン主義的 国民 人種)
論理
論理的に整合的に。論理の矛盾、飛躍があってはならない。
根拠
根拠のないことは、結論として主張してはならない。証拠となる事実、もしくは、信頼しうる研究文献を示すこと、あるいは、それらに基づいて論証することが必要。したがって、「・・・だと思う」など、根拠がないことを示すような表現は避ける。
註
何らかの文献その他の情報源、研究を利用、参照している場合、そのつど必ず註によって明示する。通常、1段落に一つ程度の註が必要であるとこころえよ。(6,参照)
引用
引用は「」を付し、改変せずに表記する。ただし、中略は明記すれば、可。註を付す。
6.註(注)の書き方
引用、根拠、情報の出典、参照した他人の見解・理論、補足説明を示す。単なる注釈ではない。必要な箇所には必ず付さなければならない(事実についての情報源もページに至るまで明記する。ただし、高校程度の常識に属することについては、註記は不要)。科目によっては、レポートに註を要求しない場合があるので、担当教員の指示に従う。
形式は、学術研究で用いられている慣行に従わなければならない。
・註番号の場所: 正しい位置に。誤った場所に註番号を付してはならない。
-
1文の内容についての註は、文末。
-
いくつかの文、段落についての註は、最後の文の末尾。
-
これらの場合、文末の句点(。)の直前。
-
1文中、読点(、)までの部分についての註は、読点の直前。
-
語句についての註は、語句の直後。
-
引用部分に註を付す場合は、閉じる引用符(」)の直後。
・註を書く場所: 脚註・章末註・巻末註・括弧註のいずれか。
・註は文である。したがって、文末には、句点(。)を置かなければならない。
・註において、出典等は、ページ番号にいたるまで、できるだけ正確に示す。
例:
ドイツにとって第一次世界大戦は、国内の危機を回避するための戦争という、前方への逃避として性格づけられている1。 註 1) ハンス=ウルリヒ・ヴェーラー著,大野英二・肥前栄一訳『ドイツ帝国1871〜1918年』未来社,1983年,278〜289ページ。 |
・文献表示のしかたにはルールがあるので、守る。以下は、日本語文献の場合。
1)1冊の本の書名は、『』で示す。1冊の本のなかに収められている論文、作品のタイトルは、「」で示す。
2)句読点の使い方にも、例を参照して注意する。
3)勝手な略語や記号を用いない。 (例 × p. 20. ○ 20ページ。)
3)表示すべき事項、およびその順番にはルールがある。
・1冊の本の場合:
著者名/編者名『書名』出版社名,出版年,(ページ)。
・訳書の場合:
著者名/編者名、訳者名『書名』出版社名,出版年,(ページ)
上の例参照。または、
著者名(編者名)『書名』(訳者名)出版社名,出版年,(ページ)
例 ハンス=ウルリヒ・ヴェーラー『ドイツ帝国1871〜1918年』(大野英二・肥前栄一訳)未来社,1983年,278ページ。
・本に収められている論文の場合:
著者名「論文タイトル」編者名『書名』出版社名,出版年,(ページ)。
例 近藤和彦「モラルエコノミーとシャリヴァリ」柴田三千雄ほか編『民衆文化』(シリーズ世界史への問い6)岩波書店,1990年。
・雑誌に収められている論文の場合:
著者名、(訳者名)「論文タイトル」『雑誌名』巻・号、出版年、(ページ)。
例 木村靖二「ドイツ革命に関する二、三のメモ」『社会運動史』第10号(1985年),70〜75ページ。
4)複数回登場する書名は、「著者名(姓のみ)、前掲書/前掲論文」と記して略す。
例 ヴェーラー,前掲書,181ページ。
例 木村,前掲論文,73ページ。
ただし、同著者の別タイトルのものを挙げている場合は、タイトルを記す。タイトルでは、副題を省略してよい。
例 ヴェーラー『ドイツ帝国』3ページ。
5)インターネット・サイトを、やむをえず参照・引用した場合には、サイト制作者、サイト・タイトル、ページ・タイトル、URL、閲覧日時を明記する。同じものが刊行されている場合は、刊行物から参照・引用する(その場合、もちろん現物を読まなければならない)。
7.文献目録
・巻末に付す。
・文献は、一定の原則にもとづいて並べる。日本語文献は、著者の姓のあいうえお順が普通。洋書の日本語訳版も同じ。カタカナ姓のアイウエオ順。
・文献表示の形式は、註に準ずる。
参考文献
小笠原喜康『大学生のためのレポート・論文術』講談社新書、2002年
木下是雄『レポートの組み立て』ちくま学芸文庫、1994年
斉藤孝『学術論文の技法(第2版)』日本エディタースクール出版部、1998年
樋口裕一『やさしい文章術 レポート・論文の書き方』中公新書ラクレ(73)、2002年