2010428日の講義感想文(考えたこと・問題発見)の紹介と、若干のコメント

 

A.    現在までの「負の連鎖」…その克服の可能性は? 到達点は?

1. パレスチナ問題の原因をこの授業を受けて理解することができた・・・

 「原因」の重要なものを指摘した。しかし、原因群とでもいうべきものがあり、しっかり検討していく必要がある。その意味では、自らの問題として、調査研究し、ナショナリズム論のレポートにまとめるひとつのいい素材・いい問題。

2. 「イスラエル」・・・欧州・キリスト教圏でのユダヤ人に対する差別から、シオニストが「ユダヤ人国家を」とナショナリズムで対抗したというナショナリズム対ナショナリズムの形には、終わりのない負の連鎖が見えた・・・

3. どこかの民族が他民族を排除しようと一回でもするかぎり、終わりは見えない・・・

4. ナショナリズムがまた新たなナショナリズムを生んでしまったという事実(西欧のユダヤ人排斥がユダヤ人によるイスラエル建国) 

5. 「ナショナリズム」とは難しいものであると改めて感じた。自分の国を守るために他の国を攻撃しなくてはならない。「ナショナリズム」は「ナショナリズム」とぶつかってしまう。今現在の世界では、国単位のナショナリズムではなく、地球全体のナショナリズムが必要になっていると私は思っている。 

 少なくともヨーロッパ諸国は、「負の連鎖」を断ち切るためにヨーロッパ統合を前進させ、排外的ナショナリズムを鎮静化させ、融和的平和的ナショナリズム・民主主義的ナショナリズム・相互尊重のナショナリズムをはぐくんできたのではないか? EUは、ナショナリズムの発展的形態と捉える見地があるが、その点を検討してみる必要はないか?

 そのEUにおいては、国家という枠組みが、相対化・緩和化・柔軟化されてはいないか?EUにおける通貨の統一(ユーロ)国境横断性transnationalの進展(国境における検問など無い自由通行原則、「ひと・もの・かね」の自由移動、国境を越えた地域的まとまりの促進、など)は、国家・国境という枠組み、その垣根を低くしているのではないか?

そもそも、近代的ナショナリズムは、中世的封建的な分裂した領域国家を、大きな単位でまとめるためのものとして、誕生し、強化されてきたのではなかったか?

 現在の世界が、国連加盟国(約200カ国)全体で解決すべき地球規模の共通の諸課題と直面していることは厳然たる事実。「地球全体のナショナリズム」の見地は、今後ますます重要になるのではないか?

6. なぜアメリカはイスラエルに多大な支援を行っているのか(アラブ人を犠牲にしてまで)

オバマ大統領の回路演説の検討。 

 アメリカ歴代政権のイスラエル支援の背景にある諸理由はなにか?・・・レポートのためのいいテーマの一つ。

 

B.    宗教・ナショナリズムと国家・武力・戦争との関係

1. キリスト教は、十字軍とユダヤの排斥運動、またイラク戦争など、神の名の下にさまざまな社会を揺り動かす出来事を起こしてきた・・・・

 「神の名の下に」行った戦争の本当の原因・重要な理由はなんだろうか?

イラク戦争は、「反テロ」、「大量破壊兵器の存在」(その除去)を大義としていなかったか?「神の名」の下に行ったか?イラクは、シオニズムというユダヤ人のなかの特定の潮流、領土取得・国家建設ナショナリズムに対抗することを一つの柱に掲げたフセイン体制の国家であった。イラクはその意味で、反イスラエル国家(反シオニズム国家、アラブ・ナショナリズムのひとつの形態)の代表的存在ではなかったか? その反イスラエル国家という点では、イラクと領土・利権をめぐって対立し戦争をしたイランも、共通項を持つ。イスラエルの大統領アフマディネジャドは、「イスラエルの言うことは嘘だ、ホロコーストは嘘だ」という言説で、物議をかもしだした人。核開発問題で、世界の注目を集めている人物。「イスラエル国家の存在を認めない」とのさまざまの発言。

2. 国家をつくる上で土地は絶対に必要なもの・・・国家をつくるためには武力や権力と言った「力」が必要・・・平和的なナショナリズムとは不可能なのだろうか。

 既に述べたことだが、EUの統合をどのようにみるか? そこから一つのヒントが出てくるのではないか?

