以下の強調個所は、引用者(永岑)による。

オリジナルは教員組合HPを参照されたい。

 

要求書を当局に提出

 

誠実交渉を!

制度変更を強行するな!

    年俸制・任期制について要求と質問

 

 先月までに当局が就業規則案と諸規定類を提示したことを受け、組合は、本日、市大事務当局に対して要求書を提出しました。

 組合は、当局に対し、組合との交渉も始まっていないにもかかわらず、労働条件の変更を行おうとしていることに抗議し、

誠実な交渉を行うこと、

交渉をじゅうぶんに行わないうちに制度変更を強行しないこと、

制度変更の実施以前においては現行の制度に拠ること

を要求しました。

 

 さらに、賃金についても、少なくとも2005年度については現行の制度にもとづいて支給することを要求し、年俸制についての多くの重大な問題―相対評価により必ず減給を受ける者が生ずるなど―を質しました。

 

 任期制についても、交渉を続けること、交渉ぬきに任期制導入を強行しないことを要求し、また、任期制への同意をしない教員について労働条件の不利益変更をしないことを強く求めました。

 

最後の点に関連して、期間の定めのない雇用に留まる教員は昇任の対象としないとする、福島大学改革推進本部部長の発言の撤回を求めました。また、再任制度、昇任制度を含む任期制に関連するしくみのさまざまな問題を質しています。

(任期制については、第14面に参考記事「資料」)

 

 勤務時間その他の労働条件と就業規則については、今後、別途要求してきます。

 

(次頁以下、要求書全文掲載)

 



2005年3月8日

 

横浜市立大学学長

小川惠一殿

 

横浜市立大学教員組合

                                    執行委員長 中西新太郎

 

2月15日当局提示就業規則案及び関連規程類にたいする見解と要求

 

 

 大学当局は2月上旬から中旬にかけ、教員組合が要求してきた教員の雇用・労働条件にかかわる規程類を組合に提示するとともに、1月14日付教員組合の「見解と要求」に対し口頭での回答を寄せた。

 雇用・賃金条件のきわめて重大な制度変更を表明した大学当局、横浜市大学改革推進本部に対し、教員組合はその制度内容を早期に示した上で教員組合との十分な協議、交渉をすすめるよう繰り返し要求してきた。

 当局は昨年9月に提案を行うとしてきたが、実際には、今回ようやく規程等をふくめた内容提示を行ったものであり、それらにしても、後述するように、いまだ制度概要にすぎない曖昧な点、相互に矛盾する点などが多くふくまれている。しかも、組合への就業規則及び関連規程類提示後に行われた教員説明会(2月末)において、これまで説明されてこなかった制度内容が口頭でのみつたえられるなど、当局の制度提案はあまりにも杜撰である。法人職員としての身分の根幹にかかわる任期制や雇用条件の内で最も重要な事項である賃金制度について、整備された制度内容を提示し周知したとはとうてい言えない状況であり、組合員と非組合員とを問わず、教員からは数多くの疑問が寄せられている。

 このような状況の下で教員に対し制度変更について同意を求めることは、拙速という以前に、不当かつ違法な振る舞いと言わねばならない。教員組合は、教員が意欲を持って働けるような勤務条件を求めるとともに、横浜市大がそこで学ぶ学生の要求や市民の期待に応え、真に魅力ある大学たりうる環境を求めてきた。そのために必要な課題の検討、遂行についてはこれまでも努力を惜しまなかったし、これからもそうである。しかし、現在当局が強引にすすめようとしている制度改変は、その手続きの点でも内容においても、大学運営に混乱をもたらし、教員の失望を誘い、横浜市大の魅力も品位も失墜させるものとなっている。何よりも恐れるのは、このような事態の進行によって、教育・研究機関としての大学の機能と役割が著しく低下することである。

 この悲しむべき状況に鑑み、大学にふさわしくかつ公正で法理に則った雇用・労働条件の確立を要求する立場から、当局提示の就業規則案及び規程類案に対する組合の見解と要求を示し、あわせて、雇用・労働条件の重大な変更事項の扱いに関する要求を示す。

