2020‐06‐22から10-01の記録
2020-06-28 「原朗氏を支援する会」事務局の声明公開
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(支援する会ウェブサイト)より:
声明文「最高裁判決を受けて──批判と決意──」(2020年6月28日更新)
原郎氏を支援する会「最高裁判決を受けて──批判と決意──」を公開いたします。
こちらよりご覧ください。
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この声明文において特に注目すべきは、新しい重要な2013年時点での剽窃事実への言及(一ページ最下行から二ページ一行目)である。すなわち、
「いま一つは、小林英夫氏が早稲田大学在職中(2013 年)に発表した論文が、若手研究者の論文を剽窃した事実が明らかになったことでした。」と。
これまで問題になっていたのは、
@尹論文盗作(小林氏最初の公刊論文1966年、その2011年の再公刊・・・高裁提出証拠資料乙83・・・高裁は、この地裁判決後に発見された画期的新証拠を一顧だにしていない)。
A原朗氏の先行諸業績盗作(@の行為を最初の公刊業績として組み入れた1975年12月刊の大著、その無修正版としての2006年の増補版…増補の業績リスト筆頭に@を掲載)、
その歴史科学的批判・暴露として、法廷提出の証拠資料を中心にまとめて世に訴えた原朗『創作か 盗作か』(同時代社、2020年2月)であったが、
さらに、新たな案件として
B2013年における剽窃(新証拠資料)が、指摘されている。
最高裁は、この2013年の一番新しい証拠(新発見証拠)も、検討対象外として、一顧だにしていない。
司法が学問的内容を裁断することが、憲法に抵触する問題だという感覚がないのであろう。
上告諸書類を見て、「単なる事実」に関する主張・証拠でしかないと門前払いする法形式主義(実際には最高裁小法廷の5人の裁判官は、調査官の処理案をそのまま認めたのであろう。調査官の見識、原氏側の提出した諸証拠書類の理解・判定力がもんだいなのであろう。)。
高裁による新証拠(上記乙83資料)の無視(2019年9月判決)につづく、最高裁の驚くべき司法の態度である。
高裁・最高裁のこうした態度は、学術研究倫理違反を検討する大学等学術界において剽窃・盗作を問題にする場合には、決して許されないことである。
学術界の剽窃・盗用判定基準は、「盗作とまでは言えない」などという判断停止の司法(地裁高裁判決)とは違って、厳格・精密であり、大学の諸規程において明確である。先行研究に対する態度において、学術研究倫理に基づく適正な行動がとられているかどうか、盗作盗用ととらえられるデータ・表現・論理はないか?
どこまでが、先行研究に属するものであり、どこまでが小林氏の独自のものか、その区別を明確にする手続きが、注記等の明示により取られているのかどうか。
後発研究が明示すべき先行研究との違いは、適切に明確に示されているのか?
学術界による最後の審判(司法の誤判決の学術的批判と否定)こそが、今後の日本の歴史科学(一般に科学)の発展の土台となる。
その意味で、「支援する会」声明文は、学術的闘いの宣言。
----------剽窃盗用の定義の確認---------------
「盗用・剽窃」の学術的定義(原朗『創作か 盗作か』69‐70ページより抜き書き)
「早稲田大学大学院経済学研究科が修士論文提出者に対して提出を義務付けている「剽窃定義確認書」をみれば、「修士論文提出において、剽窃または剽窃と疑われる行為を一切行わないことを誓約」し、「当該行為を行った場合には、厳重な処分(無期停学・当該学期成績無効・修士論文不合格等)を受けること、学位取得後であっても学位取消となることを十分に認識したうえで、論文執筆を進めていくことを誓約する」ことが求められている。
この「剽窃定義確認書」の裏面にある「剽窃に関する定義」によれば、「盗用・剽窃行為」について、「文章の出所を・・・引用や参照のルールにのっとって示し、その部分は自分の書いた文章(あるいは自分で考えたアイディア)ではなくて、誰かから借りたものであることを明らかにする必要がある・・・他人から借りた文章やアイディアの出所を示さずに、自分で書いたものとして・・・提出すると、『盗用』または『剽窃』となる」・・・
「他人の文章を書き写す場合(つまり引用する場合)には、かならずその文章全体を「 」(一重カギカッコ)でくくる・・・そして著者名、著書(あるいは論文や記事)のタイトル、該当ページ数(および出版社や出版年)がわかるようにする」(傍線は原文のもの)、「文章をそのまま引用したわけでなくても、要約というかたちで利用したもの、アイディアを得るために参考にしたものがあれば、同じように著者名、タイトル、ページ数・・・を示すのがルールです」・・・「以上は、『絶対にやってはいけないこと』についての注意です」とされている。」
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この学術研究論文・著書における引用や参照の一般的原則・普遍的ルールに照らせば、堀和生「起源」論文および早稲田大学学術研究倫理委員会の調査結果(盗作判定:Cf.「支援する会」ウェブサイト2020‐03‐03参照、10月1日調査書の公開、調査報告書オリジナル)が証明していることは、1966年(その再公刊としての2011年)の小林論文が、文字数48%にもおよぶ剽窃盗用以外のなにものでもなかったことである。
45年間におよぶ剽窃盗用!それに無自覚・無反省、ルール無視の論文の長期間にわたる公刊行為が、問われている。とすれば、それはまさに、「学位取得後であっても学位取消となる」事案だといえるのではないか?