 

C.    土地(所有)・領土(領有)・生存生活基盤の確保・安全と国家・民族の歴史的相互関係の問題 

1. Nationalismを唱える時必ず挙がるのが領土の問題であろう。どこに境界線を引くか、これが引き金となって戦争となった場合も多い。Nationalism(国民国家)+領土+戦争は常に一緒だ。Nationalism,Nationを訳すならば、国民国家だと私は考える。ならば、領土は国民国家で培われた言語・宗教・文化の容器(コンテナと捉えるのが妥当だ・・・・

 Nation「国民」、Natinalism、国語、国民文学、国民的宗教は、いつ成立したか?

たとえば、日本では国家神道(廃仏毀釈)の樹立過程は明治維新国家・天皇制統一国家の形成とともに。とすれば、それまでは、「国民」意識はあったか?

たとえば、ドイツでは? そもそも、近代的ドイツ国家はいつ成立したか?

 近代諸国家は、宗教と政治・国家を分離する政教分離原則を民主主義の発展をとともに確立してきたのではないか?その意味で、「国民国家」と宗教との関係は、多様な宗教を持つ人々の集まりである近代国家においては、多様であるのでは?

2. アメリカ人の先住民に対する土地略奪のことに言及されたが、非常に興味深かった。先住民の土地を奪った“という部分だけ切り取ってしまうとやはり後から入り込んで来たヨーロッパ人に非があるように思える。しかし、そもそも先住民にしても、ただ偶然そこに長い間住んでいるというだけで、明確な土地利用(所有)の権利を持っているわけではないのだ。こうして遡ると、地球の所有権という非常に抽象的な話になってしまうが、地下資源や領海等に関する国家間の争いが今なお続いている現状を考えれば、実に面白い視点であるように思えた・・・

    他人事ではなく、現在も、「領海」をめぐって、島嶼の「領有」をめぐって、国家間の主張が食い違っている。それを、平和的合理的に解決できるかどうか、これが現代世界に問われている。

     EUは、二つの世界大戦を経て、地下資源の共同管理・共同利用などの仕組みを作り出し、平和的合理的に問題を解決してきたのではなかったか? その問題意識から、石炭鉄鋼共同体の歴史は調べてみる価値があるのでは?

3. アイヌの人々・・・自然と共生し、文字を持たず口頭で伝えあうという独自の文化を持って暮らしてきたのに和人によって土地を侵略されてしまった。「土地略奪は正義であったのかどうか、考えてみたい・・・

 ぜひ、アイヌの歴史(和人による追放過程)を調べて、報告してください。

4. 土地略奪という言葉を聞くと思い浮かんだのが"植民地主義"(支配)ということであった。

 まさに、そのとおり。オーストラリア、ニュージーランドなどへの白人の植民、先住民の生活空間からの排除など。またアフリカでの植民地支配なども。

5. 現代日本の社会状況の中でインターネット上では保守的な言説が喝采を浴びている。・・・日本でもスケープゴートを作り出す動きが少しずつみられる・・・私はこのテーマで報告書をまとめたい。

 報告に期待。

6. 一年間アメリカインディアンの研究をしていた中で、同化主義は多数派社会が少数派集団を統合のために強制する強行的な自民族中心主義から来るものと感じています。

 少数派の民主的権利・民主的生存権を尊重できるかが、問われますね。

 

D.   原爆問題(開発・投下の諸原因・さまざまの主体の責任の問題、国家の戦争政策と平和構築の問題、ナショナリズム・国粋主義・軍国主義の結合と熱狂、戦争終結への手段は?戦争抑止の手段は?)

1. アメリカが日本に原爆を落とすまでの経緯は今までよく知らなかったので、それを聞いてひとつの歴史についての見方が変わった。どのような歴史でもそこに行くまでの過程をあらゆるかかわる国々から見たものを知ることで、自国のことをさらによく知ることができるのではないか・・・・

