ドイツの第一次大戦における戦争目的

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巻・巻末地図







ドイツの軍事的優位・支配下の
新しい経済圏としての「中央ヨーロッパ」




 この第一次大戦の東方における領土・勢力圏の拡大構想、そして中欧構想(関税同盟構想)は、オーストリア帝国やロシア帝国の厳然たる存在を前提にしており、第二次大戦のときのソ連分割構想、東方大帝国建設の構想に比べれば、穏健で小さな規模にみえる。

 ヒトラー・第三帝国軍部の構想が第一次大戦に比べていかに肥大化したかが分かる。(ヒトラーの『わが闘争』における東方大帝国構想)





U巻所収地図


 

 

------------出所------------------

フリッツ・フィッシャー『世界強国への道』T(1972)U1983年)、岩波書店
Fritz Fischer,
Griff nach der Weltmacht-Die Kriegszielpolitik des Kaiserlichen Deutschland 1914/1918Duesseldorf 1961


















日本語版序文より:本書の意義に関して




「歴史家ギルド」)保守派歴史家・支配的歴史家)・・・戦争の正当化(被害者としての位置づけ、正当防衛の位置づけ、侵略性・計画的連続性の否定)の議論・・・・フィッシャーの研究は、それに対する科学的批判(ドイツ諸官庁の文書など証拠書類で組み立てた立論)。




「ドイツは重要な開戦の推進者だった」
「防衛的だなとどは称し得ない戦争目的を追求・・・」






ドイツにおける伝統的支配的言説・・・イギリスの責任、ロシアの責任を前面に置いて攻撃する意識。・・・・もちろん、イギリス、ロシア等の帝国主義政策の問題性あり。


 しかし、ドイツの「軍部、右翼諸政党、工業界、全ドイツ派が、最強の、というよりもまったく圧倒的な勢力をドイツの政治生活上で所有・・・・」彼らがドイツの帝国主義政策を推進・・・・・・しかし、列強の帝国主義勢力はイギリス、フランス、アメリカ、そして日本でも大きな力となる。





 フィッシャーは、ドイツの第一次大戦の戦争目的と第二次大戦の戦争目的の共通性・連続性の側面を明らかに。



その前史としての19世紀ドイツの発展史における問題(イギリスの自由貿易帝国主義など、フランス、ベルギー、オランダなど他の諸国の発展史の問題)
   ドイツ史における「帝国主義的、軍国主義的、保守的および国民自由党的ドイツの諸勢力の影響」・・開戦問題、ベートマン=ホルベークの行動を規定するもの。
(ドイツのプロイセン・ドイツ的な保守的歴史学派は、この重要な関係をみようとしない)
   ドイツの「民主−社会主義的勢力の影響力の弱さ




「中央ヨーロッパ」構想の列強によるポーランドの位置づけ・・・「国境帯状地帯プラン」・・・・帯状地帯からのポーランド人とユダヤ人の追放・・・・後のヒトラー時代の構想(「民族の耕地整理」、民族強化政策)と同じ。







第一章 より

ヨーロッパ合衆国の発想・・・ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世の発言(ラーテナウとの会談で)


および、ドイツ二大戦争目的としての中央アフリカ、中央ヨーロッパ