原朗氏諸業績からの剽窃盗用(手法における共通性)は、その長期間のなかにすっぽりと入っている事案である。
特に、10月1日公開の早稲田大学学術研究倫理委員会の調査報告書で明確にしめされたことは、2020年1月23日の委員会による小林氏聴聞からわかることは、
2020年1月23日時点でも、尹論文盗作を盗作とは認識していないという厳然たる事実である。
これは何を意味するか?
学術研究倫理を認識せず、無視しているというkと、なにもルール違反を反省していないということである。
すなわち、原朗氏の業績を自分の大著で1995年に、そしてその再販2006年において、学術研究倫理がなかったということである。
つまり、地裁・高裁のいうような「盗作とまでは言えない」のではなく、大著全体にわたる大々的な盗作そのものを「盗作ではないように」思い込み、あるいは、「盗作とは見えないように」換骨奪胎に努めた、ということではないか?
すなわち、原朗『創作か 盗作か』(同時代社、2020年2月)が立証したことは、尹論文盗作案件と全く切り離して考えるべきことか? 否。
二つの案件において学術研究倫理違反問題での共通性は、ないといえるのか? 否。
司法(高裁は新証拠無視で地裁判決を追認し、それをさらに「上告思慮う・証拠資料」を門前払いすることで追認した最高裁)は、形式論で、新証拠をまったく吟味していないが、そのような法的形式論は、学術研究の盗作の問題において、許されることか? 否・
高裁は、乙83という決定的に重要な新証拠を吟味し、当問題全体の証拠と議論を洗い直し、地裁判決を破棄すべきではなかったのか?
最高裁は、
早稲田大学学術研究倫理委員会の盗作認定(2020年2月25日)をもとに、高裁に審理を差し戻すべきではなかったのか?
これは
学問の自由、したがって憲法的問題にかかわってくる問題ではないのか?
歴史科学(一般に科学)の真実か否かの問題を、司法が「盗作とまでは言えない」といったあいまいな判定で処理してしまっていいのか?
司法は、この問題を司法が立ち入るべきではない学問研究の自由の問題、真実・真理発見の根本問題として、学術研究界(大学・学会等)の論議・検証に任せるべきではなかったのか?
学術研究倫理の見地、具体的にはたとえば上記早稲田大学規程はもちろん、その他の諸大学の研究倫理不正行為処罰規程や文科省・科研費等学術振興会の諸規程を基準とすれば、尹論文盗作案件(初版1966年と再版2011年)だけでも、論理必然的に学位取り消しとなるはずである、と私は考える。
また、早稲田大学の名誉教授規程がどのようなものであるにしろ、学術研究倫理において盗作を認定した以上、「名誉」ある教授という称号が、不適切であることは、はっきりしているのではなかろうか。
早稲田大学規程にもとづく学術研究倫理違反(同大学術研究倫理委員会の判定は2020年2月25日)での処分は、どうなるのであろうか?
こうした点が明確にならないと、早稲田大学の学術研究倫理における「法と秩序」、「学の独立」の理念は、危ういものとなりはしないか?
