西洋経済史総括レポート 2006年1月18日(F.H.No.3)
今回、西洋経済史という講義の中で一貫してある思考が自分の中にあるのを感じた。それは「日本では、アジアではどうなのか?」というものであった。一年を通して、EUを様々な側面から見つめて色々な発見があった。しかし、そのような講義の中でも「日本」「アジア」の事が脳裏にあった。「EUには、○○のような問題があるが日本ではどうなっているのか?はたまた今度起こりうる可能性はあるのだろうか?」。そのような問いに答えることが、自国ではない「他国」を学ぶ一つの主な目的なのではないか。この考えに基づきながら私は、「東アジア共同体構想」と「戦後問題」を発表のテーマにした。
日本にとって「EU」という存在は、新しい・驚くべき・人によっては理想のようなものであろう。しかし、EUにも多くの問題を抱えていることが解った。完璧などは何処にも無いのである。私たちは、理想像というものをつい思い描いてしまう。EUは、そのような理想を打ち砕いてしまうが、同時に多くの示唆を与えてくれる。この点はとても勉強になった。福沢諭吉の『文明論之概略』に一文に以下のようなものがある。
「今の世界に向て文明の極度に促すは、これを譬へば、世に十全健康の人を求むるが如し。世界の蒼生多しと雖ども、身に一点の所患なく、生れて死に至るまで些少の病にも罹らざる者ある可きや。決してある可からず。病理を以て論ずれば、今世の人は、仮令ひ健康に似たるものあるも、これを帯患健康と云はざるを得ず。国も亦猶この人の如し。仮令ひ文明と称すると雖ども、必ず許多の欠点なかる可からざるなり。」
福沢諭吉『文明論之概略』62項 岩波文庫
この文のようにEUは帯患健康なのである。その「患」を我々は学ばなければならない。
その作業は、将来の我々に非常に重要なことになるであろう。一年間お世話になりました。
とても良い講義でした。有難うございました。