論文のデータねつ造や盗用といった科学者の不正行為に歯止めをかけるため、日本学術会議(黒川清会長)が、告発を受け不正の有無を見極める「裁定機関」の設置を提言することになった。
科学研究に巨額の予算が投入される中、相次ぐ疑惑を適切に処理しなければ、科学への国民の信頼を確保できないと判断した。他の不正防止策も合わせた報告書を近く公表する。
日本では1990年代以降、様々な不正が続発。一昨年に慶応大教授の論文盗用、昨年に理化学研究所で論文のデータ改ざんが発覚したほか、今年は大阪大で不正データを使った論文を米医学誌に発表していたことが明らかになった。
学術会議の昨年の調査でも、回答した838学会のうち、会員の不正行為が5年以内に話題になったことのある学会が113に上った。ところが、疑惑が生じた場合の手続きなどを定めていたのは、全体の5分の1に満たない148学会。このため、学術会議が不正防止策の検討を急いだ。
その結果、各研究機関と学会、研究費の提供機関に倫理綱領などの制定を求めるとともに、不正行為を裁定する独立機関を早期に設置すべきとの結論に達した。裁定機関は、学術会議の内部か関連組織に設置し、告発内容を複数の専門家が検討する案が有力だ。
米国では連邦政府の研究公正局(ORI)が、国費が投入された研究の不正に対し研究費停止などの措置を講じている。
(2005年8月15日3時27分 読売新聞)