すべては、早稲田大学の学術研究倫理についての態度にかかっている。
その取扱い如何は、世界的にニュースになった小保方問題の評価・大学の反省のあり方・学術研究倫理確立にも深くかかわってくるであろう。
若手研究者の過ちと何十年も研究を続け、教育指導・学位審査等を行ってきたきた長老研究者の過ち・責任・罪は、同じであろうか?
(8月28日追記)
早稲田大大学学術研究倫理委員会の盗作判定が2月25日に出てから、すでに半年が過ぎた(不服申し立て3月11日、その却下3月19日からでも5か月以上)。
コロナ禍で大学の機能が大幅にマヒし、研究科・理事会等の審議に時間がかかっているとは推測される。
それでも、遅くとも、あと数か月のうちには、 何らかの処分が出るのではないか、と想定している。
その際、学術研究界が納得する説明が行われることを期待したい。
(9月7日am 10-30 追記)
早稲田の規程において、調査委員会における不正行為認定から大学院研究科・理事会等における処分決定までの手順・審議機関・期間に関して、規程の抜粋を明示しておきたい。
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研究活動に係る不正防止および不正行為および不正行為への対応に関する規程(抜粋リンク)
2007年4月6日規約第07−1号) 《所管:研究マネジメント課長》
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念のため一部を以下に抜粋しておくと、
第 13 条調査委員会は、不正行為に係る事実の調査を実施し、倫理委員会に対して、原則として その設置の日から起算して1か月以内に中間報告を行い、遅くとも3か月以内に最終報告を行うこ ととする。ただし、やむを得ない事情がある場合は、最終報告を行う期限を1か月を越えない範囲 内で延期することができる。 ・・・この項目に関しては、事実認定に関して、調査委員会の最終報告が、不服申し立て却下も含め、決定された。2020年2月25日委員会決定と3月19日の不服申し立て却下。
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(総長等への報告等) 第 17 条倫理委員会は、第 13 条第1項の中間報告および最終報告を受けたときは、その内容(第 16 条第4項および第9項の規定により調査または再調査を実施した場合は、その結果。本条第3
項および第9項において同じ。)を審議の上、事実を認定し、速やかに総長および調査対象者の本属箇所の箇所長に報告するものとする。
・・・・・・
7 総長は、理事会において実施した是正措置等もしくは懲戒等または前項の規定により箇所長 から報告を受けた是正措置等の実施の状況について、倫理委員会に報告するものとする。
8 本学は、必要に応じて、調査の結果および前項の規定により総長が倫理委員会に報告した内 容を配分機関等に報告し、または公表するものとする。
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(通報者等への通知) 第 17 条の2 倫理委員会は、第 13 条第1項に定める最終報告を受けたときは、その内容を審議 の上、事実を認定し、速やかに通報者等に通知する。
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不正行為(盗作)認定の後に行われるべき処分(是正措置、懲戒等)については、通知がまだ届いていない(あるいは公表されていない)のが現状である。
当方からの問い合わせ(8月初め)に対しても、何の反応もない。
学生院生等また、学術研究界に対し、明確な処分の発表・説明がなければ、今後の不正防止も不可能となる。むしろ逆に、不正行為が、その摘発後もなお、容認されることになる。
それは大学・学術界における学術研究倫理に対する深刻な打撃を意味するであろう。
大学の真摯な態度が求められているといえよう。
(9月17日追記)
この間何度か、早稲田大学に2月25日学術研究倫理委員会の調査結果(盗作認定)を踏まえて、どのように行動したか、大学規程に基づく諸処理、その結論を得ての学生院生、学術研究界、社会に対する公表(不正防止・学術研究倫理の確立のための諸措置など)はどうなっているのか問い合わせてきた(6月初旬、7月末)。しかし、進捗状況についてさえ何の回答のないので、もう一度だけ、情報を求める文書を9月15日に送付した。今回は、期限9月末日とした。
ゼロ回答の場合、10月1日以降、早稲田大学学術研究倫理委員会の調査委員会報告を公開せざるを得なくなる。
さて、どうなるか?