 なお、就業規則案については、雇用・労働条件を規律する重要な内容であることから、個別条項について細目の要求を別途行う予定である。

 

 

1 雇用・労働条件に関して一方的に制度変更を行うことは許されない

 

 雇用・労働条件に関して大学当局が一方的に制度変更を行うことは許されない。変更事項については、教員組合との十分な協議・折衝ぬきに強行してはならない。

 年俸制、任期制導入をはじめ、当局は地方独立行政法人移行にともない、教員の雇用・労働条件の抜本的変更を提案している。このような重大な変更を教員組合や関係職員団体との協議ぬきで強行することは、雇用・労働条件の変更に関する労働法理上からも、地方独立行政法人法の趣旨からも許されていない

 すでに述べたように、教員組合との折衝は、1月14日付組合要求への回答と、就業規則案及び関連規程類案の提示が2月15日に行われたばかりであり、制度変更の内容に関する協議はようやくその出発点に立ったにすぎない。しかもなお、後に質すように、雇用・労働条件の重大な変更にかかわっていまだ提示されていない事項も多々存在する。さらに、医学部、福浦、金沢八景キャンパスでの教員説明会(2月、24、25、28日)では、以前に提示されていない内容について説明されており、提案内容の変更も行われている。説明の齟齬も存在し、提案内容全体の整理が行われていない。

 

○したがって、教員組合は、今回提示の制度変更について、未整理、未提示の部分をあきらかにしたうえで、当局が教員組合との誠実な協議、折衝を行ってゆくよう要求する。

○また、そうした協議、折衝を経ずに制度変更を一方的に強行することのないよう要求する。

 

 地方独立行政法人法案に対する附帯決議では、政府が十分配慮すべき事項として、「地方独立行政法人への移行等に際しては、雇用問題、労働条件について配慮し、関係職員団体又は関係労働組合との十分な意思疎通が行われるよう、必要な助言等を行うこと」が挙げられている。総務省は、全大教との会見(2月25日)において、「十分な意思疎通」の必要を確認しており、地方独立行政法人への移行に当たり、当局が一方的に雇用・労働条件の変更を行いえないのは明白である。

 この点と関連して、2月25日第2回教員説明会における福島部長の「身分が移行します。移行しますので、新しい法人のもとの勤務体制に入ります。したがいまして、新しく提示をしております就業規則等は適用になります。ですから、評価制度ですとか、年俸制ですとかは適用になります」という発言は著しく正確さを欠き、問題である。年俸制や評価制度が法人移行に当たってあたかも自動的に実施できるかのように述べており、このような発言は、労働条件の不利益変更であっても当局が自由に実施できること、組合との協議を認めていないことの表明とみなされて致し方ない。

 なお、上に挙げた要求は、雇用・労働条件に重大な変更を規律する手続き要件としてゆるがせにできぬものであり、一方的制度変更が強行される場合には、関係諸機関への提訴も視野に入れて対応せざるをえない点、付記しておく。

 

 

2 制度変更の確定と実施以前の雇用・労働条件は現行制度に拠ること

 

 制度変更の確定と実施以前の雇用・労働条件は現行制度に拠るべきである。

 前項にてらし、適正な手続きを経て制度変更が実施される以前の雇用・労働条件は現行制度に拠るべきであり、それ以外にはありえない。

 

○この点を確認せよ。またそうでないというのであればその根拠を説明せよ。

○また、制度変更に関わる協議、検討期間や制度変更にともなう移行期間について暫定的制度を設けたいという提案があるならば、その旨について提示し、別途協議すべきである。

 

 

3 年俸制の導入に関する見解と要求

 

@ 現行給与制度に準じた賃金支給・年俸水準設定に関する考え方

 年俸制の導入については、重大な雇用条件の変更であり、組合との協議、折衝が必要であり、また、年俸査定の前提となる教員評価制度についても同様である。さらに、教員評価制度の導入にさいしては公正な評価を実施する上で試行期間を必要とする。また、当局説明でも示されているように、現学部・教育課程が存続する間は、評価は部分的なものにとどまる。

 これらのことから、かりに年俸制の導入が決まってもその実施には移行の期間が生じる。

 