そのとおり。講義で話したことが、そうしたことへのいざない・探求心刺激となるなら、うれしい。

2. 連合国がロシアに参戦を要求したのは、よほど早く戦争を終わらせたかったというのもあるだろうが、米が"原爆という日本を屈服させるのに十分な武器を持っていたのだから、そこまでする必要があったのか、と疑問を持った・・・・

 「十分な」という根拠は? 原爆の製造は、19458月時点で、ウラン型一個、プルトニウム型2個(実験用一個、実際の投下用一個)であった。2発の投下で日本が降伏するという確信は、どこにあったのか? さらに原爆を製造するためには、時間が必要。

 日本軍は中国東北部(満州)など中国戦線、東南アジア戦線など広大な地域に展開していた。それらの日本軍は、日本全土・主要都市への空襲の激化で(その空襲の極限形態が原爆投下だが)、降伏する状態であったか?

 アメリカは、いつまで粘るかわからない日本軍との死闘を繰り返す陸上戦は、ソ連軍にまかせたかった、引き受けてもらいたかったというのが本当ではないか。ヤルタ会談での英米のソ連の対日戦参戦希望は、アジア戦線全体をどのようにみるかということと関連するであろう。

 米英は、ソ連が、「早く第二戦線を開いてほしい、ドイツ軍を西から、背後から攻めてほしい」と繰り返し要望したのに、それには準備が必要、と先延ばしにしたのではないか?

チャーチルの『第二次世界大戦』における「巨大な獣」の比喩。

 ソ連は、1941622日にヒトラー・ナチスドイツ軍の攻撃を受けていらい19455月まで、陸上の戦闘で甚大きわまる犠牲を出しながらも、ついにはナチス・ドイツを撃退した。その強大な軍事力をもってしてはじめて関東軍の撃滅が、アメリカ兵の地を一滴も流すことなく、可能だとみたのではないか。アメリカの青年の血を一滴も流さない、最小限に食い止めるというアメリカ・ナショナリズム。

3. 原子力とかそういった科学の高度な発展が、戦争とかに使われるのではなく、私たちの生活に役立ったり、プラスの方向に使われればいい・・・

科学によって人間の生活は豊かになり、今の私たちも便利で過ごしやすい生活ができていますが、それが使う人の手によって、破壊兵器に変わってしまうという皮肉なことが第一次世界大戦でも、それ以後の戦争でも起きた。

 実際に科学技術は人類の生活向上のために役立っている・活用されている。

 原子力も、原子力発電という形で、すでに日本では3割から4割近くの電力は、原子力に依存。(プルトニウムが蓄積している、放射性廃棄物がどんどんたまっている、という深刻な問題も)

 科学の発達を、平和と人類の安全・福祉の向上のために活用するか、戦争のために利用するか、これはわれわれ人類に問われていること。

 

512日講義のテーマにつながる感想:

 ・ユダヤ人はファシズムや軍国主義が作り出したスケープゴート?(共産主義との対立は関係ないのだろうか?)・・・

   ヒトラー・ナチスの思想体系・宣伝・・・反ユダヤ・反ボルシェヴィズム(反共産主義)

 

・ナチス・ドイツの下イデオロギーが本当に当時のドイツ国民すべてのイデオロギーの総体であったのか?・・・否。

1919年結党―1923年ヒトラーのミュンヘン一揆の挫折・・・ヒトラー投獄

1926年から「合法」的大衆宣伝活動・選挙戦。得票率の変化。

       

1929-327月選挙・・・上昇。193211月選挙・・・・下降。

 

1933130日・・・ヒトラー政権誕生。諸政党の禁止・弾圧、国会放火事件。

  再軍備政策、軍需による景気回復への軌道。

1934年までに一党体制へ。19346月には、ナチ党左派まで粛清。

1936年 4カ年計画・・・4年間で軍は出動準備を完了せよ。経済はそのための準備を完了せよ。

  「粛軍」事件・・・・ヒトラーのイエスマンばかりの軍部へ