(10月1日)
早稲田大学学術研究倫理委員会の調査報告書を「原朗氏を支援する会」ウェブサイトに掲載。
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早稲田大学学術研究倫理委員会「調査報告書」の公表にあたって(2020年10月1日更新)
小林英夫氏が原朗氏を訴えていた裁判の経過の中で、小林氏が原氏の論文だけでなく、他にも多くの剽窃を行っていた事実が明らかになっていました。裁判所はそれについて全く関心を示しませんでしたが、それに気づいた人たちはその調査を継続していました。
一方、小林氏が勤務していた早稲田大学は、小保方事件の後、学術倫理に厳しい姿勢を持ち、同大学関係者に関わる学術不正に気付いた者は誰でも、同大学本部に通報することを歓迎され、通報後4か月以内には結論を通知されるという規程を設けていました。
原朗氏を支援していたA氏は、この規程にしたがって小林氏の一論文について同大学に通報したところ、同大学学術研究倫理委員会からはA氏に対して、通報を正式に受理したこと、判定のための調査委員を決定したこと、倫理委員会として小林氏に「不正あり」の認定をしたこと、小林氏からは「異議申し立て」が出されたが同氏からの聞き取り調査を経て却下されたことなど、順を追って経過報告がなされるとともに、倫理委員会の「調査報告書」(2020年2月25日付)もお送りいただきました。
同大学のこのような対応は、学術研究上の不正事案に対しては学術界が責任をもって対処している点でも、規則通りの厳格な手続きを経て正当な結論に至っている点でも、学術機関として模範的な対応であったと評価できます。
以上のような判断に立って私たちは、この文書の内容を学術研究倫理の前進を求める多くの方々に知っていただきたく、このホームページに掲載する形で、資料として情報提供させていただくことといたしました。
文書のPDFは、こちらよりご覧ください。
2020年10月1日
原朗氏を支援する会・事務局
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上記声明文のなかで、「他にも多くの剽窃を行っていた」という文言について、私自身は、@尹論文、A原氏10年間の業績、B「若手研究者」の具体例しか知らなかったので、若干違和感をもった。しかし、念のため情報を集めてみると、なんとなんと、何十年も前から、被害にあった何人もの研究者が、「やられた」と漏らしていたそうである。そして、その被害者の方々は、「原氏を支援する会」に結集して、強力に支援してくれているそうである。
私は、アジア経済史、日本経済史については門外漢で、上記のような噂、具体例について、全く知らなかった。「知らぬが仏」というところか。
今回の早稲田大学学術研究倫理委員会の調査報告が明らかにしたのは、2020年1月23日の委員会の聞き取り調査の時点でも、小林氏が盗作をまったく盗作とはみなしていない、ルール違反をまったくルール違反とは認識していないことである。
1966年から2020年3月(不服申し立て)まで一貫して、学術研究倫理に違反している行為(剽窃盗用)を、まったく違反だと思っていないわけだから、この間に、たくさんの研究者の著書・論文・学会発表からの盗作・盗用があったのは、当然であり、必然的なことなのだ。
調査報告書の聞き取り調査部分(剽窃盗用をまったく自覚していないことを立証している部分、6ページから7ぺージの応答部分)は、その意味で、もっとも迫力のある盗作立証部分ということになろう。
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2020-06-22 原朗氏「七年間の裁判を終えて――お礼のことばーー」(6月19日付)が、「原朗氏を支援する会」ウェブサイトで公開された。
司法の場では、地裁・高裁・最高裁と相次いで、原朗氏は敗北した。
だが、学術界では、その反対に原氏が勝利しているといえよう。
原朗氏と松村高夫氏、堀和生氏(原朗『創作か盗作か』参照)、そして、200名余の学術界の人々、さらに、早稲田大学学術研究倫理委員会の判定は、小林氏盗作を実証的に証明。
学術界のこうした見解・判定(実証的説明)を今後、学生・院生・研究者・諸学会に置いて確認し、周知徹底させることが、今後の「支援する会」の長期的課題となろう。
その場合も、堀和生「小林英夫氏盗作行為の起源」(「起源」1966年の小林氏最初の論文、2011年その再公刊)が、検証素材・教材として出発点となろう。
それを受けて、小林氏大著とこれに対する原朗『創作か 盗作か――「大東亜共栄圏」論をめぐって』(同時代社、2020年2月刊)の検討にすすむことになろう。(書評)
そこにおける学術的論争こそが、盗作かどうかを判断する場となろう。そして、司法の判定を検証し、その誤りを確認していくことになろう。
高校一年生の「倫理社会」夏休み課題に挙げられた文献の一冊として選びとっていらい、なんどか、岩波文庫で読んだ。かならずしも読了できず、いつも消化不良の感じが残っていた。