2重国籍について(T.Y.No.2)
EU統合により、国家間の交流が盛んになり、国籍の違いがうすれていきつつある。先日、ブラジルのサッカー選手でスペインのレアルマドリードに所属するロナウドがスペイン国籍を取得した、というニュースが流れた。スペインに2年以上住むブラジル人はスペイン国籍を取得する権利が法である。彼はそれを利用し、「スペイン人」として、外国人枠にとらわれずにプレーすることを考えたのだ。
そこで僕に疑問が生じた。果たして国籍とはなんなのか。そんな簡単なものなのだろうか。それで国籍の取得、2重国籍、そして移民の受け入れ等について調べてみることにした。
・2重国籍について
2重国籍とは、海外移住等で別の国の国籍を取得したときに、母国の国籍を破棄する必要があるか、ないかである。移民側、送り出し国、そして受け入れ国から見たメリット、デメリットを考えてみる。
移民
メリット …複数の国で国民と同じ権利を享受できる。
デメリット…複数の国での義務を負担(兵役など)
送り出し国
メリット …経済発展の促進
送金の奨励
デメリット…国内政治における海外移住者の不適正な影響力を認める
受け入れ国
メリット …外交政策の目標を支援する
移民の帰化を奨励する
国境を越えた中世の現実を認識
デメリット…国籍の意義と価値を弱める
しかし最近は世界的に2重国籍容認の流れが生まれてきている。日本と比べるとはるかに2つの国の国籍を持つことが可能なのだ。それを見てみようと思う。
表 国内居住者を中心にみた場合の各国における重国籍の状況
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生地主義 |
生地主義の優勢な混合形態 |
混合形態 |
血統主義の優勢な混合形態 |
血統主義 |
重国籍には 非常に寛容 |
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イギリス アイルランド |
ベルギー フランス |
ポルトガル トルコ |
イタリア ギリシア スウェーデン フィンランド |
重国籍には かなり寛容 |
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オランダ スペイン |
デンマーク ノルウェー |
重国籍には かなり制限的 |
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ドイツ |
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オーストリア |
重国籍には 非常に制限的 |
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ルクセンブルク 日本 |
血統主義と生地主義、そして重国籍の取得のしやすさを表にしたものだ。これを見ると、ほとんどのEUの国が非常に寛容であることが分かる。現在全世界でも100カ国は認めている。
欧州はそもそも各国に任せる、という中立的な立場だったのだが、ヨーロッパ国籍条約が2000年に実効され、大きく変わった。その一五条において、「別の国の国籍を取得または保持する国民が、その国籍を維持するか、喪失するか」について、「国内法で定める締約国の権利を、この条約の規定は制限するものではない」と明示している 。したがって、ヨーロッパでは、国籍唯一の原則は、大きく修正され、重国籍がいっそう認められる傾向にある。
また、ヨーロッパ国籍条約一四条一項aは「出生により当然に相異なる国籍を取得した子どもが、これらの国籍を保持すること」を締約国が認める義務と定めている。したがって、出生により自動的に重国籍となった子どもに、将来、選択義務を課すことは、この条約違反になる。近年の国籍に関する国際法の新傾向からすれば、重国籍は悪弊なのではなく、日本のように国際結婚等による二重国籍者に対し、成人してからの国籍選択義務を課すことの方が、むしろ悪弊と考えられるようになってきている。
まとめ
二重国籍に関して、知らないことだらけだった。日本に生まれ、日本で育ち、日本以外に行ったことのない僕は、国籍というものは不可侵で、一生大事にするのが常識だと思っていた。正直その考えは変わっていない。日本が大好きだし、ほかの国の国籍が欲しいとも思わない。
ただ、世の中にはいろんな人がいる。事情で海外に行くことになり、そこで働きたい人もいるだろうし、そこにいることに必要性がある人もいる。そういう人たちにとって国籍が2つあるということは、最低限の生活を保障してもらうという点から見ても、必要なものであろう。両親が別の国でも、その国にいればその国が好きだという気持ちも生まれてくるだろうし、両親それぞれの国も好きになるだろう。国際結婚する人も多いし、そういう点から見ても2重国籍は必要なのかもしれない。
そういう人はいいだろう。しかし、あまりにも容易にできすぎるのもどうか、という考えもある。誰でも国籍をあげるわけではないだろうけど、それを国が利用するということは考えられないだろうか。
思いつくのはスポーツだ。オリンピックやワールドカップなど国をあげての行事がある。特にオリンピックは競争と同時に参加することの意義等を前面に出している感がある。それはそれでいいのだが、僕としては真剣に国を応援したいし、勝って欲しい。ただ、なぜそんな本気で応援できるかというと、本当に日本のために戦っている選手がいるからだ。もし、いくら能力があるからといって、別の国からそのときだけ来て、簡単に国籍をとり、大会に出場したとする。果たして僕は応援できるだろうか。かなり予断だが、甲子園や、冬のサッカー大会などで地元の高校が勝ちあがっても、ほとんど別の地域出身の子達が出ていたら正直応援する気にならない。それと同じ気がする。
といってもこれはスポーツを第一に考えた考えであり、実際スポーツよりもっと生活に直面した問題であろう。国籍、ということで肩身の狭い思いをしている人は多いと思う。2重国籍をとることで、外国人、としてみられなくなり、生活しやすくなるのかもしれない。
そしていつかはグローバル化が進み、EU人、というのができるのだろうか。通貨の統合は終わった。中央政府ができて、憲法ができて、言語もひとつになって、EUという国を目指しているのだろう。
参考文献
近藤敦 『外国人の人権と市民権』明石書店、2001
日刊スポーツ 2005年11月11日付
参考HP
グローバル市民権ネット http://www.gcnet.at/index.html