公共選択学会第18回学生の集いテーマ

3年生テーマ:「望ましい選挙制度・政治参加のあり方」

  
  選挙は民主主義社会の根幹を担うシステムです。特に代議制民主主義では,私たちの代表者としての意思決定者を選出するプロセスとして選挙が存在し,有権者の投票行動を通じて代表者が選出されます。したがって,民主主義政府が有効に機能するためには,選挙制度や有権者の投票行動が機能することが必要となります。しかし,これまでの,そして現在の日本における選挙・投票行動を振り返ってみると,多くの問題が存在しています。   
  例えば,少子高齢化の進行で有権者に占める高齢者(シルバー)世代の割合が増し,高齢者層の政治への影響力が増大する現象,い わゆる「シルバー民主主義」という言葉を耳にするようになってきています。選挙に当選したい政治家が,多数派の高齢者層に配慮した政策を優先的に打ち出す ことで,少数派である若年・中年層の意見が政治に反映されにくくなり,世代間の不公平につながるとされています。一方で,若者の投票率の低さ・政治的無関 心は,選挙の度に問題となっています。2012年12月16日実施の第46回衆議院総選挙では,60歳代の投票率が74.93%だったのに対して,20歳 代の投票率は37.89%でした。   
  また,地方政府(地方首長・議会)に関しても,多くの課題が存在しています。昨今,政務活動費をはじめとした地方議員のレベル の問題,市議会・県議会の2元代表制の問題,地方議員選挙のきわめて低い投票率の問題,昨年の衆議院選で落ちた候補者が統一地方選で県議会選に出る腰掛け 問題などが指摘されています。さらに,地方部では無投票再選が増加してきています。イギリスの学者,ジェームズ・ブライスは「地方自治は民主主義の学校で ある」という言葉を残しましたが,十分に機能しているとは言いがたい状況です。   
  以上の問題設定を踏まえて,3年生の皆さんは,「選挙制度や投票行動,政治参加に対する問題発見と分析,提言」をしてください。若者の投票率向上を目指すべきか,選挙区制度を変更すべきか,世代間の投票率格差は問題か,多選は問題かなど,多様な問題設定が考えられます。対象は国・地方を問いません。テーマに基づき,問題を発見するところから始めてください。さらに,その問題を論じるに妥当な先行研究の整理や手法の選択,そして意欲的な政策提言を期待しています。公共選択論は,この問題を論じる上で多くの先行研究を蓄積しています。
  
  なお、今回の3年生のテーマでは、横浜市選挙管理委員会のお力添えにより、指定都市選挙管理委員会連合会を通じて、千葉市、横浜 市、名古屋市、京都市、堺市の投票参加に関する調査データの個票を提供いただいております。本データの利用の有無が審査に影響を与えることはありません が、使用を希望されるゼミは、指導を受ける先生を通じて開催校事務局へお問い合わせ下さい。(但し、データの提供を受ける先生は公共選択学会会員に限り、 またその先生には、最終的なゼミ参加が無い場合でも、大会の論文審査あるいは12/4(土)のプレゼン審査をしていただくことになりますので、よろしくお 願いいたします。)


2年生テーマ「地方創生は,いかにして達成可能か」

  
  増田寛也編著(2014)『地方消滅』(中公新書)は,地方部の市町村の多くが将来的に持続不可能になるという将来像を提示し,大きな反 響を呼びました。その後,増田レポートに対する異論・議論は尽きることがありません。いずれにせよ,わが国の地方・地方自治体は困難な状況を迎えているこ とは間違いありません。「自治体消滅」,「限界集落」などという言葉が盛んに取りざたされています。高齢化が進む一方で,若年層は流出し続けています。雇 用や教育の維持も大きな問題となっています。政府も「まち・ひと・しごと創生本部」を立ち上げ,2014年11月には「まち・ひと・しごと創生法案」及び 「地域再生法の一部を改正する法律案」の地方創生関連2法案が可決,成立しました。   
  これまでも,地方の人口減少・地域経済の衰退は問題視されてきました。様々な対策が行われてきましたが,現在のところ地方から の人口流出や経済の衰退に歯止めがかかっている様子は見受けられません。むしろ,公共投資等を通じた再分配的な政策は,過剰な社会資本の維持管理・更新費 用で地方自治体の財政を圧迫する結果となっています。   
  果たして,地方創生とは,いったいどのような姿なのでしょうか。また,それはどのようにすれば達成可能なのでしょうか。そもそも,達成すべきなのでしょうか。2年生テーマでは,この大きな問題に対して正面から取り組んで欲しいと考えています。


第18回公共選択学生の集い