経済史20021115日講義メモ

 

資本主義発達史上における重商主義の役割・意義

 

経済発展にける経済的側面と経済外的側面

 

カレル・ヴァン・ウォルフレン著藤井清美訳『ウォルフレン教授のやさしい日本経済』ダイヤモンド社、2002

 

.99「日本の経済政策のエリートたちは、第2次世界大戦後、常に貿易黒字を望んできました。工業力を高めることによって輸入よりも輸出を多くしたいと考えてきました。[1]

 

p・101「日本は国際舞台に登場するようになってから、ずっと重商主義的な政策をとってきました。鎖国政策をとってきた日本が国際社会に直面させられるのは、ペリー提督が黒船で訪れたことに端を発します。いろいろな面で日本より先進的だった諸外国、列強に経済面で従属させられるおそれを抱いた日本の政策当局は、早急に強力な産業システムを育成しなければなりませんでした。

そのために重商主義はいい方法でしたが、日本がこの方法をとり始めたとき、列強は未な、すでに重商主義から離れて相当の時間を経ていました。・・・」

 

.102「日本は、重商主義の手法を高度化させ、とくに第二次大戦以降には、現代世界経済のなかで有利な立場が得られるように対応させてきました。・・・」新重商主義

 「かつて重商主義的政策をとっていた国々が金を欲していた[2]のに対し、日本の産業システムがためこんだのは、世界の主要な基軸通貨としてのドルでした。ドルを膨大にためこむ[3]ことに日本は成功しました。」

 

 

配布資料:2001年―2002GDP統計速報

 民間最終消費の動向

 住宅建設の動向

 民間設備投資の動向

 輸出入動向―純輸出額の動向

 

 

 

大塚テキスト 重商主義 55-56194197-199202-203257

 

産業資本の育成を至上目標とする政策体系

 

名誉革命前後から、フランスと対決

 絶え間ないゲリラ戦的通商破壊

 スペイン王位継承戦争など幾つかの戦争…スペイン領新大陸と今やおびただしい「金」を産出しはじめているポルトガル領ブラジルにおける商権の争奪

 

 戦勝ごとに有利な通商条約

 新大陸の諸植民地に優勢な商権樹立・・・「金」と「銀」に対する獅子の分けまえにあずかる

 

大塚テキスト194ページ

農村工業を基盤とする中産的生産者層の両極分解(マニュファクチャーの成長)

     ・・その成熟のなかから自生的な産業革命

 

 重商主義政策による保護主義政策…一八世紀中頃の状態

     国内市場の発展・・・局地的市場圏から地域的市場圏へ、さらには統一的国内市場形成へ

     全イングランド的な規模での社会的分業…繊維工業はヨークシャー西部ランカシャー一帯に、金属工業(製鉄および金物製造)は中部地方(ミッドランズ)に、

農・酪・醸造業は東部諸州に。…産業立地の地域的分化

 

     中産的生産者層の両極分解―大量の賃労働者→国内市場

     7つの海に商権を確立

.202 イングランド銀行…発券銀行

 

 



[1] 「貿易黒字」は、だれの所有になるか?

 「工業力を高め」た結果は、人間の生活を豊かにしたか? どのような意味でか?

 

[2] 重金主義と重商主義は違う。

「重金主義bullionism・・・広義の重商主義の原初的形態。

一国の富は地金銀の保持にあるとする思想およびこれに基づく政策のこと。ヨーロッパにおける絶対王政のもとで、王室財政の強化と結びつきながら行われた金銀鉱山の開発、貿易統制や植民地支配によって貴金属の獲得をめざす政策が中心。」(有斐閣『経済辞典』第4版)

 議会重商主義・固有の重商主義・・フランスのコルベール主義にみられるような絶対王政期の経済政策を普通、重商主義と呼ぶが、これに対して本来の、固有の重商主義とは、市民革命後の議会が推進した政策体系のこと。政策主体の違い。

 言葉の表面からすれば、「商業」を重視する政策.しかし、実態は? フリードリヒ・リストによる鋭い分析・・・・リストの『経済学の国民的体系』第29章「工業主義、学派から誤って重商主義とよばれているもの」

 有斐閣『経済辞典』・・・「固有の重商主義parliamentary mercantilism・・・マニュファクチュア期の産業資本の利害に従って、資本の本源的蓄積を推進するために行われた経済政策体系であり、市民革命後のイギリスに典型的にあらわれた。具体的には、貿易差額を最大にしようとする保護貿易政策、定住法に見られる労働力陶冶のための政策などが実施された。」

 

[3] 膨大なドルは、だれが、どのような形態で所有し、投資しているか?