○したがって、かりに年俸制の導入が確定をみたとしても、その実施にいたるまでの期間は現行給与制度に準じた賃金支給がなされるべきである。

 

○年俸水準設定に関する考え方を整理し提示するとともに、規程上に反映させよ。

 当局は、2005年度からの5年間について年俸水準を固定するという当初の説明を変更し、2月28日の教員説明会においては、他大学との比較・均衡や人事院勧告等諸般の状況を加味した年俸水準の改訂を行う旨あきらかにした。この点は、現行賃金の5年間すえおきを意味した以前の説明よりも前進したものとして評価する。しかし、こうした説明は組合への提示資料には示されておらず制度設計として明確にされていない。新たな説明について早急に整理して提示することを求める。

 

A 2005年度給与は現行制度にもとづく賃金支給とすること

 2005年度給与に関しては年俸制へ移行しえない以上、現行制度にもとづく賃金支給とすべきである。

 「評価ができないので2004年度水準の賃金を支給する」という説明は、協議、折衝を行うことなく、2005年度からは教員評価にもとづく年俸査定を実施するという説明になっており、認められない。

 当局は2月28日教員説明会において、平成17年度分賃金について、平成16年度から1号俸昇給した水準で支給する旨説明した。従来の説明よりも前進したものであり、これは評価する。

 教員説明会配付資料における平成17年度年俸推計は、平成16年度支給額と総計を同じとしながら、内訳について「給料相当部分」「職務給・業績給相当部分」の分類を用い、協議も合意もみていない年俸制の分類にそった支給を提案している。これは年俸制導入を先取りして行うものであり不当である。

 

○協議、検討すべき年俸制の制度内容とはあくまで切り離して2005年度賃金支給について協議すべきである。

 

B 年俸制の制度内容に関する見解と要求

 当局提案の年俸制は、以下に示すように、「努力すれば報われる」賃金制度ではなく、全員が努力したとしても必ず減額査定を受ける者が出る制度であり、かつ、現行制度にある昇給の廃止、給料月額部分が減給されうることなどの点で、重大な不利益変更をもたらす制度である。教員組合は今回の提案内容を受け入れることはできない。

 

○相対評価による年俸査定では必ず減額査定を受ける者が存在する。各人の努力を公正に評価するというのであれば絶対評価がしかるべきであるが、絶対評価をとらない理由は何か? 

 

 教員説明会配付資料におけるモデルは査定によってアップした場合のみを図示しており、恣意的である。原資がほぼ一定であるかぎり、減額される場合の対応モデルが存在しなければならない。当局は変動部分の査定幅を最大10%と説明しており、これにもとづくと年額5パーセントの増額査定者、減額査定者を想定しうる。配付資料モデルによって今年度年間総額983万円程度の支給を受けている教員の年俸について計算すると、「職務給」と「業績給」の合計額について毎年5%の減額が継続した場合、5年目にはおおよそ67万円の減額となる。再任時に年俸に額の変動がない場合、「給料相当分」は、およそ467万円となり、退職金にはね返る給料月額部分が約1万2千円の減額となる。「普通にやっていれば再任するしくみ」と言いながら、これでは、普通にやっていても(再任されても)賃金は下がるしくみにほかならない。

 そもそも査定にもとづく年俸制は、個人の業績が収益の増大に連動しており、かつその関係が客観的に把握しうるような場合にのみ適合する制度であり、学生教育に払う努力が収益の増大を直接にはもたらさない教育組織のような場合にはその導入には無理がある。教員の努力として評価すべき事項と年俸増額に反映させうる収益増の努力とは一致しない。そうした特性を無視して年俸制を導入するならば、教員が本来果たすべき責任と努力とがかえって等閑視される結果となろう。

 

○査定は何段階を想定しているか?

 再任・昇任審査における教員評価におけるS〜Dの5段階評価は年俸査定に利用される教員評価の場合も同様か? 

 

○査定段階はそれぞれ、どれだけの増額、減額幅とするか現段階では検討中と説明しているが、相対評価の下では不利益変更を確実に生じる事項であり、協議、折衝を行うべきである。

 

○それぞれの査定段階についてどのような割合を想定するかについても前項と同様に協議、折衝をすすめよ。

 

○年俸査定における増額、減額それぞれの基準は何か? 

