特許庁の委託事業で、財団法人「知的財産研究所」から海外に派遣された、明治大学情報コミュニケーション学部の藤原博彦・前助教授(45)(懲戒免職)の盗用問題で、前助教授が提出した報告書の96%が盗用だったうえ、著作権の基本ルールを逸脱したずさんなものであることがわかった。
同研究所は報告書の回収を進めているが、知的財産の専門機関としてお粗末なチェック体制を露呈している。
この報告書は、「フランスにおける著作権についての考え方の変遷」(A4判、83ページ)。同研究所が翻訳した英文と併せてまとめられ、2005年3月に200部印刷された。
昨年9月に他の研究者からの指摘を受け、同学部が調べた結果、報告書の96%が、著作権研究者の宮沢溥明(ひろあき)氏(71)ら複数の論文からの引用だった。10節からなる報告書のうち、8節の各末尾に、「まとめにあたって参照し、直接引用した箇所もある」など注記があったが、本文中には、引用部分の明示はほとんどなかった。
著作権法では、他からの引用の際、引用した部分の明示や、引用部分を変更しないことなどを定めている。学会関係者は「具体的な引用個所を示さず、『直接引用した』などと注に書くのは論文のルールを逸脱している」と首をかしげる。
チェックする立場にあった同研究所の野沢隆寛常務理事は、「盗用を見抜くのは困難だが、今後は審査を強化したい」と話す。一方、盗用された宮沢氏は、「著作権をテーマにした論文で著作権がないがしろにされたことが、残念」と話している。
(2007年2月5日3時5分 読売新聞)