来週(11月29日)のこの講義は、特別セミナー

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19世紀末・20世紀初頭から
  第一次世界大戦前夜の世界経済

  −世界諸地域・諸国の不均等発展と列強の植民地争奪・帝国主義政策−


 cf.『新版 西洋経済史』 第21章



世界の諸国諸地域の不均等発展
        1870年−1913年


図21−1
1.世界の工業生産指数は、若干の相対的低下の時期を含みつつも一貫して上昇傾向。
2.しかし、上昇の先頭を走るのがアメリカ合衆国であり、ついでドイツであることも明確。
3.先進国イギリスとフランスが、米独二国よりは、相対的に低い成長率である。





表21−1   1870年−1913年
不均等発展を別の側面からいうと、
世界の工業生産の中で「比重を高めるもの」と「相対的に後退するもの」
 @イギリス・・・31.8%から、14%に半減以上、低下。
 Aアメリカ合衆国・・・23.8%から35.8%に一貫して上昇し、一貫してトップの座。
 Bドイツ・・・13.2%から16.6%に上昇し、15.7%へと若干の相対的低下。
 Cフランス・・・10.3%から一貫して相対的地位が低下し、6.4%へ。 


米独を含む先進5カ国とそれ以外の国々の相対的関係の変化
 @主要先進国5カ国を、それに続くロシア、イタリア、カナダなどが追い上げる。
 Aロシア、イタリア、カナダなどは、それぞれの相対的地位をほぼ一貫して上昇させている。
 (ただし、イタリアの伸び率が大戦前に若干低下) 
 Bその他、日本など、国名が挙がっていない諸国も工業化を推進し、その地位を、11.4%から15.6%へ。 




工業製品・一次産品の貿易関係






表21−2  貿易額の地域別構成(1913年)
世界の貿易(輸出・輸入)の圧倒的部分は欧米間。
  @ヨーロッパ、62.3%
  A北米(USAとカナダ)、12.9%

表21−3 国別シェア(1913)
  @一位がイギリス、
  A二位がドイツ、
  B三位がアメリカ・・・世界の生産のトップを一貫して占めるアメリカ合衆国は、貿易額では第3位。(広大な国内市場を中心に発展している)

  欧米以外のアジアでは、中国と日本が登場。しかし、その割合は1.7%(日本)、1.8%(中国)



 第一次大戦は欧米列強の戦争として行われるが、日本は日英同盟で英仏露の側に立った。ドイツを敵に回す。そして、中国大陸への植民地・勢力圏拡大に乗り出す。




表21−4 一次産品の貿易
 
@輸出入とも、ヨーロッパのウエイトが高い。(ヨーロッパ内部の不均等発展、農業地域と工業地域)
 A単独では、北アメリカの地位が高い。
 
Bラテン・アメリカ、アフリカ、アジアは、一次産品(原料食糧)輸出地域として、重要な地位を占めている。



表21−5 工業製品の貿易
 
@ヨーロッパと北米が工業製品の貿易(輸出と輸入の相互の結びつき・交易関係)でも圧倒的シェア。
 
Aそれにたいして、ラテン・アメリカ、アフリカ、アジアは、工業製品輸出は取るに足りないほどわずか。輸入が圧倒的
  
日本などアジアにおける工業化を示すのが、1913年のアジアの輸出割合6.7%




表21−6 工業製品輸出
 20世紀初頭の主要10カ国のなかにやっと日本が登場。しかし、その位置は?

 上位5カ国で、工業製品輸出の90%以上。

 ただし、主要10カ国内での位置の変化・・・イギリス、フランスの相対的低下、ドイツ、アメリカの相対的上昇。

 最大の工業国アメリカが、輸出ではイギリス、ドイツよりもわずか。



表21−7 主要10カ国、工業製品輸出の部門別構成

総額は2.1倍
うちわけは、繊維の相対的減少、
        機械、金属の大幅な増加。 



表21−8 主要10カ国内部での
 工業製品輸出に占めるシェア(1899年)

@繊維、機械、金属・化学でイギリスが一位
Aその他の工業製品では、ドイツが一位。
Bドイツは、金属・化学で二位、機械で三位。
C
日本は?

 それぞれの国では、どの部門の製品の輸出が多いか?
 繊維の割合が高いイギリス、フランス、そして日本
 金属・化学、機械、その他工業製品のウエイトの高いアメリカ、ドイツなど。



図21−3
ヨーロッパ・非ヨーロッパの貿易関係




世界の資本の輸出・輸入関係

図21−4 国別・資本輸出の額と割合
@イギリスが額と割合でぬきんでて一位。
A
二位がフランス、三位がドイツ。
B生産でトップの座を占めるアメリカ合衆国は、資本輸出では主要3か国の後塵を拝する。
 むしろ、つぎの資本輸入国別データが示すように、資本輸入大国。




資本輸出大国イギリスの資本輸出先は?
 また、1870年から1914年における変化は?

@1870年の輸出先一位は、急速な工業化を遂げつつあるアメリカ合衆国、ついでヨーロッパ諸国
A1914年にも、輸出先一位はアメリカ。
Bしかし、ヨーロッパの割合は大幅ダウン。
Cこれに対して、自治領やラテン・アメリカへの資本輸出を増やす。

イギリスと対抗しつつ工業化を成し遂げたフランスやドイツは、相対的な後進国への資本輸出国へ。




資本輸入の国別シェア

@ヨーロッパが全体としては、資本輸入が一位。そのなかでは、ロシア、バルカン諸国などが多い。
A単独の国としては、アメリカ合衆国が圧倒的。広大なアメリカの産業発展は、イギリスをはじめとするヨーロッパからの資本輸入にも依存。
Bこれらについで、広大な地域であるラテン・アメリカ、アジアが多額の資本輸入。(イギリスをはじめとする先進諸国の資本輸出先としての後進国)




イギリスを中心とする貿易・決済の相関関係・相関図

イギリスの貿易収支=赤字・・・・運賃、保険・手数料および利子配当で経常黒字。

118 マイナス 145 =27百万ポンドの赤字
(受取額)−(支払額)


イギリスを中心とする決済の流れ