 

○当局提示の年俸制規程は、「教員評価制度による評価結果を総合的に勘案して」年俸額を決定するとしているが、「総合的に勘案して」とは、だれがどのような判断基準にもとづいて「勘案」するのか? 

 このようなあいまいな規定は、客観的で公正な査定のあり方を歪めるものであり、「勘案」する人間の匙加減により査定が恣意的に運用される危険性をもたらす。

 

○扶養手当、住居手当、調整手当、初任給調整手当を「職務給」として位置づけ、評価にもとづく変動部分に組み入れることは、それぞれの手当の性格にてらすならば不当であり認められない。

 これは業績評価に応じてたとえば「扶養手当」を増減させることのおかしさを考えれば明白である。かつ、このような変更により、相対評価による確実な減収が生じるものであり、あきらかな不利益変更である。

 これらの手当については、従来どおりの支給を行うか、あるいはその性格にそくした費目化を行うべきである。

 

○「職務給・業績給」における「職務」とは何を意味しているのか? 

 

○年俸制規程における「任期期間中」(第3条第2項)、「新たな任期における年俸額」(第4条第2項)における「任期」とは3年任期および5年任期を指すのか? 

 

○職位と年俸水準の関係について考え方を示すよう要求する。

 年俸制規程第4条第2項は、「昇任、降任及び再任のため、新たな労働契約を締結する際は、前項により決定した年俸額に、昇任、降任及び再任の審査結果を加味し、新たな任期における年俸額を決定する」としている。この規定は職位ごとの年俸水準を想定しているものと解されるが、職位と年俸水準との関係を示すべきである。

 

○年俸規程第12条第2項は、休職時の取扱について、「賃金規定第25条の定めに準拠する」としている。賃金規程第25条は一定の条件における休職期間中の扶養手当、調整手当、住居手当の支払いを規定しているが、これらはどう扱うのか? 

 

 

4 任期制導入に関する見解と要求

 

@ 協議・折衝を誠実につづけること、不利益変更をしないこと

 任期付教員への移行は労使双方にとって良好な雇用形態であることが合意され、教員の同意がある場合にのみ実施される。教員が「良好な雇用形態」であるかどうか判断する前提として、任期制の制度内容が適正かつ明確に設計されていることはもちろん、それが周知されかつ教員組合、各教員の疑問に答え、十分な協議、折衝を行うことが当然である。「期間の定めのない教員」を任期付教員に移行させることは、雇用形態における最も重大な不利益変更をもたらしうることから、これは当然の手続きである。こうした手続きを無視して拙速に任期制導入を実施すべきではない。

 

○任期制の制度内容について組合の疑問と要求とに誠実に答え、協議・折衝を続けるよう要求する。

○任期付教員への移行について、教員からの疑問に誠実に回答すること

 

 言うまでもなく、任期制の制度内容に関して疑問が解消されぬ場合には、かりに当局が同意を求めても教員には回答を留保する権利がある。

 

○任期付教員への移行を選択せず「期間の定めのない雇用」にとどまることを理由にした雇用・労働条件の不利益変更を行うべきではないこと

 

◎「昇任の対象は任期付教員のみ」という2月28日教員説明会での福島部長発言は不当かつ違法であり撤回を求める。

 

 福島発言は、「期間の定めのない雇用」を有期雇用契約に切り換えるために差別的処遇を明言したものであり、このような差別処遇は労働基準局長通達に明記された労基法第14条の趣旨に反する違法措置である。正当化されえない処遇にたいしては、組合は法的手段をふくめ必要な対抗措置をとる。

 2月28日教員説明会において、福島部長は、「期間の定めのない雇用」形態にある教員は昇任の対象としないと言明した。この発言は、24、25日説明会ではあきらかにされず、規程としてまったくあきらかにされていなかったものである。説明会資料にも記載されず、1箇所での説明会で突然こうした重大な、しかも明確に差別的な処遇を持ち出すことは、きわめて不穏当であり、制度設計の拙速、曖昧さを示すものである。制度変更に関する十分な周知と協議以前に、どのような雇用・労働条件が想定されているかさえ定かでない状況の下では、その適否についての判断も留保せざるをえない。

 「期間の定めのない雇用」に関する教員組合の質問にたいし、当局は2月15日付回答では、「公立大学法人横浜市立大学職員の勤務条件(教員)」に示された内容については任期付教員と同様としている。当然のことながら、職位は年俸水準等、勤務条件に密接にかかわるものであり、「期間の定めのない雇用」教員を昇任対象としないことは雇用・労働条件に関する明確な差別となる。また、現行制度における職位ごとの給与制度を考えるなら、28日説明会における発言は、雇用・労働条件に関するきわめて重大な不利益変更を表明したことになる。このような変更が許されないことはあまりにも明白である。

 

A 再任審査制度・昇任制度に関する文書の性格、規程としての明示

  任期制に関する必要事項についての学則案の提示

 任期制及びこれとかかわる再任審査制度・昇任制度について当局が直接触れている規程は、就業規則、任期規程(案)、「任期の再任審査について」「昇任等の審査について」(いずれも、2月15日市労連説明以下、「説明文書」)である。説明文書についてはその性格があきらかではない。任期制は教員の教育研究評価にかかわるものであり、これらは学則として必要な事項を明示的に定めるべきことがらである。

 

○「説明文書」について、その性格をあきらかにするとともに、「異議申し立て」制度のような規程として明示すべき部分については規程に組み入れるよう要求する。

○必要事項についての学則案を提示するよう要求する。

 

B 任期制及び昇任制度の制度内容に関する見解と要求

 

A 再任審査手続きと審査体制について

 任期制における再任審査手続きと審査体制について、審査の客観性、公正性、透明性を保障する観点から以下の点を要求する。

 

○審査機関が審査内容と審査基準とにもとづいて構成で客観的審査が行える資格を備えており、かつ審査が公正に行われたかどうかを検証できることが再任審査の条件である。この当然の原則を確認していただきたい。

 

「教員人事委員会」の構成及び再任審査決定手続きについての規程、学則案を提示するよう要求する。

○また、説明文書「任期の再任審査」では、「必要に応じて人事委員会のもとに部会を設置し、審査する」とあるが、部会の設置要件、構成、組織及び審査権限、手続き等に関する考え方及び規程、学則案を提示するよう要求する。

○「教員人事委員会」は学長の諮問機関とされるが、学長は「教員人事委員会」メンバーに加わるのか?

○「学長は人事委員会からの再任の適否の判定結果を確認し、理事長に申し出る」(「説明文書」)とされているが、「確認」の意味は、「教員人事委員会」による適否の判定結果を翻すことなく自動的に理事長に申し出るということか?

○「教員人事委員会」は再任に関してその適否のみを決定するのか?

 

 教員説明会において「教員人事委員会」は教学組織より2名、経営管理組織より2名、学外より2名の組織となると説明されている。しかし、「教員人事委員会」の構成、審査手続き等については提示されておらず、再任適否の決定権限を持つと想定される重要な委員会についてその制度機構があきらかにされていない。

 また、教員の業績評価について説明された「教員人事委員会」が客観的評価を適正になしうるかはきわめて疑問である。説明された「教員人事委員会」の構成が大学自治の原則にてらし、教学の自律性を確保するとともに、公正かつ客観的機関たりうるかどうか疑問である。この点は、教員評価の結果をどのように扱うかにかかわり、また、「部会」の位置づけ、権限にかかわる。これらの点についてあきらかにすることが必要である。

 

○学長による審査手続きの省略は恣意的な再任拒否を許す制度上の危険をもつものであり、容認できない。このような規定をなぜ設けているのか理由をあきらかにするよう求める。

 任期規程案では、「学長が特に認めた場合は、教員人事委員会における審査の一部又は全部を省略できる」としている。主観的意図はどうあれ、この規定は、学長が一切の審査手続きを省略して再任の適否だけを人事委員会に求められるようにしており、再任審査の恣意的運用を制度上で可能にしてしまう

 

○再任の適否に関する判定理由を再任申請者の求めに応じて遅滞なく示すこと。

 なお、判定理由の提示を求める請求は「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」第3条にもとづき、再任否の場合、請求理由を付す必要はない。そもそも再任の判定理由は教員の大学における職務・業績をみるものとして、本人の求めに応じ適否にかかわらず示すべきものである。

 また、後述するように、再任審査は降任や新たな任期期間における年俸の増減にかかわるものであり、その審査内容の透明性が厳密に保障されるべきである。

 

○この点から、判定理由の提示内容には、任期規程案に示された審査項目の全内容がふくまれるべきである。

○言うまでもないが、以上の開示内容は文書において示されるべきである。

 

○説明文書「任期の再任審査について 4 異議の申し出」における「審査の結果を知り得た日」とは曖昧であり、再任申請者にたいする審査結果通告日を規定すべきである。

 

○前項「異議の申し出」について調査・確認及び報告を行う組織が「教員人事委員会」とされているのは不適切であり、審査結果及び判定理由の適切・公正を検証するためには別個の組織によって異議申し出の審議がなされるべきである。

 2月28日教員説明会において、「教員人事委員会」での調査・確認を経た上で別途審議を考えると説明されたが、そうであれば、異議申し出を扱う組織、プロセス全体を示すべきである。

 

○再任審査の申請時期、期限及び再任審査期限(「最終年度の夏頃」)の整合性と妥当性をはかること

 

 

B 審査内容と基準

 

◎任期規程案及び説明文書「任期の再任審査について」における審査項目相互の関係、ウエイト、設定理由があきらかでない。

 教員評価結果以外の審査項目を付加することによって、業績を評価しうる「現場」から離れた「評価」によって審査結果が左右される可能性が増す。

 

○「本人が関係している組織の長」は教員評価における2次評価者であり、その評価は教員評価に反映されている。2次評価者にあたる組織の長の「意見」と2次評価とはどのように関係しているのか? 評価のダブルカウントではないか?

 

○「本人が関係している組織の長」は複数存在しており、その意見は「評点」としてどのようにカウントされるのか?

 

○「本人が関係している組織の長」の「意見」はその職責において管轄する事項について評点化しうるような段階をつけて記述されるのか?

 

○「教員評価の結果についての学長の意見」とは、教員評価のS〜Dのランク付とどのように関係するのか?

 

○再任審査の性格にてらし審査項目、審査基準はあらかじめ明示的に示されるべきであり、「その他学長が指定する事項」を設けることは審査項目の恣意的操作を可能にする。このような審査項目を設ける理由は何か?

 

○また、任期規程案では、「学長が特に認めた場合は、審査する事項の一部又は全部を省略することができる」としており、審査項目全体が学長裁量により自由に操作できる規定となっている。再任の可否がもたらす重大な結果を考えるなら、このような規定のもつ危険性を座視することはできない。

 

○再任の判断基準が任期期間中において「普通にやって来られたかどうか」であるならば、任期期間中の業績評価が問われるべきであり、「次期任期に向けた取組計画」を審査項目に加えることは、業績評価に拠らず、検証されていない項目をふくむことになる。再任審査を歪めることになり不適切である。

 

○各審査項目間の関係、評点としてのウエイトはどのように考えているか?

 

◎再任可否の判断基準を任期規程に明記するよう要求する。

 再任可否の判断基準を規程上で明示することは有期労働契約において使用者側に課せられた義務である。(「使用者が当該契約を更新する場合がある旨明示したときは、使用者は、労働者に対して当該契約を更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示しなければならない」「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」厚生労働省告示第357号)「普通にやっていれば再任する」という基準を任期規程において明記しなければ、この告示に背馳することになる。

 

◎説明文書「任期の再任審査について 3 再任基準等」について以下の諸点の説明を求めるとともに整合性を質す。

 

○「一定水準以上を得点した者を再任適任者とする」とあるが、「一定水準」とはどのような水準か? 「普通にやっていれば再任」という考え方にてらし、水準の内容を明確に示すよう要求する。

 

○また、その水準は得点として表示されるとしているが、そうであるとすれば、あらかじめ各審査項目の評点配置、得点基準が示されるべきである。

 

○教員評価の評価結果以外の評点は相対評価で行われるのか?

 絶対評価で行われるとすれば、教員評価の評価結果を相対評価とすることと不整合になるのではないか?

 

○教員評価の評価結果をS〜Dの相対評価で示すことと再任の可否を一定の基準によって判定することとはどのように関係しているか?

 

○相対評価による評点化は上位から下位の枠づけられた分布を実現するものであり、一定水準をその枠内に設定するかぎり必ず再任不可の者が生じることになる。「普通になっていれば再任」という考え方と相対評価による再任の可否判定は矛盾するが、制度上での整合性ある説明を求める。

 

○「職位別に一定水準以上を得点した者を再任適任者とする」としているが、この場合に判定されるのは、その職位において再任可ということである。逆に、その職位において再任否となった場合には、教授、準教授においては「降任」判定を意味することになるのか?

 

C 期間と再任回数

 

○助手、準教授について再任回数をかぎる合理的根拠は存在しない。現行制度から不利益変更にあたるこうした限定についてその根拠を説明するよう要求する。

 とりわけ、助手の再任回数を原則1回とし、しかも任期3年以内としていることは容認できない。また、助手において、博士号取得の有無にかかわらず任期3年以内としていることも差別的処遇である。当局案による再任審査のスケジュールによれば、任期最終年度の評価はできないため、2年間の評価によって再任の可否が判断されることになり、このような制度設計では助手が大学において業績を積む環境は著しく阻害される

 

○博士号を持たない準教授、教授が簡易審査によって3年任期を5年に任期に延長できるとする法律上の根拠について説明を求める。

 

○任期規程案3条、4条における休職中、育児休業又は介護休業中の任期付教員の再任回数について、恣意的運用を避けるために別途規程を設けるべきである。

 

 

D 再契約における条件設定

 

○新たな任期期間中の年俸等の条件はどのような基準にもとづいてどのように決定されるのか? またこの条件設定と再任審査とはどのように関係しているか?

 

○「普通にやっていれば再任」という考え方に立つならば、再任にさいしての減俸とされる根拠は何か?

 減俸しての再任は「普通にやっていても」賃金を減額することになり、再任の考え方と矛盾することになる。

 

○再任決定にもとづく新たな労働契約の締結は、教員が著しく不利な雇用・労働条件に同意せざるをえない恐れがある。再任決定にもとづく労働契約においては、あらかじめ規程上で明示された事項を除き、再任時における雇用・労働条件を引き下げぬよう定めるべきである。

 

 

5 昇任制度について

 

@ 昇任制度全般について

 昇任制度については就業規則案において、職員の昇任を理事長が行うこと及び、「当該職員の勤務実績等の評価に基づいて行う」ことを規定しているのみであり、説明文書「昇任等の審査について」はどのような性格の文書であるかも明確でない。教員の昇任は教育・研究の職責職務にかかわる事項であり、大学の教育研究機関であるという性格にてらし、教学組織の責任において厳密かつ公正に規定されるべきことがらである。

 昇任制度について、このような観点から、以下の諸点をあきらかにするよう要求する。

 

○昇任制度について、学則もふくめ教学組織による検討が行われたか、行われているのか?

 

○昇任制度のあり方に関する教学組織の考え方は何か、教学組織の代表者に説明に求める。

 

○説明文書「昇任等の審査について」の前提となる規程、学則は存在するか? もしも存在しないというのであれば、この文書の性格は何か?

 

○「期間の定めない雇用」教員の昇任は規程のない以上、従来制度によるものと解しうるが、そうでないとするならばその根拠について説明せよ。

 説明文書「昇任等の審査については、「基本的資格要件」を「任期の最終年度を迎えている者」として、任期付教員の場合のみを対象とした文書であり、「期間の定めない雇用」教員の昇任制度については触れていない。

 

A 説明文書「昇任等の審査について」に関する見解と要求

 説明文書「昇任等の審査について」に関して、以下の点につき回答を求める。

 

○「基本的資格要件」における「直近上位職(…中略…)への昇任等の審査対象」の「等」とは何を意味するのか? 

 

○同資格要件Aの、「昨年度の評価結果の評価点が上位の者」における「上位」とは、評価点の順位に厳密にしたがってのことか? 

 

○同Aの、「原則」とは「特別資格要件」にたいする原則の意味か? 

 

○「教員人事委員会」及び「部会」が昇任の適否について公正に判断できる保障があきらかでない。

 

○昇任審査の結果は、その公正性を担保するために文書による報告が教授会等の教学組織に公表されるべきである。

 なお、採用人事もふくめ、教員人事はその透明性が確保されなければならず、密室人事を避けるために文書による報告が求められるのは当然のことである。

 

○「テニュア教授審査の手続きの流れ」における、「より高いレベルでの大学への貢献等」における「より高いレベル」及び「等」の内容は何か? 

 

○「大学組織内部だけでなく法人も含めて、首脳陣の判定の要素」とは曖昧であり、きわめて恣意的な文言である。そもそも「首脳陣」とは何か? 

 

◎「審査項目」は「組織方針」への忠誠をことさらに求め、教員の業績評価を恣意的に歪める内容となっている。昇任基準の曖昧さとあわせ、審査項目と基準の操作によって昇任制度が恣意的に運用される強い危険性が存在している。

 

○教員評価の結果にすでにふくまれている「地域貢献」や「学内業務」への取組を別項目として審査項目に挙げているのはなぜか? ダブルカウントではないか? 審査項目Aに挙げられた「活動状況」の評価は、教員評価項目とされた「地域貢献」や「学内業務」の評価とどのように異なるのか? 

 

○審査項目Aの「組織方針」とは、明示的にどこに示されるものであるのか?

 

○「活動状況」とは何を指すのか? 

 

○学長が指定する事項が恣意的に運用される恐れがある。公正な運用を保障する規定とすべきである。

 

○昇任基準の評点化については任期制の場合と同様の問題が存在する。それらについての説明を求める。

 

 以上要求する。

 なお、勤務時間その他の残された事項については別途要求することとする。

 

 

 

関係資料

有期労働契約(任期制)には同意が必要

合意しない者の不利益取扱は不可

 

 教員の有期雇用の法的根拠は、「大学の教員等の任期に関する法律」と労働基準法(2003年改正)14条です。法案審議の際の政府委員の答弁と厚生労働省の通達の関連部分を紹介します。

 

1)「大学の教員等の任期に関する法律」の国会審議における文部省高等教育局長の答弁140回国会 衆議院文教委員会 平成9年5月16日 雨宮政府委員)

 任期制の導入に関連いたしまして、その任期を付したポストへの任用という場面におきましては、本人の同意を得て行うということが法律上明記されているわけでございます。したがって、本人の意に反してそのような任用行為がなされるということは考えられないというように思うわけでございますし、また、それを本人が受けないというようなときに、そのことによって何らかの不利益な取り扱いがあるというようなことも、もちろんあってはならないことだというように考えております。

 

2)厚生労働省労働基準局長通達「労働基準法の一部を改正する法律の施行について」平成15年10月22日  有期労働契約(法第14条、第137条及び改正法附則第3条関係)

 今回の法改正における有期労働契約の期間の上限の延長は、有期労働契約が労使双方から良好な雇用形態の一つとして活用されるようにすることを目的としているものであり、今回の改正を契機として、企業において、期間の定めのない契約の労働者の退職に伴う採用や新規学卒者の採用について、これまでは期間の定めのない契約の労働者を採用することとしていた方針を有期契約労働者のみを採用する方針に変更するなど有期労働契約を期間の定めのない労働契約の代替として利用することは、今回の改正の趣旨に反するものであること。

また、使用者が労働者との間に期間の定めのない労働契約を締結している場合において、当該労働者との間の合意なく当該契約を有期労働契約に変更することはできないものであること。

 

 

 

                                      発行 横浜市立大学教員組合執行委員会

               

                                   236-0027 横浜市金沢区瀬戸22番2号 

                                   Tel 045-787-2320   Fax 045-787-2320

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